松尾潔 メロウなホリデーソング特集2018・後編

松尾潔 メロウなホリデーソング特集2018・後編 松尾潔のメロウな夜

さあ、いまバックに流れておりますのは、先ほども名前をご紹介しましたSkoop On Somebodyによるダニー・ハサウェイのカバー『This Christmas』。以前にもこの番組でお話したように、アフリカンアメリカンの世界、R&Bを主戦場とする人たちの間ではいちばんのクリスマスソングといえばこれに尽きるかと思いますね。『This Christmas』なんですが。

しかし、『This Christmas』以外にもこんなにいい曲、いい具合にこの季節を温めてくれる曲がありますよってのが今日の趣旨ですね。続いてご紹介しますのは、その歌声自体がアフリカンアメリカンのカルチャーのある一部を担ってきたと言っても差し支えないでしょう。ルーサー・ヴァンドロスです。ルーサー・ヴァンドロスが『Never Too Much』でソロデビューする以前に、まあいろんなセッション仕事をやっていたことはよく知られています。この番組でも再三にわたってご説明してまいりましたが。

ソロの前にボーカルグループを結成して活動していたことっていうのもみなさんにはご記憶に留めていただきたいですね。その名も「ルーサー」という、まあずばり中心人物だったのですが。2枚、アルバムをリリースしてほぼ不発という。いい曲もあったんですけどもね、まあ商業的にはうまくいきませんで、まあグループは活動を停止してしまうわけですね。それはCotillionっていうアトランティックの傘下のレーベルでございまして、となるとアトランティックにいたダニー・ハサウェイとも関係のない話ではないのですが。

人によってはね、「ルーサー・ヴァンドロスっていうのはダニー・ハサウェイの後継者という位置づけになるはずだったんだよ」なんて言う人もいますね。後にルーサー・ヴァンドロスがダニー・ハサウェイとロバータ・フラックの『The Closer I Get to You』をカバーしていることなんかを考えると、これは興味深い話ですね。しかもね、デュエットパートナーがビヨンセだったりするわけですからね。で、そんなルーサーのグループ時代、2枚のアルバムとプラス、Cotillionっていうレーベルのアーティストが集った企画アルバムにオリジナル曲を提供しております。

『Funky Christmas』というあまり深遠な思想などは感じられないタイトルなんですが、Cotillionから出た『Funky Christmas』。1976年のアルバム、なかなか聞き所が多くて。スピナーズにいたジョン・エドワーズとかね、裏アレサなんて失礼なあだ名もあるマージ・ジョセフですとかね、まあカーティス・メイフィールドがいないインプレッションズとか、いろんな人たちが集っております。サックスプレイヤーのルー・ドナルドソンなんかも曲を提供していますが。

ここにグループ時代のルーサーがオリジナル曲を2曲、提供しているんですが。今日はその中の1曲、スローなクリスマスソングを楽しんでいただきたいと思います。1976年の発表作品ルーサーで『At Christmas Time』。

Luther Vandross『At Christmas Time』

Blackstreet『The Lord Is Real (Time Will Reveal)』

70年代のルーサー・ヴァンドロス、若き日の歌声に続きましては、90年代のサウンドへとつないでみました。まずはルーサーで『At Christmas Time』。これはアルバム『Funcky Christmas』。Cotillionレコードの所属アーティストたちによる企画アルバム。その中からの1曲でした。そしてテディ・ライリー率いるブラックストリート、1996年の『Another Level』というアルバムに収められていました『The Lord Is Real (Time Will Reveal)』でございました。

このサブタイトルになってる『(Time Will Reveal)』というのはデバージの曲でして。ご存知の方には説明するだけ野暮かもしれませんけども、そのデバージの代表曲のひとつ『Time Will Reveal』をゴスペルの内容の歌詞に置き換えた、まあ替え歌ですね。

この季節に聞くにふさわしいかと思って。まあクリスマスだからといって、直接クリスマスを歌った歌詞ばかりでは息もつまろうかと思いまして。ホーリーな雰囲気のある曲ということでピックアップしました。ブラックストリートの『The Lord Is Real (Time Will Reveal)』。いいもんですね。本当にブラックストリートっていうのはファンキーな作品、『No Diggity』なんていう大ヒットを残していますが、一方でこういうメロウな曲がたまりませんね。テディ・ライリーという人がまさにその両面を持ってるんですが。メロウサイドのテディ・ライリーがたまりませんね。

いま、BGMでお届けしておりますはアンソニー・ハミルトンの『What Do The Lonely Do At Christmas』。何年前でしょうか。僕がもっとも好きなホリデーソングのひとつだと言ってご紹介した記憶があります。

もともとはエモーションズという女性ボーカルグループが歌ってました。エモーションズっていうとね、『Best Of My Love』という曲で有名な、一時はアース・ウィンド&ファイアーのファミリーでもあったグループなんですが。彼女たちのオリジナル、いろんな人が歌ってきました。パティ・ラベルも歌ってました。でもアンソニー・ハミルトンのこのファルセットが合うんだよな、なんてことをお話したんですけどね。

松尾潔 メロウなクリスマスソング特集2015 前編
松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』で『メロウなクリスマス』と題し、クリスマスソングを特集していました。 (松尾潔)改めましてこんばんは。松尾潔です。『メロウな夜』、12月の放送は2回。ということは今年の放送も今回を含めてあと2回...

そのクリスマスの時期だから許されることっていうのが実生活でもいくつかあるかもしれませんね。ロマンチックなセリフを口にするとか、そういうのもあるのかもしれませんけども。音楽の世界でも、このクリスマスソングだから、ホリデーソングだから、普段そこまで使ってないファルセットを多様してみましょうとかね、そういういい意味での音楽的実験の場としても、僕はね、少なくともR&Bアーティストにとってホリデーソングっていうのはいいステージになってるんじゃないかなと思うんですよね。

そんな人たちがいる一方で、これからご紹介するアーティストはどんな時でもマンネリズムでございますね。クリスマスだからロマンティックになるわけじゃなくて、もう1年中こういう歌を歌ってる人なのですが。でもやっぱりクリスマスには一際ハマるよなという人です。フレディ・ジャクソンですね。意外にもこの番組で初めてご紹介するフレディ・ジャクソンのホリデーソング『One Wish』。これから聞いていただきたいと思います。

曲を提供しましたのはフレディ・ジャクソンとは長い付き合いとなりますバリー・イーストモンド。そしてゴードン・チェンバースですね。メロ夜リスナーにも大変ファンの多いシンガーソングライター、ゴードン・チェンバースがフレディ・ジャクソンに提供した作品という、そういう一面もございます。1994年にリリースされたフレディのウィンターアルバム『At Christmas』、こちらの収録されていました。では、聞いてください。『One Wish』です。

Freddie Jackson『One Wish』

Gaby Moreno『Have Yourself A Merry Little Christmas』

2曲続けて大変ロマンティックなホリデーソングをご紹介いたしました。まずはフレディ・ジャクソンの1994年リリースのアルバム『At Christmas』の中から『One Wish』。そして2014年発表の作品ございますね。これは中央アメリカにグアテマラ共和国っていう国がありますね。メキシコの南、そういう位置にあるグアテマラの女性シンガーソングライター、ギャビー・モレノさん。『Have Yourself A Merry Little Christmas』をお聞きいただきました。

僕、彼女について大変地元で人気があるってこと以外はそんなに深く知らないんですけどもね、いくつか……大変この声に惹かれてましてね。いくつかの作品を、よくわからないなりに好んで聞いているんですけども。とにかくこの『Have Yourself A Merry Little Christmas』、番組で何度かご紹介してきた、僕も大好きな、そしてR&Bリスナーにも大変好まれてきた曲との相性が抜群なんですよね。これ、毎年この『メロウな夜』が始まってこの時期にかけたい曲のリストっていうのを作って、どんどんそこを増やしていったり、そこからご紹介したりしてるんですけど。

ここ数年、ずっとこの彼女のこの『Have Yourself A Merry Little Christmas』が入っていたんですが、初めて今年ご紹介することができて大変嬉しく思います。みなさんも今日、初めて聞く方が多いんじゃないかと思いますけどね。ギャビー・モレノさんの『Have Yourself A Merry Little Christmas』、記憶していただければと思います。

(中略)

さて、楽しい時間ほど早く過ぎてしまうもの。今週もそろそろお別れの時が迫ってきました。ということで今週のザ・ナイトキャップ(寝酒ソング)。今夜はキース・スウェットの『It’s Christmas Again』を聞きながらのお別れです。これはさっきの言い方にならって申しますと、クリスマスだからやってみたファルセットボーカルという感じでしょうか。

これからお休みになるあなた、どうかメロウな夢を見てくださいね。まだまだお仕事が続くという方、この番組が応援しているのはあなたです。次回は今年最後の放送となります。来週12月24日(月)夜11時にお会いしましょう。お相手は僕、松尾潔でした。それでは、おやすみなさい。

Keith Sweat『It’s Christmas Again』

<書き起こしおわり>
https://miyearnzzlabo.com/archives/53823

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