松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中で毎年恒例のホリデーソング(クリスマスソング)を特集。2018年のいま聞きたい曲を選曲し、紹介していました。
(松尾潔)さて、今週は「メロウなホリデーソング」と題しまして、ホリデーソング……いわゆるクリスマスソングを特集したいと思います。これは「パート1」と言っておきましょう。以前にもね、同様の試みをやったことがありますが、今年はパート1を今週。そしてパート2を12月17日に放送したいと思っております。その流れでお話ししますと、繰り返しますが来週12月3日にJUJUさんの3枚目の『DELICIOUS』の徹底解剖をするんですが、その翌週の12月10日は放送をお休みさせていただきます。そしてその翌週ですね、12月17日。この時にメロウなホリデーソングのパート2をご紹介したい、そのように思っております。
さて、では早速まいりましょう。メロウなホリデーソング パート1。今回は新しいめのホリデーソングを中心にお届けしたいと考えました。まず今日最初にご紹介しますのは、先日ミント・コンディションのストークリーとの共演シングル『恋人たちのクリスマス(All I Want for Christmas Is You)』のカバーをこの番組で紹介したPJ・モートンですね。
PJ・モートンが今月リリースしたクリスマスアルバム、『Christmas With PJ Morton』の中からもう1曲、ご紹介したいと思います。これもデュエットナンバーなんですよ。そのパートナーを務めますのは女性ゴスペルシンガー、ヨランダ・アダムスです。ヨランダ・アダムスと言いますとこの番組『メロウな夜』で先日、サウンズ・オブ・ブラックネスの中心人物だったビッグ・ジム・ライト。ジャム&ルイスファミリーの番頭さんみたいな人でしたということをご紹介しましたけども。
そのビッグ・ジム・ライトが亡くなった時に彼の生前のプロデュース作品の中で僕が最も好きな曲のひとつとして、ヨランダ・アダムスの『Open My Heart』を紹介したのですが、まあゴスペルのシーンでは「超」のつくVIPでございます、ヨランダ・アダムス。やはり同じようにゴスペルにルーツを持つPJ・モートンとの息の合ったデュエットをお楽しみいただければと思います。曲の方はこれ、オリジナルナンバーですね。PJ・モートン feat. ヨランダ・アダムスで『Do You Believe』。
PJ Morton feat. Yolanda Adams『Do You Believe』
Aloe Blacc『Tell Your Mama』
2曲続けて新しいホリデーソング、クリスマスソングをご紹介いたしました。まずはPJ・モートンとヨランダ・アダムスのデュエットで『Do You Believe』。これは今月リリースされたばかりのPJ・モートン初めてのクリスマスアルバム『Christmas With PJ Morton』の中の1曲です。アルバム、全8曲でございまして、そのうち2曲オリジナルナンバーがあって。そのうちのひとつがこれでしたね。まあ目玉曲と言ってもいいかもしれません。PJ・モートン、ご存知のようにマルーン5の正式メンバーでもございますが、個人での活動、ソロの活動では全くと言ってもいいほど違った世界を展開しますね。
まあ元々こっちが本領っていうことかもしれませんけどもね。PJ・モートンの歌声っていうのはもうどんどん滋味深さを増していきますね。僕なんかはこれ、世代的に曲のイントロなんかでいにしえのゴダイゴのサウンドを思い出したりもしたんですね。『ビューティフル・ネーム』ですか。
なんですけども、一般にはスティービー・ワンダーの強力なフォロワーの筆頭として挙げられることもよくあるPJ・モートンなんですが。このアルバムは本当にジョン・レジェンドのアルバムと並んで聞きごたえのある新作ホリデーアルバムという印象です。
そして、アロー・ブラックのやはりこれも初めてのクリスマスアルバム、『Christmas Funk』の中から『Tell Your Mama』をお聞きいただきました。アロー・ブラックの場合はこれはのアルバムタイトルに「ファンク」と入れているぐらいで、コンセプトが明確ですね。クリスマスにファンキーな曲を聞くのも一興ではないかと、まあちょっと作戦勝ちのようなね、アルバムです。「勝ち」って言ったぐらいで、これはもう本当の成功してると思いますよ。ジャケットもね、あのアフロヘアーのサンタクロースの後ろ姿で。背中に「FUNKY」ってアップリケっていうんですか? レターが貼られたサンタさんなんですけどね。
まあ、たしかにクリスマスアルバム、ホリデーアルバムっていうのは大体内容いつも似てますよね、なんてちょっと食傷気味な方もたくさんいらっしゃると思うんで、そういった人たちにとってはほどよく刺激のあるバランスのとれた……逆にバランスのとれた作品集とも言えるかもしれませんね。アロー・ブラックの『Tell Your Mama』。まあなにしろ歌いっぷりが素敵でした。
さて、続きましてはいま、ちょっと揶揄するような言い方をしましたけれども、極めてクラシックな、極めてオーセンティックなクリスマスナンバーをご紹介したいと思います。『Have Yourself A Merry Little Christmas』。これはね、まあ本当、もちろん超のつく有名なクリスマスソングなのですが、R&Bの世界では特に愛されている1曲ですね。以前にも話したことがあるかもしれませんけど、まあダニー・ハサウェイの『This Christmas』っていうのがリリースされた時点ではまだ、黒人アーティストによるクリスマスソングっていうのはまだ少ない時代に出た決定的な1曲のような印象で。ちょっとあれは聖典化しているというか、特別扱いされてるんですが。
それを除きますとを、メル・トーメの『The Christmas Song』と並んでR&Bアーティストに愛されているのがこの『Have Yourself A Merry Little Christmas』じゃないかと思いますが。散々もったいぶった言い方をしますが、その曲をなぜいま、みなさんに聞いていただきたいかって言うと、歌っているのが今年の女性R&Bアーティスト、活躍したアーティストの筆頭格であります、H.E.R.なんですね。それもH.E.R.が「H.E.R.」名義になる以前のギャビー・ウィルソンというクレジットで残した数少ない作品の中のひとつでございます。
2015年にリリースされた『A Classic Holiday…Presented by MBK』っていう作品集がありまして。これ、実に様々なアーティストが参加した作品集だったんですが、その時点ではまだ無名だったギャビー・ウィルソンというこの名前が、2018年のこのウィンターシーズンに大変大きな意味合いを持つようになりました。喜ばしいことかと思います。それでは聞いていただきましょう。この時、まだティーンエイジャーだったH.E.R. a.k.a ギャビー・ウィルソンで『Have Yourself A Merry Little Christmas』。
Gabi Wilson『Have Yourself A Merry Little Christmas』
MAJOR.『Spend Christmas With You』
2曲続けて、この番組では初めてご紹介するクリスマスナンバー、ホリデーソングをお聞きいただきました。まずは現在H.E.R.という名前で大活躍しております、ギャビー・ウィルソン。ギャビー・ウィルソン名義でリリースした『Have Yourself A Merry Little Christmas』。いまから3年前、2015年にリリースされましたクリスマスアルバム『A Classic Holiday…Presented by MBK』という作品集の中からの1曲でした。
ちなみにこのアルバムというのは他にいろんな人が参加してるっていう風に申し上げましたけれども、有名どころで言いますとアリシア・キーズですとか、ブランディ、タイリース、SWVのココですとか、エル・ヴァーナーですとか。そんな人たちがいるんで、まあギャビー・ウィルソンっていうのは当時その中で目立った名前ではなかったのですが、とはいえアルバムの冒頭を飾っておりましたからね。まあ期待の新人という位置づけではあったのでしょう。
ですが、3年後にこんな大きな存在になってるとは、さすがに本人も予想できなかったんじゃないでしょうかね。まあ今年、H.E.R.はね、『Focus』ですとかね、あとはダニエル・シーザーとの『Best Part』という曲も長いヒットになりましたけども。こういう曲を昔、ひっそりと世に出していたということをちょっと記憶にとどめていただければ、クリスマスがちょっと楽しくなるかもしれませんね。
そしてもう1曲、お聞きいただきましたのはこれ、2016年の作品。男性アーティスト、メイジャーで『Spend Christmas With You』でございました。メイジャーという人はこれ、2016年に一度『メロ夜』で『Keep On』という曲をご紹介してますね。ケヴィン・マッコールという人をフィーチャーしていた、まあコラボシングルだったんですが。器用な人でございまして。ファルセットでこれだけ聞かせますし、まあもちろん地声もソウルフルであると。
僕はこの曲を聞くとアンソニー・ハミルトンの歌い方のスタイルなんかをちょっと思い出したりもするんですが。アンソニーほど土っぽくないというか、ああいうダウン・トゥ・アースな感じはないですね。もうちょっとモダンな印象がありますが。まあもちろん好みの問題ですからね、どちらがいいっていうわけでもないんですが。今年やっとご紹介をすることができました。