松尾潔 Chris Brown『Juicy Booty ft. Jhene Aiko, R. Kelly』を語る

松尾潔 Chris Brown『Juicy Booty ft. Jhene Aiko, R. Kelly』を語る 松尾潔のメロウな夜

松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でクリス・ブラウンの新作アルバムの中からジェネイ・アイコとR.ケリーをフィーチャーした『Juicy Booty』を紹介していました。

(松尾潔)この番組を毎回お聞きいただいておりますと、『メロウな夜』でいちばん登場するのは誰か? これはもう異論の余地はございません。クリス・ブラウンなんですが。クリス・ブラウン、ついにニューアルバムが到着いたしました。『Heartbreak on a Full Moon』。予言通り40曲を超える収録曲数。正確には45曲入っておりました。これはアルバムというのでしょうか? まあもちろんCDという形ですと2枚組になっていますし。全部聞こうと思ったら2時間以上かかってしまうというね。昔のスティービー・ワンダーを引き合いに出す人もいますし。そこまでいかなくてもね、ちょっと前のミュージック・ソウルチャイルドのアルバムも大変な長尺でした。いま、そういう時代の流れがございます。

そんな大作を作ったクリス・ブラウン、アルバムの中でなにをご紹介すべきか、意外にも迷いませんでした。この曲をまずみなさんにお届けしたいと思いました。聞いてください。クリス・ブラウン feat. ジェネイ・アイコ&R.ケリーで『Juicy Booty』。

Chris Brown『Juicy Booty ft. Jhene Aiko, R. Kelly』

Lyrica Anderson『Chestnuts Roasting』

2曲続けてお楽しみいただきました。まずはクリス・ブラウンの大作『Heartbreak on a Full Moon』の中からジェネイ・アイコとR.ケリーをフィーチャーしておりました『Juicy Booty』。ねえ。これはまあ、メロ夜リスナーだったら大概の方が元ネタをわかるんじゃないでしょうか? 『Juicy Fruit』ですね。エムトゥーメイの80年代の一大傑作がございますが。いままでいろんな人たちが引用してきた曲なんですが、このタイミングでやるのは新鮮ですね。

そして、『Heartbreak on a Full Moon』の大作の最後、ラスト曲でございます『Grass Ain’t Greener』の共作者の1人であるリリカ・アンダーソンの2015年の『Christmas Baby』というEPがあるんですが。その中から『Chestnuts Roasting』をお聞きいただきました。これ、リリカは『Chestnuts Roasting』というタイトルでリリースしておりますが、『The Christmas Song』という言い方の方がより有名ではないでしょうか。まあクリスマスナンバーの古典ですね。比較的、そういったクラシックスに忠実なアレンジで歌っていました、リリカ・アンダーソン。これだけ書ける人が歌うわけですからね、その歌いまわしの中には彼女の個性というのも十二分に込められていました。それを感じることができましたが。

まあクリス・ブラウン、リリカ・アンダーソン。乗っている人たちの歌声を聞くのは本当に気持ちがよいものですね。クリス・ブラウンの『Heartbreak on a Full Moon』がなぜ、このような大作になったのかということに関しては、いろんな見方がございます。音楽業界の中でもっとも強い見方として挙げられているのが、いまのストリーミング全盛の時代にアメリカのチャートの権威、ビルボードが順位をつける時、このストリーミングで聞かれるアルバムをどうポイントとして計算するかという時に、アルバムってたとえばブルーノ・マーズのように10曲もないものでもアルバムと言いますよね? そしてこれ、45曲でもアルバムと言うわけで。その2つをどちらも「1枚」って換算するのは、パッケージならともかく、ストリーミングの時はいかがなものか? という、そういう視点から、ある曲数を聞かれればそれを1ポイントとしようという取り決めがなされておりまして。

この係数っていうのが、ここで細かく話してもしょうがないんですけども、最近のいろんなアーティストのアルバムの曲数に影響をしているんですよ。わかりやすく言うと、クリス・ブラウンのこのアルバム『Heartbreak on a Full Moon』を1回ストリーミングで全曲聞いたら、ブルーノ・マーズの『24K Magic』のアルバムを1回聞くよりもポイントを稼げます。ただ、パッケージの売上でいえば、どちらも「1枚」という売上になるわけで。時代は変わっているわけですよ、お父さん!(笑)。だから、(マイケル・ジャクソン)『Thriller』の時の売上を「前人未到の1億枚」とかいろいろと言いますけども、ちょっとそういう時とはいまのアーティストの作品の最新作を同じものさしで比べることはできないということなんですよね。

で、まあそういったものに対応するように、その収録曲数も変わっていくという。うーん……まあちょっと、そういう裏側の話もいたしました。

<書き起こしおわり>

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