渡辺志保 トラヴィス・スコットのキャリアを語る

渡辺志保 トラヴィス・スコットのキャリアを語る INSIDE OUT

(渡辺志保)と、まあそんな感じで2013年から本格的にラッパー、トラヴィス・スコットのキャリアが始まったんですけども、翌年の2014年8月には『Days Before Rodeo』というさらなるミックステープをリリースした。

これも『Mamacita』っていう曲が入ってるんだけど、そのミュージックビデオを見てもらったら分かるんですが、本当に当時、すごい衝撃的だったんだけど。ヒップホップのビデオじゃないみたいな撮り方だったんですよね。カーチェイスをグルグルするんだけど、その時にすでにトラヴィス・スコットが……いま本当にみんな着てるけどロックTシャツのようなデザインのTシャツを着ていてね。で、いろんな視覚的な効果も面白かったし。曲自体もねちょっと暗い感じ。いち早くヤング・サグが参加したりもしましたし。

まあラッパーとしてのキャリアを積むと同時に、プロデューサーとしてもだんだん脂が乗りだしてくるわけですよ。で、ひとつリマーカブルだったのがリアーナの『Bitch Better Have My Money』というシングルがありましたけれども。それにもコ・プロデューサー(共同プロデューサー)としてトラヴィス・スコットが名を連ねてるっていうことがありまして。なんだろう? 最先端のサウンドが欲しけりゃトラヴィス・スコットにビート作ってもらう、ないしは彼に参加してもらうのがいちばん手っ取り早いみたいな感じになっていたわけですよね。

で、2014年に『Days Before Rodeo』を発表したあたりからは「もうアルバムを作ってるよ。アルバムもそろそろ出るよ」っていうのをアナウンスしていまして、ファンは常にやきもきしながら彼のデビューアルバムを待っていた。そしていよいよ2015年9月にデビューアルバム『Rodeo』をリリースします。タイトルになっている『Rodeo』なんですけども、皆さんも見たことがあるかもしれないけど、頭にテンガロンハットをかぶって荒れ狂う牛や馬を乗りこなすショーみたいなの、ご覧になったことがありますでしょうか?

これって、トラヴィスの出身地でもありますテキサス州ヒューストンが主なあれですけども。テキサス州やヒューストンで非常にです盛んな行事、お祭りらしいんですね。で、ロデオショーはその牛とか馬に実際に乗るシーンもあれば、コンサートもあったり。後は花火が打ち上がったりという一大カーニバルだそうで。そのカーニバルに自らの経験を照らし合わせてこの『Rodeo』を作ったという。で、久しぶりに聞いてやっぱり「うおーっ!」って思うんだけど、『Rodeo』で誰が幕を開けるか?っていうと、T.I.が幕を開けるのよ。で、T.I.がナレーター役としてこの『Rodeo』にフィーチャーされてるんですね。

で、最初にお伝えした通り、T.I.はトラヴィス・スコットのキャリアを切り開いた、まさにその人物ですから。そういったところへの敬意の表し方っていうのもすごくいいなと思ったんですよね。で、自分がテキサス州ヒューストン出身ですから、テキサスといえばUGKですね。UGKのピンプ・Cのバースをサンプリングしたりなどなどして、随所随所に自分のテキサス愛、ヒューストン愛というものをちりばめた、そんなアルバムでもあります。で、『Rodeo』はビルボードチャートで最高位が3位っていうことなんですけども。なんといっても、その『3500』のシングルヒットもそうですけど、あの爆発的大ヒットしたシングルに恵まれまして。

それが『Antidote』なんですね。これがトリプルプラチナム(300万枚相当)以上の売り上げを記録して、もう一躍「トラヴィス・スコットといえばこの曲!」みたいになったわけ。で、私もこの曲を初めて聞いてさ、「く、暗い……。お、遅い……」みたいな。でね、同時期に原宿ラフォーレに入ってるGR8というクロージングショップがありますけども。そこの久保さんと音楽をかかっている場でお会いする機会があって。東京で。で、久保さんがこの『Antidote』の乗せてダブをしていたの。で、私は全てが新しすぎて。『Antidote』で踊るのも新しかったし、ダブをして踊るのも新しかったし。なんて最先端なんだ!って思ったのを非常に覚えています。

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で、この『Rodeo』の国内盤の解説も私が書かせていただいているので、それを自分の昔の原稿を読みながら今日の特集の準備したんだけど。もしお暇な方がいらっしゃいましたら、そちらも参照していただきたいと思います。

ロデオ
Posted at 2018.10.31
トラヴィス・スコット
SMJ

ちょっと、いまもクラブでガンガンかかってると思うけどさ、今更ですけど『Antidote』、どんなに暗い曲だったかをちょっとここで聞いていただきたいと思います。トラヴィス・スコットで『Antidote』。

Travis Scott『Antidote』

(渡辺志保)はい。いまお届けしましたのはトラヴィス・スコットのデビューアルバム『Rodeo』のシングルカットされました『Antidote』でした。いまっぽい! 限りなくいまっぽいっていう感じがします。

(DJ YANATAKE)うん。やっぱりトレンドセッターな感じがあるよね。本当にね。

(渡辺志保)本当、そうよ。これがね、2015年にリリースされた。で、翌年の2016年9月、『Rodeo』を出したほぼ1年後にですね、次にセカンドアルバム『Birds in the Trap Sing McKnight』をリリースする。で、裏でかかってこの『goosebumps』よ。前にもしゃべったかもしれないけどさ、今年フジロックでケンドリック・ラマーのショーを見た時、「みんな、次は大騒ぎするダンスチューンを歌うぞ!」ってこの『goosebumps』をかけたの。

で、これもさ、遅いし暗い曲じゃん。でもこれが「みんなでアホみたいに騒ぐ曲」っていう、そのスタンダードを作り変えたのって本当にすごいって思ったのよ。

(DJ YANATAKE)いまさ、みんながトラップの曲でモッシュしたりするのとかって、まだ想像できてない頃にこの曲とか……たしかにそうかもしれないよね。

(渡辺志保)そう。「暗っ」って思っていたから。その『Antidote』しかり、『Mamacita』しかり、トラヴィスの曲はそうよ。だから本当にもうね、ゲームチェンジャーというか、あの業界のトレンド、常識を変えたアーティストだなっていう風に強く思いました。で、2016年にこの『goosebumps』も収録されている『Birds in the Trap Sing McKnight』を出して。その後もずーっとアルバムを出す、出す、出す。もうアイデアはできているっていうので待っていたわけよね。丸2年、待ちました。

そして、満を持して2018年8月に『ASTROWROLD』が発売された。もともとこれはヒューストンにあった遊園地の名前なんですよね。で、そのアストロワールドを取り壊して、もっと人が人々が住めるようにした。町から楽しみを奪った。僕はそれを取り戻したい。なので自分でアストロワールドを作りましたっていうコンセプトがこの『ASTROWORLD』というアルバムなんですね。

で、時間軸的には最初に『Rodeo』があって、その後にこの『ASTROWORLD』がある。そしてその後に『Birds in the Trap Sing McKnight』があるっていうことらしいんですよ。まあ、成功を夢見て旅に出たトラヴィスが『Rodeo』。そしてそのトラヴィスがヒューストンに帰ってくるのがこの『ASTROWORLD』。で、ヒューストンに帰ってきたから、地元のみんなと曲を作るぞ!っていうのが『Birds in the Trap Sing McKnight』という、そういう時系列だそうなんですよね。というわけで、ヒューストンへの帰還……「ヒューストン、ただいま!」っていうのをこのアルバムの中で歌っているわけです。

これ、たぶんリリース当時にもちょっとしゃべったけど、このアルバム『ASTROWORLD』を聞けば、ヒューストンへの愛。『R.I.P. Screw』っていう曲があったり、もう亡くなってしまったヒューストンのレジェンドラッパーの方の声をサンプリングしていたりとか。あとはサウス、アトランタとかメンフィスのシーンへの言及もあるということで、本当に地元愛がギュッとつまったアルバムなんですよ。

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で、このアルバムはすごく、丸2年かけてコンセプチュアルに作ったアルバムということで、トラヴィス・スコットはインタビューでですね、「自分はシングルを切って成功するというよりかは、アルバムひとつひとつ力作を作って勝負したい。自分はそんなラッパーだ」っていう風に自分のことを評しておりまして。まさにその結果が出たアルバムかと思います。だってジョン・メイヤーも参加していて、スティービー・ワンダーも参加していて、テーム・インパラも参加してますから。より自分の音楽世界観というのを、いろんなレイヤーを交えて作り上げたのがこの『ASTROWORLD』じゃないかと思いますので。まだ未聴の方、いないと思うけど。もしいたら、いまから! いまから、聞いてくださいという感じです。

(DJ YANATAKE)まあでもいまからの方は日本盤のCDをね。志保さんの解説がついてますから。

アストロワールド
Posted at 2018.10.31
トラヴィス・スコット
SMJ

(渡辺志保)10月31日(水)に出ますから。聞いていただければと思います。ここで、超駆け足になってしまいましたが。これこそいま、クラブでガンガンかかっていると思います。なんとフィーチャリング相手はドレイク! 聞いていただきましょう。トラヴィス・スコット『SICKO MODE ft. Drake』。

Travis Scott『SICKO MODE ft. Drake』

はい。いまお聞きいただきましたのはトラヴィス・スコットの最新アルバム『ASTROWORLD』からのシングルカットにもなっております『SICKO MODE ft. Drake』でした。これもビートが変わる時とか、「えっ、どうなってんの!?」みたいな感じで曲をリピートして聞きましたね。ということで、超駆け足でお届けしましたThe Story of Travis Scott、いかがでしたでしょうか?

(DJ YANATAKE)いや、もうばっちり。面白かったよ!

(中略)

(DJ YANATAKE)トラヴィスはね、場面場面を振り返ると、本当にもうことごとくトレンドセッターっていうかね。めちゃめちゃBPMが遅い……『Upper Echelon』とかもそうだし。あれ、BPMは60ぐらいですからね。かけていたけどあれ、遅かったな!っていうイメージもあったし。でも、そこからそれがトレンドになっていったりさ。さっきのモッシュみたいなのも……昔ね、VISIONでライブやっていましたからね。

(渡辺志保)ああ、そうだ! 言うの忘れた!

(DJ YANATAKE)あん時もどんだけモッシュして飛び跳ねている人なんだ?って思っていましたけどね。

(渡辺志保)ねえ。マイックスティックのナオさんが呼んでくださって。

(DJ YANATAKE)もうあの規模じゃ見れないけどね。まあでも、そういうのをいろいろと思い出したり。やっぱり場面場面でトラヴィスがここ最近のトレンドを全部作っているような気がしますね。マーチャンダイズの商品をなかなか買えないみたいなのもトラヴィスはやっぱりすごくて。そういう感じですね。

(渡辺志保)ちょっとね、(恋人の)カイリー・ジェンナーぐらいまで触れたかったんですけどね(笑)。なかなかカイリー・ジェンナーまではさすがの私も……。

あと、いちばん最近のニュースだと、アメリカの中間選挙、上院議員選挙にテキサス州の民主党候補として出ているベト・オルーク候補を彼、トラヴィスがサポートしているといういいニュースも出ていましたね。

ベト・オルークって、「次のオバマ」と言われているような人なんですけども。まあ、そういうのを切り取ってもいい意味でカニエ・ウェストとは違うなっていう風にも思った次第です。っていう感じですね。

<書き起こしおわり>

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