渡辺志保さんがblock.fm『INSIDE OUT』の中でトラビス・スコットのサード・アルバム『Astroworld』について話していました。
(渡辺志保)今日はそういった先週の金曜日に発売されたアルバムからいろんな曲をかけていきたいと思うんですけど、まずトラビス・スコット。トラビス・スコットのサード・アルバム『Astroworld』が8月3日(金)に発売になりまして。で、本当にね、私もリリースされてから何周したのかわからないっていうぐらい聞いてますね。ちょっとトラックリストが変わっているじゃないですか。というのも、たとえばアップルミュージックとかSpotifyとかそういったものでアルバムを見ると、タイトルのところにはフィーチャリングアーティストを誰も書いていなくて。
単純にトラックリストのタイトルはタイトルのみが書かれている状態なので、パッと見誰が参加しているのかがよくわからないアルバムになっているんですよ。なんだけど、クレジットが公表されて蓋を開けてみると、すごいよ。ザ・ウィーケンド、キッド・カディ、フランク・オーシャン、ジェイムス・ブレイク、スウェイ・リー、21サヴェージ、クエヴォにテイクオフとか。あと、ハーモニカでスティービー・ワンダーも参加していたり、テーム・インパラも参加していたり。
で、メインのプロデューサーはマイク・ディーンだったりするんですけど、最近こういうクレジットはいろんなWeb媒体で見てくださいね、みたいなスタイルはたぶん増えていますよね。エイサップ・ロッキーがアルバムをリリースした時とか、例にも漏れずカニエ・ウェストのアルバムがリリースされた時も詳細なクレジットは全部ちょっと有名なヒップホップブログとかヒップホップのWebサイトでみなさん、各自チェックするようにっていう感じだったのでそういうスタイルが増えていくのかなと思うんですけども。まあ、いままでみんなCDを買ってチェックしていたものが、CDがないのでそういう風になってきたのかなとも思うんですけど、まあ本当に豪華な内容になっています。
で、今回はトラビス・スコットの3枚目のアルバムということなんだけど、前回のアルバムもめちゃめちゃヒット曲が多かったし。ファーストアルバム『Rodeo』からもすごくヒット曲が多かったけど、サード・アルバム……だから、いろんなラッパーがいますけど、アルバム3作続けてステップアップし続けるラッパーってあんまりなかなかいないと思うし。それができるということは、それだけ才能があるラッパーなんだなっていう風に今回の『Astroworld』を聞いてひしひしと感じたわけです。
で、このアルバムからはいま、『BUTTERFLY EFFECT』っていう去年出した曲しか出ていない状況だとは思うんですけども。まあこの『Astroworld』、全17曲の中から今度またいろんなヒットシングルが生まれるんだろうなとかって思いますし。
で、これはジャケットが2種類あるんですよね。で、『Astroworld』っていうのはもともとトラビス・スコットが作った架空の遊園地のことを指しているんですけども。それの昼バージョンが正式なジャケットで。
『Astroworld』ジャケット
で、裏ジャケットみたいなのがあって、それが夜バージョンのジャケットになっているんですよ。これは写真を撮ったのがデビッド・ラシャペルっていうすごい有名な写真家の人で。もともとは2パックとかリル・キムとかも撮り続けてきたような写真家の人が撮った作品なんですけども。夜バージョンの方は結構裸の女の人が寝そべっていたりしていて。その夜バージョンのジャケットをめぐって、ちょっとデビッド・ラシャペルが自分のインスタに上げた画像とトラビスが自分のインスタに上げた画像が違っていたんですよね。
で、なにが違っていたか?っていうと1人、アマンダ・ルポールっていうトランスジェンダーの結構大御所のモデルの方がいるんですけど、彼女の部分だけ切り取られたバージョンがトラビスのInstagramに上がってしまっていて。それがその、トランスジェンダー的なものへの差別なんじゃないか?っていう風に論争が上がったんですけど、すぐにトラビスが「誤解をさせてしまってすいません。そういった意図は全くなくて『Astroworld』にはみんながウェルカムだし、僕は小さい頃からLGBTQの人とかも全ての人間はイコールだっていう風に教えられて育ってきたので、そんな意図は全くありません。ごめんね。そしてアマンダ・ルポールも本当にありがとう!」みたいなことをInstagramで言っていまして。
で、「『Astroworld』はみんなウェルカムだからよろしくね。LoveとExpression(愛情と表現)について終始したアルバムで、ヘイトはは一切このアルバムの中にはありません」ということもステートメントとして発表しまして。大人になったトラビス・スコットみたいなものをそこで感じた次第です。
で、今日は1曲目、この『Astroworld』の中からかけさせていただこうと思うんですけど、さっきも言った通り……。
(DJ YANATAKE)フフフ(笑)。
(渡辺志保)なんで笑うんすか?(笑)。
(DJ YANATAKE)絶対にこの曲だと思ったもん(笑)。
(渡辺志保)いや、さっきも言ったけどたぶんこっからすごいヒット曲が生まれるはずなの。だからウィーケンドとかスウェイ・リーとか、そういったヒットシンガーたちをフィーチャーした曲がこの後もどんどん出てくると思ったから、あえて私は個人的にこの曲がもっとも完成度が高く、もっとも私の琴線に触れる曲ですっていうことで紹介したいなと思って。だってさ、他の「これは絶対にヒットするだろうな」っていう曲はぶっちゃけJ-WAVEさんとかでかけてくれればいいわけだから。『INSIDE OUT』ではあえて違う曲をかけたいなと思いました。
っていうのは9曲目『5% TINT』っていう曲がありまして。これはFKiっていうアトランタをベースにしているプロデューサーの曲なんだけど。これがさ、っていうか今回3枚目のトラビスのアルバムですけど、トラビス・スコットはもともとテキサス州のミズーリシティだったかな? というところ出身で、テキサスといえばヒューストンっていうでっかい街があるんですけども。で、そこのヒューストン、自分の地元に対する愛情っていうのはちょいちょいリリックに入れていたりしてたんだけど、この3枚目のアルバムではサウスへの愛情が爆発している感じがしているんですよ。で、スリー6マフィアのメンバーが作っていた『Tear Da Club Up』っていうヒット曲をわざわざフックで使っていたりとかっていうことがありまして。
あとはこれも他の番組でしゃべったんですけど、『R.I.P. SCREW』っていうね、ヒューストンの御大、亡くなったDJの方に哀悼を捧げる曲を入れていたりとか。
すごいサウスへの愛情が散りばめられているのね。で、この『5% TINT』っていうのは私がサウスのヒップホップに目覚めたとある1枚のアルバムがありまして。それがグッディー・モブの『Soul Food』っていうアルバムがあるんだけども。そこに『Cell Therapy』っていうすごいド名曲が入っていて。
で、このド名曲をサンプリングする曲が出てくるたびに『INSIDE OUT』で紹介しているような気がするんだけどさ(笑)。たとえばラプソディーも去年、バスタ・ライムズの曲でその『Cell Therapy』をサンプリングしていたんだけど、今回はなんとなんとトラビス・スコットもこの『5% TINT』っていう曲で『Cell Therapy』を大胆にサンプリングしている。で、その『Cell Therapy』のイントロでガマガエルが鳴くゲコゲコゲコッっていう音が入っていて、それがより田舎くさくていいなっていう感じなんだけど、そのガマガエルの鳴き声までもちゃんとサンプリングしてトラビス色に染め上げているっていう本当にもうね、我が心のジョージアっていう感じになりますので、ここで聞いてください。トラビス・スコットで『5% TINT』。
Travis Scott『5% TINT』
<書き起こしおわり>