町山智浩 クイーンとフレディ・マーキュリーの生涯を語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『ボヘミアン・ラプソディ』の公開を目前に控える中でクイーンを特集。クイーンの楽曲とフレディ・マーキュリーの生涯について話していました。

(町山智浩)今日は11月9日にほとどん全世界同時ぐらいでクイーンという伝説のロックバンドのフレディ・マーキュリーの伝記映画で『ボヘミアン・ラプソディ』という映画が公開されるんで。まあちょっと、クイーンをわからない人も多いと思うんですよ。

(山里亮太)聞けばね、「ああ、あの曲だ!」ってわかるんでしょうけど。

(町山智浩)そう。独特の曲調なんで。まあ、そのクイーンっていうのがどういうバンドだったのか?っていうお話をちょっとさせていただきたいんですね。僕は完全にリアルタイムで1975年に彼らが『オペラ座の夜(A Night at the Opera)』っていうアルバムを出しまして。その時が中学生だったんで。もうガツンと来て。クラス全員でその数枚しかないアルバムをみんなで回し聞きするみたいな世界だったんですよ。

(赤江珠緒)やっぱり最初は衝撃的だったんですか?

(町山智浩)大衝撃でした。キッスとクイーンとエアロスミスの衝撃っていうのがあったんですよ。僕らの世代にとってのビートルズみたいなもんですね。で、まず1曲目、聞いていただきたいんですけども。『We Will Rock You』。

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Queen『We Will Rock You』

(町山智浩)はい。これは聞いたこと、あるでしょう?

(赤江珠緒)あります、あります。

(町山智浩)どこで聞きました?

(赤江珠緒)ラグビーの。

(町山智浩)そう! サッカー、ラグビー、野球場。そういうスポーツのイベントで客を盛り上げるためにやりますよね。「ドンドン、タッ! ドンドン、タッ!」ってやつですけども。まあ、これがクイーンの歌なんですけども。これは歌詞が道にたむろしている仕事のない若者たちとかですね、老人とか貧乏な人たちに呼びかけている歌なんですね。「俺たちはいま、屈辱の中にあるけども、いつかこの世の中をロックしてやるぜ!」っていう歌なんですよ。

(赤江珠緒)やっぱり「立ち上がろう!」って鼓舞している感じですか?

(町山智浩)「立ち上がろう!」っていうかね、「ロックする」っていう言葉の意味は、「ロック(Rock)」は「ロックンロール」のロックなんですけど、「揺さぶる」っていう意味なんですよ。船の揺れ方のことなんですね。で、「この世の中を揺さぶってひっくり返してやろうぜ!」っていう歌なんですよ。

(赤江珠緒)ほー、うんうん。

(町山智浩)まさにロックンロールのロックなんですよ。

(赤江珠緒)じゃあ「転覆」的な意味合い?

(町山智浩)そう。「世の中を転覆させてやれ!」っていうことなんですよ。で、これはすごくクイーンにとって意味のある歌だったんですけども。で、クイーンっていうバンド名を聞くと、変だと思いませんか? 最初、見た時に「どこがクイーンなんだ?」とか思いませんでした?

(赤江珠緒)たしかに。

(山里亮太)むしろ王様みたいな感じ。

(赤江珠緒)女の人もいないのに……みたいに。

(町山智浩)女の人もいないでしょう? それでしかも、リードボーカルのフレディ・マーキュリーさんを見て、どう思いました?

(山里亮太)ヒゲの感じが……。

(町山智浩)ああ、そういうハードゲイ的なね、こういうヒゲの。「えっ、なんでクイーン? なぜ女王なの?」とか思いませんでした?

(赤江珠緒)でも、あまりにも「クイーン」っていうのが入ってきていて、それが当然かのようになっていたから。そこに対してはあまり疑問を持っていなかったけども。

(町山智浩)ああ、そうですか。僕らの時、クイーンが出てきた時っていうのは『Killer Queen』っていうレコードで出てきたんですけども。そしたらリードボーカルの人がはっきり言ってすっげーブサイクなんでみんなびっくりしたんですよ。

(山里亮太)えっ?

(町山智浩)「ええっ! ちょっとお笑いに近くない、これ?」っていう感じだったんですよ。はっきり言って。すごく出っ歯だし。それはこの『ボヘミアン・ラプソディ』っていう映画の中でもすごく最初の方で描かれるんですよね。で、そのフレディ・マーキュリーさんっていうボーカルの人にとっては、その顔が独特であるということは映画の中でも大きな大きなテーマになっているんですよ。ああ、そうか。フレディ・マーキュリーさんってだからギャグ漫画とかにいっぱい出てくるんですよ。

(山里亮太)ああ、はいはい。

(町山智浩)江口寿史の漫画にも出てくるし、『マカロニほうれん荘』にも出てくるし、少女マンガにもいっぱい出てきます。やっぱりそれは顔が独特で、それまでの美少年系の美形とはちょっと違うところにあったからなんですよ。そのへんはね……しかも、最初はおかっぱで出てきたんですよ。出っ歯でおかっぱだから結構強烈で。しかもヒゲが青いんですよ。

(山里亮太)濃いなー!

(町山智浩)だから「すごいな! このキャラ、すごくね? しかもクイーン?」っていう感じだったんで、最初に出てきた時にはものすごくびっくりした感じだったんですけども。で、それはすごく大きなテーマなんですね。彼にとって。音楽全体に対する。で、これはいちばん有名なその『Bohemian Rhapsody』を聞いてもらってもいいですか?

Queen『Bohemian Rhapsody』

(町山智浩)(曲を聞きながら)もうこの「Mama, just killed a man♪」っていう、これは僕の世代だと全員フルコーラスでほとんど歌えると思います。はい。

(赤江珠緒)いま、もう歌ってらっしゃいましたもんね。

(町山智浩)はい(笑)。全部歌えますよ。僕の世代、50ぐらいの人は。そのぐらいもう、大変な衝撃だったんですよ。これがヒットチャートに出てきた時に。なぜならば、どう聞いてもロックじゃないじゃないですか。ねえ。最初はそれこそオペラみたいな曲なんですね。で、途中からロックンロールになっていくんですけども。音楽ジャンルとしてものすごく複雑なんですよ。で、これはフレディ・マーキュリーさんっていう人がもともとありとあらゆる音楽を勉強した人で。オペラからクラシックからアメリカの黒人のゴスペルソング、ブルース、ロカビリー、それこそ民族音楽まで。そういったものを全部勉強してきた教養を全部詰め込んだのがこの『オペラ座の夜』というアルバムだったんですね。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)で、クイーンというバンドは非常に特殊なバンドでロックだけやってきた人たちの集まりじゃあなかったんですよ。このフレディ・マーキュリーさんはもともとアートスクール、美術大学に通っていた人で。レコードジャケットとかの王家の紋章みたいなクイーンのマーク、あれは全部彼が書いているんですよ。

(赤江珠緒)あれも書いているんですね!

(町山智浩)アーティストなんですよ。で、ギタリストのブライアン・メイさんは本職はロケット工学者です。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、ドラムのロジャー・テイラーは歯医者さんです。

(赤江珠緒)ああ、そうですね。

(町山智浩)あ、それは知っていた? で、ベースのジョン・ディーコンさんは電気技師だった人なんですよ。だからみんな手に職があるインテリで、その人たちが結集していてすごく面白いバンドなんですよね。特にこの『Bohemian Rhapsody』っていう曲は5分以上あるんですよ。で、最初はこの曲をシングルで出すということになった時に、「それじゃラジオがフルコーラスでかけてくれないだろ?」ってなって。それで……ちょっと音を大きくしてもらえます? ここからですよ! (曲に合わせて歌って)「I see a little silhouetto of a man♪ Scaramouch, scaramouch will you do the fandango♪」。ねえ。すごいでしょう、これ?

(赤江珠緒)うん! 

(町山智浩)ここ! (曲に合わせて歌って)「Gallileo, Gallileo, Gallileo Figaro – magnifico♪」っていうやつですね! すごいでしょう、これ? (曲に合わせて歌って)「He’s just a poor boy from a poor family♪」。これ、僕の世代は本当にもう歌詞カードとか見なくても全員……。

(山里亮太)見てませんもんね、いま。

(町山智浩)そう。見なくても全員歌えますよ、これ(笑)。

(山里亮太)抑えきれない感じで。

(町山智浩)そう。でもこれ、伴奏入っていないでしょう? 声だけですよ。

(赤江珠緒)ミュージカルみたいな。ここだけ聞くとね。

(町山智浩)そうそう。オペラなんですよ。で、こんなものがロックのヒットチャートでナンバーワンを取るなんて、前代未聞だったんですよね。で、しかも長い。後半にならないと展開していかない。で、これはレコード会社がすごく反対して。「これをシングルにするなんて、無理だ! サビがないじゃないか!」みたいな話になって。そしたらそのフレディ・マーキュリーさんが「5分で『長い』っていうなら、あんたの奥さんっていうのはよっぽどつまらない性生活をおくっているんだね!」って言ったんですよ。プロデューサーに(笑)。

(赤江珠緒)はー!

(山里亮太)粋な返しだな!

(町山智浩)粋な返しでしょう? ただ、この曲っていうのは本当にもうクイーンにとってもロック史にとっても残る、すごい曲だったんですけども。これはずっと歌詞が謎だって言われているんですよ。「ママ、僕はある男を殺しちゃったんだよ。これから死刑になる。でも、お母さん。僕なんか生まれてこなかったと思ってください」っていう、お母さんに対して歌っている、西条八十のような……「Mama, Do you remember♪」みたいな感じなんですよ。

(赤江珠緒)うんうん(笑)。

(町山智浩)で、ただこの歌詞、じゃあ何のことを歌っているんだ?ってずっと言われてきたんですね。ただ、それはいま、ある説がありまして。これ、「この主人公が殺してしまった人というのはフレディ・マーキュリー自身だ」という風に言われているんですよ。っていうのはフレディ・マーキュリーっていうのは本当の名前じゃないんですよ。この人、本名はファルーク・バルサラっていう名前なんです。

(赤江珠緒)全然違いますね。

(町山智浩)インド系なんですよ。

(赤江珠緒)へーっ? ああ、お顔もそう言われたら……インド系の方。

(町山智浩)そうなんです。お父さんもお母さんもインド系で。で、その名前を捨てて「フレディ・マーキュリー」に……そっちを正式な名前にしているんですね。

(赤江珠緒)芸名じゃなくて? 戸籍までっていう?

(町山智浩)戸籍までです。まあ、イギリスには戸籍はないですけど。だからこれはフレディ・マーキュリーっていう、「お母さんに産んでもらった少年を僕は殺したんだよ」っていう曲ではないかと言われているんです。「生まれ変わったんだ。でも、みんなにはそれは罪だと言われて責められる。お母さん、僕なんか生まれてこなかったと思ってください」っていう歌なんだっていう風に言われているんです。

(赤江珠緒)ええーっ!

(町山智浩)これはフレディ・マーキュリーさんはすごいコンプレックスがあったらしくて。彼のパフォーマンスを見ていると、ものすごいナルシストに見えるわけですよ。で、ああいうルックスなのに女装とかが好きだったり、豪華な服を着て、本当にエンターテイナーで。まあ、「みんな、見て!」っていう感じに見えるんですけど、その一方ですごいコンプレックスがあったらしいんですよ。自分の容姿とか出自だったりいろんなことにね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、ちょっとすごくいい歌があるんで聞いてほしいんですけども。『Somebody To Love(愛にすべてを)』、お願いします。

Queen『Somebody To Love』

(町山智浩)これは『Somebody To Love』という歌で『ハッピー フィート』っていうアニメの中でペンギンが歌っているシーンですごく有名なんですけど。この歌、歌詞はどういう歌かっていうと、「毎朝、僕は起きるたびに死にたくなるんだ。鏡を見ると神様を呪うんだ。なんでこんな姿に生んでくれたんだ?」っていう歌なんですよ。

(赤江珠緒)えっ? 曲調を聞いているとすごく美しい曲だなと思っていたんですが。

(町山智浩)すごい美しい曲なんですよ。で、「僕に愛する人をくれないか(Find me somebody to love)」っていう歌なんですよ。コンプレックスの歌なんですよ。で、これ曲はゴスペルなんですよ。すごくアメリカのゴスペルに影響を受けているんで。

(赤江珠緒)だから祈りっぽい感じになっているんだ。

(町山智浩)そう。お祈りなんですよ。神様に対する。ちなみに彼はゾロアスター教徒でしたけどね。

(赤江珠緒)ゾロアスター教徒!?

(町山智浩)すごいですね。そのへんがね、すごくコンプレックスとナルシズムがあって。すごく出っ歯だったんですけど、逆にそれを……お金があるので歯列矯正すればよかったのに、彼はしなかったんですよ。それで、やっぱり歯を直したら負けだと思ったんでしょうね。「この歯が俺なんだ。この歯が素晴らしい歌を作り出しているんだ」っていうことで、それを誇りに思う方向に転換していって。だからそのへんもすごく、コンプレックスがひっくり返ってナルシズムになったみたいな人なんで。それが歌詞全体、全てに出ている人なんですね。

(赤江珠緒)ふーん!

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