町山智浩さんが2021年8月10日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『フリー・ガイ』を紹介していました。
【8.13(金)ロードショー 『フリー・ガイ』特集vol.1】
NPCの“ガイ”が、なぜかプレイヤーキャラのクール美女に一目惚れ!? ゲームファンの常識を覆す今夏話題のハリウッド大作とは?#フリーガイ #ライアンレイノルズ https://t.co/4yRlJ8ZpaP pic.twitter.com/l8NOdFzzSn
— ファミ通.com (@famitsu) August 7, 2021
(町山智浩)で、3本目は『フリー・ガイ』っていう映画なんですよ。これは『ザ・スーサイド・スクワッド』と逆で、すごく平和の男がヒーローになる話なんですね。いわゆるモブキャラってわかります?
(赤江珠緒)なんというか、ゲームの中の主要メンバーじゃない……。
(町山智浩)そうそう。後ろにいるその他大勢の1人がヒーローになる話なんです。これ、映画の舞台は『グランド・セフト・オート』ってありますよね? ゲームで。何をしてもいい世界。オープンワールドでルールが決まっているわけじゃなくて。もうとにかく、銃を持ってそこらへんにいる人を殺してもいいんですよね。あれね。怖いゲームで。警官を撃ってもいいし。そこに銀行があったら、銀行に行ってお金を取ってもいいし。
いい車があったらその車を盗んじゃってもいいんですね。フェラーリとかあったらね。で、何をしてもいいゲームなんですよ。『グランド・セフト・オート』って。で、あのゲームが売れているのは、その禁じられている欲望をなんていうか、解放するためのゲームですよね。うち、関係ないけど正月に親戚に会った時、その親戚の甥っ子がこれを黙々とやっていて。非常に怖いものを感じたことがありましたけどね(笑)。というね、いけないゲームなんですけども、非常に大ヒットしているわけですよ。で、この主人公はその何をやってもいい世界で強盗される銀行の銀行員なんです。
(山里亮太)まさにモブですね。
(町山智浩)モブなんですよ。だからただもう通り過ぎていく背景になっているんですけど。で、彼も毎日毎日で強盗されて。「ああ、今日も強盗されちゃったな」みたいに、当たり前のようにその生活を生きているんですよ。ところがその時に、ある彼が知り合った女性がですね、サングラスを渡してくれるんですね。で、そのサングラスをかけると、この世界のゲームとしての正体が見えちゃうんですよ。
ゲームってポイントが出るじゃないですか。あとはライフ、命ね。そういうのが画面の外にデータで出るじゃないですか。あれが見えるようになるんですよ。そのサングラスをかけると。あと、そこであるものを撃ったりとか、箱を叩いたりとかすると、そこから銃が出たりするっていうポイントがあるでしょう? あとライフが出たりするポイントがあるじゃないですか。それが見えるようになるんですよ。
(赤江珠緒)おお、すごい。
モブキャラがゲーム内でなんでもできる鍵を手に入れる
(町山智浩)だから、何でもできるようになるんですよ。その世界で何でもできる鍵を手に入れちゃうんですけども、じゃあ何をするか?ってって考えたら、この人はね、『グランド・セフト・オート』で何をしてもいいんですけど……すごくいい人なんですよ。すごくいい人で。だから、暴力でも何をしてもいい世界なのに、いいことをし始めちゃうんですよ。人を助けたりするんですよ。で、そのゲームのルールをある意味、破壊していくんですよ。そのゲームの世界っていうか、世の中を良くしていくんですよ。で、そのゲームはそういう、非常に人の欲望を使って金儲けしてるそのゲームを作ってる会社そのものとの対決になっていくんですよ。
(赤江珠緒)ちょっと面白い発想ですね、これ!
(町山智浩)これ、すごい信じられないぐらいいい話なんですよ。これね、ライアン・レイノルズさんっていうね俳優さん。『デッドプール』でデップーをやっている人なんで、本当に人のよさそうなキャラクターなんでね。それがすごく成功してるんですけど。これね、普通だったらゲーム中の話だからどうでもいいや。現実と関係ねえやっていう気になるじゃないですか。でも、そうじゃなくて。やっぱり人生の話なんですよね。「あなたは何をしてもいいってなったら、何をするか?」っていう話ですよ。「悪いことをしても許されるとして、悪いことをするのか?」ってことなんですよね。
で、もうひとつは、みんな自分の人生とその世の中を変えることとは別だと思ってる人が多いですよね。この彼もそうだったんですよ。自分は銀行でただ強盗されるだけだと思っていたんですよ。その世の中に対してずっと彼は主体じゃなかったんですよ。でも、そうじゃない。「あなたは主役になろうと思えば、なれますよ」って言われた時に、「ああ、そうだ!」って気づく話なんですよ。でも、多くの人はそうじゃないですか。世の中を変えるっていうのは他の誰かがやることだと思っているんですよ。でも、そうじゃないんだ。気づけば変えられるんだっていうことですよ。
(赤江珠緒)すごい。本当だね。自分の人生とリンクしますね。
(町山智浩)そう。「だって誰もが実は自分の人生の主役なんだから。それに気づきな」っていう話なんです。ものすごい深い話ですよ、この『フリー・ガイ』は。
(赤江珠緒)面白そう。
(町山智浩)だから実はこの3本(『ドント・ブリーズ2』『ザ・スーサイド・スクワッド』『フリー・ガイ』)とも、すごく共通してるところがあって。「人はなりたいものになれる」っていう話なんですよ。
(赤江珠緒)えっ? 最初のこのお爺さんも?
(町山智浩)これ以上は言いません(笑)。というわけで、3本まとめて公開なので。なぜか公開日が全部8月13日ということになってますが。13日の金曜日? とんでもない日ですけども、素晴らしい映画が3本、公開されるんで。頑張って行ってください。
『フリー・ガイ』予告
<書き起こしおわり>