モーリー・ロバートソン 英・ガーディアン紙『新潮45』休刊報道を語る

モーリー・ロバートソン 英・ガーディアン紙『新潮45』休刊報道を語る 水曜日のニュース・ロバートソン

モーリー・ロバートソンさんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中でイギリスのガーディアン紙が『新潮45』休刊騒動を報じた英語ニュースを解説していました。

(モーリー)まあ今日はね、最初から教育勅語で飛ばしてしまって。もうここに行くしかないだろうっていうようなツイートにしました。

モーリー・ロバートソン 柴山文科相「教育勅語」発言を語る
モーリー・ロバートソンさんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中で内閣改造により入閣した柴山文部科学大臣が就任会見で教育勅語について認識を述べた件について話していました。

(モーリー)今回はイギリスのガーディアン紙、9月26日。ちょっと前のツイートです。こちらです。はい、杉田水脈さんが出てきました!

(プチ鹿島)出た!

(モーリー)もうやるしかない。で、実は『新潮45』の騒動がガーディアンにもとうとう載っちゃったっていう話なんですけども。そこの本質に行く前にまず英語が非常に面白いので読み上げてみましょう。「Japanese magazine to close after Abe ally’s ‘homophobic’ article」。

(モーリー)「Japanese magazine」、これは『新潮45』のことですね。「to close」は「廃刊」」。「Abe ally’s」は「安倍さんの陣営の人」。その「’homophobic’ article」なんですね。「ホモフォビア(Homophobia)」。で、これを日本語にすると「日本の雑誌が安倍陣営の筆者の’ホモフォビア’な記事によって炎上して廃刊」っていう感じなんですけども。

(プチ鹿島)うんうん。

(モーリー)この「homophobic」。これが非常に面白い言葉なんですね。っていうのは日本語にすると……一応、日本語訳を出してみましょうか? 「安倍陣営の’同性愛者嫌悪’記事によって日本の雑誌が休刊へ」っていう。まあ「close」はだいたい「廃刊」の方の意味が強いですけども。でね、日本語では「homophobic」っていうのは「同性愛者嫌悪」。嫌韓流とか嫌中とかありますよね? ところがこの「Homophobia」の「phobia」っていうのは「恐怖」っていう意味なんですね。

(プチ鹿島)はー。

(モーリー)たとえばこれに似た言葉で外国人を嫌う。だけど外国人を恐れる人のことを「ゼノフォビア(Xenophobia)」って言うんですよ。「Xeno」っていうのは「外国人」っていう意味なんですね。そしてもうひとつあるのが最近出てきた言葉で「イスラモフォビア(Islamophobia)」。イスラムがやたらと怖い人。「イスラムに社会が乗っ取られる!」って騒いでいる人たち。これもイスラモフォビアとかって言ったりするんですよ。ですから面白いのは、一応同性愛者を嫌悪するのはマジョリティーの異性愛者がセクシャルマイノリティーの同性愛者をいじめている、迫害しているという「嫌悪」という言葉。日本語だとそうなるんですけど、迫害している側は実はそれを恐れているからだっていう言葉。その意味が名前のネーミングの中に入っちゃっているんですよね。

(プチ鹿島)そうか。「恐れ」ね。

(モーリー)だから結局、どっちが弱者なの?っていうと中身はマジョリティーで迫害する側の人の方が弱者じゃん?っていうこと。非常にこの二面性がネーミングの英語の中に入っていて、やっぱり興味深いなと思うんですよ。この人たちが増えたりして、この人たちの権益があがると自分が脅かされるという風に圧迫を受けているのは、本来なら身分が保証されている人が……だから女性の台頭でもそうですよね。それによって困るオヤジたちが女性の台頭フォビアになるっていう、そういう感じなんですね。

(プチ鹿島)なるほど。

(モーリー)そして、ここにはこの論争が7月に始まったということ。そして杉田水脈議員は「LGBTの人たちは生産性がない」と評したということなんですけども。ここで、ちょっと今日はスピンオフで行きたい。どういうことかっていうと、実は20年以上前に文藝春秋の『マルコポーロ』という雑誌がナチスのユダヤ人迫害(ホロコースト)において、ガス室はなかったとする素人っぽい人のなんちゃって論文を堂々と掲載し、それにユダヤ系の人権団体が抗議をした。そしてその抗議は非常に激しくて、「文藝春秋のこんな雑誌に広告を出稿している日本資本も批判されるべき!」ということで、アメリカに当時支社や支局をおいているところ。そこに全部一斉に圧力がかかったので、ほとんどのスポンサーが文藝春秋の雑誌から一斉に広告を撤退するという流れになったんですね。

(プチ鹿島)うん。

20年前の『マルコポーロ』騒動

(モーリー)で、これはヤバいということで社長がもう『マルコポーロ』を廃刊にしちゃいました。その時、追い出された編集長が花田紀凱さん。その花田さんはいま、日本でいうと真右のスペクトラムにいる『WiLL』を経由して『月刊Hanada』をやってらっしゃるんですよ。それで御三家と呼ばれる保守雑誌は『正論』『Hanada』『WiLL』なんですね。だからそういう縁が花田さんにはあるんですけど、実はその『マルコポーロ』騒動が起きた直前に私、『マルコポーロ』に関わっていたんです。

(プチ鹿島)ああ、そうなんですか?

(モーリー)なんでかっていうと、これが今回の『新潮45』と非常に似通っているんですけど。今回の『新潮45』っていうのは前半で極右路線。非常に激しい過激な暴言満載の記事をいっぱい並べる。ところが後半は穏健な、あるいは左派の人たちによる随筆が延々と続くという、オピニオンインテリ雑誌と過激なタブロイドが合体してしまったんですね。

(プチ鹿島)これ、もともとね、ルポルタージュとかいいものがありましたよね?

(モーリー)ところがルポルタージュだと年々、もう売上部数が1万部を切りそうになっていったんで。これは窮鼠猫を噛むというか麻薬に手を出してしまったようなこと。ところが20何年前の『マルコポーロ』も実はまったく同じで。私が『マルコポーロ』で取材をされたのは女子大生とモーリーくんがディズニーランドに行きましたとか。あとは僕とイラストレーターの渡辺和博さんが2人で台湾に行って異国情緒を味わいましたっていうそのバブル期のみんなで海外旅行に行ってイエーイ!っていう楽しいおちゃらけのものだったんですよ。

(プチ鹿島)はい。

(モーリー)それで、疑似インテリな文化論評を2人で無責任にやるという楽しい誌面だったんだけど、それが要は雑誌が乱立していた時代にまったく売れなくなったわけ。で、ある時僕に急に「漫画家と一緒に満州に行って、『実は日本が作って残した植民地時代のインフラがいまの中国を助けているんだ』という論調の記事に参加してくれ」って言われたんですよ。それはなんか政治の匂いを感じて、そう簡単には政治に絡め取られたくないって……当時はまだ政治意識のなかった僕はラジオのパーソナリティーだったんですけども。それで行かなかったんですよ。

(プチ鹿島)うん。

(モーリー)そしたらその直後にガス室騒動が起きたんですよ。だから要は売れなくなって激減した売れ行きの中で急にそっちに行っちゃったんだよね。で、その後が非常に興味深いんですけども。私、その後にずっと文春さんとは仲が良かったので、いろんな雑誌の編集長……その後に結局人権に関する研修を全ての編集長が受けさせられたんです。当然んですよね。で、それを苦々しく思った名物編集長の知り合いが僕にこっそりね、「君に言うけど、ユダヤ人は怖いよ……」って。つまり、「ユダヤの陰謀によって自分たちの真実を語ろうとしていた言説が封じられたのだ」っていう傷のなめあいがいつしか、次の陰謀論へとインサイダーの中で取り交わされたわけだ。

(プチ鹿島)はー! なるほど!

(モーリー)反省をするんじゃない。開き直ったっていう。「ユダヤの真実を俺たちが告発しようとしたら、『やりやがったな!』って。それに社長は屈服した。俺たちを差し出すのか? なんだ、この裏切りは!」っていう、自分たちがむしろ「殉教者」なんですよ。

(プチ鹿島)うんうん。

(モーリー)でね、その現象を『マルコポーロ』周辺で、文春の中で私、体験しちゃったので。今後、新潮社の中がどうなるのか、興味津々なんですね。というところで今日のTwitterイングリッシュ、結構味深いものをご紹介しました。

<書き起こしおわり>

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