星野源と石田ゆり子 作曲と作詞を語る

星野源と石田ゆり子 ラジオへの向き合い方を語る LILY'S TONE

星野源さんと石田ゆり子さんが2022年11月20日放送のJ-WAVE『LILY’S TONE』の中で作曲や作詞について話していました。

(石田ゆり子)すっかり私、今の話で元気になっちゃいました。急に(笑)。

(星野源)よかったです。『喜劇』という曲に振りはないんですけども。踊られていましたね(笑)。

(石田ゆり子)いや、源ちゃんの曲ってどれも、どんな曲もなんか踊りたくなるんですよね。

(星野源)ああ、それは一番嬉しいです。

(石田ゆり子)どんな曲も、でも本当になんかちょっと体が動く。それは、意識しているんですか?

(星野源)僕自身が踊ることが大好きなのもあるし。やっぱり音楽を作る自分の中の目的としては「踊らせたい」みたいなのがすごく大きく占めてるので。体が動く。腰が動いちゃうとか、そういうものは……元々、リズムを作っていくのが好きなので。それはすごく嬉しいです。そう言っていただけると。

(石田ゆり子)いや、本当に。ちょっとブワッとハッピーな気持ちになるんですよね。はい。そうそう。ラジオでも私より大先輩の源ちゃんですが、もちろん音楽。音楽のお話を伺いたいんですね。私、先ほどもちょっとお話しましたけど。lilyっていう名義で音楽活動を始めたんですよ。ちょっと言いにくいんですけど。

(星野源)おめでとうございます。

(石田ゆり子)始めたっていうか、なんか……まあ、始めさせていただいたというかですね。そう。でもね、その音楽っていうのは実はすごく憧れがあって。

(星野源)ああ、そうなんですね。

(石田ゆり子)まあ踊ることと同じぐらい、歌うことにも憧れがあって。やっぱり歌うことも踊ることも全人類に開かれた本能的な娯楽だと思うんです。どんな人も、教わらなくても歌ったり踊ったりするじゃない? そういう意味で、すごく音楽に憧れがあったんですよ。まあ、そういう流れで音楽の扉を開けさせてもらったんですが。でも、やっぱり音楽活動を始めてみてひたすら思うことは、音楽のプロはすごい!(笑)。当たり前のことなんですけど。音楽を自分で生み出す人。生み出し続ける人。もう、頭の中、どうなっちゃってるの?っていう思いがすごくあって。そう。それで源ちゃんに伺いたいんですよ。どうやって曲を作っているんですか? 歌詞が先なのか、曲が先なのか、などなど。

曲を先に作ることが多い

(星野源)僕は曲を先に作ることが多くて。ギターで作る時は、ギターを弾きながら、歌いながら作るんですけど。僕は今はキーボードで、パソコンで打ち込んでいきながら、曲の全体像を作るっていうのを中心にやっていて。そうなると、なんて言うんすかね? リズムだったりとか、あとは鍵盤とか、シンセサイザーとか。もう音の構成から、音色からも全部構築しながら作っていく。で、その後に歌詞を考えるみたいなことが多いですね。

なんか僕は音楽を作る時に一番最初にビジョンが思い浮かぶことが多くて。なんか「この雰囲気」とか「この場面」とか。たとえば、「荒野で馬が走ってる」とかっていうビジョンが思い浮かんだとしたら、その今の感じを音に変換していこう、みたいな。それの……もう感覚でずっとやってくみたいな感じですかね。なるべく、その脳の中からそのまま出てくるように作る、みたいな。

(石田ゆり子)はー。じゃあ、なんだろう? 映像を思い浮かべ、それを音にダイレクトにトレースするみたいな感覚ですか?

(星野源)そうですね。なるべくそんなイメージですね。で、それが映像の時もあるし、感情の時もあるし、雰囲気の時もあるし。いろいろあるんですけども。

(石田ゆり子)へー! 「もう作れない。もうダメだ!」みたいな時はないんですか?

(星野源)あります、あります。もう毎曲ごとにあるぐらい、あります。「もう終わりだ!」って、なりますね。

(石田ゆり子)そういう時、どうするんですか?

(星野源)なんか、いろいろと気を散らしてみるんですよ。映画を見たりとか。違う曲を聞いてみたりとか。でもやっぱり結局、自分で作っていく中でその出口を見つけないとっていうか、結局、曲を作らないとそれって解決しないので。結局、もう作るしかないっていう感じなんですよね。作り続けるしかないっていう。

(石田ゆり子)わかります。「わかります」って生意気ですけど。なにをね、やり始めたら……もう動くことでしか、結局そのエネルギーを回し続けられないっていうね。そうか。へー! いや、でも歌詞も書いて、曲も書いて。打ち込みっていうんですか? その、編曲も全部して。その技術はどうやって身につけたんですか?っていう、これも変な質問ですけども(笑)。

(星野源)ええと、僕はSAKEROCKっていうバンドを20歳の時から10年ぐらいやってたんですけど。その時から、ヘッドアレンジをずっとやっていて。ヘッドアレンジっていうのは、自分は曲作りをして、メロディーだったりコード進行とか構成を考えるんですけど。アレンジはメンバーに直接「こうやって」とか。フレーズが決まっていたら「このフレーズ弾いて」とかって、口で伝えながらやっていくみたいな。僕は楽譜が書けないので、口伝えとか。あとは自分でドラムを叩いて「このビートで叩いて」って伝えるみたいなのをずっとやってたんですよ。

(石田ゆり子)ドラムもできるんだ?

(星野源)ドラム、はい。ドラムが一番最初にやった楽器だったので。だから、リズムが好きなのもあるんですけど。それもずっと、なので全部口伝えだったりとかで。それで実際に演奏したのを聞いて「もっとここをこうしよう」とか「ここはこうして」とかっていうのをずっとやってくっていう編曲の仕方をしていて。で、今は打ち込みで、もう曲を実際に配置しながら作っていくので。今は1人で作ってくっていう感じですね。実際に打ち込みながら。

(石田ゆり子)なるほど。打ち込み……打ち込みってよく、聞きますけども。いまいち自分ではわかってないっていう。

(星野源)まあ、録音していくみたいな感じですね。ベースだったらベースの音が出るソフトシンセっていうのを立ち上げて。そのリズムに合わせて自分でキーボードで弾いて。ドラムを入れたい時は自分で叩いて。キーボードにドラムの音が入ってて。とか、MPCという機械を使ってビートを組んで。そういう風にして。ギターを自分で重ねたりして作っていくみたいな。

(石田ゆり子)へー! すごいなー! 「すごい」としか私には言いようがないです。

(星野源)まあでも、楽しいです。

(石田ゆり子)楽しいでしょうね。それで、あんな素敵な曲がどんどんできたらね。

(星野源)やり方を覚えちゃうとね。

(石田ゆり子)私も今回、歌詞をね、書いたんですが。それはもちろん、曲が先にあって。「この曲になんでも、どんな風に言葉を当ててもいいから」って言われて4曲、書いたんですが。源ちゃんは歌詞を作る時に、どういうことに気をつけて言葉を紡いでいますか?

(星野源)そうですね……ええと、僕は、いろいろあるんですけど。

(石田ゆり子)テーマもね、与えられたりしているでしょうけども。

「説明文にならないようにしたい」

(星野源)なんか「説明文にならないようにしたいな」とは常々、思っています。「これこれこうだから、こうだ。こうでこうで、こうだ」みたいな。それだと文章で読んでも歌で聞いても、意味が変わらないので。で、歌にするっていうのはなんて言うんすかね? 俳句だったりとか、川柳とか、そういうものと同じで。どれだけそのひとつの言葉に、いろんな意味だったりとか。

で、この言葉とこの言葉の間に本来は入るであろう言葉がないことによって、それを聞く人がその言葉を思い浮かべて。そこには入ってないんだけど、入るであろう言葉とかを思い浮かべて。で、その歌詞を読んだり、曲を聞いた人がその人の中で実際の意味が花開くみたいな。なんかそういうものを僕は詞で書きたいなと思っているんですよね。

(石田ゆり子)すごく音と言葉がばっちり合ってますもんね。「ばっちり」って古いか(笑)。

(星野源)「ばっちり」は古くないです。今でも使います(笑)。

(石田ゆり子)ばっちり合っている。なんか、フレーズとして一緒になっている。ばらけてないっていうと、変な言い方ですけど。

(星野源)でも、そうですね。そこも気をつけてますね。

(石田ゆり子)それは、音楽と一緒にその言葉がボンッて出てくるっていう。やっぱり、なんだろうな? キャッチーっていうか。すごく、なんだろう? 忘れられないメロディーとフレーズを組み立てる。すごいなっていつも思うんですけども。

(星野源)なんかその、さっきの『喜劇』の「争いあって♪」っていう歌詞も、その「争いあって」の「あって」っていうメロディーの推移にはちっちゃい「っ」が入ってた方が、なんか意味が入ってくるんですよね。その「争いあって」って実際にしゃべると、その「あ」と「て」の間にちっちゃい「っ」が入るってことは、ちょっと間が空くじゃないですか。

で、これをでも、実際に歌っている文字としては「あ」と「て」しか歌ってないわけで。でもその、元々の「争いあって」じゃない言葉にしたとしたら、「っ」がない言葉にしたとしたら、その、ちょっと間が空くんですよね。そのメロディーの中に。でも、その「っ」が入らんない言葉を選んだら、ちょっとそのメロディーと歌詞の親和性が失われるっていうか。で、メロディーがちょっと離れてるんで。だから「『っ』がここに入る言葉を選んでいこう」みたいな。そういう風にして選んでいったりはしますね。

(石田ゆり子)ふーん! 面白いね(笑)。

(星野源)フフフ(笑)。

<書き起こしおわり>

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