RHYMESTER宇多丸さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で落語家の桂歌丸師匠を追悼。歌丸師匠との思い出などを話していました。
(宇多丸)7月2日(月)6時をすぎました。TBSラジオをキーステーションにお送りしているカルチャーキュレーションプログラム『アフター6ジャンクション』、通称アトロク。パーソナリティーは私、ラップグループRHYMESTERのラッパーにして、名前は一応桂歌丸師匠から正式に許可をいただいております。RHYMESTERの宇多丸です。そして月曜日のパートナーは……。
(熊崎風斗)TBSアナウンサーの熊崎風斗です。
(宇多丸)はい。ということでたぶんあちこちで報道、ニュースとかで出始めていますけども。改めまして……落語家でテレビ番組『笑点』などでもおなじみ、桂歌丸師匠が81才で死去されたということでニュースが入ってきて。いやー、あの……いろいろと、何度か入院を繰り返されたりして。でもそのたびにお元気になられて。番組にも何度か復活されたりとかして、なかなかお元気だなと思っていたんですけどもね。
(熊崎風斗)そうですよね。
(宇多丸)81っていうのはいまどきの年齢にしてはやっぱりお早いというか、ちょっと早すぎるという感じもあって。うーん……今日ニュースが入ってきてちょっとね、「ああ……」っていう風になっちゃっているんですよね。
(熊崎風斗)そうですね。
(宇多丸)たぶん今日ね、私の名前がまぎらわしいことに「RHYMESTER宇多丸」という。字は「宇多丸」っていう表記になっていますけど、改めてなんでこんな名前なのか? そして桂歌丸師匠に許可をもらうくだり、説明をしておきますと……まあラッパーっていうのはいろんな歴史上の人物とか、いろんなモジりの名前の人が多かったりして。まあ「ノリエガ」なんていう人がいたりするわけですよ。ラッパーでは。
(熊崎風斗)ええ、ええ。
(宇多丸)で、そんなような調子で私もまあ、ある意味若気の至りでしょうかね。まあ最初はMC SHIROっつって本名にちなんだ名前だったんだけど、「MC○○」っていうのはちょっと時代的に古いなっていう感じがしてきて。で、別名を付けたりするのがめちゃめちゃ流行っていたの。90年代に。「a.k.a (also known as)」って。とにかく別名をつけるのが流行っていて。「歌丸」って最初は本当に桂歌丸師匠のそのまんまをつけていて。それはなんでか?っていうと、仲間内で当時からスキンヘッドだったんでそういうスキンヘッドの髪の感じと、あとは「物申す感じみたいなのが『笑点』でいえば歌丸師匠的なポジションだね」っていうことを言われているところで、名前を名乗りだす前から「ウタさん、ウタさん」みたいに呼ばれていて。
(熊崎風斗)ああ、そうなんですね。
(宇多丸)で、その別名をつけるときに「○○丸」ってかっこいいなと思って。まあすごい、ある意味その時点では安直に「歌丸」ってつけちゃったの。で、曲とか何曲か作っていてね。要は、こんなにテレビ・ラジオに出たりする予定じゃないレベルで。
(熊崎風斗)まあ、その頃はわからなかったんですね。
(宇多丸)そうなんですよ。で、でもラジオとかにちょいちょい出るようになって、ラテ欄に載る時に桂歌丸師匠のまんまの表記で「歌丸」って載るのはこれはマズいだろうと。やっぱり勘違いをされる方が当然出るでしょうから。
(熊崎風斗)間違えやすい。
(宇多丸)だし、確実に怒られると思って。だからせめて字は当て字にして宇多田ヒカルさんの字を当てるという……だからさらにパクりのパクりで申し訳ないんだけど、「宇多丸」ってつけて。で、10年以上に渡って活動を続けて。で、前にやっていた『ウィークエンド・シャッフル』っていう番組も持たせていただいてずっとやって。で、これはいい加減、そろそろ私もこの活動規模になってくると気まずいぞと。
(熊崎風斗)はい。
(宇多丸)で、それと前後してというか、もうちょっと前の時点で桂歌蔵さんという歌丸師匠のお弟子さんと知り合いになりまして。で、歌蔵さんは「僕、この名前でやっていて気まずいんですよ。やっぱり怒られますよね?」って言ったら「いや、全然いいんじゃないですかね?」みたいな。
(熊崎風斗)あ、そんな感じだったんですか?
(宇多丸)そう。「全然いいっしょ!」みたいな感じで。「どんどんやっちゃってくださいよ!」みたいな感じで言うんだけど……「いやいや、でも歌蔵さんはそうおっしゃいますけどね。歌丸師匠はなかなか厳格な方とも聞いてるんで」なんて。で、2011年の12月にいろいろとある中で、ちょっと一度、やはりお目通りをして許可をちゃんと勇気を持って……怒られるかもしれないけどね。で、怒られたらもう名前を変えようみたいな感じでとにかくお会いしていただくというのを番組上で段取りを組んで。私はラップで「この名前を名乗らせてください」というのをお願いするという歌詞を書いて、横浜の師匠が高座をつとめられるその直前の楽屋にお邪魔して。もうガッチガチの中でお会いして。
(熊崎風斗)はい。
直接対面して名前の使用許可をいただく
(宇多丸)その様子は2011年11月に番組『ウィークエンド・シャッフル』で放送をさせていただいたんですけど、まあこれがなんと本当に快諾というか。「どうぞお名乗りください。宣伝になるから」とかって。「いや、宣伝はいらないでしょう!」みたいな。
(熊崎風斗)たしかに。これ以上宣伝することはないですよね。
(宇多丸)まあ、そんなやり取りもありつつ。で、その師匠の前で僕が「ぜひ名前を使わせてください」というような思いを込めたラップをするというくだりでまず緊張のあまり僕がラップを一発失敗し。で、「あっ! あの……師匠、もう一回お願いします!」みたいな、まあそういう見苦しいくだりがあって。で、もう一回やって。でも本当に文字通り優しくというか快諾していただいて。まあ晴れてこの「RHYMESTER宇多丸」という名前に関しては使用許可をいただいた。私はもうそれ以来「言質を取った!」っつって。もう大手を振って「おう、宇多丸でなにが悪いんだ? 正式だ! 正式名称だ、この野郎!」なんつって。10年以上無断で使っていたのに(笑)。
(熊崎風斗)アハハハハハッ!
(宇多丸)というのがあって……なんですよね。で、お名前の正式許可をいただいて。でも、なかなか不義理が続いてというか、またご挨拶に行ったりするようなこともないままここに来てしまったので。本当にちょっと申し訳ないですし……あと、それから気になるのはこれから歌丸師匠の襲名とかさ、どなたかがされるのかな?っていうね。大きなお名前ですからね。だから、その時にまたこっちの偽物の宇多丸の方が非常にまた偽物感が際立つ感じになって、普通に気まずいなとかあるんですけど。
(熊崎風斗)フフフ(笑)。
(宇多丸)でもとりあえず今日はあちこちで桂歌丸師匠っていうお名前が出て報道もされると思うので。今日はややこしいとは思いますが、一応正式許可をいただいているRHYMESTER宇多丸がお送りしている番組です。本当にちょっとね、なんかこういう安易な言葉というか、型通りの言葉で本当にあれなんですけど……本当にご冥福をお祈りしますというか、本当に師匠、お疲れ様でした。そしてその節は本当にありがとうございました。おかげさまで元気のこの番組にも出させていただいておりますという感じですかね。
(熊崎風斗)はい。
(宇多丸)ちなみに……ああ、その名前の話ね。熊崎風斗。
(熊崎風斗)はい。私の名前ですね。
(宇多丸)「風斗」というのはバンドのザ・フーから来たものというね。
(熊崎風斗)まあ、うちの父親がザ・フーのファンでというところで。
(宇多丸)これはやはりザ・フーのピート・タウンゼントさんとかに許可を取りに行ったりとかは?
(熊崎風斗)全く許可も取っていないですし。いま、ここで「熊崎くんもプレッシャーあるんでしょう?」っていうカンペが出ているんですけど……ないですね。
(宇多丸)っていう……何を聞いているんだ?っていう。
(熊崎風斗)何を聞いているんでしょうか? この話の流れで。
(宇多丸)あと、歌丸師匠に関しては、全然こっちで勝手に言っている話ですけども。最近、桂歌蔵さんもこっちの新番組になってからお呼びできていないし。小説とか、あとは世界を股にかけて英語で落語をされたりとか、そういうので活動をされているので。最近、お会いできていないので、ちょっと近いうちにというか、この番組にお招きして師匠の思い出とか、いまの歌蔵さんの活動をうかがうような機会も設けさせていただきたいなと……勝手に言っています。歌蔵さん、すいません! 勝手に言っています。
(熊崎風斗)まだ決まってもないですけど、宇多丸さんとしては。
(宇多丸)はい。ご連絡差し上げます。いつも歌蔵さんからご連絡いただいていて、ありがとうございます。
<書き起こしおわり>