渡辺志保 XXX Tentacionを追悼する

渡辺志保 XXX Tentacionを追悼する 荻上チキSession22

渡辺志保さんがTBSラジオ『荻上チキSession-22』に電話出演。銃撃されて亡くなったラッパー、XXXテンタシオンについて荻上チキさん、南部広美さんに話していました。

(荻上チキ)さて、そういった中でXXXテンタシオンが銃殺されたということなんですけども、こちらのニュースについてヒップホップシーンを中心に取材をしている音楽ライター・ラジオMCの渡辺志保さんにお話をうかがいたいと思います。渡辺さん、こんばんは。

(渡辺志保)こんばんは。よろしくお願いします。

(荻上チキ)よろしくお願いします。さて、今回XXXテンタシオンさんが銃殺されたというニュースが入ってきているんですけども、どういったミュージシャンだったんでしょうか。

(渡辺志保)彼は先ほどのニュースの中でもありましたけど。1998年にフロリダ州で生まれて。本日、20才でその生涯を終えてしまうことになってしまったアーティストなんですが。17、8才ぐらいの時からラップ活動を始めてかなり早いスピードで成功したアーティストです。2016年ごろにネット上で発表した『Look At Me!』という曲があるんですが、それがヒットになったという。

XXXTENTACION『Look At Me!』


https://miyearnzzlabo.com/archives/42265

(渡辺志保)それをきっかけにアルバムを2枚出して、本当にこれからといったアーティストでしたし。彼の曲が特徴的だったのは鬱々とした気持ちをそのままラップするというところですね。自分自身も鬱で苦しんでいたことを公言していましたし、あとは自殺願望であるとか、「とにかく自分は孤独なんだ。自分自身はいったいどんな人物なんだろう?」っていうようなことをラップしていまして。これってアメリカのヒップホップシーンでは結構珍しいことでして。以前、そちらの番組に出させていただいた時も少しお話をしたことがあるんですが、とかくマッチョであることが美徳とされているのがこれまでのヒップホップシーンだったんですけども。

(荻上チキ)ええ、ええ。

(渡辺志保)その中自分の不安定な気持ちや鬱積した気持ち、自殺願望とか刹那的な気持ちっていうのをそのまま美しいメロディーに乗せて吐露するようなラッパーっていうのは彼以外にはあまりいなかったんですね。なので、そういった意味でもこのXXXテンタシオンの音楽を自分の心の拠り所にしたり、生きる糧にしていた若者は非常に多かったと思います。

(荻上チキ)なるほど。それまでの想定というもの、シーンというものを変えていったということになるわけですね。

(渡辺志保)そうですね。

(荻上チキ)従来のマッチョ主義、「俺は強い!」みたいなものを誇りあってバトルしたりするという文化もヒップホップにはあるわけですが、そうした繊細な歌詞を(XXXテンタシオンは)歌い上げていったということで、その支持層やシーンでの受け入れられ方というのはいかがですか?

(渡辺志保)そうですね。ほぼ確実に彼を指示していたのは同じく同世代の若いリスナーだったかと思います。彼の最新作、遺作となったアルバム『?』はビルボードで1位を取るなど商業的にも成功していましたし。かなり多くの若者がXXXテンタシオンの音楽を聞いていたんではと思います。

(荻上チキ)はい。これ、ちなみにアーティスト名が非常に噛み噛みになりそうなんですけど。ニックネームとか略称とかはないんですか?

(渡辺志保)だいたいアメリカの方は「エックス(X)」と呼ぶことが多いのかなと思いますね。

(荻上チキ)なるほど。日本で「X」というと別のバンドがありますからね。

(渡辺志保)そうですね。ちょっとかぶってしまいがちですけども。

(荻上チキ)でもエックスの支持のされ方というのはやっぱりいままでと違うファン層なども獲得していたりするんでしょうかね。

(渡辺志保)おそらくそうだと思いますね。やはり人種の壁を超えたファン層を多く獲得していたと思います。

(荻上チキ)なるほど。実際にヒップホップシーンを見ていて、エックスがデビューして以降のシーンの変化やそれに対する動きというのはどう見ていましたか?

エモ・ラップ登場のきっかけ

(渡辺志保)そうですね。やはり彼のブレイク以降、彼と似たようなというか彼の系譜をたどるようなメロディアスな歌詞だったり、そういったものをエモーショナルなラップ、「エモ・ラップ(Emo Rap)」という風に呼ぶんですけども。そういったジャンルが新たにできたのはこのXXXテンタシオンの登場がきっかけになったと思います。

(荻上チキ)へー。エモ・ラップって英語圏でもそう略すんですか?

(渡辺志保)そうですね。「エモ・ラップ」とアメリカでも呼んでいますね。

(荻上チキ)へー。日本だと「エモーい!」とか言うじゃないですか。「エモいわ……」とか。あれとかと結構ニュアンスが近いのかな?

(渡辺志保)はい。ニュアンスは近いと思いますし、いままでのマッチョマッチョなヒップホップのトピックとはまたちょっと違う……まあ若者の葛藤だとかモラトリアム期間だとか。そういったものもそのままラップしたような歌詞になりますね。

(荻上チキ)さて、そうした中で今日は1曲、選んでいただいたということなんですが。今日選んでいただいたのはどんな曲なんでしょうか?

(渡辺志保)彼の最新アルバム、最後のアルバムになってしまいました『?』の中から『SAD!』という曲を聞いていただきたいと思います。この曲は本当に「悲しい」というタイトルそのままなんですけども。歌詞の内容としては女の子のフラれてしまって悲しいし、それによって自分が何者なのかわからなくなってしまったという。でもこういうのってややもするとちょっと女々しいとか男らしくないという風に言われてしまいそうですけども。ただ、男女関係なく若者であれば誰しもが一度は経験する感情だと思うんですね。それを美しいメロディーを伴ったラップにした、本当に美しい楽曲です。

(荻上チキ)うん。

(渡辺志保)で、この楽曲はビルボード・チャートで最高位7位にまでランクインしまして。XXXテンタシオン唯一のトップテンヒット、最初で最後のポップヒットになった曲でもあります。

(荻上チキ)なるほど。では「エモい」って思いながら聞けばいいわけですね。

(渡辺志保)そうですね。彼への哀悼の意なんかもチラリと抱いていただければと思います。

(荻上チキ)では、曲紹介をお願いします。

(渡辺志保)XXXテンタシオンで『SAD!』。

(荻上・南部)ありがとうございました。

(渡辺志保)ありがとうございました。

XXXTENTACION – SAD!

<書き起こしおわり>
https://miyearnzzlabo.com/archives/50962

タイトルとURLをコピーしました