宇多丸さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で大阪北部地震についてトーク。デマが拡散してしまった問題について関東大震災の際の例を用いて話していました。
(宇多丸)亡くなられた方も出ちゃってということで。もちろん、亡くなられた方のご冥福はお祈りしたいし、お怪我された方、大変な目にあっている方、早く平常に戻っていただきたいなという感じなんですが……たとえば東京にいてニュースを見ていてちょっと気になったというか。現状も他人事じゃないんだけど、さらに自分事として考えなきゃいけないなと思ったのはやっぱり今回、地震があった時にこれは報道もされているけど結構デマがあった。「京セラドームにヒビが入っています」とか。
(熊崎風斗)ありましたね。
(宇多丸)そういうのもあるけど、やっぱり人種差別的なフレーズ、内容を含むデマが結構出回ったという。
(熊崎風斗)SNSなどで。
(宇多丸)そうそう。それによってなにかが実際に起ったわけではないというのはもちろん不幸中の幸いというか。まあ、デマに流されないようにしましょうっていうことなんだけど……これってつまりさ、当然みなさん歴史的な事実としてご存知の通り、関東大震災の時にデマが流れて。で、朝鮮人の人たちとか、中国人の人も含まれていたのかな? 日本人が寄ってたかって暴行したり、殺したりしちゃったという我々の歴史の最悪の汚点があるじゃないですか。
(熊崎風斗)そうですね。
(宇多丸)これに関しては『九月、東京の路上で』という本。以前、僕は前の番組でも紹介したんですよ。
加藤 直樹『九月、東京の路上で』
(熊崎風斗)はい。
(宇多丸)で、これが本当に怖いのはいま、僕らは歴史を見て「そんなデマなんかに踊らされちゃダメだ」って。そうやって頭ではわかっていても、その本を読むと最初は非常に冷静に「こんなの、デマに決まっている。朝鮮人の人がかわいそうだ」って思っていたような紳士が、どんどんどんどん不安とかが募って日にちがたつと「どうも本当かもしれないな……」って思って。で、街で暴徒がいるのを見て「俺もちょっと一発加えてやろうか?」なんて思ったという。それが日記に書いてあるんです。で、その数日後にはさらに「やっぱりそんなわけ、なかった……俺はどうかしていた」みたいな。だから、そういうもんなんですよ。僕らが全然他人事じゃないのは……。
(熊崎風斗)いま、正常なメンタルだからこそ「おかしい」って思えても……。
(宇多丸)ある種他人事というか、俯瞰した目で見れているからかもしれないけど、やっぱりいざとなったら我々、恐怖にかられて何をするのかわからない生き物だという自覚を持って生きなくちゃいけないわけです。
(熊崎風斗)その自覚があるかないかでまた、変わってきますしね。
(宇多丸)自覚と、あとやっぱり今回も大阪の件でやっぱりそういうデマが現に流れたわけだから。そういうことをやる人、言う人がいるんだっていうことだよね。それをちゃんと、そういうことがありうる。我々、いくらでも醜くなりうるということを胸に刻んでおかないといけないなという風に思った次第です。とはいえね、私これいまご立派なことを言っていますけども、私自身もこの放送上でちょいちょいやりますよ。間違いをやらかします。もう、デマです!
(熊崎風斗)デマ(笑)。
(宇多丸)デマに等しい間違いをやっているんですよ。先週の金曜、ムービーウォッチメンのコーナーで『万引き家族』を評させていただきました。あの中で結構最初の方でパンフレットに載っている文章で「ここが素晴らしかったんでそのまま引用させていただきます」なんてくだりがあったんですけど。私、「中条省平(なかじょうしょうへい)さん」って連発していたんですけど、「ちゅうじょうしょうへい」さんでした。こちら、間違いでございました。中条さんとお聞きいただいたみなさん、訂正してお詫びいたします。大変失礼いたしました。
<書き起こしおわり>