松尾潔と井上三太 メロウな音楽対談

松尾潔と井上三太 メロウな音楽対談 松尾潔のメロウな夜

(松尾潔)いやいやいや、死というのはね、やっぱり50代を迎えるにあたって僕もいちばん考えたことですよ。これから先……まあ、いまね、僕や三太くんが亡くなっても「ああ、早かったね」といまの時代なら言われるかもしれないけど。まあ「人生五十年」って昔から言葉があるように、「不慮の死」と言うにはいささかもう歳は行ってしまったのかなという感じもあり。この間もね、いまバックで流れております。ブラックストリートの『Tonight The Night』ですが。SWVとともにフィーチャーされてるクレイグ・マック。

(井上三太)はい

(松尾潔)彼なんかもまあ、僕らよりちょっと年下なのかな? それでも40代後半で亡くなって。ちょっとやっぱり、2パックが20代で亡くなったとかってのとは違う、まあ早いは早いけど……さっき話したヘビー・Dにしてもね、40代で亡くなった時に、悲しくあるが驚きはしないみたいなのもあるじゃない。だんだんそういうのが身近にはなってくるよね。

(井上三太)去年、バッドボーイの映画があったじゃないですか。あの中でたしか、クレイグ・マックは頑なにあのリユニオンライブに出たがらなかった人なんじゃいかな? 何度も連絡をパフ・ダディ、P・ディディがしていたけども。

(松尾潔)ねえ。レベルの最初の大きなヒットだったにもかかわらず、アルバム1枚しか出さなかったっていうこと自体が、なかなかね、その一言で言い表せないような愛憎があったんだろうなと思いますよね。

(井上三太)もう1枚出ましたね。あの……。

(松尾潔)けど、あれはあそこから出なかったんじゃなかったっけ?

(井上三太)ああ、バッドボーイからは出なかったんですか?

(松尾潔)たしか、そうだったと思うんだよね。

(井上三太)たしか最初のポスターがね、ビッグマックになってましたよね。ビギーのビッグとクレイグ・マックのマックでね。

(松尾潔)なるほど、なるほど。ねえ。そういったこぼれ話もひとつひとつメロウに感じてしまう、そんな2018年なんですが。ここからね、リスナーの人たちもお楽しみだと思いますけども、三太くんの選曲をいくつか楽しみたいと思います。まずはちょっとこれ、1曲まず聞いてもらっていいですか?

(井上三太)そうですね、はい。じゃあアンクエットで『I Will Always Be There For You』。

ANQUETTE『I Will Always Be There For You』

(松尾潔)今夜のゲスト、漫画家の井上三太さんの選曲で、まずは女性3人組。アンクエットで『I Will Always Be There For You』。30年前の曲ですね。『Respect』というタイトルとは裏腹にずいぶん軽い内容のアルバムでしたけども(笑)。軽い内容だから、「リスペクトしてよ!」って言ってるのかもしれないけども。女性3人組、アンクエットの曲。これはどういう選曲の意図があるんですか?

(井上三太)この曲はいや、全然知らなくって。

(松尾潔)サラッと言うね(笑)。

(井上三太)まあ、SNSでたまさか発見して。で、すぐに松尾さんにLINEしたんですよね。「この曲いいですよね」って。もちろん松尾さん、ご存知だと思ってたんで。そしたら松尾さんが返してくれたLINEのその流れというのを今夜、その『メロ夜』リスナーとシェアしたくて。

(松尾潔)僕、失礼なこと書いてないよね? LINEで。

(井上三太)いえいえ。この曲の3人組はどこの人たちだったんですかね? 

(松尾潔)マイアミでしょう? この人たちは。2ライブ・クルーのね。

(井上三太)ああ、ルーク・レコーズ?

(松尾潔)そうそう。ルークファミリーの、ルーク周辺から出てきたっていう認識ですけどね。アンクエットね。

(井上三太)で、松尾さんがファミリーツリーのように教えてくれたのが、Finesse & Synquisの『I’ll Be There』。これは『I’ll Be There』つながりで。

(松尾潔)なるほど、タイトルが似ているっていうことで。

(井上三太)いやいや、そんなことじゃないですよね。もっと……。

(松尾潔)全然。僕はね、ヒップホップ……80年代後半から90年代にかけての男性ヒップホップアーティストの周辺の女性たちっていう流れでお話ししたんですよね。つまり、マイアミの2ライブ・クルーからこのアンクエットが出たように、ニューヨークのアップタウンレコード。ヘビー・Dとかね、その周辺からFinesse & Synquisが出ましたよっていうね。まあ、横浜銀蝿から岩井小百合さんが出ましたよっていう話ですよ(笑)。

(井上三太)だからミッキーとか、紅麗威甦とかまで(笑)。

(松尾潔)嶋大輔さんとかね(笑)。そういうことです。

(井上三太)まあでも長年ね、ひとつの音楽を愛して追っていくとね、そういうファミリーツリーがね。

(松尾潔)気になるもんでしょう?

(井上三太)はい。楽しいですね。

(松尾潔)まあ、EXILEとe-girlsでもいいですけどね(笑)。

(井上三太)わかりやすい(笑)。

(松尾潔)まあ、そんなLINEのやりとりがあったという(笑)。

(井上三太)ありました。その話をしたかったです。

(松尾潔)三太くん、けどあれだよね。ひとつディグると、その周辺のを絶対に調べたくなる人だよね。

(井上三太)うん。それは楽しいですね。

(松尾潔)で、僕にいつもそういう話をほしがるよね。

(井上三太)うん。松尾さんだったら答えてくれるっていうことでね(笑)。

(松尾潔)ねえ。おねだり上手だなあ。まあ、そんな三太くん、別にそのおねだりだけをやっているわけじゃなくて、会社のスタッフの人たちの面倒もたくさん見ながら、そういう付帯状況を一応の整理をして、まあね、50才で海を渡るという決断をしたわけですが。いま、ええとLAに行って3ヶ月? 4ヶ月か。どうですか、いまのところ?

(井上三太)まだ4ヶ月だとね、長い旅行に毛が生えたくらいって言うか。

(松尾潔)とはいえ、僕もこの『グイグイ力』っていう本。これはLAに行かれた後に語り下ろしと描き下ろしでできた本ですけども。たとえば公共料金の支払いひとつとっても、日本にいて全然、自分はそういうのにタッチしていなかっただけなんだ、みたいな。この歳にして初めて知ることがあるっていうのは非常に幸せだというトーンで……。

(井上三太)まあ、幸せに捉えようっていうかね。

(松尾潔)その英語の聞き取りひとつ取っても大変なんだけれども。で、そこから話が、いまどうやらアメリカの公共料金の支払いとかカスタマーセンターっていうのはインドにあるらしいとか。まあ、話がそういうところにどんどん広がっていくのが三太くん流なんだけど。なんか、いろんな目の前のアクシデントとかハプニングを自分にとってのハッピーな要素に変えるその錬金術は本当に三太くんならではで。「この人、生命力あるよな」って思いながら僕は読みましたけどね。

(井上三太)ああ、やっぱりなんかね、いろんなことを人任せに日本でやってきていて。「これはマネージャーがやってくれ」とか、「これは奥さんがやってくれ」っていうことがたくさんあったんだけど、ちょっとマネージャーはいま、まだビザが取れてないわけなんですよ。

(松尾潔)そうか!

(井上三太)マネージャーのビザも取ろうとしていて。

(松尾潔)そういう経緯もあって、いま東京だったらいろんな人に任せていたことを自分で、自らやっているという。

(井上三太)で、奥さんはまあ英語が流暢じゃないんで。僕も流暢じゃないけど、やっぱりどっちかってばそういう……「wi-fiが繋がらない」とかね。「ガスの料金をなんか二度……同じ月に支払ったはずなんですけど」とかね。これ、英語でなんて言うのか? みたいなね(笑)。

(松尾潔)うわーっ! いやいや、これ聞いている人でたとえば留学経験がある人とか。「いやいや、そういうのは自分、19とかハタチの時に体験しましたよ」っていう人もいらっしゃるだろうし、逆に「いや、50になってそこに身を置くってすごいな」って思う人も。まあ、感じ方は様々だと思うんですけど。

(井上三太)まあ、そう思ってもらえればうれしいですけどね。ええ。

(松尾潔)いやー、僕はできないなって思っていま聞いてますけども(笑)。

(井上三太)でもね、勉強をする喜びっていうのはあるような気がするの。僕は漫画を30年描いてきて、ずっと紙とペンで描いてきたんだけども、いまはアシスタント2人を東京に残しているわけなんですよ。で、全部インターネットでデータのやり取りをしなきゃいけないので、全部を要するにコンピューターでデータでやることにしたんで、新しいソフトを勉強したりだとか、そういうのがもう嫌なんですよ。要するに、自分がペンの使い方なんてもう完璧にわかって、スクリーントーンとかベタとか、そういったものがわかっているものを1から、Windowsの勉強をしたりね。僕はMac派なんでWindowsの世界って全部が違うわけなんですよ。保存の仕方だとか。

(松尾潔)そうかそうか。やりたくてやっているわけでもないこともあると。

(井上三太)ただね、ちょっとイライラしながらやっていても、自分の物になってくるとね、楽しいなっていうか……。

(松尾潔)まあ、あるでしょうね。ここからパッと開けるっていうある瞬間。K点超えみたいなのがあるんだ。

(井上三太)で、いままでやってきたことはちょっと疲れてきちゃっているっていうか、やり慣れたというか。そういう気持ちがあるんですよね。

(松尾潔)うんうん。どこか、そういうところを求めていたのかもね。三太くんね。

タイトルとURLをコピーしました