渡辺志保 ケンドリック・ラマー『The Pop Out』での西海岸リユニオンを語る

渡辺志保 ケンドリック・ラマー『The Pop Out』での西海岸リユニオンを語る INSIDE OUT

渡辺志保さんとDJ YANATAKEさんが2024年6月24日放送のblock.fm『INSIDE OUT』の中でケンドリック・ラマーが主催してロサンゼルスで開催されたイベント『The Pop Out: Ken & Friends』についてトーク。そこで西海岸を代表するアーティストたちが集結し、「ウエスト・コーストリユニオン」を見せつけた話をしていました。

(渡辺志保)この『INSIDE OUT』でも本当に毎週毎週、いろんなアーティストを呼んで。いろんな楽曲をド新譜を中心にかけてきたわけですけれども。言うてこの半年間、別に上半期を締めくくるためにやったわけではないわけですけれども。やはり先週、日本時間6月20日の木曜日にLAで行われましたけれども。ケンドリック・ラマーさんがやってらっしゃった『The Pop Out: Ken & Friends』というライブが……私は本当にもうマジでガチで泣きながら中継を見ておりました。もうこれで2024年上半期、締まった! 締めてくれた! みたいな感じでしたね。

(DJ YANATAKE)本当ですよね。ケンドリックのライブももちろんあれでしたけども。最初から、その「& Friends」枠もみんな、よくて。

(渡辺志保)本当に。で、日本時間の朝8時ぐらいから中継されていて。その時、LAは夕方4時すぎとかだったかな? 私も子供を保育園に送り出すぐらいでバタバタとしながら、子供にはテレビ見せながら。私は携帯でAmazonの中継を見ながらっていう感じで朝、バタバタと過ごしてたんですけど。一番最初のDJ HedのDJから始まったんですよね。で、そのDJ Hedさんのところにも、Blue Bucks Clanとか、Jay Worthyとか、いろんな若手の……Jay Worthyとかになると、もうめっちゃ若手っていうわけでもないけども。本当、ケンドリックの下の世代の今のウエストコーストシーンを率いるラッパーたちが本当に1曲ラップして、退場してってやりながら。

(DJ YANATAKE)俺、知らなくて後で調べたんだけども。DJ CHAMP名義の『Meet The Whoops』っていう曲が、なんつったかな? ネオGファンクみたいな。超ハードコアGファンクみたいなのにすごいやられちゃって。結構、その後に調べまくって、いっぱいいろいろ聞いてます。

(渡辺志保)ああ、そうなんですね。でも、いいですね。そういう出会いをもたらしてくれるパフォーマンスっていうのは本当めちゃくちゃ素晴らしいですよね。で、そのDJ Hedの後にDJマスタード & Friendsだったんですけど。その間も、トミー・ザ・クラウンっていう私ぐらいの世代の方は皆さん、見たんじゃないかと思うけど。昔、『RIZE』っていう映画があって。西海岸を発祥とするクランプっていうジャンルのダンスがあるんですよね。

で、そのクランプのダンスシーンを率いてきたトミー・ザ・クラウンが出てきて。で、地元の高校生とかと一緒にその場でダンスバトルとか、あとダンスのサイファーっていうんですかね? みんなで輪になって1人ずつ、見せ場があって踊るソロ回しみたいなシーンもあって。そういうのも本当にすごくよかった。なんか、地元のダンスという切り口でそういうところを見せる。その若者のエネルギーもそうだし。「ダンスが俺たちにとって一体、どんな意味を持つのか?」っていう。ひとつの武器だったり、盾だったり……そういう、もうダンスを超えたダンスみたいなのをそこで表現していて。それも私は結構、涙が出てきてしまって。

Tommy the Clown The Pop Out Ken & Friends

(渡辺志保)からの、マスタードさんがいらっしゃって。で、もうヒットに次ぐヒットばかりをマスタードさんがプレイしてらっしゃって。で、ブラストが来て、タイ・ダラー・サインが来て、YGが来て、みたいな。で、ニプシー・ハッスルのトリビュートのコーナーもあって。で、メジャーシーンでドッカンドッカン派手なヒットを飛ばしてるタイプのラッパーではないけれども、私は個人的にドム・ケネディが出てきたのが、結構熱かったんですよね。本当にウエストコーストの、「地味な」っていう言い方はすごい失礼だけれども。ミックステープシーンを盛り上げてきた、すごく筋の通ったラッパーなんですけれども。ドム・ケネディが出てきたのも熱かったし。で、スティーブ・レイシーが出てきて、さらにはタイラー・ザ・クリエイターまで出てきちゃって。マスタードの時に本当、どうなっちゃうの?っていう。いや、もう本当ひとつひとつ、感動したし。

で、YGなんてドレイクと一緒に『Who Do You Love?』っていう曲をやってますけども。その曲も、さらっと自分のセットの時にパフォーマンスしてらっしゃって。で、ドレイクもケンドリックへのディス曲の中で「お前よりもYGの方がライブを盛り上げてるぞ」みたいなリリックがありましたけれども。ドレイクは今、そのリリックについて非常に恥じているんじゃないか? YGがね、もう当たり前だけど。「俺はケンドリックサイドだぜ?」みたいな感じで、あそこでライブをガッツンガッツンとかましてらっしゃって。

で、私はYGとマスタードのコンビって日本にも2回ほど来ていらっしゃると思うんですけど。私はその日本でのライブしか見たことがないんだけど。結構さ、「ああ、こんな風にライブするんだ」って思ったんだけど。YGが2バース目はアカペラでラップをするタイミングが何個かあったんです。『Toot It & Boot It』とか、そういう自分の曲の時にいわゆるバックトラックっていうか、オケを全部ミュートして。アカペラで歌ってらっしゃる場面が2曲ぐらいかな? あって。でもそれも、マスタードとYGの阿吽の呼吸だからこそ、ああいうどこで音を切って、とか。また次、この曲で盛り上げてとか。たぶん1曲、「ああ、この曲じゃないんだけど」ってYGがマスタードに言って曲を変えたシーンがあったりとか。

そういうすごい生々しい感じも私は個人的にちょっと楽しんで見ていたんですよね。すごい、そのYGとマスタードの信頼関係みたいなのも垣間見ることができたし。たしかタイ・ダラー・サインの時も1回さ、タイ・ダラが持ってきたマイクが音が出なくなっちゃって。マスタードがマイクをサッと交換して。その後、またサッとタイ・ダラの元々持ってたマイクに替えてさ。なんかそういう、本当に生々しいやり取りがリアルタイムでAmazonで中継されていて。そういう、すごい本当に細かいところなんだけど。「ああ、マジで今、生中継でみんな、ガチでやってるんだな」みたいなことを感じたし。

で、いろんなメディアが早速、レビュー記事とかレポート記事みたいなのを出してらっしゃるんですけど。Complexの記事がちょっと面白かったんだけど。そもそもケンドリック・ラマーはそのフッドで開催されるブロックパーティーみたいな雰囲気を大事にしたかったから、元々の意図としてはリハーサルもなしで、みんなが入れ替わり立ち替わり、ライブをして楽しむ。盛り上げるということをやりたかったらしいんですよね。なんだけど、そこまでではないなく、ちゃんとリハはやったっぽいんですけれども。そういうヴァイブスみたいなものは遠い日本で、インターネット越しに見ている私にも伝わったなという感じがしましたし。

で、いよいよっていう感じでケンドリック・ラマーが出てきた時もね、最初にあの『euphoria』から始まって。またE-40のナレーションっていうのもありましたけれども。『euphoria』ね。あの曲、6分ぐらいある曲ですけれども。本当にミスることもなく。ケンドリックさんですから、当たり前ですけど。でも『euphoria』をライブのパフォーマンスでやったのは初めてということで。圧巻でしたね。本当に。いつ息継ぎしてるんだろう?って思うぐらいの勢いでやってらっしゃって。

(DJ YANATAKE)やってらっしゃってね(笑)。

Kendrick Lamar『Euphoria』The Pop Out Ken & Friends

(渡辺志保)本当に、こちらもいつ呼吸をすればいいのかと思うぐらい張りつめた気持ちを抱えながら見ていたわけですけれども。その後ですね、本当にもう往年のケンドリックのクラシックみたいなものをずっとパフォーマンスをしてらっしゃったわけなんですけれども。そこでさ、最初から「Ken & Friends」っていう風に言っていたぐらいだから、誰か客演は来るだろうなっていう風には皆さん思ってたと思うけれども。まず、ジェイ・ロックが来て、スクールボーイ・Qが来て。アブ・ソウルも来てっていう。で、ジェイ・ロックの『WIN』とか、スクールボーイ・Qの『Collard Greens』とか、自分名義の曲だけではなくて、これまでそのいわゆる「ブラックヒッピー」という風に呼ばれる4人ですけれども。その仲間名義の曲も、フィーチャリング俺っていう曲を何曲も何曲もやってらっしゃって。

で、そのブラックヒッピーの面々がですね、あんなアリーナのステージに並ぶなんて……みたいな。誰かが入れ替わり立ち替わり、いなくなったり、また出てきたりってことはこれまでもあったかもしれないですけれども。で、私も2018年にチャンピオンシップツアーっていうTDEのツアーを見に行ったんですけど。その時に、もちろんジェイ・ロックとかスクールボーイ・Qとか、みんな出てきたけど。4人が同時にステージの上に立ってラップしたりっていうのは、そこではなかったんですよね。なんだけど、この間の『The Pop Out』ではそういった場面が現実になっておりまして。で、すごい仲良さそうに、ケンドリックがラップしている隣でジェイ・ロックとスクールボーイ・Qが踊ったりとか、ステップ踏んだりとかしてて。めっちゃ、生々しい感じ。作り込まれてない良さみたいなものがダイレクトに伝わった感じがあって。そういうところもいちいち泣けたし。

(渡辺志保)で、あそこに集ってらっしゃった人。そして私のようにインターネットの中継で見ていた方は皆さん、その『Not Like Us』を一体、どのタイミングでどんな風にパフォーマンスするのか?っていうことを一番の見どころのひとつにしてらっしゃったかと思うんですけれども。まさか……いきなりっていう感じで、まずはフューチャーとメトロ・ブーミンの『Like That』をパフォームして。その後に、誰が予想したでしょうか? ドクター・ドレーが奈落からというか、舞台の下からズズズズズッて。もう奈落の底からせり上がってきて。で、『Still D.R.E.』。そして『California Love』。2パックのバースもきっちりラップする。

それで「ドレーさん、2曲やってこれではけるのかな?」って思っていたら「ああ、そうだ。これを言いに来たんだった」みたいな感じで「Psst, I see dead people」っていう。これは『シックス・センス』っていう映画の中での有名なセリフなんですけども。このセリフ部分をケンドリック・ラマーは『Not Like Us』のシングルの最初のイントロ部分に持ってきているわけなんですよね。まさか、ドクター・ドレーがそのフレーズを行って『Not Like Us』が始まるなんて、もう本当に夢にも思ってなかったしさ。会場にいた皆さんも本当にびっくりされたと思いますけれども。そこの盛り上がりも、すごかったですね。

Dr. Dre「Psst, I see dead people」

(渡辺志保)で、その後に『Not Like Us』を全部で5回、パフォーマンスするというサプライズが……。

(DJ YANATAKE)あれさ、回数問題があるよね。4回説、5回説、6回説って(笑)。

(渡辺志保)そうそう。で、最後の客出しみたいな、はけるBGMとしての『Not Like Us』を入れると6回っていうね。で、たしかそのドレーさんのイントロダクションで始まった1回目は最初、「Wop, wop, wop, wop, wop,」っていう、みんなが盛り上がるところがあって。その後の「A minor」っていう。「どうせ、お前が曲を出してもそれは全部、Aマイナーだ」っていう、決めの殺しのラインがあるんですけど。そこでもう、1回止めて。その後、また「プーロー!」みたいな感じで2回目の『Not Like Us』がしょっぱなから始まる。

で、3回目の『Not Like Us』の時にたしかDJマスタードが出てきて。最初の「Mustard on the beat, ho」っていうタグがありますけれども。それをケンドリックもしっかりマスタードの目の前で、そのラインをキックしながら3回目を始める。で、4回目に皆さんが出てきて。その後、みんなで撮影を……ステージの上でみんなで記念撮影をする。日本のヒップホップのライブでもたくさんそういう場面があると思うんですけれども、撮影をして。最後、みんなでまたステージの上でワチャワチャになりながら5回目をラップするっていうね。すごかったですわ。

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