吉田豪さんがYBS『909 Music Hourz』に出演。絵恋ちゃん、加藤響子さんと90年代のアイドル冬の時代について話していました。
#YBSラジオ ありがとうございまちたあ〜!2時間あっという間すぎた?
きいてた? pic.twitter.com/bMWfQAZrPp— 絵恋ちゃん (@erenism) 2018年3月29日
(加藤響子)さあ、続いては私が生まれました90年代に参ります。90年代のテーマはこちらです。
(絵恋ちゃん)アイドル冬の時代から歌姫の時代。
(加藤響子)はい。「冬の時代」というのはちょっぴり寂しい言葉の響きですけども。
(吉田豪)絵恋ちゃんが「冬」にまでルビを振っていますよ(笑)。
(絵恋ちゃん)いやいや、やめて! 人の台本見ちゃいけないんですよ!
(加藤響子)わかります。私も読み間違えが多いので、振る気持ちすごくわかります。冬の時代。ちょっと寂しい響きですが90年代、アイドルにとってどんな時代だったんでしょう?
(吉田豪)はい。わかりやすく言うと、さっき言ったようにアイドルの幻想が破壊された後に80年代末にバンドブームが来るんです。で、バンドの人たちっていうのはベストテン番組とかに出ない人たちなんで、いわゆるベストテン番組がそこで崩壊するんです。そしてアイドルというものが格好悪い文化になっていくんですよ。それまでは世間一般のものだったじゃないですか。完全に別物になって、いわゆるオタクだけの文化になっていって。だから「アイドル」を名乗るのが恥ずかしいってことで、それまでだったらアイドルとして売り出された人たちが「ガールポップ」っていうジャンルで売り出されたりとか。
(加藤響子)へー!
「アイドル」を名乗るのが恥ずかしい時代
(吉田豪)そういう辛い時代にあるんですけど、僕はこの辛い時代が大好きなんですよ。僕がいちばん元気だった時代ですよ。「冬の時代、最高!」っていう(笑)。
(加藤響子)フフフ(笑)。ガールポップというのはどういう方たちですか?
(吉田豪)永井真理子さんとか、そういう感じですね。
(加藤響子)ああ、永井真理子さん。
(吉田豪)たぶんそれまで、普通だったらアイドルで出ていた人たち、かわいい女性たちは全部こっちの枠に行きましょうっていう。そんな中で、だから乙女塾とかが冬の中、がんばっていたんですけど、いま思うと「冬」って言っても普通にコンサートとかホールでやっているんですよね。全然ちゃんと人気があったんですよ。
(加藤響子)なんでこの頃になると「アイドル」って名乗るのが恥ずかしいってなったんですかね?
(吉田豪)なんなんだろうな。でも、ものすごい逆風でしたよ。で、アイドル雑誌もどんどん休刊していって。
(加藤響子)そんな時代が90年代ですか。
(絵恋ちゃん)バンドがかっこいいからっていうことですか?
(吉田豪)そうですね。で、そのバンドの後はクラブ的な文化がかっこいいってなったりとか。かっこいい基準がどんどん変わっていって、女優さんとかがちょろっと歌うぐらいの時代になっていきますよね。このへんって。
(加藤響子)へー! そんなアイドル冬の時代に現れたのが、今年9月で引退される安室奈美恵さんです。かかってきました、この曲、1995年発売『Chase the Chance』です。
(加藤響子)この頃の安室さんと言いますと、やはり小室哲哉さんプロデュースの楽曲ですよね。
(吉田豪)まあでも僕は本当にスーパーモンキーズは好きでしたけど、その後は別にアイドル的な要素では見ていないんで、全然興味はなく……「かわいいな」ぐらいの(笑)。以上ですね(笑)。
(加藤響子)いやー、安室奈美恵さん。絵恋ちゃんはこの安室さん世代ですか?
(絵恋ちゃん)世代……?
(吉田豪)世代、言っていいんですか?(笑)。
(絵恋ちゃん)でも、もちろん知っていますよ。流行っていましたので(笑)。
(吉田豪)フフフ(笑)。
(加藤響子)その小室さんがアイドル界に与えた影響っていうのはやっぱり大きいんですか?
(吉田豪)これ、また実は僕、小室さんに直接インタビューもして、本人も言っていたんですけど、小室さん自身が実はただの冬の時代のアイドル好きっていうか。TMネットワークで売れた頃に出た写真集とかで小室さんが読んでいる愛読書で書いてあるのが『投稿写真』とか『BOMB』とか、いわゆるアイドル雑誌の名前しか並んでいなくて。好きな女性のタイプとかであげているのも全部いわゆるB級アイドルで。この人、実は小室プロデュースブームって、アイドルをアーティストに作り変えるブームなんですよ。dosの西野妙子さんとかも僕の大好きなアイドルだったんですけど。基本、そうなんですよ。
(加藤響子)ふーん。
(吉田豪)東京パフォーマンスドールでパッとしなかった人をアーティストにしますとか。
(吉田豪)全てそういう……安室奈美恵もやっぱりスーパーモンキーズからなんで。やっぱり小室さんは基本はアイドル好きなんですよ。
(加藤響子)そうなんですか! イメージないですよね?
(絵恋ちゃん)全然。
(吉田豪)っていう風に小室さん本人にも言ったら、「そうなんです。実は僕のプロデュースの原点というのはアイドルなんですよ」っていう話で。
(加藤響子)そうなんだ。原点になっているんですね。
(吉田豪)ラ・ムーなんですよ。
(加藤響子)ラ・ムー?
(吉田豪)ラ・ムーって、知らないですか?
(加藤響子)知らないです。
(吉田豪)おおう……ラ・ムーっていう、アイドルがアーティストになった原点があるんですよ。菊池桃子が突然、バンドブームだったんで「私はこれからバンドを組みます」って言って。「ええっ?」って、どんなバンドを組むのかと思ったら、全然当時求められていないバンド路線。フュージョンというか、すごい大人な路線で来て。いわゆる大失敗みたいに言われているんですけど、実はアルバムは再評価もされていて。これを見て、小室さんは衝撃を受けたらしいんですよ。「アイドルがこうやってアーティスト的なことをやるの、いいぞ!」っていう。
アイドル・アーティスト化の原点 ラ・ムー
(加藤響子)はー!
(吉田豪)それが小室プロデュースなんです。
(加藤響子)ええっ、知らなかったです。そういう着眼点があったんですか。じゃあ、アイドルっていうよりも、この90年代は歌姫っていう印象の方が強いんですかね?
(吉田豪)そうですね。だから僕はそんなに乗っかってなかったものが売れていた時代ですね。もっと冬の下の方は僕の大好きなものだったんですけど。
(加藤響子)この頃は宇多田ヒカルさんとか倉木麻衣さんとか浜崎あゆみさんなどなど……。
(吉田豪)別枠ですね。SPEEDも別枠ですよ。僕はSPEEDをアイドル枠に入れないルールでやっていますからね。
(加藤響子)そうですよ。90年代に人気を博したといえば、SPEED。ああ、流れてきました。『White Love』。これはもう、小学1年生ぐらいの時にみんなで振り付けを真似していました。
(吉田豪)これ、僕はよく公言している話なんですけども。僕、SPEEDがアイドル界に悪い影響を与えたって思っていて。バラードっていうジャンルっていい曲がいっぱいあるのに、なぜか『White Love』みたいなバラードがアイドルってすごい多いんですよ。
(絵恋ちゃん)ああー、たしかに。似てるかもしれない。
SPEEDがアイドル界に与えた悪影響
(吉田豪)「それ、面白くないよ!」っていうか。もっとバラードのいい曲があるのに、なんかみんなこれになっちゃうんですよ。
(加藤響子)絵恋ちゃんも似てるって思います?
(絵恋ちゃん)似てると思う。こういうの、聞いたことあります。
(吉田豪)直接、「『White Love』みたいに」っていう感じで発注をすることが多いみたいで。それでがっかりすることがすごい多かったんで。
(加藤響子)まあ、いままで来た王道のアイドルとはまた違った印象でしたよね。
(吉田豪)そうですね。だから、やっぱり僕は好きなのはアーティストよりもアイドルなんですよ。
(絵恋ちゃん)SPEEDさんって「かわいい」っていうよりも「かっこいい、クール」みたいなイメージの女性がこの頃、いっぱいいたような。
(吉田豪)子供が「こうなってみたい」みたいな。
(加藤響子)やっぱり憧れていました。そうですよね。
(絵恋ちゃん)かっこいい感じが。ダンスとか。
(加藤響子)そうか。じゃあ、いわゆる王道アイドルとはなかなか見られなかったのがこの90年代だったっていうことですかね?
(吉田豪)そうですね。なので、僕の選曲も当然こっちではないっていうことですよ。
(加藤響子)おおっ、ではそんな豪さんが選びます90年代の一押しアイドルソング、お願いします。
(吉田豪)中嶋美智代さんの『何が足りないの?~お正月編』という、これは説明が相当必要ですよね。中嶋美智代さんっていうのはさっき言った乙女塾のメンバーです。で、正統派アイドルとして出てきて、当時サンミュージック所属で。最後の清純派って呼ばれていて。曲も全部だから清純派っていうか、子供子供しているというか。歌声がヤバいんですよ。
(加藤響子)なになに?
(吉田豪)あの……歌い方とかが明らかにちょっとやりすぎているレベルで、それが大好きなんですよ。僕は実はこの時期、僕はアイドル好きが高じて、僕の師匠のリリー・フランキーさん……仕事をたのんだ時にこういう話で盛り上がったんですよ。冬の時代にアイドル話で意気投合して、一緒にアイドルイベントとか行くようになって。そんな時、リリーさんに僕がすすめられたのが中嶋美智代だったんですよ。
(加藤響子)へー!
(吉田豪)「中嶋美智代はヤバいぞ」って言われて、本当にヤバくて。で、中嶋美智代さんはちなみに最後の清純派って言われていたんですけど、突然ヘアヌード写真集を出して、初体験を告白したりとか、結構ファンに衝撃を与えて……。
(加藤響子)わおっ!
(吉田豪)現在は千葉ロッテマリーンズのサブロー選手と結婚をされていますね。そんな人なんですけど、アイドル時代は本当にヤバいです。そしてこの『何が足りないの?』の歌い方、ちょっと聞いてほしいです。
(加藤響子)わかりました。豪さん一押しの曲、中嶋美智代さんで『何が足りないの?~お正月編』。
中嶋美智代『何が足りないの?~お正月編』
(加藤響子)さあ、豪さん一押しの90年代の曲、中嶋美智代さんの『何が足りないの?~お正月編』を聞いていただきました。お二人して「最高!」っていうのを何回連呼するんですか?
(絵恋ちゃん)最高ですね!
(吉田豪)絵恋ちゃんはわかってくれると思いましたよ。
(絵恋ちゃん)いや、もう最高! これですよ!
(吉田豪)理想のアイドルポップ(笑)。
(絵恋ちゃん)これです!
(加藤響子)どのあたりが良かったんでしょうか?
(絵恋ちゃん)舌っ足らずな感じと、音程、ピッチの不安定さと。「これこれ!」っていう。これですね。
(吉田豪)そうなんですよ。全然かっちりと直す必要はないんですよ。わざとああやってずらしていく感じっていうか。
(加藤響子)あれ、わざとやっているんですか?
(吉田豪)絶対に意図的だと思うんですよ。
(加藤響子)ええっ?
(絵恋ちゃん)私、そういうのってハルヒの『恋のミクル伝説』っていう曲があるんですけど。それもわざとすごい音程を外していて、すごい好きなんですけど。それがはじめなのかと思っていました。もっと前から、そういうジャンルがあったんですね。
(吉田豪)アイドルでよく、だから歌を修正しちゃってボーカロイドみたいになっているのがすごいあるんですけど、やめてほしいんですよ、本当に。外れるのがいいのに。
(絵恋ちゃん)意味がわかんないですよね。
(吉田豪)本当、意味がわからない。
(絵恋ちゃん)ミックス、いらないですよ。なんなら。
(加藤響子)ああ、そうなんですか?
(吉田豪)最初からボカロにしろっていう感じですよ。それなら。
(加藤響子)その方がらしさが出るみたいな感じですね。
(吉田豪)こっちは「らしさ」を聞きたいんですよ。
(絵恋ちゃん)声を聞きたいっていう感じですね。
(加藤響子)そんなきれいに歌うことを求めていないよと。
(吉田豪)そうです。
(加藤響子)そうなんですかー。ちなみにこういう歌い方って絵恋ちゃんとかもされるんですか?
(絵恋ちゃん)絵恋も割とこっちな気がしますね。
(吉田豪)ですね。
(加藤響子)へー! そうか。その歌も聞かせてもらいたいんですが……。
<書き起こしおわり>