吉田豪『帰ってきた人間コク宝』と漫画家・浅野いにおを語る

吉田豪『帰ってきた人間コク宝』と漫画家・浅野いにおを語る アフター6ジャンクション

吉田豪さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』にゲスト出演。新刊『帰ってきた人間コク宝』と、そこに収録された浅野いにお先生のエピソードについて話していました。

帰ってきた人間コク宝

(宇多丸)あとはあの、吉田さん。先月の28日に発売になった『帰ってきた人間コク宝』。

(吉田豪)ああ、新刊の告知もしていいんですか?

(宇多丸)ああ、ぜひ。そちらの話も。

(吉田豪)しますよ。ぜひとも。ありがとうございます。突然ヒップホップ色も増したんですよ。

(宇多丸)『人間コク宝』シリーズ。いろんな人にインタビューしてっていう。今回はちょっと、ねえ。

(吉田豪)いままではケーダブさんぐらいしか出ていなかったのが、ZEEBRAさんとか漢 a.k.a GAMIさんとかUZIさんとか。

(宇多丸)呂布カルマとか?

(吉田豪)そうです、そうです。

(宇多丸)しかもUZIとか、ちょっとタイムリーになっちゃいましたけども。どうして急にヒップホップの人がこんなに増えたんですか?

いままででいちばんカオスな人選

(吉田豪)全然深い意味はないんですよ。単行本化する気もないぐらいの感じで。人間コク宝の連載をずーっとやっていた『ブレイクマックス』っていう雑誌が休刊になって。で、よりエグい『実話BUNKAタブー』っていうかなりひどい雑誌があるんですけど。「『実話BUNKA超タブー』とどちらかで連載してくれ」ってたのまれて、ずーっと逃げていたんですよ。でも、逃げ切れなくなったんで、いままでとは違ってそんなにテーマ関係なく、だから元アイドル的な要素もあったり、現役アイドルも出るし。元アイドルも出るし。単純に会いたい人に会っていただけなんで。いままででいちばんカオスな感じにはなっているんですよ。

(宇多丸)うんうん。すごいですね。メンツがね。

(吉田豪)そんな中で、単行本未掲載だったのも実は載せていて。それがちょっとすごいので軽く紹介したいのが、浅野いにお先生という漫画家の方。まあ、サブカル、おしゃれ系。

(宇多丸)おしゃれな感じですよね。『Life』のTシャツとか。

(吉田豪)TBSラジオで言うと『Life』の印象が強いんで。なんかまあ、いわゆるちょっといけ好かない……(笑)。

(宇多丸)そんなことは言ってないよ(笑)。インテリ感、おしゃれ感……。

単行本未掲載だった浅野いにお先生のエピソード

(吉田豪)インテリ感、おしゃれ感じゃないですか。ヴィレヴァンに推される人で、仮想敵にされやすい人で。で、最初に1回目のインタビューは前の単行本(『人間コク宝 まんが道』)に載っているんですよ。それで敵か味方か確認するっていうので行って。

人間コク宝 まんが道
Posted at 2018.5.7
吉田 豪
コアマガジン

(宇多丸)「敵か味方か」(笑)。

(吉田豪)想像以上にどうしようもない人で好きになって帰ってきたっていうパターンだったんですよ。

(宇多丸)アハハハハハッ! 「どうしようもない」。ああ、そうなんですか?

(吉田豪)まあラジオでわかりやすく言うと、「僕は基本的には伊集院光さんぐらいしか聞かない人で、『Life』とかは本当難しすぎてわからなくても。全然聞けないです。なに言ってるのかわかんないんです」っていう。

(宇多丸)アハハハハハッ! そういうことを言っちゃダメでしょう?(笑)。

(吉田豪)「あなた、仕事しているんですよ!」っていう(笑)。

(宇多丸)そんな言わなくていいのを言っちゃうと。

(吉田豪)そう。その言わなくていいやつの極み。そのせいで単行本に掲載できないと思っていたのがいまさらOKが出て載ったんですよ。

(宇多丸)なんだろう?

(吉田豪)これが、最初のインタビューの時点で不穏な話が出ていたんですよ。「いま付き合っている彼女の顔が好きじゃない」とか。

(宇多丸)アハハハハハッ! 言わない、言わない!

(吉田豪)思っていたことを全部言っちゃうんですよ。で、要は「エッチをする時も局部しか見ていない」とか、そういうことを言うんですか! みたいな。

(熊崎風斗)言わないであげて……。

(吉田豪)そのせいで彼女とケンカになったんですけど、それを乗り越えて結婚をした。

(宇多丸)ええっ? いいの? 彼女は。

(吉田豪)したんですよ。で、その彼女とギクシャクしている話っていうのをずーっと聞いたインタビュー(笑)。っていうか、なんで2度目のインタビューをしたかっていうと、小学館の謝恩会の二次会かな? で、話していた話があまりにも異常だったんで、面白い。それを掘り下げてみたいという。要は彼女に「このアイドル、かわいいな」とか突然言うと彼女が嫉妬する。「なんでそういうことを言うの?」って。

(宇多丸)まあ、それは理解できますけどね。

(吉田豪)で、この人は思ったことを全部口にしちゃうから、考えたのは「思ったことを口にしなければいい」じゃなくて、「思わなければいい」になっていて(笑)。

(宇多丸)フハハハハハッ!

(吉田豪)「女の子はかわいいと思わない!」っていう。

(宇多丸)ひ、低い!

(吉田豪)って考え始めて。で、その頃にちょうど髪の毛が薄くなってきたのでそういう薬を飲み始めたら、あれって女性ホルモンなんですよね。で、感覚がちょっと変わってきて、だんだん「男性がいい」って思い始めて。で、もともと女装願望があった人なんですよ。「性転換してみたいな」とか真顔で言い始めていて。で、なんでかっていうと、そこからなんですよ。奥さんが怒るから。「それだったら、いい?」って聞いたら、「いい」って言われたみたいな……。謎なゆがみ方しているじゃないですか。すごい不思議な人で。

(宇多丸)なんなんだろうな? 思考がおかしい。

(吉田豪)本当おかしいんです。で、あとはだからすごいモテそうなタイプなのにモテている実感がない人なんですよ。その不安をずーっと抱えていて。で、このインタビューで突然言い始めたのが、「これは多分カットすると思うんですけど……」っていうのが、「最近、デリヘルにハマっていまして」って言い始めて(笑)。「はあ?」っていう。だからモテの実感がない。「たまにTwitterとかで『素敵』みたいな感じで言われるけど、それは『浅野いにお』っていう漫画家が持てているだけで、それは僕じゃない」っていう。

(宇多丸)うんうん。まあ、そこまではいいとしよう。

(吉田豪)「生身でモテるかどうかの実験がしたい」っていうことで、デリヘルに通い始めるっていう。

(宇多丸)関係ないよ!

(吉田豪)職業も嘘をついて、このままで行って。

(宇多丸)いや、風俗でモテるのモテないのって……。

(熊崎風斗)それで実感できるっていうことなんですかね?

(吉田豪)そうなんですよ。そんなことをやり始めて。で、「デリヘル楽しい!」っていう(笑)。

(宇多丸)フフフ(笑)。なんか当初の目的からどんどんズレている感じが……。

(吉田豪)ズレている感じなんですよ。で、この時期に『オトナの!』っていう番組があって。で、僕が「ゲストのパートナー、誰がいいか?」って言われて、杉作さんとかリリーさんとか、僕が仲がいいような感じの人は前に出ていたんですよね。で、誰か珍しいパートナーはいないかな?って思った時、思いついたのが浅野いにお先生で。1回、その時期に一緒に出たんですよ。

(宇多丸)うんうん。

(吉田豪)で、打ち合わせは別々だったんですね。で、現場に行きました。簡単な台本があるじゃないですか。見て、ビビったんですよ。浅野いにお先生のパート、見出しに「デリヘル」って書いてあって。

(宇多丸・熊崎)フハハハハハッ!

(吉田豪)テレビで何の話をするために来たんですか?!っていう(笑)。

(宇多丸)それ、テレビもテレビだよ! 全体に!

(吉田豪)で、テレビで本当に堂々とその話をして。なおかつ、新ネタまで入れちゃって。で、奥さんとちょっとピリッとした関係になって。

(宇多丸)ちょっと枡野(浩一)さんとかにも近いかもしれないな。

(吉田豪)ちょっと違うんですよ。正直さを履き違えた人というか。でも、それが面白いのは間違いないです。

(宇多丸)あと、低い。枡野さんをさらに低くした感じ。

(吉田豪)で、実は最近『零落』っていう漫画を出したんですが、それが主人公が漫画家で。奥さんとちょっとギクシャクし始めて風俗にハマる漫画っていう。

(宇多丸)じゃあ、本人じゃん。

(吉田豪)そうなんですよ! ほぼ実話なんですよ。

(宇多丸)ヤバい、読まないと!

(吉田豪)すごいですよ。「なんでこの人、こんなレベルまで描いたんだ?」っていう。

零落 (ビッグコミックススペシャル)
Posted at 2018.5.7
浅野 いにお
小学館

(宇多丸)浅野いにおさん、そんなすごいんだ。

(吉田豪)あの、浅い感じで批判する人多いですけど、すごいですよ。この人。

(宇多丸)全然ナメちゃいけない。そのあたりもじゃあ、『帰ってきた人間コク宝』を読んでいただいてという感じで。ちょっと濃厚にありがとうございました。様々な旅をしたり、とんでもない人の心の闇を覗いたり(笑)。ありがとうございました。

帰ってきた人間コク宝
Posted at 2018.5.7
吉田豪
コアマガジン

(熊崎風斗)プロ書評家でプロインタビュアーの吉田豪さんでした。

(宇多丸)またよろしくお願いします。

(吉田豪)どうもです!

<書き起こしおわり>

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