吉田豪さんが2011年にTBSラジオ『小島慶子キラ☆キラ』で当時都知事だった石原慎太郎さんにインタビューした際の話をしていました。子育て本を何冊も出している石原さんに子育てについて聞いています。
(小島慶子)そんな中、twitterでも結構評判ですけど。東京都知事 石原慎太郎さんにインタビューを。
(吉田豪)もう大ネタですよ。僕がまさか、都庁にのぼることになるとは。
(ピエール瀧)しかも、都知事にインタビューって。
(吉田豪)そうです。知事の会合室みたいなのがあるんですけど。そんなところで僕が取材することになるとは。
(小島慶子)これ、媒体はなんだったんですか?
(吉田豪)週刊ポストです。行ってきたわけですがね、正直言って僕、石原慎太郎さん、かなり好きじゃない方だったんですけど。おふたりはどうですか?慎太郎のことは?(笑)。
(小島慶子)発言を聞いて、ギョッとしたことは過去に何度も何度もありますね。
(吉田豪)なんだろうな?ただ、あの人の場合、失言じゃなくて暴言ですよね。口を滑らしてじゃなくて、わざと言ってますよね。
(ピエール瀧)まあ、見てる世界と育った世界も違う人なので。そういうのが出てきちゃうのかな?っていう感じの人ではありますよね。
(吉田豪)まあ、クラブ文化の人とかはだいたい嫌いじゃないですか。
(ピエール瀧)ああ、そうですね。クラブの騒音問題とかね。警察が来たりしますから。
(吉田豪)も、そうだし。あと、新宿2丁目周辺の人もだいたいね、この人のことを嫌いでね。だからtwitterとかでもね、『吉田豪がなんでこいつの味方をするんだ?』みたいなことがあったりするんですけど。僕は本当、嫌いですけどもこの本は好きですっていうスタンスで行ったんですよ。『スパルタ教育』という本ね。
(小島慶子)ほう。
(吉田豪)まあ、石原慎太郎さんは1932年生まれの現在79才。元気ですよ。で、30分間しか時間がなかったんですが、30分とは思えないぐらい話、聞けましたという。で、この『スパルタ教育』という本があるんですよ。
石原慎太郎の教育本『スパルタ教育』
(小島慶子)ずいぶん前に出た本なんですね。
(吉田豪)昭和44年ですね。70万部の大ベストセラーです。光文社の。まあ、作家としてはね、芥川賞を受賞した『太陽の季節』で有名なんですが。子育て本を何冊も出しているんですよ。たとえば、『息子をサラリーマンにしない法』とかね。
(ピエール瀧)たしかに、なってないですけどね(笑)。
(吉田豪)1人もならない(笑)。
(小島慶子)たしかに。本当だ。
(吉田豪)一応、入社はしてたりはするんですけどね。
(小島慶子)あ、そうだ。最初、日本テレビに入られて。
(吉田豪)あの、特徴的なのが表紙でだいたい子供がチンコ出しているっていう(笑)。
(小島慶子)あ、本当だ。
(吉田豪)とか、『真実の性教育』とか。いろんな子育て本を出してらっしゃって。
(吉田豪)だいたいまあ、社会的に見たら間違っているとされているようなことばっかりを書いてる本。石原さん、30代半ばで出した本なんですけど。まあ、目次もすごいんですよ。ざっと挙げるだけでも、『いじめっ子に育てよ』『犯罪は許せないが仕方のないことを教えよ』『暴力の尊厳を教えよ』『子供に酒を禁じるな』『子供の不良性の芽を摘むな』『子供の嘘を咎めるな』『友達が1人もいないことを褒めてやれ』『ものを壊すことを押さえるな』『親はいちばん軽蔑する人間の話をしろ』『先生を敬わせるな』『子供に戦争は悪いものだと教えるな』っていう感じで。まあ都知事らしいというね。
(ピエール瀧)そうですね。まあ、この箇条書きを聞いてイラッと来た人もいっぱいいるでしょうね(笑)。
(吉田豪)全部違うよ!っていうね(笑)。で、『今日は都知事の子育て本を全部持ってきました』って伝えたら、『読んでくれたの?そこに全部書いてあるから、それでいいよ!』っていう感じで。
(小島・瀧)(笑)
(吉田豪)なんか、意外とざっくばらんというか。変なプレッシャーとかなかったですね。威圧感とか。こういうなりで、当然スーツも着ないで行ったんで、なんだこいつは?ってなるかと思ったら・・・
(小島慶子)金髪・普段着のね、人。
(吉田豪)『見たことないな、お前』みたいな感じで。それだけで終わって(笑)。で、まあ『この本に書かれているようなことは、むしろいま読んだほうが届きそうな気がするんですよね』って伝えたら、『まあ、そうかもしれませんね。どんどん若い人がダメになってきたし、親そのものがひ弱になってきたから』っていう感じで。まあね、『子供を自由にさせすぎたらよくないって世間でもわかってきて。いまだからこそ、スパルタ教育を復刊させればいいのにって思うんですよ』って伝えたら、『でもそれは家での事例のことを書いているだけだから。基本的に教育の制度を変えなきゃダメ』っていうことで。
(小島慶子)ふーん。
(吉田豪)都知事がお世話になっている鍼の名医が神宮前にいるそうで。竹下通りの横を通っているらしいんですよ。都知事が。
(小島慶子)鍼に行く時にね。
(ピエール瀧)なるほど。ちょいちょい行ってると。
(吉田豪)竹下通りへ。そうすると、若い人がガヤガヤ混んでいて、変なブティックがあって。原宿駅を下りて若者たちとすれ違う時にさっさと歩かないんだよ。向こうがダラダラ歩いててっていうことで。年寄りが来てもぜったいに避けてくれないと。で、それでイライラしていて、その鍼灸で治療を受けていたら、隣から年配の人が話しているのが聞こえてきて。『この間韓国に行ったら、繁華街を歩いていたら休日は若い人がたくさんいたけど、歩き方が違う。シャキシャキしていて、年寄りがいるとちゃんと道をあけてくれていて。先生、なんで同じ年代の若者があんな歩き方が違うのか?』って言っていて。石原さんは、『非常に目で見てわかる象徴的な出来事だと思いました』っていう。
(ピエール瀧)うーん。
(吉田豪)まあ、要ははあれですね。だから石原さんが、都知事が言うには、教育問題だったら韓国の真似になるかもしれないけど、高校を卒業したら2年間は軍隊か消防か警察か、最低海外協力隊で外国にやってやらせるようにしたらいいっていうね。日本も徴兵制にしろという、いつもの口調になっていって。で、『そうやって集団生活をさせたら、いい体験をしたって思ってその連中が20歳になって選挙権をもらったら、絶対に1票入れるよ』みたいな感じで。『でもな、文部省っていうのは馬鹿の集まりだから。役人も。それがまた思いつきでゆとり教育なんかやるでしょ』みたいな感じで怒りだして。で、戸塚宏さんと仲がいいんですね。戸塚ヨットスクールの。
(ピエール瀧)戸塚ヨットスクール校長の。
(吉田豪)そうです。『この間も戸塚と話したんだけど、「石原さん、教育っていうのは所詮体罰です」って言うんだよ。俺もその通り思う。体罰っていうのは残虐行為と違って、立たせるとか男のお尻を叩くとか、せいぜい平手打ちを食らわせるぐらいっていうのはあったっていいと思っている。それはやっぱりしつけなんですよ。しつけっていうのは刷り込みなんです。たとえば九九にしても、2×2が4とか2×3が6とか。それは計算じゃなくて刷り込みで暗記してて。ある程度の年齢、幼年期から中学くらいまでは刷り込む意味での体罰は必要』って言っていて。そこまではわかるんですよ。僕も。で、スパルタ教育にも『暴力の尊厳を教えよ』とか『子供を殴ることを恐れるな』と書いてある。ただ、戸塚さんも戸塚ヨットスクールの件では相当叩かれて。その10年前にスパルタ教育を出したら、すごいベストセラーになったとはいえ、批判の多かったんじゃないか?と思って聞いたら、石原さん曰く『多かったですよ。子供は殴れって書いたから。俺、そう書いたかもしれないけど、俺はあんまり殴ったことないんだよ』って言い出して(笑)。
(ピエール瀧)うん(笑)。
実は子供をあまり殴ったことがない
(吉田豪)ええっ!?っていう(笑)。自分で言っていて、殴ってなかったことが判明。
(ピエール瀧)それぐらいの気概でいけってことなんでしょうね。たぶんね。
(吉田豪)でも、それで僕が笑ったせいなのか、『でもね、俺は殴られたことはあるんだよ』って言い出して(笑)。『俺、親父に殴られたよ。小学校高学年の時にね、弟の裕次郎を連れてボートで川遊びしていたら、月が出るぐらいになっちゃって。家に帰ったら親父が「貴様ら、どこに行っていた!?」ってなっていて。裕次郎は要領いいから俺の影にパッと隠れて。僕は「すいませんでした。実はこれこれしかじかで。裕次郎は僕が連れて行ったんだから、ぶつんだったら僕をぶってください」って言ったら、親父が1回バーン!と殴ったよ。その時は殴られて当たり前だと思ったし、親の愛情も感じましたけどね』って言っていて。まあ、ぜんぜんスパルタ教育でもない、普通の話だっていう(笑)。それぐらいはうちでもありましたっていう。でも、そんな感じで割と自分の間違いというか、そういうのを認める感じなんですよね。突っ込まれると。矛盾点を。
(ピエール瀧)なるほど。
(吉田豪)『そうなんだよ』みたいな。それも意外で。で、スパルタ教育の内容をいろいろつっこんでいって。『子供をいじめっ子に育てよと主張されてましたよね?』って聞いたら、『ハハハハッ!ちょっと言い過ぎたかな?』っていう感じで(笑)。認めるんだ、そこ?っていう。で、『子供の不良性の芽を摘むなとかは?』って聞いたら、『まあ、なにをもって不良と言うかはよくわからんけども、やっぱり他の人間と違ったっていいんだよ。そこは人間の個性なのに。それをあんまり抑圧しても仕方ないと思いますよ』っていう。あ、正しいことを普通に言ってるっていう。『スパルタ教育は社会的に正しくないと言われそうなことばかりを書いているんだけど、読むと納得できることが多かった』って伝えたら、石原さんは『社会の通念とか社会の規範っていうのはある意味みんなが無難に摩擦を起こさずに生きていく最低限の約束みたいなものでしかないからね』と。
(小島・瀧)うん。
(吉田豪)まあね、『親はたしかに自分の軽蔑する人間の話をしろなんていうくだりは、社会的に考えたら確実に間違ってますからね』って言ったら、やっぱりまた『ハハハ!』って笑い飛ばして。『昔書いた本ですから。ちょっと粋がったところがあるかもしれない。いまは自分で読みたくないな』っていうね。照れくさいからって(笑)。
(ピエール瀧)(笑)
(吉田豪)素直だ!っていう(笑)。さらにはね、『ただ、ひとつだけ間違ったのはね、性教育の話が書いてある本があった』って。さっき出した・・・
(ピエール瀧)真実の性教育。
(吉田豪)『これでひとつ間違ったのはね、同性愛について書いた点を間違えた』って言っていて。まあ、同性愛の方の批判はこの人、しょっちゅうやっていて。それで問題に鳴っているんですけど。それを間違ったって言ってたから、石原さんも素直になった!と思ったら、『違うんだよ。同性愛の人間っていうのはかわいそうなんだよ』って。ぜんぜんあんた、反省してないじゃないですか!っていう(笑)。
(ピエール瀧)(笑)
(吉田豪)まあその、遺伝子的になものだから。しょうがないんだっていうようなことなんですけど。反省してない感全開な話をしだして。それでまあ、美輪明宏さんとの確執の話とかどんどん始まって。僕はせっかくなんでつっこんでいったんですよ。『石原さんは本当、そういうホモの人に嫌われがちじゃないですか。おすぎとピーコさんもすごい悪口言ってましたからね』って言ったら・・・そうなんですよ。昔、おすぎとピーコさん本人にも聞いたことがあるんですけど、なんかの番組に選挙の後に出たら、税金のことでおすぎとピーコが偉そうに言ってたんで、それで僕はなにもわからんから、『君らは歌手?』と聞いたら、『うわー、歌手に見えますか?うれしいわ。本当はそうなりたいの』って言われて、『お前ら、オカマか?俺はオカマとナマコは大嫌いなんだよ!』って言ったエピソードがあって。
(小島慶子)なんなんですか(笑)。
(吉田豪)まあでも、これがいい話につながるんですよ。
(小島慶子)なんでナマコがそこで出てくる(笑)。
(吉田豪)本当に嫌いなんでしょうね。そういう風に言った後で、実は石原慎太郎さんの喧嘩の相棒というか護衛の人間がいて。タフな友達が。『石原さん、気をつけた方がいいよ。あれは女じゃなくて、やっぱり男なんだから。2人かかったら、なにするかわからないよ。真っ青になって体震わせて怒っていたから』って言われて。で、番組終わった後に俺は『ああ、そうかい』と。そっから珍しく逗子から電車に乗った時に、新橋で降りようと思ったら前におすぎとピーコがいたっていうんですよ。このタイミングで。『怖いじゃないですか?』って言ったら、目の前が下りの階段で。これはケンカを売られたらどうかな?って思ってさ。その頃はまだ若かったしどうにかなると思ったから、まずはハッタリだから『おう、どっかで見た連中だな。なんて言ったっけ、お前ら?』って言ったら、『おすぎとピーコです』って言うから、『ああ、そうかそうか。元気?』って言ったら、『はい。どうぞ、お先に』って。やっぱりケンカっていうのはそういうもんだよって、ぜんぜんケンカでもなんでもないんすよ(笑)。
(小島慶子)(笑)
(吉田豪)おすぎとピーコ、仕掛けてこないですよ。そこで(笑)。考え過ぎです、あなた!っていう(笑)。爆笑しましたよ、この話。
(ピエール瀧)そうだねー(笑)。
(吉田豪)『2人がかりになったら怖いですよ、おすぎとピーコ』って言われてその気になる石原慎太郎っていう(笑)。
(ピエール瀧)たしかに、おすぎとピーコが本気になって2人でこう、攪乱作戦とか込みで来たら強そうな気もするけど。
(吉田豪)グルグル回ったりして、どっちかわからない(笑)。
(小島慶子)どっちがどっちかわからない作戦(笑)。忍者みたいに。
(ピエール瀧)ねえ。棒とか持ちそうじゃん。だって(笑)。
(吉田豪)っていうか、そんなこと本気で考えている石原慎太郎に笑いましたけどね。駅で『ここはヤバいな』とか。