吉田豪さんが2008年1月にTBSラジオ『小島慶子キラ☆キラ』の中で俳優の梅宮辰夫さんについて話していました。
(小島慶子)で、今日が辰っちゃんさんです。
(吉田豪)そうなんですよ。これも念願ですよ。
(小島慶子)梅宮辰夫さん。
(吉田豪)僕、もうこの仕事始めてずっと「いちばん会いたいのは梅宮さん」と言い続けて。現在72歳、ついに会えましたというね。
(ピエール瀧)72歳なんだね!
(吉田豪)元気ですよね! まだあのギラギラ感。パツンパツンのジーンズを履いてね(笑)。
(小島慶子)そうなんだ。これはインタビュー?
(吉田豪)インタビューです。そうです。ちょうど僕、あれなんですよ。ヤフーオークションで梅宮辰夫さんの梅辰コロッケ亭の等身大人形というのをね。
(小島慶子)うわっ! 辰っちゃんだ。
(ピエール瀧)エプロン緑バージョンなんですね。
(吉田豪)そうですね。漬物バージョンは赤なんですけども、緑バージョン。ちなみに詳しく聞いたんですけども、造形師も違うらしいです、これ。顔も違うんですよ(笑)。
(ピエール瀧)そうなんだ。へー!
(小島慶子)等身大の人形、どこに置いてるんですか?
(吉田豪)これ、事務所の入り口に置いてるんですけども。すんごい嫌な圧力で。たまに僕もすっかり忘れてドアを開けた瞬間に「ひいっ!」って思うぐらいの怖さがあって(笑)。
(ピエール瀧)フフフ、魔よけとしては最高ですよね。
梅宮辰夫・梅辰コロッケ亭の等身大人形
梅宮辰夫&松方弘樹(人形)。 pic.twitter.com/Y4USCN6J2F
— 吉田光雄 (@WORLDJAPAN) January 23, 2017
(吉田豪)最高ですよね。泥棒が入った瞬間にビビりますよっていう(笑)。それを買って届いた日に取材が決まったんですよ。
(小島慶子)あら! またご縁ですね。
(吉田豪)運命的なね。
(ピエール瀧)2人、やってきたっていうことですね(笑)。
(小島慶子)フハハハハハハハハッ! 生身と?
(ピエール瀧)動く方と動かない方っていう(笑)。
(吉田豪)で、梅宮さんって実はあれなんですよ。僕、タレント本コレクターなんですけど、梅宮本って大量にあるんですけど、ほとんどが料理本なんですよ。だから僕も買ってないんですね。ほとんど。
(小島慶子)ああ、そうか。お料理は関係ないもんね。
(吉田豪)全然、全然。明らか梅宮色皆無な本ばっかりで。唯一の本が『俺は人生料理人』っていう1992年に双葉社から出た、これ。人生相談の本ですね。雑誌で連載した人生相談をまとめた本なんですけど。週刊大衆の。で、これを持っいったわけですよ。「これが本当に大好きで……」って伝えたら、すごいしげしげと本を見られて。「これ、なんだっけ? 覚えてないや。いつ頃の本? 18年前? どこの本?」っていう(笑)。何ひとつ覚えてないんですよ。「俺、全然覚えてない。はー! 若いな!」ってしげしげと読み始めて(笑)。
『俺は人生料理人』
梅宮辰夫はあれだけのキャリアの持ち主なのに、料理以外の著書は『週刊大衆』でお馴染みの双葉社からしか出していなかったりします。 pic.twitter.com/7fn8kYEFD7
— 吉田光雄 (@WORLDJAPAN) December 12, 2019
(小島慶子)フフフ(笑)。
(ピエール瀧)「俺、若えな!」って(笑)。
(吉田豪)「なんだ、これ?」って(笑)。
(小島慶子)ああ、そう? すっかり忘れちゃってたんだ。
(吉田豪)「本当に何のこだわりもない人だ」っていう噂は聞いたんですけど、まずいきなりそれを目の当たりにして(笑)。「こんな本まで出てたんだ!」っていうね。
(小島慶子)ご自身のいい写真がね、表紙になっているじゃないですか。
(吉田豪)だから唯一出てる料理以外の本がこの人生相談の連載をまとめた本だっていうことからもわかるように、本当にたぶん本を作るっていう手間すら嫌いな人だと思って。
(ピエール瀧)これが料理本以外で唯一なんですか?
(吉田豪)唯一です。唯一の活字本ですね。だからたぶん「適当に作っちゃって」的なノリでやってるんだと思うんですよ。どういうことかっていうと、僕の友達が梅宮さんのインタビュー連載を一時期やったことあって。その人から聞いたんですけど、梅宮さんは「取材はいいから適当に書いちゃって!」っていう(笑)。
(小島慶子)じゃあ仕事にならないじゃない(笑)。
(吉田豪)そう言われたから、僕に「ちょっと本を貸してくれ」って言われたことがあったんですよ。で、この本を貸したことがあったんですよ。で、梅宮さんがどういうことを言ってるかを勉強して、それ風のことを作るっていう(笑)。
(ピエール瀧)フハハハハハハハハッ! なるほど!
(吉田豪)それぐらいに適当。
(小島慶子)よくそんな方にインタビューできましたね?
(吉田豪)そうなんですよ。だから「そんなことがあったらしいですね」って言ったら、「いまでもそう思ってますよ。『適当に書いちゃってください』って」っていう(笑)。
(小島慶子)へー! じゃあ別に事実とは違うことを書かれても「別にいいか」っていう感じなんですか?
(吉田豪)気にしないんでしょうね。
(ピエール瀧)「どう思われようが、関係ねえ」ってことなんでしょうね。
(吉田豪)そう。全てがどうでもいいっていう。だからインタビューも正直、細かいことを聞かれても「覚えてないし面倒くせえ」っていうオーラが出るんですよ(笑)。本当に「えっ、あとで見せて。見たい!」とかね、この本も言っていて。「ああ、いいですよ、いいですよ」って言ったら本当に熟読し始めちゃったから。「もういいですよ。差し上げますよ」って言ったら「本当? ありがたい!」っていうね(笑)。
(一同)フハハハハハハハハッ!
(吉田豪)「嬉しいな!」っていうね。あげ甲斐があるっていう。だからいま、この表紙のないバージョンしかないんですよ。
(小島慶子)ああ、そうか。表紙のあるバージョンはご本人に差し上げちゃったんですね。
(吉田豪)そうなんですよ。書い直そうと思ったら、本当にもうなかったっていうね。すごい入手困難で。まあ、全然いいんですけどね。
(小島慶子)じゃあ、全体に本当に豪快な方ということですね。
(吉田豪)豪快です。で、この本自体が『俺は人生料理人』っていう。まあ「人生も料理しますよ」みたいな感じで。本が四章に分かれているんですけど。第一章が処世、第二章が任侠、第三章が女、第四章が家庭っていう。この四ジャンルをまとめているのもすごいじゃないですか(笑)。
(小島慶子)その四つに人生を分けるんだ(笑)。
(吉田豪)ざっくりと四つ(笑)。
(ピエール瀧)「任侠、女、家庭」って……(笑)。
(吉田豪)並べるもんじゃないですよね(笑)。並列のものではないっていう。「すごいですよね」って言っても本を熟読しながら「ああ、そう?」みたいな(笑)。
(小島慶子)聞いていない(笑)。
(吉田豪)で、「この本のアドバイスも大好きで。『ジョギングは嫌になったらさっさとやめちまえ!』『たばこが吸いたくなったら禁煙なんか即座に中止して、ケツからヤニが出るほど吸いまくれ!』とか。そういう基本的に不謹慎なことしか言ってないんですよ」って言ったら、「本当ね、いまはそういうことも問題になるけど、やっぱり思ってることをズバズバ言って、それを世間に公表してもらいたいんですよ。だからいま、テレビなんか見てるとかったるい!」っていう感じで。まあ、テレビ批判がどんどん始まって(笑)。
(小島慶子)そうか、そうか。
梅宮辰夫のテレビ批判
(吉田豪)とにかく、あれなんですよね。「政治家の顔に迫力がなくなった」って言っていたことがあって。「とにかく政治家も役者もそうで、何の変哲もない顔の人が多すぎる! かつての芸能界はどこにもいないような人の集まりだったのが、いまはどこにでもいる人になっちゃった」という。そういう意味では梅宮さんが前に「最近のヤクザ映画の俳優は全然ダメだ!」って怒っていたことがあったんですよ。
(小島慶子)まあでもね、ご自身のプライド、思い入れもあったでしょうからね。
(吉田豪)で、その理由っていうのが「あいつらは本職とつながりがないから」っていうね(笑)。
(小島慶子)そんな理由なの!?
(ピエール瀧)フハハハハハハハハッ!
(吉田豪)「リアリティーがねえんだよ」ってうい(笑)。
(ピエール瀧)なるほどね。「肌で感じていねえ」っていう(笑)。
(吉田豪)そうなんですよ。
(小島慶子)全然「役者として」とかの問題じゃないじゃないの!
(ピエール瀧)「どんだけヤバえのか?」っていう(笑)。
(吉田豪)そうです(笑)。いや、昔の東映ってそういう会社だったんですよ。だから梅宮さんがどうとかじゃなくて、東映がデタラメで。昭和の東映っていうのが本当にこれ、山城新伍さんが言っていたんですけども。博打のシーンがあると監督に「ダメだよ! なんでもっとちゃんとね、賭場に習いにいかないんだ!」って怒られたような時代で。「リアルを求めるようには本職と付き合え。その本職のモデルになった人からちゃんと盗んで、それをモチーフにして役づくりをしろ」っていう(笑)。
(小島慶子)昭和ですね!
(吉田豪)昭和なんですよ。だから梅宮さんも「仕事のために賭場には何回も見に行って。役者だからいろんなことを経験して当たり前。役者って経験できないことは『死ぬ』っていうことだけだから、あとは全部経験してしかるべき」っていうね。
(小島慶子)そういう役者哲学でもあるわけなんですね。
(吉田豪)「そういうどこにでもいないような人だからこそ、いまの芸能界だと怖いおじさんだと思われて。それがあるからみんなと交われない」って嘆いていたんですよね。でも、その迫力あるからこそ伝説もいろいろあって。実は10年ぐらい前かな? 「渋谷で木村拓哉さんが絡まれてるのを救った」という伝説があるんですよ。これ、女性週刊誌が一誌だけ記事にしてたんですけど。そのことを聞いたら梅宮さんがこう答えてくれたので、ちょっと瀧さん、お願いします。
(ピエール瀧)はい。「たまたまあいつがなんか渋谷で写真を撮られまくってて揉めたところを通りかかって。僕が『おい、どうしたんだ?』って言っただけの話で。それで事情を聞いてたらたまたまお巡りさんが来たの。同じ渋谷に僕はもう35年以上も住んでるわけだから、そのお巡りさんのことも若干なんか知っていて。『ちょっとすいませんけど、こいつのことをたのみます』ってキムタクのことをたのんだわけ。別に救ったわけでもないんだけどね。ハハハ……」っていう。こういう感じ?(笑)。
(小島慶子)かっこいい!(笑)。
(吉田豪)そういう感じですね。迫力があるからこそ、救出もできるっていうね。
(ピエール瀧)助けたんだけど、助けた気も全然ないっていう。
(吉田豪)全然、全然。まあね、突然梅宮さんが来たら怖いですよっていうね。で、そんな梅宮さんが役者になった理由っていうのが「いい女を抱きたい。美味い酒を飲みたい。カッコいい車に乗りたい」というすごいシンプルな……。
(小島慶子)欲望直結ですね。
(吉田豪)わかりやすいっていう。それだけで役者になった人が50年続いているのもすごいんですけども。だから奥さんに言われるらしいんですよ。「あなた、70過ぎたら普通の人はもうリタイアよ」っていう。で、「まさにその通りだと思うので、いまは本当に孫のためにがんばってるようなもんで。娘がさっさと亭主をもらってくれたりとかね。まあ亭主じゃなくてもいいけど、生活をきちっと孫のために安定させてくれれば僕は何も苦労することもない。できることなら毎日、ワインを側において釣りでもやっていたい」っていう感じで。仕事を続ける思い入れもそんなにないんですよね。で、「最近バラエティ番組とかによく出てますけど、あれもはっきり言って苦痛。ひな壇に座ってる自分は本当の自分の姿じゃない」っていう。「やっぱり自分の意識としては、自分は俳優だ。それも昔の俳優だと思う」って言ってるんですけどね。
(小島慶子)そうか。そうなんですね。
(吉田豪)それぐらい俳優に対して思い入れがあるようでいて、聞いてみると別にないんですよね(笑)。
(小島慶子)ええっ、なんでよ!
俳優に思い入れがあるようで、実はない
(吉田豪)俳優としてのこだわりがまた独特な人なんで。そして梅宮さんは「口下手だからバラエティ番組もつらい」みたいな話をしているんですけども。
(小島慶子)そうなんですか。あまりそうは見えないけどな。
(吉田豪)で、その梅宮さんの代弁者が親友の山城新伍さんだったわけですよ。山城さんが代弁者になって、梅宮さん伝説をいろいろと語っていたという感じで。で、僕が好きな梅宮伝説が突然、山城さんに「おい、兄弟。視聴率って何なんだ? あれが上がるとみんな喜んだりとかしてるけど、何なんだ?」って聞いたという話があって(笑)。で、それを確認したら、「いや、視聴率は知ってはいる。知ってはいるけども、ちょっとした数字でもって右往左往するから、あれがわかんないんだ。1%ってどのぐらいの数字なんだよ?」「120万人ぐらいですかね?」「120万人の人が見てるか見てないか、増えたか減ったかっていうことか」っていう。デカいですよ、それ。そりゃあ右往左往しますよっていう(笑)。
(小島慶子)相当な人数ですからね(笑)。
(吉田豪)ちなみに梅宮さんが山城さんに「杉村春子って誰だ? そいつ、『不良番長』に出てたか?」って言っていたという。まあ『不良番長』っていうのは梅宮さんが主演した東映のデタラメな映画なんですけどね。その話も確認しましたが、ネタでしたね、さすがに(笑)。これは山城さんのデマだったという。
(ピエール瀧)なるほど。盛った話ですね(笑)。
(吉田豪)ちなみに、その梅宮さんの俳優へのこだわりの適当さが伝えるのが、梅宮さんに「いちばんウマが合った監督さんって誰ですか?」って聞いたら、この『不良番長』の内藤誠さんという人がいて。「この人は本当にデタラメで、NGも全然出さないでパパパッと映画を撮ってくれるんだよ。あれは楽でよかったな!」みたいな(笑)。楽基準なんですよ。「飲みに行ける!」とかね(笑)。そういうだけという。で、この山城さんとのお二人の友情ネタで好きなのが、梅宮さんがアキレス腱を切って入院してたら山城さんが手ぶらでお見舞いに来た話で。見舞いに来たのに手ぶらだから「お前、土産も何も持ってきてないのか?」って梅宮さんが聞いたら、「いまからお土産をあげる」って言って一緒にソープに行くっていうね。
(小島慶子)ええっ? だってケガしているんでしょう?
(吉田豪)ええ。ギブスをはめたまま松葉杖ついて行ったっていう、そういう美しい友情の話とかがありますね(笑)。
(小島慶子)ええっ? 治りが悪くなるじゃない……。
(ピエール瀧)でも、してくれるからね(笑)。
(吉田豪)そうです、そうです(笑)。寝てるだけで……っていうね。そういう梅宮さんだから、結構マスコミがあることないこと書いてきた気がするんですよね。昔の記事とか集めても。
(小島慶子)そうか。自分で「あれは違う!」とかもおっしゃらないから。
(吉田豪)言わないから。
(ピエール瀧)どうでもいいからね。
マスコミにあることないこと書かれてきた
(吉田豪)そうです。たとえばだから初体験のエピソードにしても、いろんな説が出てるんですよ。「19歳の時」という説と「高校2年の時にキャバレーのホステスに見初められて童貞喪失。そのまま同棲に突入したらトラック運転手のバイト中に疲れのあまり居眠りして家に突っ込んだ」説とかね。「いろいろと説があるんですけど」って言ったら、「19歳、それは事実」って言って。それで「童貞じゃなくなった時、やっぱり女ってこんなにいいものかと思って足繁くそのホステスの家に通って朝帰りするわけじゃないですか。それで親父の車を夜中に乗り回して、明け方に家に帰るわけですよ。そうすると当然寝不足ですよね。それで居眠りして突っ込んだ」っていうね。トラックのバイトじゃないけど、突っ込んだのは事実というね(笑)。
(ピエール瀧)女がらみで突っ込んだところは合っているんだね(笑)。
(吉田豪)そうです、そうです。ディテールが微妙に違っただけというね。
(小島慶子)へー! じゃあ伝説はほぼ本当だったんだな。
(ピエール瀧)というか、事実の方がふざけてますよね?(笑)。
(吉田豪)フハハハハハハハハッ! バイトもしてないっていうね(笑)。ただ通っていただけという。ただ、こういうようないろんなスキャンダルが出ていたんですけども、それがプラスになったというか。若い時からマスコミからいまで言うところのソープ……まあ「トルコの帝王」っていう肩書きで。まあ、そういう映画の主演をよくやってたん。当時、取材でもそういう話ばかり聞かれていて。普通だったらそういう肩書きをつけられたら、事務所サイドが止めに入ったりとか、本人が怒ったりするでしょうけど。当時の梅宮さんは映画でも女たらしとかヤクザの役だったから、東映の宣伝部もそれを推奨していたらしいんですよ。「辰っちゃん、やれやれ。好きなようにやって。金を使わずに宣伝もできる!」っていうね(笑)。そういう時だったから本当に誰にも文句を言われない。何をやっても。犯罪でなければ……っていうね(笑)。
(ピエール瀧)うんうん。おおらかだったんですね。
(吉田豪)おおらかな時代ですよ。「本当にいい時代だった。たとえばいま、不倫なんてすぐに問題にされるけどね、昔はそういうことをもし非難されたら『不倫の何が悪いんだ? 人間だから不倫の二つや三つはするのが当たり前だ!』っていうね、そういうような世界だった」って言っていて(笑)。それで「いまでも根っこにはそういう思いがあるわけですか?」って聞いたら「ありますよ、当然!」っていうね(笑)。
(ピエール瀧)食い気味で?(笑)。
(吉田豪)「当たり前じゃないですか!」っていう(笑)。
(小島慶子)72歳。うん。
(吉田豪)「結婚したからってね、たった1人の女房を守って90歳の爺ちゃんになるまで俺が母ちゃん1人しか知らなかったとか、そんなバカな話はないと思うんですけどね。あるですか、そういうこと?」って言われたんで、「まあチャンスと勇気とお金がなければあるんじゃないですかね?」って言ったら、「ああ、勇気がないからできないんでしょうね!」って……力強い!っていうね(笑)。さらには「不倫なんてあれ、いつから出てきた言葉なんでしょうね? 昔からある?」って言って。「姦通罪的なものはありましたよね」って言ったら「ええっ? 日本に姦通罪なんてあったの?」「ありましたよ!」っていうね(笑)。無邪気。
(ピエール瀧)うん。いいですよね。
(小島慶子)家族は大変ですよ、こんな人が旦那さんとかお父さんだったら!
(吉田豪)フハハハハハハハハッ! でも、真面目になったんですよ。そんな不良だった人が真面目になったのが、病気になって以降なんですよ。本当に朝まで飲んで遊んで……だった人が、睾丸ガンから肺ガンになった時に「俺はガン体質で、これはヤバい。すごい早死するかも?」って思って。それで不良をやめたんですよ。それでマイホームパパに転身という。
(小島慶子)ああ、そうなんですね。
(ピエール瀧)じゃあ、料理とかもそのへんから?
不良をやめてマイホームパパに転身
(吉田豪)そうなんです。で、「いい話だな」と思ってたんですけど、この本とかを読んでいてもマイホームパパとは言いながらも、「女房には内緒だけどマイホームパパだってたまには女遊びもする」って本には書いてあって(笑)。
(小島慶子)じゃあ、変わってないじゃないですか。
(吉田豪)たしかに「本当に浮気したことないんですか?」って聞かれると、いつもこう答えるらしいんですよ。「浮気したかしてないか、言いません。でも30、40で結婚したからって言って、それからずっと終生『女房1人しか知りません』なんて気持ち悪いと思うし、考えられないでしょう? そのへんのことをわかってもらえたら、どう思おうとあなたの勝手ですよ」っていうね。
(小島慶子)もう「してます」って言ってるのと同じことじゃないですか!(笑)。
(吉田豪)「俺、いまもし家族がいなかったら、バリバリだよね。『ええっ!』って言われるようなことをしょっちゅうやってると思うよ!」っていうね。いや、さすがでしたよ。
(小島慶子)72歳とは思えない。ねえ。
(吉田豪)全然。で、「そのストッパーになっているのが家庭ですよね」って言いつつも、写真を撮る時にね、女性カメラマンがカメラを向けると「どうせならサマになるような写真をいくらでも撮らせてくれますよ。『あいも変わらずすごいね。横にいるの、どこのいい女?』ってね、そう言わせてあげるよ」っていうね。かっこいいんですよ!
(ピエール瀧)フフフ、いいですね。
(小島慶子)昭和の映画スターですね。
(ピエール瀧)肉食獣の生き残りですよね。
(吉田豪)そうです。ひたすら言っているのが「芸能界ってデタラメじゃないと面白くない。仮に僕がいま、この時代生まれてきて。こういう世界でデビューできるってなっても、何も魅力を感じないね。好きなことが全然できない」とか。そういう話をずっと言ってる感じで。
(小島慶子)そうなのか。みんな、不甲斐ないというね。
芸能界はデタラメじゃないと面白くない
(吉田豪)「かっこいい!」って思ってたんですけどね。で、「俺は俳優だ」って言いながらも俳優のこだわりのなさ的な意味で言うと、昔からその『不良番長』とかの時に「衣装合わせが面倒くさい」って言って衣装は1着しか着ないとか(笑)。そういう、基本は上着を脱ぐか脱がないかぐらいの違いしかやらないとか。あとはまあ、最近のテレビがどうとか。「スポンサーの顔色をうかがってばっかりで……」とかぼやいていた後に、次の仕事が入ってたんですよ。だから取材を「次の仕事あるから、そろそろ……」「いや、いいから、いいから。もっと聞いてってよ!」ぐらいの感じで待たせているわけですよ。で、気を使って「いや、もう全然いいんで。どうぞ」ってやったら、次の仕事っていうのがCMの衣装合わせの仕事で。フハハハハハハハハッ! 「それ、あなたがぼやいていてこと」っていう(笑)。
(小島慶子)アハハハハハハハッ!
(吉田豪)でも、それを両立できるからちゃんとこうやって仕事をできているんだと思うんですよね。
(小島慶子)ああ、なるほどね。先ほどもおっしゃってましたもんね。「全然あんなのは自分じゃないや」って思いながらも、まあバラエティのひな壇にも座ることは座るっていうね。
(吉田豪)そこはたぶん、山城さんは頑固で不器用でできなかった部分があったと思うんですよ。否定しちゃったというか。梅宮さんはぼやきながらも、ちゃんとやることはやるっていう。
(小島慶子)だから、72歳でもなおね。
(吉田豪)元気で。そして最終的には「もういいの? まだやるよ!」って言った後に握手して。「まあ1回、飯でも食いましょう。酒も飲みましょう!」っていう。かっこいい!
(ピエール瀧)それは、ねえ。結局そういうの、衣装合わせ1回とかそういうのを適当にやってもみんなが許してくれるってことは、でもそのオフの時に超面白いんでしょうね、本当に。かっこいいし。
(吉田豪)ああ、メシとか食っている時のケアがっていうね。
(ピエール瀧)そう。だって「さすが辰っちゃん!」みたいなことになっているわけでしょう?
(吉田豪)そこで嫌われない、ちゃんとしたものがあるっていう。
(ピエール瀧)そういうのがあるんでしょうね。
(小島慶子)私、前にね、町でふらっと入った定食屋さんがね、結構当たりが強い、威勢のよすぎる定食屋さんでね。「なに、このぶっきらぼうな感じ?」って思ってたわけ。そしたらね、なんか「梅宮辰夫さんがよく来てる」っていうのをそのお店の若いスタッフの人から聞いて。「へえ、そうなんだ」と思って食べたらたしかにものすごく美味しかったのね。で、梅宮さんが来るぐらいだから、本当に美味しくて。本当にきっと料理人として認めてるんだろうと思った途端に、何かそのぶっきらぼうさが「本物っぽい!」みたいな(笑)。
(吉田豪)フフフ(笑)。
(ピエール瀧)スパイスになったわけね(笑)。
(小島慶子)「ここ、本物っぽいわ!」みたいな。すごい通うようになっちゃってね。梅宮さんマジックですよ。
(吉田豪)はい。信用できますよ。
(小島慶子)信用できる感じが今日、納得いきました。ありがとうございました。また来週、よろしくお願いします。
(吉田豪)はい。
<書き起こしおわり>