町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、アメリカの政府機能が予算案が通過しないため停止している件について話していました。
(山里亮太)町山さん? なんかちょっと元気がないですけど、大丈夫ですか?
(町山智浩)大丈夫ですよ。
(山里亮太)先週は男の裸情報であんなにゴキゲンだったのに……。
(海保知里)「亮太、亮太……」って。
(町山智浩)ああ、そうですね。いま、アメリカは政府機能が停止しているんでね。
(海保知里)ええっ? どういうことですか?
(山里亮太)勉強不足ですいません。
(町山智浩)政府機能が……だからアメリカの連邦政府が暫定予算案が議会を通らなくて。だから、もうお金が使えないわけですから、ストップしているんですよ。
(山里亮太)実際にそれで影響が出ている感じはあるんですか?
予算案が議会を通過しないので政府機能が停止
(町山智浩)まあ、州じゃなくて連邦政府が管理している施設とか、まあ公園であるとか。そういう連邦政府関係の役所は全部閉まっている状態ですね。
(海保知里)へー! そうなんだ。
(町山智浩)はい。えっ、日本では報道されていないですか?
(海保知里)一応されていますけど、すいません。勉強不足で。
(町山智浩)いえいえ。ちょうどドナルド・トランプが大統領に就任して丸1年目なんですね。就任記念日がそういう政府の機能停止という状態なんで。まあ、ものすごい大変な政権なんだなと思っていますけども。
(海保知里)昔、カリフォルニアに住んでいた時に、本当に「予算がない、予算がない」っていうことで。還付金も戻ってこないみたいな。「ちょっと1年待ってくれ」って言われたりしたことが昔、あったなといま思い出したんですけども……。
(町山智浩)それは州政府ですね。カリフォルニアの州の問題で。カリフォルニア州はずっと80年代から累積赤字がすごくて。それを返済するので大変なんで赤字なんですけど、それとはまた別の問題なんです。これは赤字でストップしているんじゃないんですよ。予算案が通らないから、ストップしているんですね。その原因は、ドナルド・トランプが秋に「ダッカ(DACA)」というんですけども。物心つかない頃に親に連れられてアメリカに入国した人たちがみんな、大人になりつつあるわけですけども。彼らを国外に叩き出そうとしているんですね。そういうことをドナルド・トランプがしようとしまして。
(山里亮太)はい。
(町山智浩)どうしてかというと、彼らは結局アメリカ以外は知らないわけですよ。自分の過失や意志ではなくて、親に連れられてアメリカに不法入国したんで、それをアメリカしか知らない、アメリカ人でしかない彼らをアメリカから叩き出すのはおかしい!っていうことで、オバマ政権の時に、彼らがアメリカ人になれるよう、市民権を取れるように法律を整備したんですけども。ドナルド・トランプが彼らを全部、とにかく叩き出すと言っているんで、民主党と共和党の一部がそれに反対して、真偽が進まないんでストップしていたんですね。
(山里亮太)ふんふん。
(町山智浩)で、その彼らのことを「ドリーマー」って呼ぶんですけども。「夢見る人たち」っていうことですね。で、それはアメリカン・ドリームですよ。アメリカ人になるという夢ですよね。で、彼らはアメリカしか知らないんだから、アメリカ人になるって言われても、困るわけですけども。アメリカはアメリカで生まれれば、誰でもアメリカの国籍を取れるんですけど、ちっちゃい頃とか赤ん坊の頃に連れてこられた人たちは取れないんですよ。
(山里亮太)へー!
(町山智浩)ただ、彼らはアメリカしか知らないから、完全にアメリカ人ですよね。社会的にはね。その人たちの地位を守ろうと言っている派と、全部叩き出せ!って言っているトランプとでモメているわけですよ。
(山里亮太)はー! なるほど。で、本来の予算とかも全然決まらずに、いろいろと機能が停止していっていると。
(町山智浩)だから予算案が通らなければ、一切連邦政府はお金を支出できないわけですから、ストップするわけです。
(山里亮太)じゃあ、警察とかも?
(町山智浩)警察はアメリカは地方自治体が運営していますので。FBIは連邦警察なんで、FBIは止まるんですよ。
(山里亮太)そうか。FBIが止まっちゃうんだ。へー!
(町山智浩)はい。CIAとかも連邦なんで、一応止まる形なんですね。
(山里亮太)へー!
(町山智浩)という事態が起っているんですけども。まあ、そういう形で、アメリカは移民国家なんですけど、それを先に入った移民の方を優先しようっていうのはどうしてか?っていうと、これが上手く通ると、ドナルド・トランプにとっては自分のことを支持している移民が嫌いな人たちの得点を得られるわけですね。で、今年の秋に選挙があるわけですよ。だからその選挙で勝てるわけですよ。「移民を叩き出しましたよ!」っていうことでポイントを取れるから。
(山里亮太)なるほど。
選挙に向けてポイントを稼ぎたいトランプ
(町山智浩)ということで。ただ、その民主党もとことん戦うか?っていうと、そのへんが難しいところで。つまり、彼らが守ろうとしているドリーマーの人たちは選挙権を持っていないんですよ。
(山里亮太)なるほど。
(町山智浩)それを守るというのは完全に人道的な問題なんですよね。でも、単に票がほしいだけだったら守らなくていいわけですよ。っていう、非常にアメリカの道徳的な本質を問う問題に現在なっている形です。
(山里亮太)へー! これ、トランプになって結構いろんなものがめちゃくちゃになってきているっていうのは情報でよく聞くじゃないですか。それなのに、なんで本格的に失脚させるためにどうこうしようみたいな動きって出ないものなんですか?
(町山智浩)あのね、トランプ政権ってほとんど機能していない理由というのは、次々と人をクビにしちゃうだけじゃなくて、係の担当官を決めていないんですね。任命が全然進んでいないんですよ。だから要するに、なにも進んでいないし、なにも機能していないんですね。人がいないから。
(山里亮太)はい。
(町山智浩)次々にクビにしちゃうし。だから、経済がいいんですよ。
(山里亮太)「だから経済がいい」?
(町山智浩)だって放任しているから。政府がなにも口を出さないから、企業はやりたい放題ですから。だから株価は上がりますね。
(山里亮太)なるほど!
(町山智浩)だからこれ、共和党とかいわゆる保守系の人たちが主張しているのは、「自由放任主義」っていうので。「経済自由放任主義」っていうのがあるんですよ。政府が市場に一切介入しないという。実際に、仕方なくそうなっているような状態なんで。そうするとバブルが進みますよね。
(山里亮太)政策としてそうしているんじゃなくて。そうなるとまた、より一層貧富の差なんかガンガンに拡大して……。
(町山智浩)差がついていくんですね。今度、税制を変えるということで。まだ実際には変わっていないんですけど、これから変えるんですけど。そうするとまた、お金持ちと大企業がすごく免税されるんで。そうすると、株価は上がるでしょうけど、貧富の差は激しくなるでしょうね。
(山里亮太)そうでしょうね。国としてはどんどん弱っていっちゃいますよね。
(町山智浩)そのへんなんですよ。今回もね、そういう話なんですけども……。今年の夏に、アメリカですごいサプライズヒットの映画があったんですね。『ビッグ・シック』というタイトルで「大病」っていうタイトルのコメデイーなんですけども。
<書き起こしおわり>