プチ鹿島 2017年新聞報道 歴史に残る情報戦を語る

プチ鹿島 2017年新聞報道 歴史に残る情報戦を語る YBSキックス

プチ鹿島さんがYBS『キックス』の中で2017年の新聞報道を振り返り。2017年に起きた歴史の残る新聞報道の情報戦について紹介していました。

(プチ鹿島)プチ総論!

(塩澤未佳子)プチさんに自由に語っていただくコーナーです。

(プチ鹿島)はい。それでは今年最後のプチ総論ということで、テーマはズバリ、こちら。2017年新聞を振り返る。まあ、ありがたいことに今年は『芸人式新聞の読み方』というのを3月に発売して。

芸人式新聞の読み方
Posted with Amakuri at 2018.3.21
プチ鹿島
幻冬舎

(プチ鹿島)で、本もいろんな方に読んでもらえたのもうれしかったんですが、それをきっかけにいろんな番組に呼んでいただけてね。「ああ、そうか。そういうことか」って自分自身の仕事のやり方っていうのも気づいた年だったし。で、新聞6紙を朝刊紙だけでも取っているんですけど、今年は僕、『キックス』とかでも言うじゃないですか。やっぱり新聞って漠然と読むより、野球場にたとえて、「この新聞は一塁側にいるのか? 三塁側にいるのか?」って。たとえば、安倍政権っていうのがあったら、一塁側に座っているのか、三塁側に座っているのか。まあ、僕はジャーナリズムだったら三塁側に座っているのが普通だとは思うんですが。

(塩澤未佳子)うん。

(プチ鹿島)ただ、まあここ数年の特徴として、安倍政権というお題というか野球場に関しては、一塁側と三塁側が出来上がっている構図があるわけですね。それがマスコミとしていいのか悪いのかっていうのは横に置いておいて、読む時にはそれを頭に入れておいた方がいいわけです。だから、この間もお話しましたけど、(羽生善治さん、井山裕太さんへの)国民栄誉賞のスクープ。読売新聞が朝、一面にドーン!ってやるわけですよ。他は誰もが追えていない。でも、それは政権、政府関係者が明らかにしたということは、よい悪いは別にしてやっぱり政府の情報を知りたい人は読売新聞もチェックしておいた方がいいっていうことなんですよね。そういうことでしょう?

(塩澤未佳子)ねえ。

(プチ鹿島)だから、それを利用すればいいわけです。各新聞のキャラを使って。で、そういうことを僕、ずーっと「グループ分けして読んだ方が面白いですよ。そうすれば、情報線も見えてくる」っていう。で、いちばん今年の新聞で……いや、今年だけじゃなくて5年後、10年後に「ああ、あの時のあの記事はすごかったよね」って言えるのが今年、あったんですよ。

(塩澤未佳子)うーん?

(プチ鹿島)まあ、この番組を聞いていただいている方は「ああ、あのことか」って思い出される方もいるかもしれませんが、それが5月22日。読売新聞の社会面に出た「前川前次官 出会い系バー通い 文科省在職中 平日夜」っていう。

(塩澤未佳子)はい。ありましたねー。

「前川前次官 出会い系バー通い 文科省在職中 平日夜」

(プチ鹿島)これ、『キックス』でもさんざんお話しましたよね? これ、パッと見た時は社会面ですよ。コボちゃんの隣ですよ。ものすごい、その日いちばんニュースバリューがあると言うか、なんとなく新聞を読んでいる人もなんとなく、そこは絶対に見るじゃないですか。だからいちばんメッセージを伝えたいところなんですよ。実際にその記事の左隣にはコボちゃんがあったし、右隣には「北朝鮮ミサイル発射」っていうのがあったし。すごく重要でしょう? ところがそこに、「前川前次官 出会い系バー通い 文科省在職中 平日夜」って。辞めた人の2年前の話が載っているわけです。

(塩澤未佳子)過去のことですよね。

(プチ鹿島)いまの文科省の次官の人が通っていたら、それこそちょっとスキャンダリズムで下世話だけど、「ああ、そうなのか」って思うけども、辞めた人が、しかも読んでいくと2年前にそういうところに出入りしていたっていう。「えっ?」って思うわけですよ。

(塩澤未佳子)なんでいま、載せるんだろう?って。

(プチ鹿島)思ったでしょう? ところが、これは新聞がいろんな立場があって、一塁側と三塁側に分かれていると思うと、点と点とでつないでいくと、これはあくまでも点のひとつなんですよね。っていうのは、その前の週。朝日新聞が5月17日に加計学園問題で「総理の意向」というメモがあったというスクープを。「新学部 総理の意向」っていうのが一面でダーン!って出ましたよね。これ、あれが出たことによって、「ああ、加計学園が認可OKが出たということは、総理から特別な計らいがあったの? もしかしてそういう意向があった?」って思わせるようなメモが出てきたというので、ここからもう加計学園問題って騒然となったじゃないですか。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)で、その5日後に読売新聞が出る。「前川前次官 出会い系バー通い」。これ、どういうことか?って言ったらつまり、その朝日新聞のネタ元らしき人に対する牽制球が投げられたんじゃないか? という。その後もずーっとやりましたよね? じゃないと、よくわからない。たとえばこれ、東京新聞。その記事が6月8日の東京新聞。「前次官の私的な話で、普通なら書かないような内容。目にした瞬間に変だと感じ、政府がこれを書かせたのか? と思った」という。つまり自分のところと近い新聞にこれを書かせることで、前川さんサイドにすごい牽制球を投げた。「お前、なんかゴキゲンにしゃべっているようだけど、お前こういう過去、あるよね?」って。もしくは、これから前川さんのインタビューとかを使うであろう……「独占告白」みたいなね。

(塩澤未佳子)ええ。

(プチ鹿島)もしくは、それを収録しているであろう媒体について、「出会い系バーに出入りしているこういう人だけど……」って。僕、出入りしているだけでも別に、それがいい悪いっていうのは誰も言えないじゃないですか。だけど、記事を読むと「こういう人、使うんだ?」みたいな、そういった行間も伝わってくるわけです。

(塩澤未佳子)なんとなく。

(プチ鹿島)で、実際に前川さんのその後の告白によると、この時期ある放送局が自分の独占インタビュー、独白をしたのにこの記事が出てからそれが急にお蔵入りになったという。ビビっちゃったのかな? みたいなことを前川さんがおっしゃっていた。本人がですよ。ある放送局がね。まあ、どことは言いませんけど、NHKです。

(塩澤未佳子)フフフ(笑)。

(プチ鹿島)だからそういう、かなりこの牽制記事が役に立ったわけですよ。だから情報戦なんですよ。NHKがビビったわけです。みんな、受信料を払って知る権利を求めているのに、NHKはそれをお蔵入りにしたわけです。これ、どうなの?っていう話ですよね。だからそういう情報戦があったわけですよ。

(塩澤未佳子)そういうことね。動かしちゃった。

(プチ鹿島)で、実際にやっぱり政府からのあれで、読売はわざわざコボちゃんの隣で、過去の記事を。人のそのスキャンダラスなことを煽り立てる記事を書いたんじゃないか? みたいな批判が他のメディアから出て、その1週間後に読売は政治部長かなんか、偉い人が「いや、あの記事は報じるべき価値があった。なぜなら、公人だからだ」みたいな、そういう火消しに躍起になったんですね。そういうのが、何度も言いますけどもどこの新聞がいいとか悪いとかじゃなくて、こういう情報戦が今年、行われたわけですよ。これはもう、今後何年間も語り継がれるエピソードだと思いますね。僕は今年、新聞の講演会とかもやらせてもらっているんですけど、この例を言うと「ああ、そうか。新聞ってただ漠然と読むより、こういう情報戦が行われているって頭に入れて読んだ方がわかりやすい」っていう、そういうお客さんの反応は多いんですよね。

(塩澤未佳子)うんうん。

(プチ鹿島)で、ここからはネタなんですけども。ネタというか、ちょっとゾッとするというか、世にも奇妙な話なんですけども。読売の記事が5月22日に出たわけですよ。だから前川さんサイドからすれば、ものすごい牽制球が投げられたわけですよ。「お前のこと、どんどん書くよ。お前の身辺調査、全部してるんだぞ?」みたいな。だけど前川さんはその3日後、メディアに出てきて。それこそ文春とかね、朝日新聞とかにインタビューが出て。それからいろんなメディアに出ましたよね? だからあの記事には全然、ひるまなかったわけですよ。読売にああいうことを書かれても。

(塩澤未佳子)うん。

(プチ鹿島)で、この5月22日から、あるものすごく大きなトピックが起きているわけです。5月22日(木)からなにが始まったかというと、読売ジャイアンツが13連敗。

(塩澤未佳子)ああーっ! あった!

(プチ鹿島)これ、不思議でしょう?(笑)。読売がああいう記事を書いて、前川さんを牽制して。でも前川さんはそれにひるむことなく出てきたら、その日から巨人の13連敗が始まっているんですよ。これ、みなさん調べてください。5月25日から。

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(塩澤未佳子)そうだった!

(プチ鹿島)で、俺も「あれ?」って途中で気づきはじめて。「これ、前川さん……?」って。じゃあこれ、どういうタイミングで巨人は勝つんだ?って思ったら、6月8日に球団ワーストの13連敗を喫したんですが、6月9日にやっと連敗が終わるわけです。その日の夜、なにがあったのか? 「加計文書、文科省再調査へ」っていうニュースが。つまり前川さんの主張、言い分が通って文科省が「わかりました、再調査します」っていうニュースが出たら、その日の夜に巨人は久しぶりに勝ったんですよ。出会い系バーの呪いから解かれたわけです(笑)。

(塩澤未佳子)アハハハハッ!

(プチ鹿島)これ、本当に時事ネタって……。

(塩澤未佳子)不思議だけど、ピッタリと来てますよね。

(プチ鹿島)本当だよ! 僕、当時からTwitterで騒いでいたんだから。「これは絶対になにかデカいことをしないと、この呪いは解けねえぞ」と思ったら「再調査へ」って言う。

(塩澤未佳子)不思議だなー(笑)。

(プチ鹿島)これも今年、だいぶいろんなところでしゃべって、笑いとお金をいただきましたけども

(塩澤未佳子)面白かった(笑)。

(プチ鹿島)エゲツないことを言ってますけどね、そうなんです。

(塩澤未佳子)でも、よく気づきました。

(プチ鹿島)面白いでしょう? だからそういうので、まあ最後のは信じるか信じないかはあなた次第で、出会い系バーの呪いがあったかどうかは別として、ただそういうのを朝日新聞が5月17日に出したら、読売が5月22日にバーン!って出したという。もう一塁側と三塁側の空中戦、情報戦じゃないですか。そういうのがあった年なんだよっていう。だから新聞というのはもちろん事実があってね、さっきオープニングでやったように安倍政権5年をどう見るか?っていう、それは各紙の論じ方の違いはあるけど。一方で、この情報はどういうバックボーンがあるんだろう? この情報が出て得する人、損する人は誰なんだろう?って思いながら、ニヤニヤして読むとさらにまた楽しめるよというのが新聞の読み方なんですよね。

プチ鹿島 安倍政権発足5年報道 新聞各紙読み比べ
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(塩澤未佳子)はい。そうですよね。

(プチ鹿島)これは本当に、もう5年後、10年後も語り継がれる。来年、再来年、どこかで「新聞について特徴的な読み方のエピソードありますか?」って聞かれたら、僕は相変わらずこれを例に出します。すごい年でした。プチ総論でした。

<書き起こしおわり>

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