中溝康隆とプチ鹿島 巨人13連敗中のスポーツ報知一面を語る

中溝康隆とプチ鹿島 巨人13連敗中のスポーツ報知一面を語る TBSラジオ

ブログ『プロ野球死亡遊戯』でおなじみの中溝康隆さんがTBSラジオ『プチ鹿島のスポーツ紙大将』に出演。巨人13連敗中にスポーツ報知がどのように報じてきたか? についてプチ鹿島さんと話していました。

(山田美幸)それではさっそく次の見立てはその中溝さんからお願いしたいと思います。

(中溝康隆)はい。「スポーツ報知 巨人の報じ方の法則」。

(プチ鹿島)ああ、いいですね。この番組にぴったりの論ですね。

(中溝康隆)これはですね、巨人が13連敗をしたと。で、これは長い球団の歴史の中でも最長の記録なんですけども。で、こんな時にファンは、「果たしてスポーツ報知さんはいかにこの連敗を報じていたのだろうか?」と。やっぱりそこに注目をしますので、今回はその連敗中のスポーツ報知の一面をガッツリと振り返ってみたいなと。

(プチ鹿島)いいですねー。やっぱり負けた時に何を報じるか?っていうことですよね。

(中溝康隆)で、まず6月4日の9連敗をした翌日の日曜日の一面から始めますね。で、この時の一面がいきなり競馬です。

(プチ鹿島)競馬ですね。

(中溝康隆)安田記念について報じています。

(プチ鹿島)何事もなかったかのように(笑)。

(山田美幸)さらりとね。

(中溝康隆)で、中を開くと、「村田 満塁弾で通算350号」と。で、まだちょっと連敗に対して余裕が見えるんですよ。スポーツ報知さんも。

(プチ鹿島)うんうん。

(中溝康隆)で、翌日。ついに10連敗だと。で、10連敗となると、さすがにファンも「大丈夫かよ?」とちょっとザワザワし始めたんで。その時のスポーツ報知さんの一面です。長嶋さんがいきなり来ます。

(プチ鹿島)長嶋さんですよ!

(中溝康隆)で、これは「ミスター始球式」っていう一面なんですけども……これ、よく読むと二軍の試合なんですね。

「ミスター始球式」

(プチ鹿島)そうなんですね。

(中溝康隆)一軍の試合はなかったのかな?って思うと、よく見ると、中を開くと「由伸V逸0% 打線変更も空回り」。で、さり気なく、本当に少しだけ触れているんですよ。で、他は「陽全快100% 明日一軍合流」と。要はFAで来た陽岱鋼選手がようやく一軍に来てくれるぞと。で、陽救世主説っていうのをスポーツ報知さんは書いています。

(プチ鹿島)そこにすがるしかないっていう行間も見えますよね。

(中溝康隆)で、翌日。移動日で野球がないので、この時は「エース菅野が止める」。6月6日の一面ですね。で、この時は担当記者が巨人の新打線を予想したりとか。まだ、「なんとかなるんじゃないか? なんとかしよう!」っていう記者の方の意思が見れるんですね。で、翌日です。来てしまいました。

(プチ鹿島)で、実際にまた試合が始まったら負けたんですよね。

(中溝康隆)そうです。6月7日。ジャイアンツ11連敗。

(プチ鹿島)これ、(スポーツ報知を)持っていますよ。いま、手元に。11連敗。

(中溝康隆)これが42年ぶり、球団史上最悪っていう記録なんですね。

(山田美幸)西武戦でしたよね。

(中溝康隆)はい。で、この時に、注目は三面なんですよ。

(プチ鹿島)そうそうそう。

(中溝康隆)「堀内恒夫 怒りの提言」。これ、要は42年前の連敗の当事者のエースに聞いているんですね。で、ついに大物OBが登場してしまったと。これはやっぱり、チーム状態としても追い込まれてしまったなというのが伝わる紙面づくりだなと思います。

(プチ鹿島)で、僕が熱いなと思ったのは、記者の方たちが全部顔の写真を出して。だから加藤(デスク)さんとかもね、やっぱり巨人に「奮起せよ!」みたいな檄文をみんな書いているわけ。だから、熱かったんですよ。この日は。

(中溝康隆)なんかこの作り方でもう、「異常事態だな」っていうのが読者に伝わってくるので。ついにこう、ファンとスポーツ報知が一体になって「ヤバいぞ、ヤバいぞ!」って言っている状況ができたっていう感じですね。

(プチ鹿島)本当、そうですね。

(山田美幸)そうかそうか。菅野で負けましたもんね。

(中溝康隆)そうなんです。で、菅野で負けて翌日。これで負けると球団新記録になってしまうんですけども。で、またこれね、負け方が結構ワンサイドゲームで負けてしまったんです。

(山田美幸)そうでしたね。

(中溝康隆)で、やっぱりスポーツ報知の一面です。「巨人よ、生まれ変われ! 12連敗」。

(プチ鹿島)「生まれ変われ」ですよ。

(中溝康隆)はい。「栄光の83年 はじめての屈辱」。

(プチ鹿島)そうなんです。で、左端にね、83年栄光の歴史っていうのを振り返っているんです(笑)。

(中溝康隆)もうなんか、作りが重いんですよね。

(プチ鹿島)重いんですよ。まあ、歴史的な日だからね、こういう作りになったんでしょうけど。これもすごかったな。

(山田美幸)加藤さんも大変だったでしょうね。

(中溝康隆)で、二面、三面を開くとですね、やっぱり緊急の提言がありまして。「中継ぎに内海・大竹起用を」っていう。

(プチ鹿島)この提言をしているんですね。

(中溝康隆)そうなんです。ヤバくなると記者の方は提言をするっていうこの流れが連日続いていますので、ついにもう中継ぎにまでメスが入り始めていると。

(山田美幸)内海、大竹ですもんね。

(プチ鹿島)提言しすぎたんだけど。もう12連敗まで来ているから……。

(中溝康隆)そう。ネタがなくなってきてるんですね。

(プチ鹿島)提言のネタがなくなっているんです。

(山田美幸)なるほどね。

(中溝康隆)ちなみにこの日、自分も所沢(西武ドーム)に行っていまして。ちょっと雰囲気が序盤で「負け」っていう感じなんで。ファンの方ももう呆れちゃっているっていうか。怒るのじゃなくて、「これは本当、どうなっていくんだ?」っていう。

(プチ鹿島)僕も他のスポーツ新聞も読み比べていたんですけど、やっぱり11連敗ぐらいまでは「うわっ、これ巨人、やっちまった!」みたいな感じで、いろんな意味で熱いんですよ。だけど12連敗になると、もうなんか負け疲れというか、負け呆れというか。他の新聞もですよ。ちょっとこう、だんだんトーンダウンしていくっていう、いちばんヤバいパターンで(笑)。

(中溝康隆)連敗慣れしちゃっているんで。結構報じる側としてもなかなかいろんな策を講じているんですけども、やっぱり各紙すごい苦労をしているなっていうのは感じましたね。

(プチ鹿島)ちょっと引いている感じも伝わってきて面白かった。

(中溝康隆)で、翌日です。また負けました。巨人13連敗。で、この日の一面がですね、ボクシングの村田選手。「現役続行正式表明 ベルト!!」っていう一面なんですけども。

13連敗時の一面

(プチ鹿島)ついに13失点13連敗の時はもう、一面ではなかった。

(山田美幸)本当ですよね。

(中溝康隆)で、二面で「巨人13失点13連敗」と。あまりにも、ちょっと内容的にも突っ込めなくなってきているんで。もう来るところまで来たなっていう新聞の内容だと思いますね。

(プチ鹿島)これはすごかったです。

(山田美幸)もうね、中継をしていたんですけど、もうベンチリポーターの方もね、もう声が何を言っていいのかわからないぐらい。解説の方もね。

(プチ鹿島)あとね、僕これ、個人的に面白いなと思って保存をしているんですけど。6月1日ですね。まだ6連敗の時点なんですが、この時にやっぱりさっき中溝さんがおっしゃった提言っていうのを一面を使ってしているんです。「クルーズ使え」っていう。つまり、打線が打てないので。投手陣の外国人選手はいいんだけど、それを二軍に下げて……。

「クルーズ使え」

(中溝康隆)枠の関係がありますからね。

(プチ鹿島)そう。クルーズを使えと。まあ、言ってみれば社説みたいな。で、これ僕読んで、「ああ、こういう一面で熱い提言をするっていうのは、言ってみれば一般紙でいう社説だな」と思ったら、この2日後、3日後ぐらいにクルーズが本当に二軍から。

(中溝康隆)実際に上がってくるっていう。

(プチ鹿島)だからこれね、実際にその後、クルーズが打てなくて「上げたのは失敗じゃないか?」って言われるんだけど僕、そこには興味はなくて。「クルーズ使え」って書いて、これは記者の総意なのか……たとえば、もっとお偉い人が「書け」と。

(中溝康隆)裏側ですね。

(プチ鹿島)で、実際にそれがクルーズを一軍登録したじゃないですか。これ、どういう流れがあったんだろうな?っていうのが僕、面白くてね。

(中溝康隆)そうなんです。で、この直後にGMが辞任しちゃったので。なんかこう、この一面に対するいろんな深読みがすごく楽しいですよね。

(プチ鹿島)これ、最高だったですよ。

(中溝康隆)しかもタイミング悪く、抑えのカミネロがいないことによって負けちゃったりしたんで。

(プチ鹿島)そうなんですよ。だからクルーズを上げたことによってカミネロが二軍に行くから、それが逆に裏目に出ちゃったんですね。

(中溝康隆)やっぱり連敗中のチームって打つ手打つ手が全て裏目に。

(プチ鹿島)何をやってもダメっていう。

(中溝康隆)もうここでクルーズ選手が打っていれば完璧な一面にハマっていたんですけど。だからやっぱり野球を報じるって難しいなとすごく感じました。

(プチ鹿島)そうなんですよね。だから言ってみれば一般紙の社説って、なんか言っているようで実は言っていないんですよ。だってすぐその提案が、じゃあ誰か受け入れるか? とか、実行に移すか?っていうと、移さないですよ。その分、ある意味社説って楽で、なにか偉そうなことを言ってりゃいいんですよ。だけど、「クルーズ使え」って言って実際にクルーズを使って結果が出なかったら、「このスポーツ報知のあの一面は何だったんだ?」みたいな。で、「実際にそれ、誰からの命令なんだ?」ってずーっと言われるでしょう? まあ、俺がいま言っているんだけど。

(山田美幸)そうですね(笑)。いちばん言ってますね。

(プチ鹿島)そうそうそう。これが面白いんだよね。

(中溝康隆)あの、東京ドームのおっちゃんも、同じことをヤジで言っていました。だから、言わばファンの気持ちを代弁しつつもあったんで。

(プチ鹿島)だから、僕はこの一面っていうのは本当に観客席でささやかれていた分を代弁してくれたという意味で、僕は間違いではないと思うんですよ。ファンの、「これを届け!」って言ったら届いたわけですよ。

(山田美幸)ただ結果がついてこなかったという。

(プチ鹿島)面白かった。これ。一面で主張をはっきり言うっていう。「○○を使え」っていうね。これは歴史的な一面で面白かったですね。

(中溝康隆)結構ネット界隈は盛り上がっていましたね。

(山田美幸)この13連敗の中にも新聞の一面にはいろんなドラマが隠されているということなんですね。ということで、スポーツ新聞ナナメ読み、中溝康隆さんの見立てをお送りしました。

(中略)

(山田美幸)先ほどのナナメ読みでなにか言い残したことがあるということで。

(中溝康隆)そうですね。巨人13連敗まで行ったんですけど、この後に巨人がまた1勝した後に2連敗したんですよ。

(山田美幸)あ、そうだ。日本ハム戦でね。

(中溝康隆)で、さすがにもうこれ本当に弱いなってなった時にスポーツ報知の一面に注目してほしいんですけども。6月12日「ミスターも感激 立教大学59年ぶり日本一」と。

(山田美幸)ああ、ありました。そうそうそう。

(中溝康隆)そうなんです。もはや巨人ですらないんですけども、やっぱりスポーツ報知さんは困った時には長嶋さんに行くっていう。

(プチ鹿島)なんか明るさがほしいんだよね。

(中溝康隆)そうなんです。だからやっぱりミスターは永久に不滅だなっていうことですね。

(プチ鹿島)ミスターカード、何枚も使ったなー(笑)。

(山田美幸)使ってましたね(笑)。でもね、立教大学は見事に優勝しましたからね。

(プチ鹿島)そうそうそう。でも、そういう時にまたそういう試合があるっていうのもまた長嶋さんのね。一面でじゃあ、これ行こうかってなりますよね。

(山田美幸)ねえ。そこに落ち着くんですね。でもその後にね、巨人も調子を取り戻しましたからね。

(中溝康隆)そうですね。よかったです。

(山田美幸)よかったです。ということで、ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

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