町山智浩『2分の1の魔法』を語る

町山智浩『2分の1の魔法』を語る 町山智浩のアメリカのいまを知るTV

町山智浩さんが2020年3月10日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中でピクサー映画『2分の1の魔法』について話していました。

(赤江珠緒)じゃあアメリカもちょっと雰囲気としては良くないという状況ですね。だって映画も公開が延期になったりとかありますもんね。

(町山智浩)映画ね、どんどん公開延期になってるんですよ。もう映画館に行ったんですけど、やっぱり人が入ってないんですよ。もう全然入っていない。で、この間、映画を作れば当たるピクサーの新作映画が公開されたんですけど。で、一応トップなんですけど、やっぱり映画界全体が入ってないから。まあ観客動員数はすごい少ないんでね、あれなんですが。でも映画は良かったですよ。その映画の話をしますね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)ピクサーの新作映画で『2分の1の魔法』という映画の紹介をします。アニメです。これ、日本では公開する予定だったんですね。

(赤江珠緒)予告は結構流れてますよ。うん。

(町山智浩)たしか「近日公開」という形で日本では無期延期になってると思います。まあ、本当に大変ですね。今、ディズニーも株価が落っこちちゃって。遊園地が閉鎖になったりしたのでね。で、まあ大変ですが。

(町山智浩)でもこの『2分の1の魔法』はね、僕は好きな映画で。これね、魔法があった世界の話なんですよ。それこそユニコーンとか妖精とか人魚とか、そういったものがいっぱいいる、おとぎの国の話なんですけど。そのおとぎの国でですね、電気とかガスが発明されちゃって、みんな普通に電気を付けてガソリンで自動車に乗ってスマホをいじる世界になっちゃったっていう全然意味がない話なんですよ(笑)。

(赤江珠緒)へー!(笑)。

(町山智浩)だからみんな見た目は……この主人公のイアンくんっていうのは16歳のエルフなんですけど。エルフというのは妖精なんで、肌が青くて耳が尖ってるんですけど、別に何の力もなくて。普通に学校であんまり友達のいないオタクのお兄ちゃんなんですよ。声はスパイダーマンのトム・ホランドくんが演じているんですけども。で、彼が16歳になったんで、自動車免許が取れるようになるんですね。というのもアメリカの法律そのまんまなんですけど。で、「車を運転して女の子と話をして。彼女を作って友達と遊ぶんだ!」っていう高校デビューをたくらんでるんですよ。いわゆる高校デビューってやつがアメリカにもあるわけですよ。

(赤江珠緒)はいはい。

妖精の国で高校デビューを目論む

(町山智浩)まあアメリカっていうかこれは妖精の国なんですけども。なぜか妖精の国にも高校デビューがあって。ところがそれがうまくいかないんですよ。というのは、ひとつの理由はお兄ちゃんがいるんですけど。お兄ちゃんが高校中退でロクに働かないでですね、いわゆるファンタジーの世界、ロールプレイングゲームの世界にハマってるんですよ。ロールプレイングゲームっていうのは魔法とか剣が支配する世界のゲームですよね。

(赤江珠緒)魔法の国なのに。

(町山智浩)魔法の国なのに、それははるか昔の過去のことになっているんで。それを信じてやってるやつはただのオタク野郎って言われる世界なんですよ。で、しかもヘビメタを聞いてるし。それで袖を切ったジージャンを着ているし。このお兄ちゃん、袖を切ったジージャンに黒のバンドTシャツを着てる人なんで。それだけでも「負け犬さん」って言われるんですけど。

(赤江珠緒)フフフ(笑)。

(町山智浩)で、その兄貴がいるから恥ずかしくて友達と付き合えないんですよ。この主人公のイアンくんは。で、もうひとつは彼には父親がいないんですね。1歳の頃に病気で死んでしまったので、男性というのはどういうものなのか。大人の男性としての見本が近くにいないから分からないみたいな感じなんですよ。どんな大人に、どんな男になったらいいか分からない。で、そのお父さんの思い出はまるでなくて。ただ写真が何枚かあるだけなんですね。で、カセットテープにお父さんの声がちょっと入ってるんで、それを何回も何回も聞いたりするんですけど。このおとぎの国にはなぜカセットテープがあるのかとか、よくわからない映画なんですけども(笑)。

(赤江珠緒)はい(笑)。

(町山智浩)で、屋根裏を探したら屋根裏から魔法の杖が出てきて。それで会いたい人を1日だけ呼び出せるという魔法の書があって、それでお父さんを呼び出そうとして魔法をかけたら、その魔法の杖についている魔法石が欠けていたので、お父さんが下からグワーッと出てくるんですけど。スニーカーとチノパンが。で、ずっと上がっていってベルトのところでお父さんが出てくるのを止めちゃうんですよ。

(赤江珠緒)フフフ、うん(笑)。

下半身だけのお父さん

(町山智浩)で、下半身だけなんですね。で、「下半身だけだとせっかくお父さんと話せると思ったのに、話せないじゃないか!」ってこのイアンくんとダメな兄貴が2人でその魔法石の残りを探してお父さんの上半身を蘇らそうとする話なんですよ。

(山里亮太)だから2分の1なんだ。

(町山智浩)そう。だから2分の1の魔法で。中森明菜さんとは関係ないんですね。

(赤江珠緒)フフフ、『1/2の神話』ね(笑)。

(町山智浩)でもこれ、すごい変な話なんですよ。

(赤江珠緒)せめて上半身が出てきてくれたらよかったのにね(笑)。

(町山智浩)そう。上半身が先に出てきたらよかったのに。下半身だけなんですよ。父親の下半身って一番困っちゃうところですよね?(笑)。

(山里亮太)フハハハハハハハハッ!

(町山智浩)この人、ズボン履いているからいいけど、日本のお父さんとかアメリカのお父さんとかパンツ一丁の人もいますからね。それだと非常に困るんですが。ちゃんとしたお父さんでよかったですけど。でも、すごく変な話ですよ、これ。お父さんの上半身を探すっていう話なので。ただね、これって実話なんですって。

(赤江珠緒)ええっ?

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