町山智浩さんがTBSラジオ『荻上チキ Session-22』に電話出演。ドナルド・トランプ政権の黒幕と言われているスティーブ・バノン氏について、荻上チキさんと話していました。
(荻上チキ)ではですね、このバノンさんという人物がどういった形でアメリカで注目されているのか? この方にお電話でうかがいたいと思います。TBSラジオ『赤江珠緒たまむすび』でもおなじみです。アメリカ在住の映画評論家、町山智浩さんにうかがいます。町山さん、おはようございます。
(町山智浩)はい。町山です。よろしくお願いします。
(荻上チキ)よろしくお願いします。今日はすっきりお目覚めできましたか?
(町山智浩)ああ、もう時差ボケで。アメリカに着いたばっかりなんで(笑)。
(荻上チキ)そうかそうか。帰ったんですね。はい。このスティーブ・バノンさんを今日は取り上げるんですけども。アメリカのメディアではこのスティーブ・バノンさんはどういった人物として注目されているんでしょうか?
(町山智浩)はい。雑誌『TIME』では表紙に載せましてですね。「MANIPULATOR」。つまり、トランプ大統領の操縦者と呼んでましたね。
トランプ大統領の操縦者
(荻上チキ)うーん。
(町山智浩)あと、バノンさん本人がですね、インタビューで「暗黒とは力なり。ダース・ベイダーやサタンを見てみろ」って言ったので、「ホワイトハウスのダース・ベイダー」とか呼ばれています。
(荻上チキ)うーん。そのスティーブ・バノンさんの人物像というのはどういった姿なんでしょう?
(町山智浩)この人はもともと、共和党右派のためのプロパガンダ映画、ドキュメンタリー映画を監督してきた人なんですね。だから、いままではずっと「右翼のマイケル・ムーア」と呼ばれていました。
(荻上チキ)ほう。映画を撮ってきた。どんな映画なんですか?
(町山智浩)まずですね、国境の壁の問題ですが、それもずいぶん前に撮っているんですよ。「メキシコから不法移民がやってくるのを止めろ!」とか。あとですね、2008年に制作して2010年に公開だったんですけど、『Generation Zero』という映画ではウォール街の暴走がアメリカの経済体制自体を破壊するという映画を撮っていますね。
『Generation Zero』
(荻上チキ)ええ、ええ。
(町山智浩)だからそれなんかは非常に共和党の自由市場主義に対して反対するような内容でしたけど。はい。
(荻上チキ)マイケル・ムーアの映画は結構世界でも見られているような気がするんですけども。スティーブ・バノンの映画監督としての評判っていうのはどうなんですか?
(町山智浩)スティーブ・バノンの
映画は主にティーパーティーとか共和党系、保守系の政治集会で上映されることが主で。あとはだいたいYouTubeとかAmazonでしか見られないという感じです。
(荻上チキ)なるほど。町山さんから見て、映画の出来はどうですか?
(町山智浩)映画の出来はですね、有り物のフッテージ。つまり、よくあるただの映像をたくさんつなぎ合わせて、ものすごい爆音とか怖い音楽をつけて、どれも「この世の終わりが来るぞ!」みたいな映画になっているんですよ、どれも。
(荻上チキ)ほう(笑)。すごいなんか自主制作感がありますね。
(町山智浩)あ、どれもものすごい低予算ですね。
(荻上チキ)なるほど。そうした中でバノンさん、非常に注目をされているわけですけども。もともとはブライトバート・ニュース・ネットワークというところに関わっていたわけですよね。
(町山智浩)はい。これはネットニュースサイトなんですけども、すごく反移民とか反フェミニズムであることで、もともと炎上を次々と起こしていたところです。
(荻上チキ)炎上?
(町山智浩)はい。たとえば、最近問題になったマイロ・ヤノプルスっていう、この間編集者をクビになった人が書いた記事では、「女性は避妊するとブスになる」とかすごい記事を書いてましたよ。
(南部広美)はあ!?
(町山智浩)あと、「ドイツで移民が暴動とかテロを起こしている」っていう記事を捏造して。これもバレて問題になりました。あと、選挙中はいろんなヒラリーに関するネガティブな嘘をバラまいていまして。特に大きな影響があったのは「ヒラリーはパーキンソン病である」という噂を拡散しましたね。
(荻上チキ)うーん。その、いわゆるフェイクニュースばかりを載せるというわけでもないんですか?
(町山智浩)そうですね。普通の論評記事もあるんですが、フェイクニュースがそこに混じってくる感じです。
(荻上チキ)まあ日本でもいろいろまとめサイトとかニュースサイトとかありまして。たとえば、森友学園のことを取り上げるんだけども、たとえば追求している方の悪口ばかり書くメディアみたいなのもあったりしますよね。
(町山智浩)そう。だから森友学園の火消しニュースみたいなのを書く人がいますけど。そういう感じなんですよ。
(荻上チキ)ああー、それのアメリカのもっとデカい版みたいな?
(町山智浩)そうですね。はい。
(荻上チキ)そのサイトは結構読者数も多いんですか?
(町山智浩)読者数そのものはそんなに多くないんですけど、そっから拡散していって。よくあるパターンなんですが、記事そのものは読まないで見出しだけが暴走していく感じです。
(荻上チキ)ああー、よくあるパターンだ。そうしたサイトの中でバノンはこのニュースサイトのどういう役割を果たしていた人なんですか?
(町山智浩)彼自身は編集主幹と会長ですね。オーナーになっていたんですけども。彼自身は編集方針を打ち出して、もっと過激な……もともとあったのはハフィントンポストの右派版みたいな感じだったんですけども。もっと嘘ニュースみたいなものを作成する人にお金を出して雇ったりするようになりましたね。途中から。ジェームズ・オキーフという人がビデオカメラを持って、いろんな左派系の団体にところに行って、引っかけるわけですよ。
(荻上チキ)引っかける?
(町山智浩)「私はイスラムの組織なんですけども、寄付をしたいんだ」と言って。その寄付を受け取るかのようなビデオを撮っておいて、それを編集してバラまくとか、そういったことをやっていましたね。
(荻上チキ)ほう。自作自演というか? マッチポンプと言うか。
(町山智浩)自作自演です。そのジェームズ・オキーフという人はそういう引っかけ動画を仕掛けている時に、相手の留守番電話がONだったんですけども、電話を切るのを忘れて「あいつら、引っかかるぜ」みたいなことを言っているのをそのまま録音されて、バレたりしている人ですけども(笑)。
(荻上チキ)はー。じゃあ、決して用意周到で完全にいろいろできている人ではないという感じなんですね。
(町山智浩)そこそこ間抜けなところもありますね。だからドイツのテロに関しては捏造がバレたりしてますから。
(荻上チキ)ああー。そこに来る記者の人ってどういったキャリアの人が記者になるんですか?
(町山智浩)マイロ・ヤノプルスという人はこの間クビになった人なんですけども。「13才の少年と年上の男のセックスは問題ない」っていうことを言って大変な問題になってクビになったんですけども。彼とかはもともとイギリスでトーク番組とかに出て右派の論客として戦っていたのを引き抜いた感じです。で、さっき言ったジェームズ・オキーフっていう人もネットでいろんな右派のメディアとして1人でやっていたのを引き抜いて。お金を出して囲った感じですね。
(荻上チキ)うーん。じゃあ、いろんなところから人材を集めて強化しているということになるんですね。
(町山智浩)はい。そうです。
(荻上チキ)そのサイトに関わっていたスティーブ・バノンさんが、なんでいまのようにホワイトハウスの中枢に入るまでに至ったんでしょうか?
(町山智浩)はい。この人ね、去年の6月ぐらいまでトランプのライバルのテッド・クルーズの後ろにいたんですよ。ところが、7月ぐらいの共和党大会での演説はたぶんこのバノンさんが書いているんですけども。そこからトランプ派に乗り換えまして。そこから一気に、ブライトバート・ニュースを使った反ヒラリーの情報拡散みたいなことでトランプの勝利に貢献したということですね。
(荻上チキ)これはどうして、クルーズさんから乗り換えたという風な話になっているんですか?
(町山智浩)ずっとクルーズさんの後ろについていて。ブライトバート・ニュースの記者がトランプの選対に腕をつかまれたりして、事件になったりするぐらいモメてたんですよ。ところが途中から、「クルーズでは勝てない」ということで、トランプの方に乗り換えた形ですね。ブライトバート自体が。
(荻上チキ)なるほど。ということは、結構勝利、そして影響力を持ちたいというような願いがスティーブ・バノンにはあったっていうことなんでしょうかね?
(町山智浩)たぶんこれはトランプ自身がですね、ポピュリズムで、確固たる政策を持たないわけですよ。それぞれの政策同士が矛盾したりしていますから。だから、大きな絵を描ける人だったんだと思います。このバノンっていう人は。まあ、全体的なビジョンみたいなものを持っていたのがバノンだったので、トランプはそのへんで……それがないと演説が書けないですからね。だから演説を任せていくと。特に大統領就任演説なんかはバノンが書いているんですけども。そういった形で、自分にないイデオロギーみたいなところをバノンに求めたんだと思います。
(荻上チキ)なるほど。トランプさんの行動も全体像がなかなかつかみにくいところがあるんですけども。スティーブ・バノンが描いている思想、あるいはビジョンというものはどういうものなんでしょうか?
スティーブ・バノンの思想・ビジョン
(町山智浩)はい。映画の中ではっきりと描かれているんですが。その『Generation Zero』という映画だと、「アメリカでは80年ごとに体制がひっくり返って崩壊するんだ。で、2008年の金融危機から崩壊が始まって、アメリカの現在までの資本主義的な体制は崩壊するんだ」と彼は訴えていますね。
(荻上チキ)うーん。資本主義的な体制の崩壊?
(町山智浩)はい。具体的にはウォール街のことなんですよ。だから彼はずっとウォール街批判というのをしてきているんですけども。だからそのへんが、いわゆる共和党の主流派とは全く対立するところです。で、この間のCPAC(保守政治運動会議)というイベントでははっきりと、「行政国家・官僚国家を脱構築するんだ」と言ったんですね。それはトランプの行政人事がめちゃくちゃで、各省庁の機能に反対する人を長官につけていた理由がわからなかったんですが、これではっきりとわかりました。要するに、行政を破壊することだったと。バノンは「脱構築」と言っていますが。たとえば、環境保護庁の長官に環境保護庁に反対していた人を。エネルギー省の長官にエネルギー省の存在そのものに反対していた人を長官に任命すると。
(荻上チキ)うんうん。
(町山智浩)教育長官に公共教育そのものを否定してきた人を長官に据えると。各行政省庁の破壊をする人を長官にするって、いったいどんな人事なんだ、これは?って思ったら、バノン氏が自ら、「行政の破壊、行政の脱構築を目指している」と言いましたんで。「ああ!」とわかりましたね。
(荻上チキ)なんでわざわざ「脱構築」という単語を選んでいるんですか?
(町山智浩)脱構築っていうのはまあ、解体する……これは一種の左翼用語ですよね。
(荻上チキ)そうですよね。ジャック・デリダなどのフランスの思想家の言葉などがひとつのルーツにあったりしますけども。
(町山智浩)はい。だからもう、内部から破壊する形を彼は想定しているんだと思うんですよ。で、それともう一方でサミュエル・ハンチントンの書いた『文明の衝突』に非常に大きな影響を受けていて。「すでにユダヤ、キリスト教を中心とした西欧文明とイスラムの戦争は始まっている」という風に発言していて。それでその戦争のために、イスラムに対して親和的な現在のローマ法王であるフランシスコ法皇を失脚させるための内部運動をしていることがニューヨーク・タイムズで暴かれましたね。
(荻上チキ)ほう。
(町山智浩)バノン氏は「いまのローマ法王はリベラルすぎる」ということで。イスラムとキリスト教圏との全面戦争を目指す上で、現在のフランシスコ法王は邪魔であるということで、内部で運動していることが発覚したんですが。そのイベントで彼はこういうことを言っているんですね。その、「2008年の金融危機でウォール街の連中は誰も罰せられていない。リバタリアン的な自由資本主義は人間を商品化するものである」という。これ、共和党の自由資本主義に完全に反対する言葉なんですよ。
(荻上チキ)はい、はい。
(町山智浩)で、バノンが言うには、「資本主義はユダヤ、キリスト教的な倫理に基づくべきだ」と言っています。カトリックとして非常に宗教的な世界観があるようです。で、その際に、そのイスラムや、あと中国との戦争もするってバノンは言っているんですね。
(荻上チキ)中国とも?
(町山智浩)はい。5年から10年以内に中国との戦争をすると言っているんですよ。
(荻上チキ)その戦争というのは比喩ではなくて、本当にその武力の衝突なんですか?
(町山智浩)この場合、「War」と言っているんですけども。特にイスラムとの戦争はもう始まっていると。だからこれはハンチントン氏が言った『文明の衝突』でイスラム圏、中国圏、キリスト教圏とのアルマゲドンみたいなイメージがあるんですね。彼の中には。
(荻上チキ)うーん。
(町山智浩)で、その『Genaration Zero』の中でも、「完全な破壊の後に新しい世界ができるんだ」と言っていまして。特に、『Antifragile』っていう本があるんですけども。これはナシーム・ニコラス・タレブっていう『ブラック・スワン』っていう本を書いた人の著作なんですが。これがその完全なカオスとか破壊の中から、それを生き延びた者によって次の社会が作られるという本なんですよ。それもバノン氏は必読書として挙げていますので。まあ、ものすごく大変なことを考えているんじゃないか? と現在言われていますね。
(荻上チキ)うーん。以前にお話いただいた時にはね、「スクラップ&ビルドじゃなくて、スクラップ&スクラップだ」っていう話をしていただきましたけども。その先のビジョンみたいなものはあるんですか?
(町山智浩)それがね、ほとんど……「キリスト教的な社会」とは言っているんですけども、それ以上のことがわからないんですよ。だから彼は「私はレーニン主義者でレーニンがロシア帝国を破壊したように、それまでの既存社会を破壊する」とははっきり言っているんですが、「ではどういう社会を作るか?」に関しては、「キリスト教的価値観の……」とまでしか。そこらへんまでしか言っていないんですね。
(荻上チキ)うーん……。
(町山智浩)だから、非常に怖いですよ。
(荻上チキ)そうですよね。で、金融工学を批判しつつ、たとえばそのウォール街を批判するという時には、ひとつは独占資本と言いますか、格差社会を批判するということになるのか、それとももっと大きな資本主義そのものを批判するのかによって、いわゆるオルタナティブ、代わりにどんな社会を創造するのか? の意味が変わってきますよね。
(町山智浩)はい。彼が想定しているのは、「資本主義っていうのは世界資本主義みたいな形で、富裕層とか資本家が世界的にインターナショナルに結託している」みたいなイメージがあるようです。そういう風に発言しています。で、「その体制を破壊して、それぞれの国に住んでいる、その内陸地に住んでいる労働者に権利を戻すんだ」と言っていますね。それは大統領就任式でも彼が言っていた通りなんですよ。
(荻上チキ)はい。
(町山智浩)つまり、インターナショナリズムに対してのネイティビズムの反乱という考えのようです。
(荻上チキ)うーん。ただ、その反グローバリズムというものとして、たとえば表現できる振る舞いをトランプさんがしているとまではなかなか言えないと思うんですけども。
スティーブ・バノンとしては、どうなんでしょう? グローバリズムとも距離感というのはどういった印象ですか?
(町山智浩)これははっきりと、「グローバリズムを破壊する」と言っていますんで。バノン自身が。ただ、すごくトランプ政権での問題っていうのは、ゴールドマン・サックスの人を財務長官にしているぐらいで。そっちはグローバリズム派なんですよ。あと、共和党主流派もそうですよね。
(荻上チキ)うん。トランプさんもだって、グローバリズムで儲けている人じゃないですか。
(町山智浩)大資本の側で儲けているし。特にロシアと結託して、国務長官はなんとか儲けようとしていますから。石油業界の人ですから。だから、そのへんではやはりトランプ政権っていうのは一枚岩ではなくて。ものすごく内部で対立していると思います。
(荻上チキ)うーん。なるほど。そうした中で、バノンさんがスピーチを書いたとすると、バノンさんの書いたスピーチで大統領就任演説の時には「ホワイトハウスから権力を取り戻す」っていうような話をトランプさんの口を通じて発信していましたよね?
(町山智浩)はい。「ワシントンから」と言っていましたね。
(荻上チキ)ワシントン。ああ、そうですね。「ワシントンから」と言っていましたね。これっていうのが象徴的で。とにかくまずは壊そうという宣言ということになるんでしょうか?
(町山智浩)だからこれは、要するに政権移行ではないんだと。民主党から共和党に政権が移行したのではなくて、権力者たちから人民に政権が移行したんだという風に言ったんですよ。だからあれはもう非常に反民主党なだけじゃなくて、反共和党でもあるので。まあ、FOXニュースなんかは「これは革命なのか?」ってびっくりしていましたね。
(荻上チキ)うーん。そうですね。そうした中でいま、アメリカのメディアもスティーブ・バノンに注目をして。たとえばインタビューを取りたがったりというような動きはあるわけですか?
(町山智浩)はい。だからこの間のCPACという保守政治運動会議では、彼が初めて自分の思想を語ったので、ものすごく注目されたんです。でも、それ以外では現在、インタビューとかには応えていないですね。
(荻上チキ)あまり表に出ないようにしているんですか?
(町山智浩)それは、彼自身がこう言ってますから。「暗闇なんだ。暗黒なんだ」と本人が言っていますんで。はい。「ダース・ベイダーだ」と。本人の言葉です。
(荻上チキ)闇に隠れて生きるっていう感じなんですかね?
(町山智浩)はい。そうですね(笑)。
(荻上チキ)じゃあ、あまり表に出て何かをするというよりは、トランプさんと本当に相性がよくて。ちょうど目立ちたがりのトランプさん。影に隠れて操りたがりのスティーブ・バノンという組み合わせがいま誕生しているという感じで見ればいいですね?
(町山智浩)はい。ただ国家安全保障会議に彼は入っていますんで。そのアメリカがどういう戦争をしていくか? という会議で絶対的な力を現在持っているんで。まあ、非常にどうなるかわからないところなんですよ。
(荻上チキ)そうですよね。
(町山智浩)この間、クビになっちゃったマイケル・フリン氏はこのバノン派だったんですよね。で、彼も要するにカトリックで、はっきりとマイケル・フリンが言っていたのは、「イスラムと仲良くするよりも、同じキリスト教圏のプーチン・ロシアと仲良くした方がいい」という話をマイケル・フリンはしていて。で、仲良くなりすぎてクビになっちゃったんですけど。あれなんか、イランとロシアの仲の良さを分断しようとする動きがあったりして。どうも世界戦略的にアメリカ・ロシアで手を組んでイスラムと戦っていくという考えがあるようですね。
(荻上チキ)うーん。なるほど。まあ、そういったような状況の中で、これから世界戦略などいろいろ練っていくポジションにあると同時に、バノンさんはいまでもメディアの関係者としていろいろと情報発信はできる立場にあるんですか?
(町山智浩)だからブライトバートはもう完全にトランプのメディアになっていまして。この間、アカデミー賞の授賞式に対しての批判もブライトバートに対してだけ、トランプは出していますね。
(荻上チキ)それは独占インタビューみたいな? メッセージみたいな?
(町山智浩)そうです。オスカー授賞式の批判をブライトバートだけで発しています。トランプは。
(荻上チキ)なるほど。あの授賞式でトランプさんに対していろいろね、役者の方が批判をしていましたけども。トランプさんはそれに対して、どんな応答をしていたんですか?
(町山智浩)「やっぱりアカデミー賞授賞式がああいう封筒のミスをしたのは、政治批判にばかりかまけているからだ」と言っていましたね。
(荻上チキ)ああ、ちょっと『ラ・ラ・ランド』が(笑)。
(南部広美)本当は『ムーンライト』だったけど……っていうね。
(荻上チキ)あれがちょっと、まあたしかに残念というかびっくりはしましたけども。まあでも、そういったような形でこれからもインターネットメディアとかそうしたものを通じていろいろと情報コントロールみたいなこともしていくということは警戒が必要なわけですか?
(町山智浩)いや、だから他のメディア……CNNであるとか、ニューヨーク・タイムズとかを記者会見から締め出したりしてですね。「メインメディアを信じるな」とトランプ大統領は言い続けているんで。「じゃあ、何を信じるか?」っていうと、ブライトバート・ニュースっていうことになるんですよ。だからブライトバート・ニュースは大統領の大本営発表みたいな形になっていくでしょうね。
(荻上チキ)うーん。でも、そこで独占インタビューが載るっていうことなので、「じゃあ、買うか」っていうことにはなるわけですよね。
(町山智浩)まあ、「買うか」っていうか、インターネットなんですけどね。
(荻上チキ)なるほど。わかりました。町山さん、ありがとうございました。
(町山智浩)はい。どもでした。
(荻上チキ)アメリカ在住の映画評論家、町山智浩さんにうかがいました。
<書き起こしおわり>