吉田豪 真木よう子を語る

吉田豪 真木よう子を語る TBSラジオ

(吉田豪)で、「雑誌でああいう風に(作品名を)挙げているのも、そういう仕事が来たから『しょうがない。どうしよう?』と思っていろんな人に聞いて回って。自分の尊敬する人の好きな映画を聞いたら、この人が好きだって言っていたからこれはいい作品だろうっていうことで挙げただけで。自分のセンスは信じられない」っていう。まあ、そんな感じの人なんで。だから昔、「夢は松田優作みたいになること」って語っていたことがあるんですけど。

(小西克哉)それは男気あふれる?

(吉田豪)男気あふれるなと思っていたんで。って言ったら、「でもね、それも本当に私、松田優作さんの作品なんて1本も見ていないんですよ。なんか友達がそう言っていたから、かっこいいらしいから言ってやろう」みたいな(笑)。本当にぼんやりしているんですよ(笑)。

(小西克哉)でもそういうの、正直に言うんだ。

(吉田豪)そうなんですよ。だから、そういう上げ底というか。中身は本当にそうなんですよ。で、そういうことは聞いてみると嘘はつかないし。で、そういう風に音楽界でも愛されているけど、前に『東京フレンズ』っていう映画に出た時に「この作品で得たものは大塚愛という友達」って。この間『HEY!HEY!HEY!』でも一緒に出ていましたけど。仲がいいのが大塚愛で、最近買ったCDがYUIだったりとか。すごい普通なんですよ。

(小西克哉)普通っぽいですね。

(吉田豪)で、さらにYUIの話をしていたら、「そのYUIさんのCDと『すべらない話』のDVDを買って。今日、これすごい楽しみと思って帰ろうとしたらタクシーに忘れちゃって。超ショックで。タクシーに連絡しても、『もうない』って言われてショックでショックで。友達に泣きながら電話して。そしたらその友達が全然興味を示さないで、『ああ、そう』みたいな感じで。それも腹が立って。なんで私がこんな傷ついているのに、わかってくれないんだ!?」みたいな(笑)。

(小西克哉)「そんなもん、レアなもんじゃないからまた買えばいいよ」みたいな。

(吉田豪)そうなんですけど。「そんなの、声を大にして言ったらみんな、くれますよ。それ」って(笑)。そんな感じの人なんですよ。

(小西克哉)かわいいところ、あるよね。そういう。

(吉田豪)で、そういう風に話していても「本当に男ですよ」みたいな話で。で、インタビューでも坂本龍馬の言葉を引用したりもしていたんですよ。

(小西克哉)それはどっかの雑誌でっていうことですか?

(吉田豪)そうです。で、「『お~い!竜馬』をいま読んでいる」とかも言っていて。「龍馬好きなんですか?」って言ったら、「いや、別に。でもね、あのへんの時代はすごい好きです」って言っていて。「ああ、幕末とか好きなんですか?」って聞いたら「幕末とか戦国とか、大好きですよ! 一瞬でいいから行ってみたいですよね、あの時代に」とか。

(小西克哉)ああ、そのへんは興味があるんだ。

「戦国とか幕末とかの時代に行ってみたい」

(吉田豪)すんごい好きなんですよ。「いつも死と隣合わせの状態で。そういう状態に行きたい! 戦国に行きたい!」っていう。

(小西克哉)まさにいまとは対極だよね。たしかにね。

(吉田豪)本当になんか、「オス」と言っても現代のオスじゃないんですよ。その時代のオスで。だから軽い気持ちで「じゃあ、好きな武将とかいますか?」って聞いたら、「織田さんとか、超好き!」って(笑)。

(小西克哉)「織田さん」(笑)。

(吉田豪)信成かと思いましたよね(笑)。

(小西克哉)ああ、足を上げてクルクル回る人ね(笑)。「織田さん」って言われても……普通、織田さんって言わないよね。面白いよね(笑)。

(吉田豪)「名言!」って思って。

(小西克哉)あのへんの人って、「漱石」とは言うけど、「夏目さん」って言われてもなんか漫画評論家の方かと思っちゃうもんね。

(吉田豪)ですよね(笑)。そっちですよね。

(小西克哉)織田さんってすごいね。「課長 織田」みたいな(笑)。

(吉田豪)あっさり言いますからね。

(小西克哉)だって織田さんって……織田さんが好きだっていうのはどういうところなんですか? 雰囲気はわかるけど。

(吉田豪)「あのね、何回も思ったことがあるんですよ。いろんな現場で過酷な状況にあうたびに、『織田さんだったらどうするだろう?』って……」っていう(笑)。

(小西克哉)(笑)

(吉田豪)そう思うと、乗り越えられるらしいんですよ。「織田さんだったら」って。

(小西克哉)でも、織田さんのたとえば本を読んでいるわけじゃないでしょう? 勉強嫌いだから。

(吉田豪)いや、「勉強は嫌いなんだけれども、あの時代の話はすごい面白い」って言っていて。

(小西克哉)そういうのは、誰かの口伝えに聞いたことがあるのかな?

(吉田豪)漫画とかで読んでいるのかどうかはわからないですけど。織田さん勉強中ではあるみたいです。「織田さんはヤバい」っていうことで。

(小西克哉)「織田さんはヤバい」(笑)。

織田さんはヤバい

(吉田豪)だから、「あれ、ホトトギスが鳴かなかったら真木さんはどうします?」って聞いたら、本気で悩みだしたんですよ。「どうしよう……殺すかな? でも、殺すのはいけないな。だって、鳴かないだけで。かわいそうですよ。ホトトギスってちっちゃいカナリヤみたいなやつですよね? それを殺しちゃうのは……放っとくかな? でも、ダメだ! それじゃあ、織田さんになれない。殺そう!」って決意したりとか(笑)。

(小西克哉)織田さんになるために(笑)。

(吉田豪)「私は織田さんにならなきゃいけない」みたいな。

(松本ともこ)「放っておくかな」って(笑)。

(小西克哉)「放っておくかな」と。織田さんは黒人も好きだったみたいだからね。

(吉田豪)ああ、そうなんですか?

(小西克哉)黒人の補佐官がいたっていう説があるぐらいで。

(吉田豪)「そういうの好きなんだったら、たぶん三国志とかも好きですよ」って言ったら、「ああ、それね、そういう風に言われるんだけど、全然知らなくて」って言っていて。「『三国志が好きだ』って言ったら、本当に男たちが『信用できる!』って言いますよ」って言ったら、「マジで? 調べとく!」って(笑)。

(小西克哉)(笑)

(吉田豪)信用できるなー!っていう(笑)。

(小西克哉)つまり、いろいろと出てるのは事務所の情報のあれだったっていうことなの? 映画鑑賞とかさ。松田優作とか。

(吉田豪)まあ本人もそういう風に背伸びをしていた時期もあったりとか、周りに影響されたりとか。「私の言うことを信用しちゃいけない」とか結構言うんですよ。恋愛の話とかもなんでも話してくれて。まあ、ほぼカットになったんですけど。「本当にね、私が女だったら私とは絶対に付き合わない」って言っていて。「信用ができない。嘘ばっかりつくし、裏切るし」っていう。まあ、そういうような人なんですけど……だから、異性としては信用できないけど、同性としては信用できるというか。同じ男として見ると、本当にすごい信用ができるという人なんですね。

(小西克哉)うん。

(吉田豪)で、ちなみにイジマカオルさんっていうちょっと有名なカメラマンの方がいて。その人が女優さんの理想の死に方を撮るという。「どんな死に方をしたいですか?」って聞いて、それを再現して撮るみたいなことをやっている人なんですけど。で、それが真木よう子さんの時はボツになったという話を聞いたんですよ。「なんでボツになったんだろう?」って思って聞いたら、理想の死に方は「爆死」って答えたんですよ(笑)。それ、写真に撮れないじゃないですか。

(小西克哉)それは撮れない(笑)。

(吉田豪)「えっ、だって散り散りになったところを撮ればいいじゃないですか。木片とかそういうのを作って」「いや、それあなた、いないじゃないですか!」「いないですよ。でもそれ、誰かに作ってもらって、爆死で」って(笑)。

(小西克哉)でもさ、死に方のその写真自体って難しそうなもんじゃない?

(吉田豪)いや、普通に刺されて死んでいるとか。

(小西克哉)ああ、刺されたりね。そういうのを撮るんだ。

(吉田豪)山の中で倒れたりとか、そういういろんな死に方を。死に顔を撮るみたいなのがあるんですよ。死に顔を撮るような企画なのに、爆死だと死に顔を撮れないんですよ。

(小西克哉)でも圧死なんか、大変じゃない?

(吉田豪)圧死も選ばないですよ、たぶん(笑)。

(松本ともこ)女優さんですよね。それを選ぶのは。

(吉田豪)女優さんですよ。きれいな死に方ですよ。

(小西克哉)ああ、そうか。きれいな死に方という前提があるから。

(吉田豪)当然ですよ。首吊りとか選ばないですよ、普通。硫化水素とか、選ばないですよ(笑)。

(小西克哉)でもその企画自体も変な企画だけどね。

(吉田豪)変なんですけど、それをどうやるか?っていう。

(小西克哉)でも爆死ってすごいね!

(吉田豪)かっこいいですよね。で、「どうしてか?」って聞いたら、「私は残したくない」って言っていて。「生きた証を残したくない」って言っていて。変わった発想なんですよね。でも、この仕事をやっていたら、残るじゃないですか。

(小西克哉)戦場カメラマンになるしかないんじゃない?

(吉田豪)まあね、『地雷を踏んだらサヨウナラ』にするしか。

(小西克哉)地雷踏んだら体は吹っ飛ぶしね。

(吉田豪)だから、「なんでこの仕事を選んじゃったのか?」みたいな話なんですけど。どんどん残っていくわけじゃないですか。

(小西克哉)全く逆のことだよ。

(吉田豪)「消したい仕事とか、ありますよね?」って聞いたら、「ある!」って。『ベロニカは死ぬことにした』っていうこの人の代表作なんですよ(笑)。

(小西克哉)(笑)

(松本ともこ)私、それ原作も大好きで。それで評価されたんでしょう?

(吉田豪)そうです。それでブレイクしたんですよ。「なんでですか?」って聞いたら、あれで脱いでいるんですよね。

(松本ともこ)ああ、そうか。

(吉田豪)で、それがだからいまでも雑誌でどんどんどんどん取り上げられたりして。それにすごい怒っていて。「だって変な人たちが『おっぱい見える』とか……気持ち悪い!」って(笑)。男らしい。

(小西克哉)ああ、そうなんだ。そこを抹殺したいんだ。

(松本ともこ)なるほどねー。

「芸能界で友達がいない」

(吉田豪)で、ちなみに「芸能界で友達がいない」とも公言していて。「友達がいないって、誰か合いそうな人はいないんですか?」って聞いたら、(『ピューッと吹く!ジャガー』や『すごいよ!!マサルさん』の漫画家の)うすた京介さん。その人とだったら仲良くなれるかもしれないと思っていて。実は僕のインタビューの直後がその人との対談っていう、『hon-nin』の連続企画だったんですよ。

(小西克哉)ああ、なるほど、なるほど。

(吉田豪)で、うすたさんの取材の前に言っていたのが本当にこの人(真木さん)は猫タイプで。気まぐれな。で、「犬みたいな人間は信用できない」ってそういう話を散々していたんですよ。で、うすたさんの対談に入った瞬間……本当に声も低いしボソボソとしゃべるタイプで、現場では全然しゃべらないとかそういう人なんですけど。うすたさんが来た瞬間にもうニッコニコで、声が2オクターブ上がって。照れながらもすっごい楽しそうにしゃべっていて。さらに言うのは、うすたさんが犬好きだって聞いた瞬間に「私も犬、大好きなんです~」っていう(笑)。

(小西・松本)(爆笑)

(吉田豪)「ああ、やっぱりこの人、異性としては信用できない」っていう(笑)。

(小西克哉)その通りだね(笑)。ああ、人間的にいろいろとなんか見えてきた感じがしました。

(吉田豪)でも、いいですよね。

(小西克哉)ああ、なるほど。いまサブカル界のディーバと言われている真木よう子さんでございます。この真木よう子さんのインタビューが載っている『hon-nin』、6月7日(土)に発売ということですね。ということで月曜日、本日のコラムニストはしゃべる墓荒らし、吉田豪さん、ありがとうございました。

(吉田豪)どもです。

hon-nin vol.07
太田出版

<書き起こしおわり>

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