渡辺志保さんがblock.fm『INSIDE OUT』の中でルペ・フィアスコの『Made In the USA』のミュージックビデオとバージニア州で起きた白人至上主義者集会の衝突事件について話していました。
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— Plus Frequency (@iTunesDatabase) 2017年8月2日
(渡辺志保)ここで私の推し曲というかオープニングチューンを1曲、お届けしたいんですけども。みなさん、もちろんご存知だと思うんですけど、今日最初に紹介したいのはルペ・フィアスコの『Made In the USA』という曲なんですね。日本でも結構ニュースで報じられていますけど、去る8月12日にバージニア州のシャーロッツビルで暴動があったという事件がありましたけども。いわゆる白人至上主義者の方たち、KKK(クー・クラックス・クラン)を呼ばれるような人たちが起こした暴動が発端になって、人種同士の衝突というか思想が違う人たちの衝突になってしまって悲しいことに女性が1名、命を落としてしまったということがありましたけども。
バージニア州白人至上主義者集会の衝突事件の背景
これ、もともと発端になっているのが南北戦争で戦ったリー将軍の銅像を撤去するかしないか?っていうところの論争がひとつの発端になっていまして。「リー将軍」って言われても、ちょっと日本の特に若い方なんかは馴染みがないと思うんですけど。かつてアメリカで南北戦争っていうのがあって。みなさん、最近の高校生とかさ、アメリカの歴史とかをどれぐらい学校でやっているんだろう?って思ったんですけど。私はヒップホップを聞いていたせいか、アメリカの歴史ばっかり好きで、そこだけ集中的に勉強したんだけど。で、日本だと「南北戦争」って呼ばれますが、アメリカでは「シビル・ウォー(American Civil War)」って言って、民主性とか公民性に重きをおいた戦争だったんですね。
で、アメリカが南と北の2つに分かれてしまって内乱が起きたっていうことなんですけど。で、もともと南北戦争の「北」の方は先に工業化が進んでいて、黒人も白人もまったくもって平等とは言わないですけど、工業化が進んでちょっと前進的(Advanced)な経済や生活を営んでいたのが北部なんですね。対して南部っていうのは結構昔ながらの綿花栽培とかプランテーション農場っていう広いお屋敷と広い畑。かつ、機械がないから奴隷の人を使って労働力にしていて。なので、南部の人たちは奴隷制を守りたかったんですね。でも、北部の人たちは前進的だから「奴隷制なんてやめて、奴隷は開放してみんなで国を良くしていこう」っていう立場。それで南北が分かれたと。
で、銅像を撤去する・しないってなっていたリー将軍は奴隷制を守りたかった南軍のヒーローみたいな存在だったわけですね。なので、いまもそのリー将軍のことを崇めているような人たちはやっぱりちょっと人種差別的であるというか、昔ながらのちょっと白人至上主義者っぽいところがあると。で、そういったところが下敷きになってしまった事件でしたということなんですけど。で、この『INSIDE OUT』でも何度となく取り上げてきましたけども、Black Lives Matterっていう運動がアメリカを中心にワーッと広がっていて。その後に、トランプ政権が発足することが決まって。そのタイミングで結構若い……YGの『FDT (Fuck Donald Trump)』とかありましたけども。
まあ結構ヒップホップアーティストもそういうことを題材にして曲にすることが増えてきたなという風に思っていて。たとえば今年に入ってからもジョーイ・バッドアスの『Land of the Free』のPVとか。
Joey Bada$$ 『Land of the Free』
あとコダック・ブラックの『Tunnel Vision』っていう曲がありますけど。これも『INSIDE OUT』でも話したと思うんですが。そこのビデオでもクー・クラックス・クランとか、あと南軍って「アメリカ連合国」っていうのを作って、そういう連合国旗っていうのを作っていたんですけど。そういう国旗をフィーチャーするようなミュージックビデオを出していたり。
Kodak Black『Tunnel Vision』
ジェイ・Zもこの間の『4:44』から『The Story of O.J.』でアメリカ黒人の典型的なステレオタイプとかクー・クラックス・クランの描写なんかをフィーチャーしていたとかがあって。
Jay-Z『The Story of O.J.』
結構ラッパーの方たち、ヒップホップアーティストの方たちはもうそういうちょっと「ヘイト」な雰囲気のアメリカっていうのをすごく危惧して、自分たちの作品に早々に落とし込んでいたにもかかわらず、今回、こういう事件が起きてしまったっていうのはすごく悲しいなという風に私も日本の隅っこで思ったわけなんですけども。でもって、ここで紹介するルペ・フィアスコの『Made In the USA』っていう曲なんですが。これは今年の1月に発売された彼のアルバムからの曲で。彼もTwitterでつぶやいていたんだけど、2年前にできた曲なんですよね。
で、どんなことをラップしているか?っていうと、「このかわいい女の子はマイアミから来ました」とか、「俺がすすっているこのシロップはテキサスから来たやつです」「乗っている車はデトロイトです」って、アメリカ国産の○○っていうのをずっとラップしていて。たとえば、彼はシカゴ出身だから「ギャングはイリノイ州から。このガンも(シカゴのある)イリノイ州のガンだ」みたいなことを触れていたりとかして。で、その中で「KKKはインディアナ州から(Ku Klux Klan in Indiana)」みたいなこともラップしていたんですよね。
で、インディアナ州ってかつてKKKの構成員だった政治家が州知事になったようなこともありまして。本当にKKKといえばインディアナとかそういうこともあるんですけど、まあそういうKKKを題材にした曲を2年前に歌っていた。まあその前からルペはすごく政治的な発言が濃い作品がたくさんありましたけども。で、それで8月12日の事件を受けて彼がビデオを発表したというところで。で、もちろんこのミュージックビデオの中にもそのKKKの描写であるとか、あとはトランプがスピーチしているような映像なんかもコラージュして使っておりまして。まさにいまのタイミングにぴったりのミュージックビデオかなと思いましたので、ぜひぜひここでオープニングチューンとしてお届けしたいと思います。というわけで、ルペ・フィアスコの『Made In the USA』を聞いてください。
Lupe FiascoMade In the USA
Lupe?Fiasco ? Made in the U.S.A. @LupeFiasco https://t.co/I1zg9TDAsW
ルペ・フィアスコ『Made in the U.S.A.』歌詞。KKKはインディアナから!— みやーんZZ (@miyearnzz) 2017年8月22日
はい。いまお届けしておりますのはルペ・フィアスコの『Made In the USA』。本当に数日前にミュージックビデオが発表されたばかりなのでぜひぜひぜひ見てください。
<書き起こしおわり>