渡辺志保 Robert Glasper『Black Radio III』を語る

渡辺志保 Robert Glasper『Black Radio III』を語る MUSIC GARAGE:ROOM 101

渡辺志保さんが2022年3月4日放送のbayfm『MUSIC GARAGE:ROOM 101』の中でRobert Glasperの最新アルバム『Black Radio III』についてトーク。直接インタビューをした際の印象的だった言葉などを紹介していました。

(渡辺志保)ここで最近気になっているトピックとともにもう1曲、皆様にお届けしたいと思います。以前、この番組でも『Black Superhero』という曲をオンエアーしましたけども。あの天才ジャズピアニスト、ロバート・グラスパーが最新作アルバム『Black Radio III』を先日、2月25日にリリースしました。ということで、今日はこの『Black Radio III』のお話をしたいなと思います。

レーベルのホームページに載っている日本語の紹介文があるので読ませていただきます。「時代の声をサウンドで表現し続ける革命児、ロバート・グラスパーのブラック・ミュージックを融合した『BLACK RADIO』から10年。 社会の変化によって破壊された世界のフラストレーションとチャンスを力強く、革新的に、そして美しく表現した2022年ブラック・ミュージックの最高傑作」という。それが『Black Radio III』ということです。本当にうなずくしかないっていう感じですし。

で、本当に今日も冒頭からちょいちょい話していますけども、今本当に世界中ではたくさんのことが起こっています。で、実際にロバート・グラスパーさんもそのことについて、ロシアとウクライナの戦争の前の話なんですけども。そうしたことに言及をしていて。だからこそ、今このアルバムを自分が作って世の中に届けたいと思うということをおっしゃってました。

なので本当に今、聞くべきアルバムかなということを個人的にも強く思っております。そして私、非常にラッキーなことに今回、この作品のリリースに伴いまして、ロバート・グラスパーさんにインタビューをさせていただいたんですよね。本当にびっくりしましたね。「インタビューできますよ」という風にお話をいただいて。これこそ「私でいいんですか?」っていう感じがしたんですけども。でも、この番組でも紹介した『Black Superhero』のお話なんかも直接伺うことができたら非常に光栄だなと思いましたので、ZOOMでインタビューをさせてもらったんですけども。

で、そのインタビューをした日が先月、2月10日だったんですね。日本時間の2月10日、アメリカは2月9日の夜だったんですけども。2月10日といえばJ・ディラの命日だったんですよね。で、私はその前に星野源さんの『おんがくこうろん』のJ・ディラ回に出る予定だったので、めちゃくちゃJ・ディラについて再度ディグっていた時でもありましたし。もちろん、ロバート・グラスパーといえばJ・ディラにも大きな影響を受けたミュージシャンの1人ということで。なんとなく、ご縁というか、ミラクルというか、そういったものを感じてしまいまして。

で、インタビューの冒頭でも「今、日本時間では2月10日ですので今日はJ・ディラの命日なんですよ。こんな日にグラスパーさんに取材ができて非常に光栄に思います」という風に取材をスタートしました。で、あれだけの、グラミー賞も何度も取ってらっしゃって、世界を股にかけて活躍するミュージシャンということで、すごくすごく私も緊張して挑んだんですけども。お話したことがある方はわかるかもしれませんが、すごく気さくにいろんなことを話してくださって。

で、かつ、自分の新作アルバムに対するインタビューなんてもう死ぬほど受けてらっしゃると思うんですけども、でも全然嫌な顔ひとつせず、ひとつひとつ質問にとてもとても丁寧に答えてくださって。もうやっぱり成功してらっしゃる方は器のデカさが違うなって。これは本当に大物にインタビューをするたびに思いますけども。本当に違うなっていうのを再確認しました。

印象的だったグラスパーの言葉

(渡辺志保)で、いくつか彼が私にお話してくださった中で非常に印象的だった言葉を紹介したいなと思います。まず、私も非常に感銘を受けた『Black Superhero』という曲ですけども。「この曲をはじめ、アルバム全体を通してなにを伝えたかったのでしょうか?」と聞いたら「アルバム全体を通して伝えたいことは、黒人同士が結束しあうこと。そして若い黒人男性としてアメリカ国内で生きていくことは非常に困難であると同時に、アメリカ社会全体において、そのように仕組まれているのでは? という風に感じる。とにかく成功をすることに対するハードルが高い。だからこそ『Black Superhero』では自分の身近な場所にスーパーヒーローだと思える人を見つけてほしいということを伝えているんだ」という風に答えてくださりました。

でですね、このアルバムを作るに際して、私は『Black Radio III』を通して聞くと愛が……とにかくいろんなタイプの愛。今にも壊れてしまいそうな愛もあれば、恋愛関係だけではなく、もっとユニバーサルな見地から、地球に、環境に問いかけているような愛とか。あとは『Black Superhero』だったらそのコミュニティーに根ざした愛とか。そうしたいろんな視点からの愛を感じる。アルバムを聞きすすめていくうちに、だんだんだんだんそれがちょっと宗教的なと言ったら変かもしれないけれども。より広い包容力……それはまるでヒーリングのようでもあるという風に感じて。そのことをグラスパーさん本人にお伝えしたところ、こうしたお返事をいただきました。

「愛といえば、たとえば最近はたくさんの人が怒っていると思う。そしてそこには愛はない状況だ。だから僕たちで今の状況の基盤を修正したいと思ったんだ。そして今、なにが起こっているかという状況を理解するとともに、自分が誰なのか? そしてどこにいるかということを気づかせることもとても大切だと思った。だからあなたがもしヒーリング的なバイブスを感じたのであれば、とても誇らしく思います」という風に答えてくださいました。

で、私がインタビューをしたグラスパーさんの記事はユニバーサルミュージックさんのメディアでもあるuDiscoverというところでも読めますし。あとはビルボードジャパンさんでも長々とインタビュー記事が読めますので、そうした媒体をチェックしていただければという風に思います。

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(渡辺志保)そしてもし、許可が出たらグラスパーさんの音声を直接この番組でもかけて皆さんにもご紹介したいなという風にも思っております。というわけで、今日ここでおかけしたいのはロバート・グラスパーの最新作『Black Radio III』からあの『Everybody Wants To Rule The World』のカバーになりますね。参加しているのはレイラ・ハサウェイとコモン。もう本当にこれも、みんなそれは地球をルール、コントロールしたいのは当然かもしれないけども今、1人の男性のエゴによって地球がコントロールされようとしているなっていう気持ちで聞いて。思わず涙が出てしまいました。というわけで、お届けしましょう。ロバート・グラスパー feat. レイラ・ハサウェイ&コモン『Everybody Wants To Rule The World』。

Robert Glasper『Everybody Wants To Rule The World』

<書き起こしおわり>

渡辺志保 Robert Glasper『Black Superhero』を語る
渡辺志保さんが2022年1月28日放送のbayfm『MUSIC GARAGE:ROOM 101』の中でRobert Glasper『Black Superhero』を紹介していました。
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