ダースレイダーさんがTBSラジオ『タマフル』に出演。宇多丸さんと著書『MCバトル史から読み解く 日本語ラップ入門』について話していました。
(宇多丸)さあ、というわけでまあ、いろんな方とお会いしましたよ。高柳良一さんからメールをもらって、世界の小島秀夫さんと昨日対談をして。そしてなんと! スタジオにこんな方。この人が来てくれるなんて! ある大物ゲストにスタジオに来ていただいております。紹介しましょう。ラッパーの、ダースレイダーさんでーす。
(ダースレイダー)はーい(笑)。いや、いままででいちばんすごい紹介でしたね(笑)。「ビッグマンが来たぜ!」っていうね。
(宇多丸)ビッグマンじゃないですか。あなた、全然ビッグマンですよ。
(ダースレイダー)この間、所属していた鎖グループっていう会社を退社したんですよ。
(宇多丸)なんか、ちょっと話題ですよね。
鎖グループ退社
(ダースレイダー)なんでいま、僕無職の自称ミュージシャンという(笑)。
(宇多丸)ああー、逮捕されたりすると「自称ミュージシャン」って。
(ダースレイダー)逮捕されると自称ミュージシャンってなる立場に戻りましたね。
(宇多丸)ちょっとね、鎖を離れた事情は話しているとまた大変だから。それはまたちょっとゆっくりと聞かせてください。なんですが、本日お招きしたのは、まずダースから送本いただいて僕も拝読しました。6月22日に日本初のMCバトルの歴史書『MCバトル史から読み解く 日本語ラップ入門』がKADOKAWAさんから出ているんですね。これが素晴らしい!
(ダースレイダー)売れてない(笑)。
(宇多丸)あ、売れてない?
(ダースレイダー)売れてないみたい(笑)。「素晴らしい」って言ってもらったのに(笑)。
(宇多丸)これは私、言わせていただきましょうか。ダースレイダーさん、あなたが絡んだ仕事で売れたものってあるんですか?(笑)。
(ダースレイダー)いや、ないんですよ(笑)。
(宇多丸)(爆笑)
(ダースレイダー)ひとつもないっていう(笑)。今回ね、KADOKAWA本社さんからもね、「これはPRできない」という級の売れなさですよね。
(宇多丸)いや、ちょっと待ってくださいよ。それはね、あなたのいままでの作品がね、いや別に素晴らしい作品群だと思うよ。ただ、売れなかったのは残念ながらあれかもしれないけど、これはめちゃめちゃ、もちろんいまの『フリースタイルダンジョン』からのバトルブームっていうのもあるけど。素晴らしい本でしたよ!
(ダースレイダー)うわー、もうね、師匠にそう言ってもらえただけでも、もう書いた甲斐があったっていう。もう、売れなくて結構(笑)。
素晴らしい本
(宇多丸)いやいやいや、ぜひ売れてほしい。まずひとつ言えるのは、『MCバトル史から読み解く』っていうぐらいで、本当にまあフリースタイルの始まりから『B BOY PARK』での1999年の……。
(ダースレイダー)そうですね。
(宇多丸)で、この本はなにが画期的かというと、ちゃんと個々のバトルでどのラッパーがどういうラップをしたか? それに対する分析みたいな、ものすごく具体的な技術論。バトル論というか、本当にどういう試合だったのか? というね。ボクシングの試合とかだったらそういうの、やるじゃないですか。そういうのをきっちり、技術論的なところも含めて分析している。で、やっぱりダースみたいにずーっと、それこそ『B BOY PARK』の1回目の時も出ているし。
(ダースレイダー)そうですね。僕、だから最初のオフィシャルのMCバトルの1回目で。師匠がMCをやっていて。古川(耕)さんとかもジャッジで参加していたんですけども。それからいまの『フリースタイルダンジョン』だったりっていうところまで、全部いるというのがたぶん僕だけかな? と思って。
(宇多丸)そうだね。そうなんだよ。全部いて、通史的に見れて、しかもそれをちゃんと分析して、客観的な、普遍的な言葉に変えられてっていうのはね、君しかいないから。
(ダースレイダー)だからまあ、これは書かなきゃなとは思っていて。タイミング的にも。
(宇多丸)素晴らしい。びっくりしちゃった。あまりの内容で。僕、当然その『B BOY PARK』は関わっていたけど、その後のバトルシーンのこととかは何も知らないから。めちゃめちゃ勉強にもなったし。で、素晴らしいし、バトルだけじゃなくて、日本語ラップの批評とかに関しても、やっぱり技術面から語れる方って、もちろんラッパーじゃないからしょうがないっちゃあしょうがないんだけど。ほぼほぼ、いないじゃないですか。
(ダースレイダー)うんうんうん。
(宇多丸)だからちょっと、日本語ラップ批評のメソットというか、姿勢、スタンスみたいなところでも、一石を投じる。
(ダースレイダー)ああ、うれしいですね。
(宇多丸)本当にね、すげーよ!
(ダースレイダー)僕が『フリースタイルダンジョン』のジャッジで呼ばれる時に、まあ解説とかをちょっとしている時、どういう考え方をしているのかな?っていうのを一応教えたいなというのがそもそもあって。
(宇多丸)もちろん、バトルに対する、個々のラップに対するあれはもちろん、ダースの考えなんだけどね。でも、すごくフェアにね。めちゃめちゃフェアに書いていると思いますよ。
(ダースレイダー)まあ一応、「僕の定義です」っていうのと、「僕の見た歴史観です」っていう断りはして。中で使う用語とかも「僕はこう考えています」って定義づけをした上で、それに沿って読んでもらうという形をとっているので。
(宇多丸)とってもフェアな書き方していると思うし。あと、やっぱり技術的な変遷とかもとってもわかりやすいし。逆にその、いまのすごく進化しきったフリースタイルバトルの中で、結構傍目には気づいていない技術的なすごいところとか。そういうところも書いているんで、これを読むとたぶん、『フリースタイルダンジョン』以降というか、いまのバトルシーンもめちゃめちゃ面白く見れると思う。
(ダースレイダー)まあそこの、この先を楽しんでもらうためのサブテキストになればいいかなとも思っていたんですけど。
(宇多丸)っていうか、日本語ラップ全体を楽しむのに最高のテキストになるんじゃないかな。
(ダースレイダー)日本語ラップのそういう本ってなかったっていうのもあるし。
(宇多丸)そうだねー。あの、大した本ですよ。
(ダースレイダー)これ、新書サイズなので結構削ってはいて。192ページしかないから、日本語ラップには素敵なしょうもない話っていっぱいあるんですけど、そのへんは……(笑)。
(宇多丸)そんなのを入れていると……それはほら、前に(サイプレス)上野とブロンクスが出したヒップホップ被害者の会の本(『LEGENDオブ日本語ラップ伝説』)があるじゃないですか(笑)。
(ダースレイダー)そうですね。ああいうところで拾ってもらってはいるんですけども。
(宇多丸)ヒップホップ被害者の会の方はまた別に作ろうよ、それは(笑)。
(ダースレイダー)それでもね、宇多丸さんが繰り返し言っていた「フリースタイルの話をするのにこの男は!」っていうK.I.Nさんの名前をちゃんと頭に入れるとかね(笑)。
(宇多丸)もちろんそれもね、してくれているし。彼はバトルシーンには関わってはいないから、ちゃんとそのバランスになっているし。
(ダースレイダー)そういった、入れるべき名前みたいなところも一応僕なりに見たものっていうものに関して……自分が見たものに関してはちゃんと触れるという形にしてありますね。
(宇多丸)それを言ったらさ、『ダンジョン』以降のこういう時にいろんなところで特集とか組まれているけど、通史的に見ているダースに誰が話を聞きに……ねえ。
(ダースレイダー)いや、全然だからいろんな企画、雑誌・テレビ・ラジオとかあったと思うんですけど。僕に話を聞きにきた人はいなかったんで。まあでも、「一応僕、こういうことは知っているんですけどね」みたいなのを出しておきつつ、そういった企画を考えている人たちがね、どの程度考えて書いていたんですか? 本当にっていう問いかけもしたかったなっていうのはあって。
(宇多丸)全然その、実製作者側の……これはどんなジャンルでもそうだけど、実製作者側からの批評のあり方に対する問題提起みたいなのは常に絶対あった方がいいから。ということでね、これはあなた、最高ですよ。
(ダースレイダー)やったー!(笑)。
(宇多丸)最高傑作じゃない?(笑)。
(ダースレイダー)最高傑作(笑)。売れないシリーズの最高傑作(笑)。
(宇多丸)いや、違う違う。売れるって。売れるって。
(ダースレイダー)本当かな?(笑)。
(宇多丸)いや、でもダース自身がさ、戦ってきた道筋でもあるから。1冊の本だけど、同時にダースの作品にもなっていると思うんで。とってもいいと思います。余命の中で、大したことをやったなと思います。
(ダースレイダー)でもこれは「残したい」っていうのも実はあって。だから、どうしてもやっぱり早いうちにこういったものを。他に教えておきたいっていうのも気持ちとしてはあったので。
(宇多丸)ダースの余命の件についてはちゃんと曲を聞いてください。そういう曲があるんで。『5years』という。
(ダースレイダー)はい。売れないシリーズのね、バンドの方の売れないシリーズがあるんですけども(笑)。
THE BASSONS(ベーソンズ) 『5years』
(宇多丸)だからちゃんとみなさんね、ダースにちゃんといい目を見させてあげてください(笑)。
(ダースレイダー)そろそろいいんじゃないですか? 優しくしてくれてもね(笑)。
(宇多丸)でも、あれじゃない? それがさ、上手くいかないのが生命力になっているんじゃないの? ひょっとして。「テメー、ふざけんな!」みたいな(笑)。
(ダースレイダー)でもね、ちょっとずつ辛くはなってきてますよね(笑)。
(宇多丸)これはでも本当に渾身の一作だと思うし。なのでぜひ、みなさん。
(ダースレイダー)1200円とかなんで、ご祝儀と思ってね。
(宇多丸)買ってください。絶対に。本当にめちゃめちゃおすすめ本です。もう1回、タイトル言いますね。『MCバトル史から読み解く 日本語ラップ入門』。ダースレイダー著でございます。KADOKAWAさんから本体税別で1200円。安い!
紹介していただいたMCバトル本はこちらから是非!https://t.co/9bCzQIhqjy?amp=1 ! #utamaru
— ReiWordup (@DARTHREIDER) 2017年7月15日
(ダースレイダー)安いですよ。
(宇多丸)これ、タマフルブックフェアに並べてください。お願いします。
(ダースレイダー)紀伊國屋さん、お願いします!
(宇多丸)ぜひぜひだと思います。ということで、売れるようにさ。「売れない」とか言わない。あなた、開口一番「売れない」とか言うからさ、あれだから。
(ダースレイダー)一応『タマフル』に出ると売れるっていう都市伝説を信じてはいるんですよ(笑)。
(宇多丸)大丈夫、大丈夫。「俺が見込んだ才能は確実に売れる」っつって、ちゃんとRomancrewみたいに外した例もあるから。
(ダースレイダー)はい。ALI-KICKとこの後、飲みに行くか?って(笑)。
(宇多丸)(笑)。だからちゃんとお知らせして。
(ダースレイダー)僕がやっているバンドのベーソンズっていうのもあるんですけども。それが実はね、売れない間に2枚めのアルバムが出まして。『5years』というアルバムが6月28日に発売になったんですけども。それのレコ発イベントというのが7月26日に渋谷のチェルシーホテルでGOING UNDER GROUNDと2マンでやることになって。
7.26(水) 「カッコイイ音楽が聴ける日」
ベーソンズ(THE BASSONS) x GOING UNDERGROUND
渋谷CHELSEAHOTEL
1930開場 20時開演
イープラス
■購入ページhttps://t.co/YahNwgX5sS pic.twitter.com/kMs6FfKPAi— ReiWordup (@DARTHREIDER) 2017年7月10日
(宇多丸)おっ、すごいじゃん。なんか結構ビッグネームと。
(ダースレイダー)異様に心細いんで、みんなぜひ応援に来てください(笑)。
(宇多丸)ゴーイングファンばっかりだとね。
(ダースレイダー)ゴーイングファンばっかりの、そういったヒップホップな状況になりかねないので、ぜひ応援に来てほしいなと思います。あと、この本もね、僕、PR的なイベントとかはないんですけど、持ってきてくれたらサインしたりとか、載ってない話をしたりとかも、そういったことはしますので。ぜひ買ってよ!っていうね。「読んだよ!」っていうのもお待ちしています。
(宇多丸)本当にこの番組を聞いているような人全員におすすめしたい。
(ダースレイダー)で、そのベーソンズからもせっかくなんで1曲、聞いていただいて。ライブにもぜひ来ていただきたいと思います。生きているのを確認しに、生存確認をしに来てください。
(宇多丸)本当だよ。シャレじゃないよ、みなさん。
(ダースレイダー)ベーソンズのアルバム『5years』から『DONUTS』。
THE BASSONS『DONUTS』
(宇多丸)はい。お聞きいただいたのは今年5月にリリースされたベーソンズのアルバム『5years』に入っている『DONUTS』でございました。ダースレイダー、ありがとうございました。
<書き起こしおわり>