高橋芳朗 J-POPからわかる洋楽の楽しみ方 AKB48編

高橋芳朗 J-POPからわかる洋楽の楽しみ方 AKB48編 TOKYO FM

高橋芳朗さんがTOKYO FM『高橋みなみの「これから、何する?」』にゲスト出演。J-POP、特にAKB48の楽曲に影響を与えたであろう洋楽の楽曲たちを紹介し、聞き比べをしてました。

(高橋みなみ)『高橋みなみの「これから、何する?」』、ここからはベスト3先生。その道に詳しいプロフェッショナルな先生にあらゆる事柄のこだわりを3つ、教えてもらいます。今日は、音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんを迎えてJ-POPからわかる洋楽の楽しみ方を教えていただきます。よろしくお願いします。

(高橋芳朗)こんにちは。よろしくお願いいたします。

(高橋みなみ)お久しぶりでございます。

(高橋芳朗)お久しぶりです。ありがとうございます。

(高橋みなみ)いやー、もう先生にはグラミー賞、ポール・マッカトニーなどいろいろ教わっていますけども。今日が3回目ということで。

https://miyearnzzlabo.com/archives/41868
https://miyearnzzlabo.com/archives/41934

(高橋芳朗)本当、ありがとうございます。

(高橋みなみ)オープニングでもしゃべったんですけど、先生の教え方は本当にわかりやすくて。すごい毎回楽しいんですよ。楽しみです。ありがとうございます。

(高橋芳朗)本当ですか? やった!

(高橋みなみ)ということで私、基本的に音楽、割りと歌詞から入るタイプなんですよ。だから、80年代の曲とかもすごく好きな理由がそこにあって。だから歌詞が大人っぽいけど歌っている人が割りと若いじゃないですか。で、そこにギャップが生まれて。その世界観を描いているのがすごいなと思ったりとか。

(高橋芳朗)まさに中森明菜さんとか、そうですよね。

(高橋みなみ)も、そうなんです。だから明菜さんが好きっていうのも、表現力があるなとか、そういうところだったりするんですけど。なんでちょっと、今回は不安……。

(高橋芳朗)まあでも、曲の聞き比べなんで。ご安心ください。

(高橋みなみ)こんな私でも大丈夫ですか?

(高橋芳朗)大丈夫です!

(高橋みなみ)お願いします。ということで、今回はJ-POPからわかる洋楽の楽しみ方ということなんですけども。

(高橋芳朗)さっそく、サンプルとしてひとつ聞いていただきたいと思うんですけども。前々回に出演した時に、AKB48チームAの『胡桃とダイアローグ』という曲を……。

(高橋みなみ)コアな曲を。ありがとうございます。

(高橋芳朗)いやいや、名曲でございますよ。この曲、お好きだったらブリトニー・スピアーズの『Toxic』という曲もきっと気に入っていただけるんじゃないかというお話をしたと思うんですけども。ちょっと、聞き比べてみましょうか。じゃあまずはAKB48で『胡桃とダイアローグ』です。

AKB48『胡桃とダイアローグ』

(高橋芳朗)AKB48、2010年の作品ですね。『胡桃とダイアローグ』。

(高橋みなみ)いや、『これ何』でこんなコアなAKBの曲がかかるのがちょっと不思議で(笑)。

(高橋芳朗)第一回のじゃんけん大会の『チャンスの順番』のカップリング曲ですね。

(高橋みなみ)お詳しい。ありがとうございます。正解でございます(笑)。

(高橋芳朗)で、高橋さんの声が結構全面に出ているなっていう。

(高橋みなみ)そうですね。チームAは割りと私と前田とか小嶋とか麻里子様の声が中心にガッと入っている感じですね。

(高橋芳朗)で、この曲のサウンドと歌詞の乗せ方が、もしかしたらこのブリトニー・スピアーズの『Toxic』にインスパイアされているんじゃないかなと。

(高橋みなみ)ワクワクする!

(高橋芳朗)じゃあ、聞いてください。ブリトニー・スピアーズで『Toxic』です。

Britney Spears『Toxic』

(高橋みなみ)えっ? ヤバいですね!

(高橋芳朗)(笑)

(高橋みなみ)びっくりした、いま!

(高橋芳朗)いや、すごい。こんな大きなリアクションを取っていただいてうれしいです。

(高橋みなみ)いや、こんなにリンクするもんなんだなっていう。完全にインスパイアしていますね。

(高橋芳朗)だと思うんですよ。で、『胡桃とダイアローグ』って当時、パソコンかなんかのCMで使われていましたよね?

(高橋みなみ)そうです、そうです。

(高橋芳朗)CMで聞いた時に、「あっ、これなんかかっこいいな」って思って。「えっ? AKBってこういう曲をやるんだ」ってすごいショックを受けた。衝撃を受けた。

(高橋みなみ)なんかちょっと鳥肌が立ちました!

(高橋芳朗)あ、本当ですか?

(高橋みなみ)いまのところを聞いていても、わかる。『胡桃とダイアローグ』っぽい!

(高橋芳朗)間違いなく。この『Toxic』は2003年の曲なんですけども。『胡桃とダイアローグ』から7年前の曲になるんですけども。

(高橋みなみ)めっちゃ鳥肌立った。

(高橋芳朗)ありがとうございます。ありがとうございます。

(高橋みなみ)うわー、楽しい。こういう風に教えていただけるんですね。

(高橋芳朗)はい。今回はこういう感じで全編、AKB48の楽曲で組んでみました。

(高橋みなみ)すいません。本当に。ありがとうございます。

(高橋芳朗)なんで、「この曲が好きなら、きっとこの曲も好きだろう」みたいな。ちょっとゲーム感覚で気軽に楽しんでいけたらと思います。

(高橋みなみ)楽しい! はい。ということでJ-POPからわかる洋楽の楽しみ方。まずひとつ目、お願いします。

(高橋芳朗)はい。AKB48の曲からポップスの定番リズムを学ぼう。

(高橋みなみ)ほう、これは?

(高橋芳朗)あの、ポップスにこのリズムを使えば間違いなくいい曲になるっていうリズムがあるんですよ。

(高橋みなみ)なんですか、それ?(笑)。

(高橋芳朗)ここでは、そのある種の魔法のリズムを紹介したいと思うんですけど。このリズムって60年代に発明されて現代に至るまで洋楽・邦楽問わずたくさんの曲に引用されているんですけど。その魔法のリズム、まあAKB48の楽曲にも使われているという。ちょっとイントロに注目して聞いてください。AKB48『涙のシーソーゲーム』です。

AKB48『涙のシーソーゲーム』

(高橋みなみ)先生、この曲でしたか。

(高橋芳朗)はい。『ヘビーローテション』のカップリングですね。2010年。まあ、高橋さんは不参加?

(高橋みなみ)そうです。総選挙の楽曲だったので、私は『ヘビロテ』に参加させていただいていて。まあ、アンダーガールズと言われる子たちがこの曲を歌ったんですけど。この曲はファンの人たちもスルメ曲というか。

(高橋芳朗)あ、人気が高い?

(高橋みなみ)はい。「聞けば聞くほどいい曲だね」って言っていた曲でした。

(高橋芳朗)で、このイントロの「ドッドッドッ♪ ドッドドドッ♪」っていうリズム。これを念頭に置いて聞いていただきたいと思います。じゃあ行きましょう。マーサ・リーブズ&ザ・ヴァンデラスで『I’m Ready For Love』です。

Martha And The Vandellas『I’m Ready For Love』

(高橋みなみ)ちょっと待って下さいよ。びっくりしちゃうんですけど。さっきから。

(高橋芳朗)こちら、マーサ・リーブス&ザ・ヴァンデラスの1966年の曲になります。

(高橋みなみ)じゃあ、先ほど言っていたポップスの王道のリズムができた曲ですよね。

(高橋芳朗)そうですね。モータウンっていうレコード会社が生み出したリズム。で、モータウンって黒人音楽っていうかソウル・ミュージックの名門レーベルなんですね。で、『涙のシーソーゲーム』のミュージックビデオってみんなメンバーがアフロのカツラとかをかぶったりしてますよね? あれは『ソウルトレイン』っていう伝説的な黒人音楽、ソウル・ミュージックの番組のパロディーなんですよ。

(高橋みなみ)へー!(笑)。

(高橋芳朗)だから曲に基づいてビデオも作られていたんですね。

(高橋みなみ)知らなかった!

(高橋芳朗)で、この魔法のリズムを使ったJ-POPの名曲をいくつか聞いてみましょうか。まずはこちらからどうぞ。

(高橋芳朗)これ、ご存知ですよね?

(高橋みなみ)はい。広末涼子さん。いや、もうめっちゃかわいいっすよね! 『MajiでKoiする5秒前』。

(高橋芳朗)このリズムを意識して聞いたこと、なかったですか? 意外と。

(高橋みなみ)なかったです(笑)。好きな曲ですけど、やっぱり高橋さんみたいに曲に詳しいといろんな発見ができるっていうのがすごいうらやましくなりました。

(高橋芳朗)じゃあもう一発、行ってみましょうか。じゃあ、こちらをどうぞ。

(高橋みなみ)あれっ、これってもしかして?

(高橋芳朗)これは斉藤和義さんの『歩いて帰ろう』。

(高橋みなみ)本当だ! 同じだ!

(高橋芳朗)はい。『ポンキッキーズ』のオープニングテーマですね。

(しばし曲を聞く)

(高橋みなみ)さあ、音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんを迎えてJ-POPから洋楽の楽しみ方を学んでいます。ということで、まさか斉藤和義さんの『歩いて帰ろう』も。

(高橋芳朗)そうですね。他だとPrincess Princessの『Diamonds』とか。

(高橋みなみ)本当だ! ここまで4曲ぐらい聞いていると、わかってきました。

(高橋芳朗)そうですね。あと、サザンオールスターズの『太陽は罪な奴』とか。結構もう本当大量に、数え切れないぐらいあります。

(高橋みなみ)本当ですね。なんか今回を踏まえて、探したくなりました。

(高橋芳朗)そうですね。結構お好きな曲であると思いますよ。

(高橋みなみ)やだー! さあ、次はどんなサウンドを教えてくれるんでしょうか?

(高橋芳朗)はい。次に行ってみます。AKB48の曲からオールディーズを学ぼう。

(高橋みなみ)オールディーズっていうのは、なんですか?

(高橋芳朗)日本だと50年代、60年代の前半ぐらいまでの洋楽のヒット曲を総称して「オールディーズ」と呼ぶんですけど。まあ、その頃のオールディーズを象徴するサウンドでいまもJ-POPでちゃんと継承されているサウンドスタイルみたいなのがあってですね。特徴としては、教会の鐘の音みたいな、印象的な結構ゴージャスなサウンドで。そこに甘酸っぱくてちょっと切ないメロディーが乗っかってくるような感じですかね。結構、日本だとアイドルソングとかガールポップでよく使われる感じかな。

(高橋みなみ)じゃあやっぱりAKB48の曲もあると?

(高橋芳朗)ご多分に漏れず、この手法を取り入れている曲があるんです。じゃあ聞いてください。AKB48で『アイスのくちづけ』。

(高橋みなみ)ええっ!?

AKB48『アイスのくちづけ』

(高橋みなみ)ちょっと久しぶりに聞いたんで。鐘の音、鳴ってましたね。

(高橋芳朗)鳴ってますね。『フライングゲット』のカップリング曲で。

(高橋みなみ)そうです。アイスの実のCMソングとしても使われた曲なんですけども。

(高橋芳朗)西武ドームを思い出しますね。

(高橋みなみ)ありがとうございます。高橋さん、めちゃめちゃ詳しいっすよね? ありがたいですよ!

(高橋芳朗)(笑)。もう大好きなんで。はい。で、こういったオールディーズサウンドをモチーフに作られた洋楽もたくさんあるのでそれを聞いていただきたいんですけど。イントロはもうほぼ一緒なんで、注目して聞いてください。トレイシー・ウルマンの『They Don’t Know』です。

Tracey Ullman『They don’t know』

(高橋みなみ)ちょっとテンポ感が違うだけで、たしかにイントロは……。

(高橋芳朗)そうですね。テンポを早くすればよりわかりやすいかなとも思うんですけど。これも、だから1960年代当時に作られた曲じゃなくて、1980年代にオールディーズのサウンドを再現して作られた曲なので。だから、曲作りの狙いとしては『アイスのくちづけ』と同じアプローチと言ってもいいと思いますね。

(高橋みなみ)個人的に思ったのは、やっぱり鐘の音ってなるとクリスマスソングとか。

(高橋芳朗)そうなんです! クリスマスに非常に相性のいいサウンドだと思いますし、実際にアイドルソングでいうとハロプロのタンポポの『王子様と雪の夜』っていう。

(高橋みなみ)あっ! 大好き!

(高橋芳朗)あれが完全にこの手法を取り入れていますね。

(高橋みなみ)うわっ、聞きたいよー!

(高橋芳朗)用意しておけばよかったですね(笑)。

(高橋みなみ)高橋さん、もっと早く言ってくださいよ! 大好き。

(高橋芳朗)あ、でもまさにあの世界観ですね。

(高橋みなみ)でも、なんですかね。この鐘の音が入ることで、なんか壮大な感じと聞き心地がすごいいいですよね。

(高橋芳朗)なんか神聖な感じというか荘厳な感じというか。なりますよね。あと、たとえば中山美穂さんとWANDSの『世界中の誰よりきっと』とか。

(高橋みなみ)はー、そうなんだ!

(高橋芳朗)あと、『ちびまる子ちゃん』のオープニング曲だったんですけど、渡辺満里奈さんの『うれしい予感』とかもこの手法。でも、割りとアイドルグループなら1回はトライするような。そういうサウンドです。

(高橋みなみ)そうなんですね。なんでだろう? なんでアイドルグループ、トライするんですかね?

(高橋芳朗)なんすかね? やっぱりちょっとかわいらしい感じ、ありますよね。

(高橋みなみ)あとなんか清楚感がすごい。

(高橋芳朗)で、もともとこのサウンドを歌い始めたのがガールグループだったんですよね。60年代にウォール・オブ・サウンド(音の壁)って言われたんですよ。音を何重にも何重にも重ねて、ゴージャスなサウンドを作っていたという。

(高橋みなみ)始まりがやっぱり女性だったから、やっぱりいまのなお女性に愛され続けているサウンド?

(高橋芳朗)ということだと思います。

(高橋みなみ)ちょっと聞き方が変わりますね。

(高橋芳朗)ああ、よかった。うれしい。

(高橋みなみ)私、ちょっとだって、「なんかクリスマスサウンドっぽいですね」って言えたのがうれしかったです(笑)。

(高橋芳朗)(笑)。でも、本当にその通りです。さすがだと思いました。

(高橋みなみ)聞き方、変わるなー。これ、J-POPもそうだし、洋楽もそうだし。

(高橋芳朗)ここの枠がいちばん心配でした(笑)。

(高橋みなみ)えっ、本当ですか? いや、楽しいわー。

(高橋芳朗)よかった。

(高橋みなみ)あ、メールが一通来ているんですけども。(メールを読む)「ノースリーブスっぽい洋楽って何かありますか?」。すいません。ノースリーブスって、小嶋陽菜と峯岸みなみと私でやっているユニットなんですけども。

(高橋芳朗)もちろんです。もちろんです。僕、ノースリーブスきっかけでAKBが好きになったようなところもあるんで。

(高橋みなみ)ええっ?

(高橋芳朗)でも、それは音楽っていうよりかは、バラエティー的なところなんですけども(笑)。すいません。

(高橋みなみ)(笑)。すいません。バランスが結構いいんですよ。うちのグループ。

(高橋芳朗)僕、ノースリーブスでなんかわかりやすい、洋楽と聞き比べられる曲あるかな? ちょっと……現状まだ見つけられてないんで。それはまた、別の機会に。

(高橋みなみ)まあ、たしかに最新シングルが4年とか5年前ですからね。全然リリースしてませんので。ぜひなにか、リリースした際には高橋さん、ぜひ調べて。

(高橋芳朗)はい。もちろん、まだ続いていくんですね。

(高橋みなみ)一応まだ解散してません。まだどうにかいますんで、お願いします。

(高橋芳朗)はい(笑)。

(中略)

(高橋みなみ)『高橋みなみの「これから、何する?」』、メッセージをいただいております。(メールを読む)「先生に質問です。こんなに音楽に面白い視点がある先生。ご自宅に何枚ぐらいCDはお持ちですか?」。これはヤバそうですね。

(高橋芳朗)いや、もう数えたことがないですね。でももう、大変なことになっています。

(高橋みなみ)えっ、どうします? やっぱりある程度捨てなきゃ入れられなくなるじゃないですか。場所が。その場合は、捨てますか?

(高橋芳朗)いや、やっぱりCDのブックレットのクレジットとかも大切な資料になりますので。それはやっぱり捨てることはできないですね。

(高橋みなみ)じゃあ、ものすごい数ですね(笑)。

(高橋芳朗)そうですね(笑)。ちゃんとした数が出せなくて。

(高橋みなみ)続いてですね……(メールを読む)「曲、似てますね。盗作との境界線ってどういったものでしょうか?」と。これ、難しいですよね。

(高橋芳朗)そうですね。難しいですね。僕的にはオリジナルのアーティストには寛大であってほしいとは思うんですけども。ひとつ、ちょっと例として挙げたいお話がありまして。ドリームズ・カム・トゥルーの中村正人さんが非常に尊敬しているアーティストでアース・ウィンド・アンド・ファイアーっていうディスコグループ、ファンクグループがいるんですけども。そこのリーダーのモーリス・ホワイトっていう人と会った時に「僕はあなたたちの曲をいっぱいパクッてヒット曲をバンバン作っています」っていう風に言ったんですよ。

(高橋みなみ)ええーっ! かっこいい。

(高橋芳朗)そしたらそのモーリス・ホワイトさんが「それでいいんだ。私たちも先輩たちからたくさんの曲のエッセンスを盗んで楽曲を作ってきた。だからあなたたちがやるのは、それを自分たちなりに消化して、あとの世代たちに伝えていくことなんだ」と。

(高橋みなみ)いや、めちゃめちゃいい話ですね!

(高橋芳朗)そうそう。僕はこの精神で行きたいなという。

(高橋みなみ)ねえ。やっぱりリスペクトがあってですから。

(高橋芳朗)そうですね。まあ、悪質なものももしかしたらあるかもしれないし、その線引きが非常に難しいところなんですけど……。

(高橋みなみ)でも、何でもかんでもね、言われちゃうと。

(高橋芳朗)そうですね。あんまり音楽の制作環境が窮屈になってしまうと、面白くなくなっちゃうかなっていう気がします。

(高橋みなみ)そうですね。いや、いいお話を聞かせていただきました。

(中略)

(高橋みなみ)『高橋みなみの「これから、何する?」』。この時間は音楽ジャーナリスト、高橋芳朗先生とのベスト3先生をお送りしています。J-POPからわかる洋楽の楽しみ方を学んでいますけども、いやー、この角度があったかと。私はかなり学んでいますよ。

(高橋芳朗)いや、もう高橋さんの前でこれができるっていうのは本当に幸せなことでございますよ。

(高橋みなみ)いや、すいません。今日はAKB48の楽曲を重ね合わせながら聞かせていただいているわけなんですけども。それでは高橋先生。J-POPからわかる洋楽の楽しみ方。最後のひとつは何でしょうか?

(高橋芳朗)では、最後はこちらです。AKB48の曲からディスコ、ファンクを学ぼう。

(高橋みなみ)ほお! たしかにAKB、ディスコ系の曲、本当にこの3、4年多くなってきました。

(高橋芳朗)そうですね。『恋するフォーチュンクッキー』『ハロウィン・ナイト』とかね、いろいろありますけども。

(高橋みなみ)先日の『ハイテンション』っていう楽曲もこの中に入るんでしょうか。

(高橋芳朗)はい。ディスコミュージックは70年代にアメリカで生まれてから、日本の歌謡曲とかJ-POPにも本当に絶大な影響を及ぼしてきて。たぶん洋楽をモチーフにしたサウンドとしては、いちばん日本では愛されているスタイルなのかなという気もします。

(高橋みなみ)ワクワクしますよね。なんだか。

(高橋芳朗)上がりますよね。高揚感がありますよね。で、そのディスコとかファンクのアーティストとして特に日本で人気が高いのが、さっきもちょっとお話に出ましたけど、アース・ウィンド・アンド・ファイアーなんですね。名前ぐらいは聞いたこと、ありますよね?

(高橋みなみ)はい。聞いたことあります。

(高橋芳朗)で、彼らの音楽のエッセンスは、先ほども話した通り、ドリームズ・カム・トゥルーだったり、あと星野源さんとかの楽曲からも聞き取ることができるんですけども。まあ、AKB48の楽曲にもおそらく、アース・ウィンド・アンド・ファイアーにインスパイアされたのでは? という曲があるので聞いてみたいと思います。じゃあ、AKB48で『これからWonderland』。

AKB48『これからWonderland』

(高橋みなみ)まさかの『これからWonderland』。これ、WONDAのCMソングにもなっていた曲なんですけども。

(高橋芳朗)『Everyday、カチューシャ』のカップリングで2011年ですね。これ、まずタイトル、歌詞。「Boogie-woogie Wonderland」っていうフレーズがありますよね? これがもう、まずアース・ウィンド・アンド・ファイアーに『Boogie Wonderland』っていう曲があるので、そこから引用しているとは思うんですけど。

(高橋みなみ)なるほど!

(高橋芳朗)ただ、曲調的にはこのへんのところに共通したところがあるかな? と思います。聞いてください。アース・ウィンド・アンド・ファイアーで『Shining Star』です。

Earth, Wind & Fire『Shining Star』

(高橋みなみ)感じました。

(高橋芳朗)はい。いままで聞いていただいた2曲ほどモロに似ているっていう感じじゃないかもしれないけど、曲のエッセンスとかフォルムとしては割りと共通項があるなっていうのはわかっていただけるかなと思うんですけど。

(高橋みなみ)いや、でもかっこいいですね。この曲。

(高橋芳朗)はい。で、『これからWonderland』はリリース当時は僕の周りのディスコとかファンク好きな人でも「ああ、このAKBの曲、かっこいいね!」っていうように結構評判だったんですけど。

(高橋みなみ)うれしいです!

(高橋芳朗)でも、あれですよね。高橋さんのプロデュース公演、あったじゃないですか。卒業の頃。あの時、お蔵入り公演とかで……。

(高橋みなみ)すいません。去年の私がAKB48を卒業する際に私、劇場公演が大好きだったので、自分がプロデュースした演目の公演をやったんですけど。お蔵入り公演っていうAKBの曲、300曲とか400曲ある中で、どうしてもなかなかライブでは歌われないお蔵ソングを全部、10何曲入れてライブしたんですけど。その中にこれ、入ってました(笑)。

(高橋芳朗)だから結構、僕の周りにはすごい好きな人が多かったんで。ちょっと黒歴史感みたいな感じになっているじゃないですか? メンバーのみなさんの中で。

(高橋みなみ)(笑)。いや、難しいんですよね。この曲をAKB48がライブで初披露する時に、アンコール明けで盛り上がっていくぞ!って言った後にこの曲をやったんですけど。やっぱりディスコソングって突然アイドルソングを聞いている人からすると、どう乗っていいのかわからなくて。

(高橋芳朗)ああー、曲がかっこよすぎちゃう。

(高橋みなみ)そうなんですよ。「どうしよう?」みたいになって、不思議な空気が流れて。ライブで突然この曲を入れ込むのは難しいなって思ったんですよね。みんなが。

(高橋芳朗)ああー。「よっしゃ、行くぞ!」とは言えないですもんね。これだと。コールを入れられない。

(高橋みなみ)そうですね。アイドルファンの人は「えっ? えっ? どうしよう? どうしよう?!」みたいになる(笑)。

(高橋芳朗)なるほど。で、他にアース・ウィンド・アンド・ファイアーの影響を受けたJ-POPの有名な曲としては、アイドルではハロプロの黄色5の『黄色いお空でBOOM BOOM BOOM』とかですね。

(高橋みなみ)へー!

(高橋芳朗)あと、ドリカムの『決戦は金曜日』。あと、星野源さんの『Week End』とか。

(高橋みなみ)へー!

(高橋芳朗)このへんを聞いてみると、割りと共通項を見出しやすい。聞き取りやすいかなと思います。

(高橋みなみ)ふーん! でも本当に今回、いろいろと教えていただきましたけども。みんなやっぱりルーツがあって、尊敬している方々の音楽っていうものが、なにか知らない間に頭に入ってきていて、自分の音楽として出てくるっていうのは素晴らしいことですね。

(高橋芳朗)そうなんですよ! はい。この間亡くなった、ロックンロールを作ったと言われているチャック・ベリー。あの人ですら、「世の中に完全に新しいものなんか存在しない」って言っているぐらいですから。

(高橋みなみ)そっかー! どうですか? いわゆるいま、音階。ドレミファソラシドの中で作るには、もう結構難しくなってきてるって言うじゃないですか。だからこそ、さっきのメールにもありましたけど、盗作とか言われちゃうかもしれないけど。やっぱりリスペクトがあったらいいですよね?

(高橋芳朗)そうですね。そこはちょっと、レジェンドのみなさんにも寛大になってほしいなと思いますけども。

(高橋みなみ)さっきのお話は本当にちょっと感動してしまって。「僕たちの音楽をみんなが、自分の音楽として出してくれて次の世代に受け継いでくれることがいいんだ」っていう。

(高橋芳朗)それを打ち明ける中村さんもかっこいいし、それを受け止めるモーリス・ホワイトもかっこいいっていう。

(高橋みなみ)やっぱり伝説的な方々って違いますね。

(高橋芳朗)そうですね。

(高橋みなみ)いやー、今日も学ばせていただきました。ということで高橋先生。今日はお知らせがあるということで?

(高橋芳朗)はい。洋楽の別の切り口の楽しみ方として私、以前にこういう本を出しておりまして。

(高橋みなみ)はい。かわいい。表紙が。

(高橋芳朗)はい。『R&B馬鹿リリック大行進~本当はウットリできない海外R&B歌詞の世界~』っていう本ですけども。これ、一聴した感じおしゃれな曲なんだけど、歌詞を調べてみたらこんなゲスな下ネタを歌っているのか!っていう。

(高橋みなみ)あ、でもたしかに洋楽って……「歌詞が好き」ってさっき言ったじゃないですか。洋楽を買ったりするとCDに日本語訳が書いてありますけども。「あっ、こんなことを歌っているんだ!」って。

(高橋芳朗)結構びっくりすることありますよね?

(高橋みなみ)はい。もう「抱きしめて、抱きしめて」みたいなのとか。ああーっ! みたいなね。

(高橋芳朗)だからさっきも「じゃあ一節、ここから何か紹介してくれませんか?」って言われたんですけど、とてもじゃないけど無理です!

(高橋みなみ)言えない! この昼の時間にはちょっと難しいかなということで。

(高橋芳朗)抗議の電話が殺到してくると思うので。

(高橋みなみ)じゃあ、ちょっと気になる歌詞はそちらの書いてあると。

(高橋芳朗)そうですね。これ、セクハラになっちゃうかもしれないですけど。高橋さん、お誕生日が近いので、もしよろしければ読んでください。

(高橋みなみ)えっ、いただけるんですか? 私ももう26ですので。ありがとうございます(笑)。

(高橋芳朗)はい(笑)。

(高橋みなみ)面白い。帯が面白いですね。

(高橋芳朗)かなりドギツいんですけど。

(高橋みなみ)「その歌詞をよく読んでみたら、しょーもない下ネタだった!」っていう。

(高橋芳朗)そうなんですよ。あっ、開くと危ないですよ!

(高橋みなみ)えっ? 開くと? 後でじゃあ、開きます。ぜひね、みなさんにも手に取っていただいて。音楽の違う角度を見れるというのはなんか、音楽を追求する扉を叩くような感じになりますよね。

(高橋芳朗)なんで今度、別のJ-POPアーティストとかで続編とかをやらせていただければ。

(高橋みなみ)お願いします。本当にめちゃめちゃ楽しかったです。

(高橋芳朗)あ、よかった。うれしい! ありがとうございます。

(高橋みなみ)ありがとうございました。ということで、音楽ジャーナリスト高橋芳朗先生でした。ありがとうございました!

(高橋芳朗)ありがとうございました!

<書き起こしおわり>

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