高橋芳朗 Taylor Swift『The Tortured Poets Department』を語る

高橋芳朗 Taylor Swift『The Tortured Poets Department』を語る TOKYO FM

高橋芳朗さんが2024年4月23日放送のTOKYO FM『Blue Ocean』に出演。テイラー・スウィフトの新作アルバム『The Tortured Poets Department』について話していました。

(住吉美紀)テイラー・スウィフトで『Only The Young』。スタジオには音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんをお迎えしております。今日は『Blue Ocean』テイラー・スウィフト勝手に大特集ということで、前半はね、なぜテイラーがあんなにアメリカで社会現象になっているのかという解説をいただきました。後半はいよいよ、このニューアルバム『The Tortured Poets Department』の話を芳朗さんともしたいんですけど。いかがでした?

(高橋芳朗)いや、ダブルアルバムであることが発表された時には本当に唖然としました(笑)。なんかもう完全にもうテイラーの手のひらの上で踊らされてるなっていうか。そうですいう状況ですよね。本当にね。

(住吉美紀)フフフ、そうですね(笑)。で、そういうのがお好きですね。テイラーはいろいろと、びっくりさせたりね。

(高橋芳朗)ただ、『Reputation』ぐらいの頃までにあったような、したたかな戦略性みたいなものはあんまり感じられなくなったなというか。ある種のちょっと悟りの境地って言ったら大げさかもしれないけど、邪念のなさっていうか。アーティストとしてはすごいシンプルなところにいるのかなっていう気はするんですよ。そのわき上がってくる創作意欲にひたすら忠実に、それを形にしていくような、そういうある種のゾーンに入ってるような状況なのかなっていう気がすごくします。

ゾーンに入ったテイラー・スウィフト

(住吉美紀)わかる、わかる! そんな感じ、する。しかも、そのゾーンに入らせるような出来事があまりにも、この2年間ね。さっきも言ったんですけど、アラサーの6年間の恋愛って、結構重いじゃないですか。どんな女性、なんの仕事をしている女性にとっても重いし。で、それが公にはなっていないけど、つらい別れ方だとしたら、なおさらね。だからそういうことも、そのゾーンに入らせるきっかけになったのかなと。

(高橋芳朗)そうですね。

(住吉美紀)で、アルバムの中でせっかくだから一押しの曲をっていう風にスタッフが事前に伺ったら、なんか私とかぶっちゃったみたいで、嬉しい!っていうか(笑)。同じ曲が一番だったと。

(高橋芳朗)僕もめちゃくちゃ嬉しかったです。

(住吉美紀)じゃあ、ぜひ曲名を芳朗さんから。

(高橋芳朗)僕を選んだのは『I Can Do It With a Broken Heart』です。

(住吉美紀)はい、そうなんですよ。これ、さっき9時台にお話したんですけど。テイラーが五つのプレイリストをApple Musicでね、「このアルバム、こんな風に聞いてください」って案内をしてる中の項目のひとつとしても「I Can Do It With a Broken Heart」って。つまり「壊れた心でも私、できちゃうもん」みたいなことなんですけど。どういうところが一番好きでした?

(高橋芳朗)まあ、トレンドになっている80年代シンセポップ風のサウンドもすごい明るくて。アルバムの中でもすごい目立ちますよね。そこもすごい好きな部分ではあるんですけど。やっぱり歌詞が刺さりまくるなっていうか。今、おっしゃったように「失恋していても私にはできてしまう」みたいな感じですよね。直訳すると。

(住吉美紀)もう本当に彼女そのままなんですよね。

(高橋芳朗)で、リリックビデオの映像っていうのが『The Eras Tour』の模様だったりするじゃないですか。それも考えると、この曲ってテイラーのエンターテイナー、スーパースターとしての何か決意表明みたいな曲だと思うんですよ。なんかザ・ショー・マスト・ゴーオンっていうか。「幕が開いたらなにがあっても最後まで続けなくちゃいけない」みたいな精神を歌った曲なんじゃないかなって気がするんですよね。

(住吉美紀)いや、本当に。私も歌詞がすごい……聞いてるうちに「これ、めっちゃ面白いこと言ってる!」って思っちゃうんですけど。たとえば「照明、カメラ、はい、笑え! 死にたくても。『一生愛す』って言ったのに、めっちゃ短かったじゃん。私は崩れた。でもみんなはもっともっとって言う。だから勝っているように私は笑いながら。でも、壊れた心でも私、できちゃうもん!(Lights, camera, bitch, smile Even when you wanna die
He said he’d love me all his life But that life was too short Breaking down, I hit the floor All the piеces of me shatterеd as the crowd was chanting, “More” I was grinnin’ like I’m winnin’ I was hittin’ my marks ’Cause I can do it with a broken heart)」っていう。

(高橋芳朗)そうそうそうそう。だから今後、なんだろう? 落ち込んだ気持ちを奮い立たせるエンパワーメントソングとしてテイラーのファンには支持されていくことになるんだろうなって。

エンパワーメントソングとして支持される曲になりそう

(住吉美紀)私はその意味で、自分で「わかるー!」ってなったの。でもこれ、たぶんある程度経験を積んだ大人ならみんな……だってみんな、何があっても一応、仕事に行って頑張るじゃないですか。誰か、近い人が亡くなったりだとか。家で大変なことがあって、夫婦喧嘩をしたとか、友達と喧嘩したとか。あと、楽しみにしてたことがなくなっちゃったとか。まあ、いろんな大変なことが人生であっても一応、会社に行ったり。仕事に行って頑張って一応、やっているみたいな。そんなことってみんな、見えないけどあるっていうのを本当にテイラーが体現してくれてる。

この最後の方の歌詞がね、「いっぱい泣くけど、私ってめっちゃ生産的。もうアートだもん。壊れた心でできるようになったら、私はできるやつって思うよね。私の仕事を取りに来てごらん?(I cry a lot, but I am so productive, it’s an art You know you’re good when you can even do it with a broken heart You know you’re good And I’m good ’Cause I’m miserable (Haha) And nobody even knows Ah, try and come for my job)」って。最後は挑戦的に……もう誰にもこんなこと、真似できないでしょう?っていう、職人みたいな域に達しているようなことを言っていて。本当にそのまま、共感もするし。彼女の心境なんだろうなという風に思いました。

(高橋芳朗)テイラーって自分のアーティスト性について「ベッドルームにこもって曲を書いてる女の子。それが私の本質なんだ」みたいなことを前に言ってましたけど。

(住吉美紀)そうか。じゃあ、そこから出てきたんだ。

(高橋芳朗)なんかでも、基本的にそういうスタンスをデビューから今に至るまで貫き通してるかなって思いますね。そこがやっぱりずっと支持されてる大きな要因のひとつでもあるんじゃないかなと思いますけどね。

(住吉美紀)アルバム全体はまだ、やっぱり31曲だからね、聞き込むのには時間がかかりそうですよね。

(高橋芳朗)そうですね。咀嚼するのには結構、時間がかかりますよね。しかも、今回はいつも以上にやっぱりタイトル的にも……彼女自身も「詩集」っていう風に呼んでますから。詩にフォーカスしてるアルバムだと思うんで、そこを掘り下げていくには結構時間かかるんじゃないかなという気がしますかね。

(住吉美紀)芳朗さんもちょっと、あれですか? 励まされましたか?

(高橋芳朗)励まされました! もう『I Can Do It With a Broken Heart』は本当にテーマソングにしていきたいなと。

(住吉美紀)いや、本当に! 私もそう思います。しかも、なんだっけ? コーラスの「あまりにも落ち込んでるから、毎日が誕生日って思って過ごそう(I’m so depressed, I act like it’s my birthday every day)」みたいな(笑)。

(高橋芳朗)いいフレーズですよね!

(住吉美紀)そういう姿勢とかも、面白いこと考えるなと思いますけれども。最後にね、せっかくなのでテイラー・スウィフト、これからどうなるか。予測みたいなのを……。

(高橋芳朗)16歳でデビューしてるんですよね。それで今、34歳じゃないですか。だから18年のキャリアがあるんですけど、まだ円熟みたいな域を全く感じさせないんですよね。だから本当にまだまだ全然、創作意欲に突き動かされて、やりたいことをどんどん表明していくんじゃないかなっていう感じがしますかね。

(住吉美紀)あと一緒にコラボレートしてる方々に、本当に愛されますよね。

(高橋芳朗)そうですね。あとは今年はアリアナ・グランデがアルバムを出して、ビヨンセがアルバムを出して、テイラーが出して。これからビリー・アイリッシュ、デュア・リパ、ラナ・デル・レイも出すじゃないですか。だから来年のグラミー賞、どんなことになるんだろう?っていう。そういう楽しみもありますね。

(住吉美紀)ガールズパワー、アメリカもすごいってことなのかしら?

(高橋芳朗)今年のグラミー賞がそもそも、ウーマンパワーをすごい印象付けた回だったんで。来年はもしかしたら、それ以上になるんじゃないかなっていう気がしますね。

(住吉美紀)ありがとうございます。ものすごいわかりやすかった上に、好きな曲が一緒で。すごい! 芳朗さんと繋がっちゃった! ありがとうございます。音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんにお越しいただきました。最後に一緒に曲紹介しましょうか。せーの……。

(住吉・高橋)『I Can Do It With a Broken Heart』。

Taylor Swift『I Can Do It With a Broken Heart』

<書き起こしおわり>

高橋芳朗 テイラー・スウィフトが社会現象化したきっかけを語る
高橋芳朗さんが2024年4月23日放送のTOKYO FM『Blue Ocean』に出演。テイラー・スウィフトが現在のような社会現象化したきっかけとなった出来事について、話していました。
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