ダースレイダー・伊藤雄介・渡辺志保 2001-2010 USヒップホップを語る

ダースレイダー・伊藤雄介・渡辺志保 2001-2010 USヒップホップを語る INSIDE OUT

ダースレイダーさんとAmebreak編集長 伊藤雄介さんがblock.fm『INSIDE OUT』にゲスト出演。『ディスク・コレクション ヒップホップ 2001-2010』をベースに2001年から2010年のアメリカ ヒップホップシーンの変遷を話していました。

(渡辺志保)さて、ここから(前のゲストのElle Teresaから)世代を2世代ぐらいまたいだゲストを次はお迎えしたいと思います。ダースレイダーさん、そしてAmebreak編集長の伊藤雄介さん!

(DARTHREIDER)ユースキー!

(伊藤雄介)ユースキー伊藤でーす!(※前の時間のゲスト Yuskey Carterとかけて)

Elle Teresa『Kunoichi Money』『PINK TRAP』を語る
Elle Teresaさんがblock.fm『INSIDE OUT』にゲスト出演。最新曲『Kunoichi Money』や新作ミックステープ『PINK TRAP』について渡辺志保さんと話していました。 MY FAVORITE BRAND??...

(渡辺志保)(笑)。さっきもエルちゃん(Elle Teresa)と出番の前に話をしていて――干支の話をしている時点でババ臭いんですけど――干支はなに?って聞いたら、DJ YANATAKEさんも一緒ということでね。2回り?

(DARTHREIDER)2倍、2倍! ですよ。

(渡辺志保)2倍、2倍!

(DARTHREIDER)まあでもね、2周多く回っている分だけね、いいことも2倍やっていると思うんでね。ヤナタケさんはね。

(DJ YANATAKE)(笑)

(渡辺志保)もちろんですよ。最近もとびっきりの……人生一度きりしかないいいことをね。

(DARTHREIDER)Congratulations! ということでですね。でもね、私、ダースレイダーもですね、まさかこのblock.fm。インターネットとはいえラジオなんでね。ラジオに出れてよかったなと思っているんですよ(笑)。

(DJ YANATAKE)ああ、そうか(笑)。

(渡辺志保)ありがとうございます。恐縮です。

(伊藤雄介)ああ、それね(笑)。

(DARTHREIDER)それなそれな!っつってね。何語なんだよ、block.fm?っつってて。多国籍に行きましょうっていう。

(渡辺志保)はい。よろしくお願いします。まあ、ダースさんもついこの間まで海外に行ってらっしゃったって……

ベルリンのヒップホップ事情

(DARTHREIDER)はい。先週ベルリンから戻ってきたんですけども。やっぱりなんて言うんですかね? ベルリンはクラブがすごい最先端なんですけども。みんなが音楽を普通に……タクシーのドライバーが絶対になにかしら音楽を爆音でかけていて。もう、乗る運ちゃんによって違うんですけど。でもベルリンのヒップホップ。ヒップホップアンダーグラウンドラジオを聞いているやつがいて。これが、ジブさん(Zeebra)と一緒だったんで、「おっ、これちょっと当たりくさくない?」みたいな感じで。結構ヤバかったっすね。

(渡辺志保)なるほど。「俺ら向きじゃね?」みたいな。

(DARTHREIDER)熱かったっすね。ベルリンの。

(渡辺志保)なるほどね。日本でタクシーの運ちゃん、まあたまに演歌とかラジオとかかけてらっしゃるかな? ぐらいだから。なるほど。

(DARTHREIDER)うん。「私、仕事に向いてないと思うんですよ」っていきなり言われた時、ありますからね。タクシーの運ちゃんに(笑)。「どうせい?」っていう話なんですけどね。

(渡辺志保)日本から来たラッパー2人にそんな相談しちゃうなんて。はい。というわけで、こちらのパートも国際色豊かにお送りしてまいりたいと思います。

(DARTHREIDER)タクシーの話はね、EAST ENDの『Taxi』をぜひ聞いてくださいという感じで。

(渡辺志保)かしこまりました(笑)。今日、なぜこのお二方をお呼びしたか?っていうことなんですけども、ダースさんの方から紹介していただいてもよろしいですか?

(DARTHREIDER)はい。ダース的にはいま旬のヒップホップ2016年まで来たんですけども、2001年から2010年のヒップホップのディスク・コレクションという本(『ディスク・コレクション ヒップホップ 2001-2010』)をシンコーミュージックから出しました。


ディスク・コレクション ヒップホップ 2001-2010

(渡辺志保)あざっす!

(DARTHREIDER)実はこれね、志保やんにも参加していただいているんですけども……

(渡辺志保)ありがとうございます。その節はご迷惑をおかけしまして、失礼しました(笑)。

(DARTHREIDER)まあ、3年ぐらいかかりました。10年まとめるのに3年かかったっていうことなんですけども。これね、やっぱりこの時期……横に伊藤ユースキーもいるっていうことで、『blast』とかそういう雑誌がなくなってしまって。

(渡辺志保)ああ、そうなんですよ。

(伊藤雄介)一応、説明した方がいい? 俺、『blast』っていうヒップホップの専門誌を……まあもうね、若いリスナーは知らないと思うんだけども。

(DARTHREIDER)終わらせた。

(渡辺志保)ピリオドを打った。

(DARTHREIDER)終わらせた。ジ・エンド。ミスター・ターミネーターと言われているユースキーがね。でも、2001年から2010年のなにを聞いたらいいのか、もうわかんないんじゃないのかな?っていうね。

(渡辺志保)そうですね。ないんですよね。アーカイブが、あんまり。

(DARTHREIDER)で、ここの入り口……いまから昔のを掘ろうと思った人にとっては、もう2001年って超クラシックな時代なんで。そこらへんからのディスクを結構正直に各年代ごとに50枚。それと10年間のディケイドを代表する20枚の520枚プラスアルファをオールカラーでガッツリと紹介するという本が出まして。先ほど編集の方からメールが来て。「売れ行きは……一部でよくて一部で悪いです」っていうね(笑)。

(伊藤雄介)(笑)

(渡辺志保)”一部”が気になるなー(笑)。なるほど。

(DARTHREIDER)どういうことや? みたいなね。まあ、これがもうみるみるよくなるという。このblock.fm後はもうすごいことになると思います。

(渡辺志保)そうですよ。増刷増刷ですね。そんなこんなで、そのヒップホップ・ディスクガイド本が出たということで、今日ダースレイダーさんとユースキー編集長をお迎えしてお送りしたいと思うんですけども。ここで、私も参加させていただいてだいたい100枚ぐらいのディスクの……もうなかなかないですよ。人生で10年間、100枚のディスクレビューを……

(DARTHREIDER)はい。すいません、本当に(笑)。

(渡辺志保)いや、とんでもない。私もレイジーさがすごく出てしまいまして。

(伊藤雄介)いや、これはね、苦行でしたね。

(渡辺志保)苦行(笑)。

(DARTHREIDER)いやいや、楽しかったんじゃないの?

(渡辺志保)伊藤さん、どうでしたか? 執筆中の思い出深いエピソードとかありますか?

(伊藤雄介)思い出深いエピソードっすか? 最初の方はすごい「伊藤くん、全然原稿あがってないんでヤバいですよ、ヤバいですよ」って煽られていたけど、最終的には俺、結構まあまあいいペースで送れていたっていう。

(DARTHREIDER)いや、だからもう最後ね、みんな気にして。「いや、俺が最後じゃないですよね?」とか「もっと出していないやつ、いますよね?」っていうそういう方向に行くのがよくなかった!

(渡辺志保)(笑)

(伊藤雄介)牽制し合うっていうね。そのぐらいね、500枚を5、6人でしょ? これ、書いている人って。

(DARTHREIDER)書いているのがね、渡辺志保、伊藤雄介、Masso187um、東京ブロンクス、私ダースレイダーも書いているし、小林雅明ということでね。

(渡辺志保)結構バラエティーに富んだ執筆陣でね。

(DARTHREIDER)全然違う視点で。セレクションは全員でその年ごとに50枚っていうのをみんなで投票システムで選んで決めていくっていうスタイルだったんですけども、結果的にかなりいろいろなスタイルのヒップホップが紹介できたかなと。

(渡辺志保)そうですね。でも、さっきの話じゃないですけど、『blast』があったのは2006年までですかね?

(伊藤雄介)2007年の春ですね。終わったのは。

(渡辺志保)だから、伊藤さんなんかはその『blast』時代の思い出とセットになって?

(伊藤雄介)ああ、結構それはあるっすね。僕も編集部に入る前に物書きを始めたのが2001年とかなんで。

(渡辺志保)ああ、ちょうど。

(伊藤雄介)で、だいたいライターを始める時ってアルバムレビューとかから振られるもんじゃないですか。とりあえず。だからすげーやっぱりマイナーなものも含め、アルバムレビューってすげー書いた記憶があって。特に2000年代前半。だから、そういうのを思い出すっていうのもありましたけどね。

(渡辺志保)たしかに。私の場合、2001年がたぶん高校2年とか、そのぐらいなんですよ。なので、ちょうど私もリアルタイムにUSのヒップホップを追い出してからの2001年から2010年という感じだったので。本当、自分のこの10年のキャリアを総括するじゃないですけど。思い出をたぐり寄せながら書かせていただいたというようなところもありますが。

(DARTHREIDER)僕なんかね、「こんなにダズ・デリンジャーのアルバムを聞くことがあるのか?」っていうぐらい聞きましたからね。

(渡辺志保)そうですね。私もこんなにジー・ロウのアルバムをまとめて聞くことがあったか!っていう感じがしましたが。ここでですね、せっかくなんで伊藤ユースキー編集長とダースさんにそれぞれこのディスクガイド本の中から1曲、自分のフェイバリット・ベストチューンを。

(DARTHREIDER)はい。2001年から2010年で。

(伊藤雄介)あれですよね。自分がレビューを書いた作品の中から特に思い入れのある曲をピックっていうことですよね?

(DARTHREIDER)はい。じゃあ雄介的になにがイケてるのか?って。

(伊藤雄介)僕が選んだのはディプロマッツですね。ディプロマッツのセカンドアルバム『Diplomatic Immunity 2』を……

(DARTHREIDER)代表選手ですよ。この10年の。

(伊藤雄介)その中から、『Push It』っていう曲を。

(DARTHREIDER)「ヒップホップのIQを100下げた」と言われている集団ですよね。

(渡辺志保)100下げた(笑)。じゃあバードマンなんか300ぐらい下げたんじゃないですか?(笑)。

(伊藤雄介)でもやっぱり2000年代、僕、もっとも衝撃を受けたクルーとか集団の登場ってなんだろう?って考えたら、やっぱりディプロマッツかなっていう感じなんで。

(渡辺志保)なるほど。ちなみに最初の出会いは覚えてらっしゃいますか?

(伊藤雄介)最初の出会いはたぶん、キャムロンのロッカフェラからソロが出たりとか、ミックステープとか、『Diplomatic Immunity 1』とか。あのへんの怒涛の流れをもちろんチェックしていたし。だけどやっぱり、「どうやらこいつら、おかしいぞ?」ってなってきたのはジュエルズ・サンタナのファーストソロアルバム。

(DARTHREIDER)ファーストソロだね。

(伊藤雄介)まあ、ジム・ジョーンズもそうだし、この『Diplomatic Immunity』とか出たあたりから、「ちょっとこいつら、新しいっていうより悪ノリがすぎる!」っていうことが徐々に……

(渡辺志保)ネタ使いもそうだしね。

(DARTHREIDER)キャムロンなんて最初の2枚、真面目ですからね。

(伊藤雄介)まあ、比較的ね。

(渡辺志保)結構硬派なイメージでね。

(伊藤雄介)どんどんね、僕、キャムロンのレビューの中で「頭の悪い天才」っていう風に書いたんですけど(笑)。まさにね、キャムロンとかそうでね。で、この曲はソルト・ン・ペパーの『Push It』っていう大ヒット曲のカバーなんですけども。

(渡辺志保)ええ。

(伊藤雄介)まあ原曲はちょっとエッチなダンスチューンぐらいで。

(渡辺志保)「Push」っていうのは男の人の腰の動きを……

(伊藤雄介)まあまあ、そういうポップヒットした曲なんですけども、彼らはそれをあろうことか、「Push」っていうのはプッシャーですね。

(渡辺志保)そうですね。悪いモノをさばくっていうね。

(伊藤雄介)「ドラッグをプッシュする」っていう風に替え歌するっていう。これを悪ノリと呼ばずしてなんと呼ぶか?っていうね。

(渡辺志保)そうですね。それがしかもヒットしちゃうんだからすごいですよね。

(DARTHREIDER)あとね、やっぱり結構ストリートスタイルのライムをこういう楽しげなパーティーチューンに乗せるっていうのは結構この人たち得意で。

(伊藤雄介)でもこれ、イントロで「88年と何も変わっちゃいねえぜ」みたいなことを言っているんで。たぶんこの曲は原曲がヒットしていた頃、彼らはこういう風に替え歌して遊んでたんじゃないか?っていう想像もできるんでね。

(渡辺志保)ああ、実体験としてあるのかも。なるほど。

(伊藤雄介)まあ、ダラダラしゃべっちゃいましたけども。かけていただきましょうか。

(渡辺志保)では、伊藤ユースキー編集長の選んだこの1曲でございます。ザ・ディプロマッツ『Push It feat. J.R. Writer』。

The Diplomats『Push It』

(渡辺志保)はい。いま聞いていただきましたのはザ・ディプロマッツ『Push It feat. J.R. Writer』。プロデュースド・バイ・ザ・ヒートメイカーズ!

(伊藤雄介)あ、これ一応ヒートメイカーズなんだ。なにやってんだよ、ヒートメイカーズ(笑)。

(渡辺志保)ヒートメイカーズってね、当時ディプロマッツ系、それからリル・ウェイン、それからジェイ・Zとかね。本当にあのへんでヒットを飛ばしまくっていたプロデューサーユニットですけども。

(伊藤雄介)ヒートメイカーズのトラックも当時は衝撃でしたね。

(DARTHREIDER)この曲に関してはね、「これでやろうぜ」ぐらいしかやってないっぽいけどね。

(伊藤雄介)まあ、これはなにもできないでしょうけど(笑)。でもやっぱりBPMもすっごい遅い感じで行ったりとか、すごい革新的でしたね。あの頃は。いまとなってはそんなに珍しくないかもしれないけども。

(渡辺志保)まあね、見慣れているけど……

(DARTHREIDER)またヒートメイカーズ名義のアルバムがあってね。日本盤はたしかSIMONとか入っているんですよね。

(渡辺志保)SIMONくんとY’sくんが。

(伊藤雄介)日本に来たりしましたもんね。

(渡辺志保)はい。ブエノスでDJやったりしていましたという思い出があります(笑)。もう止まらないですね。その時、私もはじめてSIMON&Y’sに話をして。「わ~、こんなラッパーがいるんだ!」みたいな(笑)。

(伊藤雄介)まあ、こういう風にいろいろ思い出しますね。

(渡辺志保)思い出しますね。ありがとうございます。じゃあ、そんなこんなでダースレイダー先生の……

(DARTHREIDER)僕はですね、なんだかんだこの10年間を代表する曲というか、それを尖った視点でみるとこいつらなんじゃないかな?っていうのがクリプス。クリプスのファーストアルバムの衝撃っていうのは、「ファレルの肝いり」っていうけど、いちばんキレている部分が凝縮された……イントロもすっごいかっこよくて。その後の『Young Boy』とかももういきなり超かっこいいしっていう中で、この曲がね、やっぱりバック・トゥ・オールドスクールなのか、いきなり最新のニュースクールなのか?っていう、最強のビートミュージックとしてのヒップホップの面目躍如な『Grindin’』。

(渡辺志保)そうですね。『Grindin’』。

(DARTHREIDER)これは、いつでもここに戻ってくれば思い出せるんじゃないか?っていうぐらいの素敵な曲だと思いますね。

(渡辺志保)マイルストーン的な曲ですかね。最初、そのファレルのビートとかがワッて出てきた時、ダースさんとか伊藤さんとか、どういう感じでした? たまーに「受け付けなかった」とかって。「スウィズ(・ビーツ)のビートはなんか受け付けなかった」っていうパイセンとかもいますけども。

(伊藤雄介)『Super Thug』とかそのへんですよね? だから。

(渡辺志保)そうか。ノリエガの。

(DARTHREIDER)だから、僕ね、そう言われてみるとほぼ、基本オールオッケーな人なんですよ。だいたい大丈夫。

(渡辺志保)あ、そうなんですか。

(伊藤雄介)あとロックも好きだから、N.E.R.Dとかもね。

(DARTHREIDER)N.E.R.Dなんてもう全然、普通にかっこいいし。なんなら顔も……チャドの顔が好きとか。そういう……

(渡辺志保)ああ、ちょっとアジア系のね。

(DARTHREIDER)だから全然抵抗がなくて。『Super Thug』なんてね、最高以外の何物でもない。

(渡辺志保)そうですよね。たしかにキャッチーだしね。

(DARTHREIDER)だからこのネプチューンズとかスウィズとかっていうのは、やっぱりヒップホップって新しいことをやってるやつがイケてるぜ!っていうのをただ更新していた人たちなんで。やっぱりここに抵抗を感じないようでありたいな、みたいなね。今後もね、こういった存在が出てきた時に「とりあえず味わってみねえと」みたいな。そういった……まあいまはね、このネプチューンズを聞いてどうこうっていうのはないと思うんだけど。かつてはこれですら、抵抗があったのか! みたいな。

(渡辺志保)いや、そうでしょう。

(DARTHREIDER)そういうのも含めて、どれだけキレてたかっていうのはこのクリプスのこの曲を……あとね、ラップが2人ともイケてます。

(伊藤雄介)相当イケてるでしょ?

(DARTHREIDER)相当イケてます。プシャ・Tのね、いまの活躍っぷりなんてのは言うまでもないしね。

(渡辺志保)もう社長ですよね。いま。

(伊藤雄介)G.O.O.Dミュージックの。

(DARTHREIDER)でも、ここでみんなもうぶっ飛ばされたと思うんで。ぜひちょっと、これがヒップホップだぜ!っていうね、クリプスの『Grindin’』を聞いてください!

Clipse『Grindin’』

(渡辺志保)はい。いまお送りしましたのはダースレイダーさんの推し曲。この10年間の1曲ということでクリプスの『Grindin’』をかけさせていただきました。プロデュースド・バイ・ザ・ネプチューンズ。

(伊藤雄介)でも、色褪せないですね。この曲。

(DARTHREIDER)色褪せないですよー。だからやっぱりね、これは必要な要素が最低限しか入っていないから、これで足りているっていうかね。

(伊藤雄介)なんかTRITONっていう当時流行っていたシンセサイザー。スウィズとかのサウンドで有名なシンセサイザーで3つか4つぐらいしか鍵盤を叩いていないっていう話もありますもんね。

(渡辺志保)なるほどね。

(DARTHREIDER)これがドープっていうやつだぜ!っていうね。最高ですよ。

(渡辺志保)これ、トラックもいまだにいろんなところで使われたりしますし。本当にマイルストーンたる1曲というところでお送りしました。では、私、渡辺志保が選んだ1曲をこちらでお送りしたいんですが、私が選んだのはドレイクの『Best I Ever Had』。

(DARTHREIDER)イエーイ!

(伊藤雄介)ギャルいぞ!

(渡辺志保)だろ? 当時2009年ぐらいの曲ですから、まあ7年前ですね。ということは、私32ですので……ギャルっていうか若かったわねっていう。

(DARTHREIDER)真っ只中っていうやつですね。

(渡辺志保)真っ只中でしたね(笑)。でも、私の中で2007年がミックステープ元年みたいな感じで。そのへんにドレイクもそうなんですけど、あとはJ・コールとかキッド・カディとかウィズ・カリファなんかがネットでタダでミックステープを出して……っていうのが盛んになったのがだいたい……

(DARTHREIDER)まあ、だからこの2001年から2010年っていうディケイドが特殊なのはまさにそのCDアルバム的なものからミックステープカルチャーに思いっきりずれ込むギリギリのところっていうね。

(渡辺志保)そうなんですよ。で、私もコラムで書かせてもらっているんですけど、インターネットとSNSと台頭っていうのがもうリアルにラッパーたちの生活を変えたっていう。たとえば、ソウルジャ・ボーイがMySpace上で……

(伊藤雄介)そうですよ! MySpaceを忘れてもらっちゃ……

(渡辺志保)そうそう。MySpaceとYouTubeを使ってミリオンヒットを飛ばしたっていう、ある意味すごいドラマチックな出来事が起こりえたのがこの10年……2000年代後期になりますけども。そこで、それまではたとえば、さっきのディプロマッツとかリル・ウェインなんかもストリートCDをたくさん出していましたけど、さらにその先を行くメディア。タダで配るミックステープっていうが出てきて。で、しかもいまもみんな、J・コールなんかもさっきも話しましたが第一線で活躍してますけども。

渡辺志保 J.Cole『False Prophets (Be Like This) 』を語る
渡辺志保さんがblock.fm『INSIDE OUT』の中でJ・コールの新作アルバムからの1曲、『False Prophets (Be Like This) 』を紹介。この曲でJ・コールがカニエ・ウェストやドレイクなどをディスっていうのでは...

(渡辺志保)ひとつ、その時代の最終形態がドレイク。いまも彼はやっていますけども、ドレイクのこの曲。そしてこの曲を収録したミックステープの『So Far Gone』。さらには、この曲がボーナストラックとして収録された彼のファーストアルバム『Thank Me Later』っていうのがひとつの時代を象徴する最終形態だったんじゃないかな? と……

(伊藤雄介)ドレイクはそれ以前のミックステープとちょっと違うのは、よりアルバムっぽくなっているっていうか。まあビートジャックの曲も入っていたけど、作品としてのまとまりとかがすごい……

(DARTHREIDER)クオリティーが異様に高いんだよね。

(伊藤雄介)売り物とフリーの垣根がどんどん曖昧になってきた時期ですよね。

(渡辺志保)そうなんですよ。この曲もだから正規リリースされる前に、ラジオのエアプレイとかたぶんネットの再生回数だけでビルボード2位とかそのへんまで。そういった意味でも、ミックステープ初の作品が商業ベースに乗ったという意味でも非常に意義深いし、個人的にもすごいいろいろ思い出のある曲ですね。で、この曲はすでにボーイ・ワンダがプロデュースを務めておりますから。で、ドレイクはカナダ出身の子役あがりみたいなところも当時はすごい新しかったし。そういうちょっとパッと見、優等生みたいな眉毛の太い男の子をリル・ウェインがそのへんをかっさらって。バードマンと組んで売り出すっていうのも私としてはすごい新しく……

(DARTHREIDER)バードマンのスキットで「うちのファミリーのいちばん若いメンバーを紹介するよ」っていってドレイクが呼び込まれるっていうのがあって。そういう扱いっていうのがあんだけ濃いヒップホップオヤジがね、ここに結構全力投球してくるっていうのが……

(渡辺志保)そうですね。サウスで悪いことばっかしてきたやつが(笑)。

(伊藤雄介)しかも、ド南部ですからね。ド南部のやつがトロントのラッパーをフックアップするっていうね。

(渡辺志保)そうなんですよね。まあ同時にニッキー・ミナージュもヤング・マネー・エンターテインメントに入れ込んだみたいなところもありまして、私の中でもやっぱりこのへんの2007年から9年をきっかけにヒップホップを聞くアプローチが180度……毎週ね、CD屋さんに行って輸入盤を買うっていうのだけが私のヒップホップスタイルだったんですけど、それにね、ネットもチェックしてミックステープを落とすみたいなことが発生したのがこのあたりということで。じゃあ、ここで私の1曲を聞いていただきましょう。ドレイクで『Best I Ever Had』。

Drake『Best I Ever Had』

(渡辺志保)はい。いまお送りしておりますのは私のこの10年の一押しソングでございます。ドレイクの『Best I Ever Had』!

(DARTHREIDER)イエーイ! いままででいちばんだぜ(Best I Ever Had)!っていうね。

(渡辺志保)というわけでお送りしておりましたが、ダースレイダーさん、伊藤ユースキーさんをお迎えして……

(伊藤雄介)押すな、そこ(笑)。

(中略)

(渡辺志保)ツイートでもいろいろご意見を頂戴しておりますので、ぜひぜひガイド本を買って、よりディープに。


ディスク・コレクション ヒップホップ 2001-2010

(DARTHREIDER)やっぱりね、いろいろ自分史と照らし合わせる読み方もありだし、初めての出会いを求めるのもありだと思うんで。シンコーミュージックから発売中の『ディスク・コレクション ヒップホップ 2001-2010』。Supervised by ダースレイダーということでね。現在、好評発売中ということですね。よろしくお願いします!

<書き起こしおわり>

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