渡辺志保 ケンドリック・ラマーのドレイク&J・コールディス曲『Like That』を語る

渡辺志保 ケンドリック・ラマーのドレイク&J・コールディス曲『Like That』を語る INSIDE OUT

渡辺志保さんが2024年3月25日放送のblock.fm『INSIDE OUT』の中でフューチャーとメトロ・ブーミンのアルバムに収録された楽曲『Like That』の中でケンドリック・ラマーがドレイクとJ・コールをディスしている件について、DJ YANATAKEさんと話していました。

(渡辺志保)で、毎週金曜日にね、本当にもう超ド級のリリースがね、今年に入ってから特にアメリカではされているんですけれども。もうぶっちゃけさ、この間の金曜日、何を楽しみに待っていたか?っていうと、やっぱりメトロ・ブーミンとフューチャーのコラボアルバム『WE DON’T TRUST YOU』なわけよ。で、日本時間の午後1時には日本で聞けるようになっていましたね。

(DJ YANATAKE)ああ、そうなんだ。俺ね、1時は生放送をやっていて。終わってすぐに聞いたんだよね。

(渡辺志保)なんでかわからないけども。たしか1時には聞けるようなっていたと思う。それで「ああ、もう来てるじゃん!」と思ってバーッて聞いて。で、同時にXのタイムラインも見ながら聞いたんですけど。みんな『Like That』、『Like That』って言っていて。「うん? どうした? ケンドリックが……?」みたいな。それで、最近の新譜ヒップホップアルバムあるあるですけど。フィーチャリングアーティストを明記してないんですよね。なので最初に「出た!」っつってSpotifyだったりApple Musicで見ても、フィーチャリングアーティストがパッと見だとわからない。

それで最初から聞き始めて、それで『Like That』になった時。2バース目に「なんかちょっと変な声のラップが乗ってる!」と思って。それがケンドリック・ラマーのラップだったわけなんですけども。

(DJ YANATAKE)ああ、ケンドリックが入っているっていうことを知らない状態で聞いた? それともなんかで見ちゃった?

(渡辺志保)半分ぐらい知っていて。ぶっちゃけ、見ちゃった。ぶっちゃけ1曲目から聞いていたけど、途中で飛ばして『Like That』に飛んだ(笑)。

(DJ YANATAKE)俺もさ、リアクション動画みたいのをさ、いろんな人がやってるじゃん? 海外の人とかさ。その人たちは知らずに聞いていてさ。ケンドリックが出てきた瞬間の顔がみんな、面白しくて(笑)。「Oh my god!」って(笑)。

(渡辺志保)まず最初にさ、2曲目の『Young Metro』でザ・ウィークエンドが出てくるんですよね。で、ザ・ウィークエンドとメトロ・ブーミンといえば、メトロが2年前に出した『Heroes & Villains』っていうアルバムの中の『Creepin’』っていう曲。それでザ・ウィークエンドをフィーチャーして。そのシングルが大大大ヒットしたから。「ああ、ここでまたメトロ・ブーミンとザ・ウィークエンドがまたリユナイトしたんだ。すごい!」とか思いながら聞いていて。で、ちょいちょい飛ばして『Like That』まで至ったわけなんですけれども。で、この曲はそのメトロ・ブーミンとフューチャー、そしてケンドリック・ラマーが参加していて。ラップしてるのはフューチャーとケンドリック・ラマーの2名ということになるんですけれども。なぜ、そんなに話題になっているか?っていうと、ケンドリック・ラマーがめちゃくちゃディスってる。

で、誰をディスってるかというと、ドレイクとJ・コールをめちゃくちゃディスってるんですよね。それですげえ話題になったわけ。で、リリックの中にも本当ご丁寧に「first-person shooter」っていうフレーズが入ってるわけなんですけれども。この『First Person Shooter』というのがドレイクの前回のアルバム『For All The Dogs』の中に収録されているドレイクがJ・コールをフィーチャーした曲なんですよね。で、この曲は昨年、ビルボードのナンバー1も取っているヒット曲なんですけれども。そうした明らかなフレーズを入れながら、めちゃめちゃディスっていて。

ケンドリック・ラマーがドレイクとJ・コールをディスる

で、その『First Person Shooter』のリリックの中に「ああ、たしかにあったわ」って思ったんだけど。「Love when they argue the hardest MC Is it K-Dot? Is it Aubrey? Or me?」っていう。「We the big three like we started a league, but right now, I feel like Muhammad Ali」っていうJ・コールのリリックがあるんですね。その意味は?っていうと、J・コールは「みんなが誰が一番ハードなMCなのか? 議論をしているのがすごい好きだ。それはK-Dot(ケンドリック・ラマー)なのか? Aubrey(ドレイクの本名)なのか? それとも俺? 俺たちはまるでleague(チーム)のようにスタートしたビッグ3(偉大な3人のMC)だ。俺は今、モハメド・アリのような気分だぜ」っていうことで。

その、自分を含めた3人のMCを並列しつつ、「言うても俺が一番イケてるんじゃないか? 無敵なんじゃないか?」みたいなラインになっているんですよね。で、それをもじったリリックがこのケンドリック・ラマーの今回の『Like That』の中にも入っていて。「ビッグ3がなんだ? ビッグ・ミーだけでいいだろう?(Motherf*ck the big three, n*gga, it’s just big me)」って。「3人の偉大なMCなんかいらない。偉大な俺だけでいいだろう?」っていう、すごい一撃みたいな感じのリリックが入っていて。

(渡辺志保)他にもそういうサブリミナル・ディスみたいなのがたくさんたくさん入ってるんですよね。たとえば「Prince outlived Mike Jack’」っていうのがケンドリックのバースの最後の方にあるんですけれども。「プリンスはマイケル・ジャクソンよりも長生きした」っつっていて。それは「プリンスの方がマイケル・ジャクソンよりも長生きしてる≒素晴らしい」みたいな意味で使っているんですけれども。これも私が見たXのポストで深掘りをしている方がいて。ドレイクってかつて、これは『More Life』だったかな? 自分のアルバムの中に死後の、亡くなったなくなった後のマイケル・ジャクソンの未発表音源みたいなものを買い取って、自分の楽曲にそれをフィーチャーしてるんですよ。なんで、亡くなった後のマイケル・ジャクソンの音声を自分の曲(『Don’t Matter To Me』)にくっつけて、「フィーチャリング マイケル・ジャクソン」っていう風にしてるんですけれども。

(渡辺志保)片やケンドリック・ラマーは、まだ生きていたプリンスと一緒にステージを共にしたことがあるらしいんですね。なんで、そういう意味でも「生きていて一緒にステージに立った方がすげえ」っていうことを誇示しているんじゃないか、みたいな考察をしている方もいらっしゃったりとか。

(渡辺志保)あと、まあいちいちキリがないんですけども、そういうラインがバーッと埋められていて、大変なことになっていると。で、私が参照しているのはRap Geniusっていうリリックサイトなんですけど。そこにみんなが「こういう意味なんじゃないか?」っていうのをユーザーがワーッと書き込んでいるんですけれども。この『WE DON’T TRUST YOU』というアルバム全ての楽曲のリリックがもう明らかになっているわけなんですけれども。この『Like That』っていう曲だけが、閲覧数がもう金曜日に発表されてから100万回を超えてるのね。他の楽曲は全部、7万回とか。多くても他の曲だと25万回閲覧みたいな感じなんですけど。『Like That』だけがもうすごい、ずば抜けて閲覧数が多くて。そりゃあまあ、みんな見るわな。世界中のヒップホップリスナーがもうみんな、これを見てるんだろうな。それでああだこうだと言ってるんだろうなっていう感じですね。

(DJ YANATAKE)で、なんか記録的な話で言うと、ストリーミングも今年一番の記録で。『Like That』はビルボードでシングルが初登場で1位になりそうだっていう感じっぽいですね。

(渡辺志保)いや、すごいよね。で、しかもこのケンドリックvsドレイクとか、その他のメンバー。今、名前が挙がったMCたちの仲の悪さを時系列に沿ってすごい丁寧に考察されてる記事とかが、まあアメリカのブログとかなんですけど。英語なんですけど。そういったものもあるので。英語がわかる方は詳しくそっちを参照してくださいって感じもあるんだけれども。元々、ケンドリック・ラマーとドレイクってその『Good Kid, M.A.A.D City』っていうケンドリックのアルバムに入っている『Poetic Justice』っていう曲で1回、共演はしているんだが、それ以来ずっと仲が微妙に悪いみたいな感じなんですよね。

(DJ YANATAKE)なんかエアリプやりあってますみたいな。

(渡辺志保)そう。サブリミナル・ディスをやりまくってますみたいな。で、メトロ・ブーミンもここ数年、ドレイクのことがめっちゃ嫌いだったみたいですね。で、私は知らなかったんですけど。昨年1回、メトロ・ブーミンがツイ消ししてるんですよ。で、それが昨年のグラミー賞のノミネートが発表になったあたりかな? で、メトロのアルバムもノミネートされている。21サヴェージとドレイクの『Her Loss』っていうコラボアルバムもノミネートされてるんだが、『Her Loss』の方がノミネートの数が多かったですって。メトロの『Heroes & Villains』よりも。それでメトロさんが「どうせアワードっていうのは政治が働いてるんだろう? 俺には関係ないね」みたいなことをポストして、その後にデリートしてるんですよね。で、その後にドレイクがインスタグラムのストーリーズでジェイ・Zの昔のリリックを引用して「小せえ男だな。俺はもっと高みを目指すぜ」みたいなリリックを乗せていて。これはまあ、エアリプをやり合ってるんじゃねえか? みたいなことも掘り起こされているという。

(DJ YANATAKE)なんかさ、二つ志保さんの意見を聞きたいなと思っていて。まず、この「ディスだ、ディスだ!」って騒いだ結果、どうしても思い出しちゃうのが『Control』じゃないですか。昔、2013年にビッグ・ショーンの曲で『Control』っていう曲があって。で、『INSIDE OUT』リスナーには説明をすると長くなるので割愛しますけども。各自、調べていただきたいんですが。『Control』っていう曲でいろんな人を名指ししてケンドリックがディスをしたんだけれども。そこで名前を出された方が、ディスられているんだけど結果、よかったんじゃねえか? 認められていたんじゃねえか? みたいな。すごいそれが話題を呼んで。ケンドリックがそういう曲を出して、当時めちゃくちゃ話題になったっていう。でも、それよりももうちょっと直接的な、ストレートなディスなんじゃないか?っていう感じがあって。

(渡辺志保)そうですよね。私も同じくっていう感じで。で、GQの記事にもそういうことが書いてあって。『Control』の時って、やっぱり「ヒップホップゲームの中でみんなで高め合っていこうじゃん!」みたいな姿勢が表れていたし。しかも『Control』に触発されて日本でも『#FightclubJP』っていうのがあったり。「懐かしい!」とか思うけど。Jinmenusagiくんとかがすごいラップしてらっしゃったわけですけれども。それぐらい波及効果が……ちょっとポジティブな感じの、まあディスはよくないかもしれんが。

でもやっぱりヒップホップってすごいコンペティティブ。競争心をあらわにするということをよしとする世界でもあるので。「みんなで高め合っていこう。競い合っていこう」っていうようなね、ちょっと運動会みたいな感じのバイブスがあったんだが。そこから愛(LOVE)が欠如したのが今回のケースだみたいな感じでGQの英語のアメリカの記事には書いてあったんですよ。それでリリックの中でもケンドリック・ラマーがしっかりと「俺は暴力の方を選ぶ(I choose violence)」っていう風に言っちゃってるんですよね。だからそういう、ちょっとすごい乱暴な感じなんですよね。今回は。

今回は『Control』の時とは違う荒々しいモード

(DJ YANATAKE)だからそこがちょっと『Control』の時とはニュアンスが違うなと思ったのと。あとやっぱりこれ、たとえばさ、フューチャーとドレイクはコラボアルバムも出していたりするし。ケンドリックとJ・コールだってさ、前は一緒にやっていて。また次がいつ出るんだ?って毎年のように言われていたり。みんな、それぞれはかつては仲間たちだった感じがあるから。うーん。なんか複雑な思いがしますよ。

(渡辺志保)複雑ですよね。で、フューチャーはいろいろ考察記事を読んだんですけど。それで「たしかに」と思ったんだけど。フューチャーがドレイクとコラボアルバム出した時も、ドレイクがミュージックビデオを撮りたがらなかったらしいんですよね。で、コラボツアーをした時も途中でフューチャーが下ろされたみたいな記事もあって。だから確執……たしかに『Life Is Good』っていう曲を出した時にミュージックビデオも出して。なんだけど、その時に私、その『Life Is Good』のマーチャンを買ったんですよ。それもね、フューチャーのレーベルのFreebandzからマーチャンダイズも発売されていて。たしかミュージックビデオもフューチャーのチャンネルから出ていたのかな?

(渡辺志保)だから本当にね、上っ面だけ見ているファンはわからないけど、ペラッと1枚めくるとやっぱりいろいろあったのかなって思うし。で、やっぱりそのフューチャーとメトロ・ブーミンって本当にお互い、駆け出しの頃から同じ地元アトランタで一緒に切磋琢磨してきた仲みたいな。そこの絆っていうのは絶対に絶対に壊れないもので。そこにケンドリックが乗っかって、一緒になってドレイクとJ・コールをディスるっていう。ここは何でなの?ってちょっと思ったし。で、たぶん『Control』の時も話したかもしれないですけど。もう11年前だけど。その、自分の曲じゃなくて人の曲でこんなディスをかますのって、まあ別に好きにしたらいいけどさ。なんか、ちょっとそこが腑に落ちない感じもあるっていう。

(DJ YANATAKE)わかる、わかる。なんか結構さ、なんていうの? すごいセンシティブな話だからさ。その全責任を取るなら自分のアルバムでやれよ?って思うけど。ケンドリックは人の曲ばっかりでそういうことをやるよね(笑)。

(渡辺志保)そうなんですよ。で、この『WE DON’T TRUST YOU』っていうタイトル自体が「お前のことはもう信用してねえぜ」っていうメッセージだということは明らかだし。1曲目にもフューチャーの「これはドレイクに向けたディスラインじゃないのか?」っていうのもちょいちょい、見受けられるんですよね。だからそういうのを、たとえば制作期間中にわかんないけど。「いや、これは◯◯のディスなんだよね」「えっ、俺もちょっとドレイクとJ・コール、前から嫌だなって思ったけど。ちょっと乗っかっていい?」みたいな。そういうあれがあったかはわかんないけど。でも『WE DON’T TRUST YOU』っていうタイトルに関しては、「If Young Metro Don’t Trust You, I’m Gon’ Shoot You」っていう、すごい有名なメトロ・ブーミンの曲の頭に絶対入ってるプロデューサーのタグがあるんですよね。それは元々、フューチャーの声で入れてるタグなんですけど。そこに由来するアルバムタイトルっていうことで。いろいろと、もちろん特定の誰かに向けたディスっていうことは除いても符号が合致するところではあるんだが。

あと先週、この『WE DON’T TRUST YOU』のアルバム発売1週間前にカリフォルニアでローリング・ラウドが行われて。そこで……それこそカニエとタイ・ダラー・サインのライブパフォーマンスなんかが話題になったんですけど。そこで、メトロ・ブーミンとフューチャーのステージがあり。そこにトラヴィス・スコットがサプライズで出た。それで、私も映像見てちょっとかわいいなって思ったんだけど。トラヴィス・スコットが「あの『テテテテンテンテーン』の曲、かけろよ」ってステージに立って、みんなの前で言ってるんですよ。「メトロ。あの『テテテテンテンテーン』の曲、かけろよ」って。で、それはこの曲のネタ元になっているネタのシンセの音なんだけど。「『テテテテンテンテーン』、かけろよ」って何度も何度も何度もリクエストして。「じゃあ、ちょっとだけね」みたいな感じでかけて。それで最初のバースをフューチャーがラップするんだけど。

私はまだ、ちゃんと照らし合わしていないんですが。そこでラップしてるフューチャーのバースっていうのは、最終的に収録されてるバースとは違うらしいんですよ。なんだけど、フューチャーのその最初のバースだけかけてセカンドバースはもちろん、かけないようにしていたんだけども。で、その時のトラヴィス・スコットも2バース目にケンドリック・ラマーのJ・コールとドレイクをディスってる箇所があるのを知っていて、リクエストしたのか? もしくは何も知らずにただただ、かっこいいからみんなに聞かせてやりたいんだみたいな無邪気な感じでリクエストしたのか、わからないんだけども。もしこれで、「いや、みんなにあのケンドリックのやべえやつを聞かせてやれよ!」みたいなことなのだったら、そこにたとえばトラヴィス・スコットも反ドレイク&J・コール体制の中に入ってくるのか? みたいな。もうみんなの勘繰りが……世界レベルで今、勘繰りが行われているっていう。

(DJ YANATAKE)勘繰りがすごいね!

勘繰りを呼ぶトラヴィス・スコットの行動

(渡辺志保)ヒップホップの6大要素「勘繰り」っていう。みんな、勘ぐってますね。やばいっすね。

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