(宇多丸)あ、ちなみにこれ、無敵っていうことを勘違いしないでほしいんだけど。「人より上手い」っていうことじゃないんですよ。
(K.I.N)(笑)。「誰もやっていないから」。
(宇多丸)「誰もやっている人がいない」っていう(笑)。っていうことなんだけどね、でもね、「ジョーダン5。スニーカーでライムをしろ」っていうのをやったりとか。
(K.I.N)そう。チョイスでさ、偉そうにさ。俺もほら、「俺しかできねえ」って思っているからさ。ブースでこんな、ふんぞり返っているわけですよ。そしたらPESがさ、それ、はじめてかな?
(宇多丸)94年の4月にチョイスというところで……
(K.I.N)で、PESが来て。まあ先輩風を吹かせて、「お前、フリースタイルちょっとやってみろよ」みたいな感じで言ったらいきなり、「俺のジョーダン5……♪」みたいになっていて。
(宇多丸)ああ、始めたんだ、あいつ。
(K.I.N)そう! 「ええ~っ!」だよね。「俺しか持っていない武器……ええ~っ!? ジーニアス?」って(笑)。
(宇多丸)たぶんね、93年の夏に始めて、94年通してやったじゃん? で、95、6年になるともう、俺らの知らないところでやるのが広まっているの。
(K.I.N)そうなんだよ。
(宇多丸)だから、あちこちに種をまきすぎちゃった。
(K.I.N)まきすぎちゃった(笑)。「この銃はね……」って(笑)。
(宇多丸)っていうのは、ひとつはたとえば僕らが辻斬りをやっていく途中で新宿花園神社にあったミロスガレージというクラブで、クラブ・オブ・スティールっていうイベントをやっていて。それはECDとかがやっていたイベントだけど。そこに僕ら、また辻斬りを仕掛けに行って、そこのやり取りを見ていた石田さんが僕とMCジョーというラッパーのバトルが面白いということで、チェック・ユア・マイクというECDさんの方の代々木チョコレートシティーでやったイベントで公式バトル。MCジョー VS MC SHIRO(宇多丸)って。
(K.I.N)あ、じゃあ公式バトルってこれが初めてなの?
日本初のMCバトル
(宇多丸)これは断言する! 日本で最初の公式バトルは……
(K.I.N)フライヤーに載っていたもんね。バトルって。
(宇多丸)日本初。で、ちなみに勝敗は向こうのホームで観客判定だったから……
(K.I.N)ひどいね(笑)。
(宇多丸)ひでーんだよ、こんなのはよおっ!(ドンッ!)。
(K.I.N)(笑)
(宇多丸)これ、あちこちで僕、言ってますけど、これはジョーはこの時、即興じゃない。あいつ、普段は即興でやっていたのに、この日だけたぶん絶対に勝ちたかったのか、なんか歌詞を用意してきちゃっていて。しかもそこを俺につっこまれて。こうやって、「お米問題!」「お米問題、関係ねえし! 大事なのはお米問題じゃなくて、オ○コ問題!」みたいに、そういう感じ。ねー、ありました。ちなみに、その次の公式バトルは99年のB BOY PARKのMCバトルだから。たぶん。
(K.I.N)えっ、じゃあすごいじゃん!
(宇多丸)しかも、99年のB BOY PARKのMCバトルの司会だけじゃなくて、ルールづくりをしたのは俺だからね!

(K.I.N)マジっすか!?
(宇多丸)マジだよ!
(K.I.N)俺、ビールの件であんだねなんか……「K.I.Nちゃん、がんばんなよ」みたいな感じだったのに。GALAXYの飲み会の時に。
(宇多丸)ビールの件(笑)。まあ、ちょっといろいろ初のフリースタイルバトルで起きたトラブルの件とか、いろいろあるんだけど、ちょっと時間が……で、要は94年を通じてだんだんシーンに定着していったという。まあ、こっから先はみなさんご存知の歴史になっていくということなんだけど。だって96年? 97年かな? KREVAとか。もう「最初に歌詞を書く前にフリースタイルを始めました」っていうやつが現れて。
歌詞より先にフリースタイルを始める世代の登場
(K.I.N)言っていたじゃん。だって、フリースタイルをやっていた時にさ、「そのうち、最初に歌詞じゃなくてフリースタイルから始めましたみたいなやつが絶対出てくるよ! 」って。
(宇多丸)「出てくるよ、嫌だね~!」って。
(K.I.N)「でも10年ぐらいかかるな」っつったら、2、3年で出てきちゃった(笑)。
(宇多丸)2、3年で出てきちゃって、まさにKREVAと最初は敵だったMCUが我々のFG Nightってイベントで毎月恒例のもうむちゃむちゃ高度なバトルを繰り広げて。で、それを見て……っていうかね、その頃は俺、まだフリースタイルはやっていたんだけど、俺のを見ていた大前至っていう超ムカつくライターが(モノマネで)「なんか、士郎さんよりKREVAの方が上手いね」って言われて。
(K.I.N)(笑)
(宇多丸)で、それを言われて聞いて、「そりゃそうだろ、この野郎! んなもん、若いやつの方が上手いに決まってんだろ? ああ、絶対やらねえ、フリースタイルなんて! ぜってーやんねえ!」って(笑)。この感じ(笑)。
(K.I.N)(笑)
(宇多丸)K.I.Nちゃんはいつごろ、あんまやんなくなったの?
(K.I.N)俺、でもあれだね。バトルの形式になってから。
(宇多丸)ああー。
(K.I.N)俺、基本的にはバトルは実はあんまりやってなくて。
(宇多丸)初期の辻斬りはあれだけども。
(K.I.N)辻斬りはあれだけども、そん時も客いじりとかだから。「お前がナントカ!」とかさ、あんまりね、得意じゃないっていうか。
(宇多丸)なるほど、なるほど。ちなみに、ちょっと終わりに近づいちゃっているんで、K.I.Nちゃんの目から見て、いまのフリースタイルブーム、どうですか? 思うところとか、ありますか? 気持ちというか。
(K.I.N)いやー、さっきね、それを考えていたんだけど。いいんじゃないの?(笑)。
(宇多丸)まあ、そうとしか言いようがないけど。
(K.I.N)流行るのはいいけど、作品も残した方がいいよね。
(宇多丸)それはもちろん、いまね、ブームの中にいる人もそこはいちばん。
(K.I.N)フリースタイルから出てきて売れたっていう人、いるの?
(宇多丸)そんなこと言ったら、KREVAとかそうじゃん。
(K.I.N)いや、KREVAは最初からよかったんだよ。
(宇多丸)まあ、そうだけどさ。
(K.I.N)それでほら……
(宇多丸)ああ、まあライブがよくてね。
(K.I.N)俺らは「遊びに来なよ」って言ってるんだから。
(宇多丸)まあまあ、まさにその危惧はみんな抱いているという。
(K.I.N)スーパーナチュラルとかのさ。
(宇多丸)スーパーナチュラルはね、典型的なね……その話は長くなるから。
(K.I.N)あ、いい?
(宇多丸)でも、とりあえず今日はK.I.Nちゃんにフリースタイル……僕もそうですけど、即興フリースタイルは振らないですよ。やらせないですよと。
(K.I.N)YO!
(宇多丸)(笑)。なぜならば! なぜならば! 俺たちは、たしかに始めたが……
(K.I.N)始めたけど!
(宇多丸)始めたが……
(宇多丸・K.I.N)上手くは、なーい!(笑)。
(K.I.N)そうそうそう(笑)。上手くはなーい!
(宇多丸)でも、まあちょっと歴史の大事な話をさせていただきました。じゃあ、最後にちょっとメローイエローの曲を聞きたいと思うんだけど。なんか、貴重な音源を流していただけると?
(K.I.N)そうです。発表していない曲で。まあ、どこにも出していないんで、みんな聞いてくださいぐらいかな?
(宇多丸)じゃあ、曲紹介をお願いします。
(K.I.N)はい。メローイエローで『Unbeatable』。
(宇多丸)K.I.Nちゃん、ありがとう! フリースタイルの元祖K.I.Nちゃん特集でした!
(K.I.N)YO!
(宇多丸)やめてよ(笑)。
<書き起こしおわり>
