吉田豪 安彦良和を語る

吉田豪 安彦良和を語る たまむすび

(吉田豪)で、「それは全部お神輿を担いだメディアが悪いんですよ」と安彦さんは言われていて。アニメ雑誌『OUT』。僕も買っていましたけども。これなんかは富野さんをいちばん担いでいた雑誌で。「担いだんだったら、最後まで責任を取れよと思う。だから当時の編集長の大徳哲夫さんはいまだに嫌い」とかね(笑)。あの、個人名を出して結構なディスが始まって。

(玉袋筋太郎)言うね!

(吉田豪)あと、『アニメック』。これも僕、好きで買ってましたけども。その元編集長の小牧雅伸さん。「1回も取材を受けたことがない」って言っていて。アニメックってガンダムの仕掛け人だったんですね。雑誌として、小牧さんが。で、しょっちゅうサンライズにも来ていたのに、安彦さんが作画していたら後ろで「富野さん! 富野さん!」と言っていたけど、安彦さんは1回も口を聞いたことがなかったと。

(玉袋筋太郎)へー!

(吉田豪)ずっと後になって、なにかの取材時に小牧さんが同行していたので、「俺、あなたと話すのはじめてだな。一言も話しかけなかった」って言ったら、「えっ、そうですか? いつもお忙しそうだったから」って小牧さんに言われて。「あの頃、みんな忙しかったよ! 暇なやつなんかいなかったよ!」って返したっていうのとかで。まあ、当時のアニメ雑誌に対して、とにかく複雑な気持ちがあると。

(玉袋筋太郎)うーん。

(吉田豪)で、言わばいい大学を出た人たちが世間知らずなアニメの世界の人たちを丸め込んじゃったような。それでひとつの世界を作っていたんだけど、犠牲者もいるんじゃないか?っていう感じで。

(安東弘樹)ああ、雑誌に対してね、そういう思いがあるんだ。

(玉袋筋太郎)そうなんだ。これ、上井草歩く時、ちょっといろいろ考えるな。俺、サンライズの前を。うん。

(吉田豪)ちなみに安彦さんから見た富野さんは、「変わり者だけどアニメ界で『作家』と言われる人っていうのは富野由悠季しか知らない。だけど、神じゃねえだろ?っていう気がする。周りが神にしちゃった部分がある」というね。

(安東弘樹)ああー、なるほど。なるほど。でも、やっぱり富野さん、たしかにね、僕らガンダム好きにとっては富野さんっていうといちばん神みたいな人、多いですもんね。

(吉田豪)まあ富野さんもメンタルのアップダウンがある人だから。たぶんそういう事情もあったんだと思いますけどね。

(玉袋筋太郎)そうか。さあ、そしてその4ですね。

(吉田豪)これもその複雑な感情ですね。

(安東弘樹)アニメから漫画家へ転身。

(吉田豪)それも複雑な感情ゆえに移ったんですよ。まあ、徳間書店のアニメ専門雑誌『アニメージュ』。「異様な集団がいた」って言っていて。「明らかにアニメージュじゃなくてアサヒ芸能みたいな雰囲気だった」っていう。

(玉袋筋太郎)(笑)。アサ芸だったんだ。

(吉田豪)そうなんですよね。

(玉袋筋太郎)アニメージュがイコール、アサ芸か。

(吉田豪)まあ、当時の編集長、尾形英夫さんっていうんですけど。この人も変わった人で。「まあ、得がたい人だった。お祭り男で、とにかく派手に盛り上げるのが好きで。気仙沼の田舎のおっちゃんで品性が悪くてね。喫茶店なんか入っても、『この人、知り合いじゃありませんから』って言い訳したくなるようなタイプだった。だってね、喫茶店でね、『ねえちゃん、味噌汁ねえか?』とか言うんだよ」っていう(笑)。

(玉袋・安東)(笑)

(吉田豪)「ああ、アサヒ芸能だ」っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)すごいな、それは! 「味噌汁ねえか?」って(笑)。

(吉田豪)鈴木敏夫さんなんかも含めて、実はそういう側だったっていうね。

(玉袋筋太郎)鈴木敏夫さんが? へー!

(吉田豪)だから、もう酒を飲んでいたりとか、花札やろうぜ! みたいな感じの編集部で。

(玉袋筋太郎)完全なアサ芸だね。

(吉田豪)アサ芸ですよ。昭和アサ芸だったっていうね。

(玉袋筋太郎)アニメージュが? はー!

(吉田豪)で、そんなアニメージュに、ある時期に切られたって言ってるんですよ。嫌われたっていう。

(安東弘樹)安彦さんが?

(吉田豪)そうです。「決定的なことがあったわけじゃないですけど、いつから仕事が来なくなったのかは具体的に言えるぐらいくっきり来なくなった。アニメージュに相手にされなくなったら終わりかなと思った」と。まあ、いちばんのメジャー雑誌でしたからね。

(玉袋筋太郎)うんうん。

(吉田豪)で、当時……「その後は『ニュータイプ』っていう雑誌ができたけど、あっちは最初からブランド志向だったし。アニメージュにそっぽを向かれたら、あとはメディアがない。だから終わりだなと思った」っていうね。で、ちょうど監督作品で安彦さんが『巨神ゴーグ』っていうのを作ったんですよ。それが、ちょっと手応えを感じられなかったのも大きかったし、潮目が変わった。その時期に『風の谷のナウシカ』と『超時空要塞マクロス』とかに、雑誌とかもそっちに流れて。

(玉袋・安東)ああー。

(吉田豪)お客さんも流れ……「いいものを見たい」っていう人は『ナウシカ』に行って、オタクは『マクロス』に行く。もともと正統派じゃないから、よい子のアニメも作れないし、そんな意欲もないし。オタクじゃないからオタクアニメにも付き合ってられない。そうすると、居場所がない。頃合いを見て辞めようっていう考えになったと。

(玉袋筋太郎)へー! なんだろうね。潮目っつーのはあるんだな。

(吉田豪)あれだけのスターだったのにっていうね。で、「漫画の方がまだ自分でコントロールできるというか。まあ、金銭的な部分でも、漫画はそこそこ原稿料が入れば食べていけるし、上手くすれば印税も入る」と。つまり、ヤマトとガンダムっていう日本を代表する二大ヒット作にかかわってきた人だけど、ああいうのって権利関係が一切ないから、単純にギャラだけで。絵コンテを切ればコンテ料。作画をやれば作画料が1カットいくらという世界。だから、ああいうのにかかわったからっていって、イラストを描いたりすればそれでギャラは入るだろうけど……っていう話なんですよね。

(玉袋筋太郎)うわー!

(安東弘樹)かかわっていただけじゃ、お金入らないんですね。

(吉田豪)そうなんですよ。

(玉袋筋太郎)結構残酷物語だな、これ。

(吉田豪)で、81年に画集を出したんですよ。それが15万部とか16万部ぐらい売れて、はじめて印税をもらった時に「えっ! こんなにもらえるの?」って驚いて。そのお金で家を建てたと。なもんで、漫画なら食えるっていう考えができたというね。で、「個人的に知っている編集者2、3人から描きたいものを描かせてもらっているだけでも生活的には落ちていない。漫画は儲からないって言われているけど、当時のアニメのギャラに比べればぜんぜんいい」という。

(玉袋筋太郎)そうなんだ。じゃあ、懐が豊かになった人はもう本当、特定の人だけなんだね。アニメとか、あの手のブームはね。

(吉田豪)あんだけ当たって、稼いでいるのは誰なんだろう? とは思いますよ。

(玉袋筋太郎)誰だ? うん。ねえ。

(安東弘樹)ナウシカとマクロスはわかりやすいね。僕、両方好きでしたけども。さあ、そしてファーストガンダムを放っておけない。アニメの世界へ再び。

(吉田豪)そうですね。

(安東弘樹)この再びっていうのがね。

『ガンダムTHE ORIGIN』でアニメの世界へ再び戻る

(吉田豪)まあ、漫画の世界に行った人が、いま『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』の総監督としてまたアニメの世界に戻ってきているんですけど。それはまあ、ファーストガンダムを放っておけないからっていう理由で。曰く、「あんなに出来が悪いんで、どうされたって文句は言えない。ひどいでしょう? 『僕がリメイクしてあげます』っていうやつが、かならずどっかから出てくる。そうなったら、どんな風にいじられるかわかったもんじゃない。だから最初は漫画でリライトする。そんな物好きなやつはいないだろう」ってことで始めて。で、「他にもそういう漫画はあったけど、当事者じゃない漫画家さんはやっぱり遠慮しながら描いているから。俺は遠慮しないぞ!って思って描いた」と。

(玉袋筋太郎)おおー!

(吉田豪)で、「それをアニメ化するってことになったら、またそれも、『基本的に原作通りにやって』って言っても、演出家やライターによっても変わっちゃうから自分でやろうと思った。でも、他は一切やる気はない。アニメからはもう足を洗った。というか、もう懲りた」っていうことだったんですね。

(玉袋筋太郎)懲りた。そりゃ、懲りるでしょうね。うん。でも、なんだろう? 「あんなに出来が悪いんで」って、ファーストガンダムのことを言っちゃうっていうのもすごいよね。

(吉田豪)まあ、テレビシリーズはたしかに作画的にはアレでしたからね。映画で、劇場版でだいぶ作りなおしてはいましたけど……っていう。

(安東弘樹)僕も個人的にファーストのまんまのストーリーで、絵だけ変えてもらえたらどんなに素晴らしいだろうって。

(吉田豪)だから「『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』の原作が本当に最高なんで、いまのクオリティーであれをちゃんと作ってくれたら、本当に最高!」って思っていましたからね。

(玉袋筋太郎)ねえ。うん。

安彦良和と宮崎駿

(吉田豪)このへんのね、他にもいい話がいろいろあるんですよ。僕、たまらなかったのが、宮崎駿さんに対する意識がすごいよくて。もともと普通にファンで。で、対談とかもたのんでいたりしたんですけど、断られたらしいんですよね。会ってもらえなかったっていうね。

(玉袋筋太郎)(笑)

(吉田豪)鈴木敏夫さんにガンダムの時に「誰か会いたい人、いない?」って聞かれて、「宮﨑さんに会いたい」って言ったら……『アルプスの少女ハイジ』とか『未来少年コナン』とかが好きだったから。そしたら、「そんなやつは知らん!」って断られてっていう(笑)。

(玉袋筋太郎)うわー!

(吉田豪)「宮崎さんは天下の東映っていうか、正統派のプライドがあるから。虫プロって名のついたものはたぶんみんなお嫌いでしょう。だから俺も嫌われているんだろう」って言っていてね。

(玉袋筋太郎)ああー。

(吉田豪)で、高畑勲さんにも会いたいって言ったら、断られてっていう。

(玉袋筋太郎)(笑)

(安東弘樹)そこ、断られるんですね!

(吉田豪)で、「なんなんですかね? 派閥意識ですか?」って言ったら、「汚らわしいんじゃないですかね? やっぱり格下なんですよ」っていう。

(安東弘樹)ああー。

(玉袋筋太郎)卑下すること、ないですよ。

(安東弘樹)だって、ねえ。あんまり言えないけど……ひどいことは。

(吉田豪)(笑)

(玉袋筋太郎)まあでも今夜、『もののけ姫』がやるけども。

(吉田豪)(笑)

(玉袋筋太郎)今日、やるんですよね。それについても結構ね……

(吉田豪)結構、批判されてまして(笑)。面白いんですよ。そのへんのストッパーがね。「犬がデカすぎるよ!」って言ってるんですけど……安彦さんも家に行ったら本当にデカい犬が出てきて(笑)。

(玉袋筋太郎)(爆笑)

(吉田豪)安彦さんの家も、十分犬がデカいんですよ。人間よりデカい犬を飼ってるじゃないですか!っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)(笑)。面白いよなー!

(安東弘樹)まあ、僕もでも、そっち側なんだよな。宮崎さんも嫌いじゃないですけど。

(吉田豪)当然、どっちも大好きですよ。

(安東弘樹)でもガンダム……南極条約とか出てきちゃうとキュンとしちゃうタイプなんで。

(吉田豪)そこ?(笑)。

(安東弘樹)120ミリ滑空砲っていう設定がちゃんとあるんだとか、そういう。

(吉田・玉袋)(笑)

(安東弘樹)宇宙空間では無反動砲……なるほど。宇宙空間では反動があると飛んでいっちゃうからとか。そういうのが大好きだったんで。

(吉田豪)はいはい。SF的なそういうバックグラウンドが。

(安東弘樹)そうなんですね。だからそこはもう、堂々としてほしいけどな。

(吉田豪)でも、聞いたらやっぱり虫プロ派閥と東映派閥はやっぱり仲が悪いみたいですね。

(玉袋筋太郎)へー!

(吉田豪)やっぱ正統派の長編アニメをちゃんと作ってきた東映からすると、虫プロとかはリミテッドアニメというかね。テレビ用のああいうアニメでどんどん……みたいなのもあるだろうし。

(玉袋筋太郎)そうなるとまた、手塚治虫論も出てきちゃう。

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