Mummy-D みなもと太郎に『風雲児たち』の素晴らしさを語る

Mummy-D みなもと太郎に『風雲児たち』の素晴らしさを語る 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

Mummy-DさんがTBSラジオ『タマフル』に出演。ゲストのみなもと太郎先生に『風雲児たち』の素晴らしさや熱い思いを話していました。

(宇多丸)ということで、サングラスを。10年目にしてはじめてですよ。でも。この番組、480回やっているんですよ。480回やっていて、はじめてそんな失敗してるんですよ。で、サングラスをしていないってことは私にとって要は、パンツを履いてないとか、マスクしてないデッドプールとか。そんぐらいの感じで、もうすっかり落ちてるわけですよ。なので、このままじゃいけないということで。やはりスペシャルウィークの大事な10時台、放送に一気に勢いをつけるという意味で、今夜のスペシャルなゲストを先にお招きいたしましょう。漫画家のみなもと太郎先生です。いらっしゃいませ~!

(みなもと太郎)はい、どうも。前回と同じでドアから入ってきました!

(宇多丸)はい。ドアからガチャリと入っていただきました。

(みなもと太郎)今日はまた、つぶらな瞳で(笑)。

(宇多丸)そうなんですよ。サングラスをしてないとね(笑)。なので、いつもよりちょっとたどたどしいというかね。いつも以上にという感じになるかもしれないですけど。本当に今日は、ありがとうございます。

(みなもと太郎)どうもです。本当に、ついこの間だったのにね。もうお呼びいただいて、驚いちゃった。

(宇多丸)いや、前回の放送が本当に大評判でございまして。それまでそんなに漫画史とかそういうのを詳しくないというか。私も含めてですけど、不勉強な我々が……

みなもと太郎 さいとう・たかをの偉大な功績を語る
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(みなもと太郎)世代だから仕方がないんだって。

(宇多丸)ねえ。でも歴史の話を改めてしておかないと。それこそ、知らない世代の方が増えていっちゃうっていう。

(みなもと太郎)どんどん増えますね。

(宇多丸)これはマズいということで。まあ、まさに歴史の話なんですけど。歴史の話といえば、みなもと先生の代表作。いま現在も連載続いております。『風雲児たち』。改めてご存知ない方に説明いたしますと、幕末を描くために、幕末を描くにはここから始めなければということで、なんと関ヶ原の戦いから。

みなもと太郎と宇多丸 『風雲児たち』を語る
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(みなもと太郎)はい。描き始めて。

(宇多丸)ねえ。ただ、やっぱり読んでいるとこれはなるほど、全てはここからつながってくるとわかることですよね。なので、『風雲児たち』。連載開始から37年たって、まだ終わっていないどころか、まだ新選組も登場していないというね、この素晴らしいご本なんで。まあ歴史の話、今週の大事な話なんですが。この日本が誇る歴史エンターテイメントの大傑作。本当に、歴史の教科書にした方がいいと思うぐらいの……

(みなもと太郎)はい。ありがとうございまーす(笑)。

(宇多丸)あのね、褒められると途端に語彙がなくなっていくっていう(笑)。いや、みなもと先生なんですが。あの、私の周りにぜひすすめたいと思って。もちろん、名作として知られていますが、みなもと先生をお呼びしたということで僕、うれしくて。いろんな人にすすめて回っていたんです。で、僕のいちばん身近なこの男にね、すすめたところ、すごくムッとされまして。その理由はなにか? ということで、今日はこの方をみなもと先生にご紹介いたしたく、スタジオに呼んでおります。ライムスターより、私の相方でございます。Mummy-Dさんでーす!

(Mummy-D)フォーッ! フォーッ、フォーッ!

(宇多丸)(笑)

(みなもと太郎)なんか、踊ってるぞ(笑)。

(宇多丸)あの、普段はね、割とクールなタイプなんですよ(笑)。普段は割と、「いいムードだ」みたいな。そういう感じの。

(みなもと太郎)ああ、あっちの方で。

(宇多丸)あっちの方の男性なんですけど。

(みなもと太郎)踊ってるぞ(笑)。

(宇多丸)Mummy-Dさん、いらっしゃいませ~。

(Mummy-D)いやー、もう緊張というかですね。はい。ちょっと様子がおかしい……

(宇多丸)もう本当に、要はみなもと先生、昔から大ファンだったわけですね?

(Mummy-D)そう。いまちょっとね、調べたら2008年のライムスターのブログで俺はもう『風雲児たち』をこうやって紹介してたんだよね。

2008年のライムスターブログで『風雲児たち』を紹介

(宇多丸)ああー、そうかそうか。はいはいはい。

(Mummy-D)そうそう。だから、少なくともそん時に結構読みこなしていたから10年ぐらい読んでいるはずなんですよ。

(宇多丸)Mummy-Dさんは日本史が非常に好きな人でございまして。「日本史が好き」っていうのも変な話ですけども(笑)。

(みなもと太郎)まあ、そらいくらでもいる。はい。

(宇多丸)歴史マニアでございまして。まあ、そういうルートから入ったということですよね?

(Mummy-D)そうそうそう。なんかジャーナリストの方だったか、結構お堅い人がみなもと先生のこの漫画をすすめているのを見て。そんで、読み始めてから。単行本から入ったっていう感じです。

(宇多丸)すごいでも長い……どっから読み始めたの?

(みなもと太郎)だって始まった時に生まれているのかどうか……

(宇多丸)いや、僕らは意外とこう見えて、歳なんで。

(Mummy-D)生まれています。

(宇多丸)じゃあ、どのあたりから読み始めたの? 幕末編?

(Mummy-D)いや、1巻から。

(宇多丸)ああ、ワイド版の1巻目からだ。じゃあもう戦国から?

(Mummy-D)そう。

(みなもと太郎)「下手くそだな」と思ったでしょう?(笑)。

(Mummy-D)いや、「下手くそだな」っていうか、当時はそんな昔に描かれていたって知らなかったから。「このタッチって結構懐かしいな」みたいな感じではあったんだけど。読み始めたらすぐ、もう中身はクソ硬派だったから。もうね……なんと言ったらいいのやら。もう間違いなく、日本の歴史漫画のこれ、頂点なんですよ! 頂点。マジで。

(みなもと太郎)ありがとうございます(笑)。

(Mummy-D)漫画に限らない。もう、通史っていうか、幕末に至る流れが全部わかるみたいな。そういう意味で、もう教科書以上なんですよね。もうね……すんごいんですよ。

(みなもと・宇多丸)(笑)

(Mummy-D)それをね、「君、知ってるかな?」みたいな感じで俺にすすめてくる。この歴史好きの俺にだよ! 「Dさん、これ知ってます? これね、読んだ方がいいですよ。『風雲児たち』」「バカヤロー!」。

(宇多丸)これね、ここの関係性の説明が必要でね。まあ、Mummy-Dさんは歴史がすごい好きで。で、僕は映画とか漫画、サブカルチャーが好きで。まあ、もっぱらそういうのに詳しいのは俺であるという自負というか、思い上がりといいますか、ありまして。なので、「まあ歴史が好きなんだったら、それは……」って(笑)。

(Mummy-D)「君、これを読みなよ」みたいな。俺がね、宇多さんにね、「宇多丸さん、これご存知かな? すっごい面白いサイエンス・フィクションの映画なんだけど。『スターウォーズ』っていうんだけど」っていう。そんぐらいの話だよ!

(宇多丸)(笑)。そしたらもうね、僕も「はぁーっ!? 第一お前、前に俺がすすめてたの、見てないの?」みたいな。そんぐらいになるかもしんないですけどね。申し訳ございませんでした……

(みなもと太郎)どうもありがとうございます(笑)。

(Mummy-D)すいません。なんかみなもと先生をすっかり置いてけぼりにして(笑)。

(宇多丸)みなもと先生を前に内輪もめが始まるという(笑)。申し訳ないです。でも、ねえ。まさにこういう反応をあちこちからあると思うんですけども。

(みなもと太郎)そうですね。いただいてますね。

(宇多丸)新しい読者の人、若い読者の人もいっぱい入ってらっしゃるわけですもんね。やっぱ。

(みなもと太郎)そう。この間、やっと杏さんに会えたし。

(宇多丸)ああ、杏さん。お好きですもんね。

(みなもと太郎)授賞式の時には、双子さんをご出産された直後だったからお見えになってないけども。もう、いっぱいいるんで。はい。

(宇多丸)そのうちのね、端くれでございまして。

(Mummy-D)そうですよ。うれしいです。

(宇多丸)Mummy-Dさん、『風雲児たち』を改めて、その魅力みたいな部分、Dさん的に言うと。ありますか?

『風雲児たち』の魅力

(Mummy-D)ええと、そうですね。あの、教科書でどうしても覚えられなかったあいつが、目の前にありありと現れるんですね。なんつったらいいのかな? もう、名前とキャラクターみたいなのがどうしても結びつなかったあいつが、すごく親近感ある感じで出てくるんですよ。だから、もう受験生にはバッチリなんですよ。

(宇多丸)そうだよね。

(Mummy-D)で、全部これ、長い長い話が、「それはなぜかというと、こういうことで……」っていう。全部つながりだから。もうね、これしかないんですよ!

(宇多丸)これしかない(笑)。ねえ。あと、特定の1人が……よくね、小説とかである程度の分量だと、その人を主役に。たとえば『竜馬がゆく』なら坂本龍馬を絶対的な主役として立てるけども。やっぱり、全ての人に全てのある種、歴史的な役割があってという。

(みなもと太郎)みんながね。みんなが、生きて動いていると言ってくれているけど。ただ、問題なのはみんなあの顔で出てきてしまうということで(笑)。

(宇多丸)テストを受けている時にあの顔で(笑)。

(みなもと太郎)それが非常に困るという。

(宇多丸)いやいや、でも、生きてそこにいる感じがする。まさにそれこそ、とりあえずギャグ漫画的な体裁をとっていることのプラスかもしれないですよね。それはね。なるほど、なるほど。

(みなもと太郎)そういう苦情はあります(笑)。

(Mummy-D)でも、相当ね。登場人物数が並じゃないから。先生もだいぶ顔の描き分けに困っているご様子が感じられたりして(笑)。

(みなもと太郎)いくらでもパクるしね。鉄人28号は出てくるし。吉田松陰はあの顔でみんなが覚えてしまうし。

(宇多丸)もう龍馬は鼻を垂らしているし。途中で1回、見開きで全登場人物を描かれたあれとかね。

(みなもと太郎)うん。やりましたよね。

(宇多丸)あれだけでも、もううわーっ!ってなりますもんね。

(みなもと太郎)連載再開の時にはね、もうオールスターをやりましたけどね。

(宇多丸)いま、あれからさらに倍増……

(みなもと太郎)ええ。どんどん増えてます。だって、連載開始して最初の2、3年目で500人ぐらい。脇役からなにから全部入れて、なっていたんで。こんな、どうなるんだ? と思ったけど。

(Mummy-D)資料のない人の顔とかね、もう完全に……

(みなもと太郎)もう放棄してる(笑)。

(宇多丸・D)(笑)

(宇多丸)逆にそれによってね、「ああ、ここは資料ない人なんだな」って。

(みなもと太郎)そうそうそう。すぐわかるでしょ?

(宇多丸)あと、「いわゆる一般的にはこの説が知られていますけども、実はそうじゃない」っていう……

(みなもと太郎)こっちが不勉強で「大したことがないだろう」って思っていたら、後から重要な役で出てくることになってこっちが焦ったりね。

(宇多丸)キャラクターが途中で先生の中でも認識が変わって変化されたりしますもんね。

(みなもと太郎)ええ。どんどん変わります。

(宇多丸)ちなみにDさん、『風雲児たち』の中で、これ大変ですけど。好きな人物は?

(Mummy-D)好きな人物? ええとね、えーと……島津斉彬。

(みなもと・宇多丸)ああー。

(Mummy-D)これは絶対に好きになっちゃいますね。『風雲児たち』を読めば読むほど。

(宇多丸)うんうんうん。

(みなもと太郎)なるほど。すごいですね。

(宇多丸)斉彬の魅力は?

(Mummy-D)か、開明的。

(宇多丸)開明的(笑)。

(Mummy-D)いや、特に好きになっちゃう感じに描かれてるんですよ。

(宇多丸)これはやっぱり先生の好感度とも関係しますか?

(みなもと太郎)そうですね。やっぱりこの人がいなかったらどうなっていたんだろう? という思いはありますよね。

(宇多丸)いろいろ、思い半ばで……というところもある。

(みなもと太郎)まあ最後、そうだったというだけでもあるんだけど。やっぱり薩摩っていう国がもう一度、息を吹き返して。それこそ、関ヶ原の仇討ちかなにか知らないけれども、そこまで持っていくことになったのは、結局は斉彬さんが……要するに、死せる斉彬、行ける西郷(隆盛)を走らすみたいなことでしょう?

(宇多丸)はい。なるほど。あ、「そろそろ曲へ行け」というあれが来ているので。ちょっと、あっという間になってしまいました。Dさん、まあ先生がいらっしゃいますし……

(みなもと太郎)うん。私は引っ込む(笑)。

(宇多丸)先生は後ほどね、本チャンの仕事がございますので。

(Mummy-D)今日は僕はサインをもらいに来ただけなんで(笑)。

(宇多丸)(笑)。まあ、ぜひちょっとね、後ほどゆっくりその話も伺うということで。ということで、先生。『風雲児たち』と同じく、やっぱり幕末を描くのに戦国時代からというのと同じように、我々最近、あるグループと作った曲がラブホテル街を迷う男女を描くのに、人類が発祥した瞬間に遡ってという。これはもう『風雲児たち』イズムと言わざるを得ない曲を……(笑)。

(みなもと太郎)ほうほう。イザナギ・イザナミがセキレイから学んだというところから始めると(笑)。

(宇多丸)アフリカの大地から始めるという曲がございまして。こちらをかけながら、ちょっと一旦、お二方、お疲れ様でしたということで。

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(みなもと太郎)はい。ありがとうございました。

(宇多丸)じゃあ、Dさん。ちょっとせっかくなので曲紹介をお願いします。先週、宇宙初オンエアーさせていただきました。

(Mummy-D)ああ、本当? じゃあ、いいですか。KIRINJIで『The Great Journey feat.RHYMESTER』。

(宇多丸)Dさん、ありがとうございました!

<書き起こしおわり>

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