Mummy-Dさんが2023年6月1日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で自身のソロデビュー曲『同じ月を見ていた feat. ILL-BOSSTINO』について宇多丸さんと話していました。
（宇多丸）だから、スタジオちょっと聞いて「かっけー！」なんて言ってたのはあるんだけど。それはまた、今回の曲とは別だから。で、ちょっとまずは今回の曲の話を聞きます。『同じ月を見ていた feat. ILL-BOSSTINO』。すいません。私は一応、同じグループのメンバーですけども。ちょっと知らないテイでいろいろ聞きますけど……。BOSS THE MCさん、BLUE HERB。これ、要するにRHYMESTERと……まず、そのBOSS THE MCの方の『STARTING OVER』っていうね、曲でfeat. Mummy-Dさんの曲が先行してありましたけど。
（Mummy-D）はい。
（宇多丸）まずこれ自体が結構さ、そのヒップホップシーン的には、ヒップホップヘッズ的にはセンセーショナルだったと思うんです。っていうのは、やっぱりRHYMESTERとBLUE HERBって長年、なんていうかピリピリしたライバル関係……後年、全然仲よくなったんだけども。っていうか、途中からは仲がいいんだけど。とはいえ、ヒップホップシーン的には「RHYMESTERとBLUE HERBって、めちゃくちゃぶつかったんだよね」っていうことになっていたと思うんです。
（Mummy-D）そう。宇内さんはね、知ってるかどうかわかんないけど「ビーフ」っていう言葉があって。諍いのことを「ビーフ」っていうのね。それでゴシップみたいに、ラッパー同士の諍いみたいなのを楽しむ文化があるのよ。バトル文化だから。
（宇内梨沙）ああー、うんうん。
（Mummy-D）で、みんなゴシップ大好きだから。「あそことあそこ、仲が悪いらしいぜ？」みたいな。
（宇内梨沙）それでみんなも煽りたがるみたいな？
（Mummy-D）そうそう！ 煽りたがるのよ。で、そういうのがあったんだけども。お互いね、成長して。歳も取って、和解できたんで。「じゃあ、一緒に曲をやろう」みたいな。そういう、ヒップホップ好きのある世代の人には結構ぐっとくるような。
（宇内梨沙）そういうメッセージも届いていますもんね。
（宇多丸）まあ、言っちゃえば別に憎くて、とか。あとお互いに嫌だなと思ってぶつかっていたというよりは、本当にライバルっていうか。BLUE HERB側もめちゃめちゃ俺らのことを認めてたからこそ、なんていうか……当時はやっぱりすごく東京一極集中気味だったし。それに対して、ちょっと「今に見てろよ」みたいなのもあったと思うし。だから、何か結果としてはすごい必要なプロセスだったと俺は思うんですけど。
（Mummy-D）昨日、本当にそう思った。ステージでね、2人で立って。「ああ、この瞬間のためにいろいろあったのかな」みたいな感じで。ちょっとね、ぼっさんがね……これは言っていいのかな？
（宇多丸）どうした、どうしたの？
（Mummy-D）ステージでね、ちょっと泣きそうになっていたんですよ。（小声で）BOSS THE MCが……。
（宇多丸）いや、BOSSくんはすごい熱い男だよね。本当にね。そりゃそうですよ。
（Mummy-D）（小声で）これはあとひと押ししたら……泣いたら俺、「泣いてるー！ BOSS THE MC、泣いてるー！」って。
（宇内梨沙）アハハハハハハハハッ！
（宇多丸）そこから新たなビーフが始まるわ（笑）。
（Mummy-D）言おうと思ったんだけど、泣かなかった。ダメだった。惜しかったなー（笑）。
もうちょっとで泣きそうだったBOSS
THA BLUE HERB
tha BOSS「IN THE NAME OF HIPHOP II」RELEASE LIVE
2023.5.31(水) 東京 LIQUIDROOMPHOTO BY cherry chill will.#thaBOSS_Pt2 pic.twitter.com/QWp4490CHB
— TBHR公式 (@tbhr_sapporaw) June 1, 2023
（宇多丸）それでね、ちゃんとちゃんと私ね、曲をかけたいんですけども……。
（Mummy-D）すいません（笑）。
（宇多丸）で、『STARTING OVER』って曲でまず、そのBOSSの方でやって。で、Mummy-Dが改めて、BOSSを呼び返して作った曲で。『同じ月を見ていた』って。まず、ここでトラックはWATARAIくんっていうね。「信頼の」といいましょうか。東京のヒップホップをある意味、代表するビートメーカーというかね。
（Mummy-D）RHYMESTERもいっぱいお世話になっているワタさん。
（宇多丸）ワタさんトラックで、そのトラックに乗せて、改めてどういう情景というか。どういう風にして今度は2人の歌を作ろうと思いましたか？
（Mummy-D）あのね、今、聞いてもらってるこの『STARTING OVER』っていう曲はぼっさん名義の曲なんですけど。これは本当に、その和解に至った経緯を歌った曲なので。俺の中ではあの頃（25年前）に戻って。お互い、たとえばBOSSからしたら僕は東京のラッパーで、すごく恵まれた存在に見えたかもしれないし。でも、僕らは僕らでシーンが始まったばっかりで。全然、地方の1ラッパーのことを気にしてる余裕もないし。自分に自信もなかった。みたいな頃に戻って。僕らは離れてたけど、同じ月を見て、同じ野望を持ってたんだよな、みたいな。過去に戻った話なの。
（宇多丸）これ、面白いですよ。俺たちは千歳空港に着いて。札幌でライブして。BOSSは千歳空港から東京に来て。不安の中でライブしてっていう、ある意味ですれ違って。でも同じ月を見てるというか、同じビジョンを、同じ夢を持ってるっていうか。
（Mummy-D）で、僕らはね、札幌に行く時って結構無邪気なんだけど。ぼっさんは東京に来る時は相当な緊張と使命感とがあって。僕らは単純に寒い場所に行くけど。ぼっさんからしたら東京がすごく凍てつく街に感じただろうなと思って。そういう、いろいろメタファーとかを交えた、とってもよくできた曲です。
（宇多丸）フフフ（笑）。いや、本当にそう思いますよ。ということで、ちょっとこれはフルで聞いていただきたいので。
（Mummy-D）お願いします。すごくいいと思うので。歌詞を聞いて。
（宇多丸）今まで言ったようなね、宇内さんにも急ごしらえでストーリーのお話をしましたけども。このストーリーとか文脈を踏まえた上で、聞いていただければと思います。Dさんからぜひ、曲紹介お願いいたします。
（Mummy-D）はい。Mummy-Dのファーストシングルです。『同じ月を見ていた feat. ILL-BOSSTINO』。
Mummy-D『同じ月を見ていた feat. ILL-BOSSTINO』
（宇多丸）よいしょー！ 『同じ月を見ていた feat. ILL-BOSSTINO』。Mummy-Dさんのソロデビュー曲です。
（Mummy-D）ありがとうました。
（宇多丸）ねえ。ちょっと泣いちゃうよ。やっぱり、これ。
（Mummy-D）ウタさんはね、わかるでしょう？ あの頃の歌だよ。
（宇多丸）あの頃の歌だし、情景も浮かぶし。やっぱりBOSSの、なんちゅうかな？ 「そうだよね」っていうかさ。背水の陣で来てるっていうかさ。で、しかもさ、この話はだってこの後、東京でライブをやって、めちゃくちゃそれはもちろん評判にもなるんだけど。その、すぐにガーン！って、BOSSの今のBLUE HERBに至る感じでブレークしたわけじゃなくて。それこそ今、横にいます構成作家・古川耕さん。音楽ライターとして札幌までもう1回、取材しに行ってとかさ。なんかいろんな、何段階もあって、BLUE HERBがちゃんと火がついていくみたいなのもあって。やっぱり、そりゃあね。で、こっちはこっちで必死だったしね、とかね。
（Mummy-D）ねえ。僕らも本当に未熟だったからね。ということですよ。
（宇多丸）でも、いいんじゃないでしょうか。要はさ、50を超えて初のソロ展開っていうか、する中で。ある意味、なんていうのかな？ でっかい落とし前をつけるといいましょうか。
（Mummy-D）そうだね。で、BOSSと話してるのは「最終的にはRHYMESTERとBLUE HERBで曲を作りたい」って言ってて。それはもう現在のこと。それから過去のことを歌ったからもっと未来志向にしていきたいなと俺は思ってるんですよね。
（宇多丸）お互いにとって、そういう意味で落とし前をそれぞれのソロ曲でつける必要があった、みたいなのもあったのかもしれないしね。ありがとうございます。初リリース。『同じ月を見ていた』。これはだから、いろんな各種配信サービスでも聞けるようになってますんで。まず、これを聞き込んでいただき。そしてMummy-Dさんのソロが秋ぐらいに用意されており。その前にちょっと待ってください。RHYMESTERのニューアルバムも……（笑）。
（Mummy-D）そうなんだよー。なにをやってんだよ？ スタッフ、バカなんじゃないの？（笑）。
（宇多丸）いや、違う。俺らが悪いんだよ（笑）。
（Mummy-D）コロナが悪いんだよ（笑）。
（宇多丸）世の中が悪いんだよ！（笑）。バビロンんだよ！（笑）。
（Mummy-D）俺のソロ、だって明らかにツアー中に出るんだよ？ バカなんじゃないか？って（笑）。
（宇多丸）違う、違う（笑）。だから、そのツアーの中で出していけばいいじゃん。Dさんタイムを作って。そしたら珍しく、俺が後ろでお茶を飲む時間ができますんでね。
（Mummy-D）じゃあ、ちょっとフロントアクトで。
（宇多丸）あなたがいつも後ろに水を飲んでる時間がありますんでね。まあ、そんなこんなで引き続きDさん、リリース事っていうか、情報解禁事があれば、もちろん『アフター6ジャンクション』、お待ちしておりますし。RHYMESTERも頑張ろうねっていうことでね。
（Mummy-D）そう。RHYMESTER、またすぐ来るからね。その時は静かにしてるから（笑）。
（宇多丸）ちゃんとやってください。お願いします（笑）。でも、まずはおめでとうございます。これはね、こういうことを言うとすごいわざとらしく見えるかもしれないけども。俺はMummy-Dのなんていうか、一番のファンなんで。
（Mummy-D）あっ！
「俺はMummy-Dの一番のファン」（宇多丸）
（宇多丸）一番のファンとして、それはもうずっと応援してますから。「あっ！」って……それはなに？（笑）。
（Mummy-D）あっ！ いやん……（笑）。
（宇内梨沙）フフフ（笑）。
（中略）
（宇多丸）Mummy-Dさん、『同じ月を見ていた』、いろんな方から反響が来ておりまして。「Dさんソロ『同じ月を見ていた』、めっちゃいい曲ですね。お話を聞いていろんな思いが詰まった曲なんだと熱くなりました。ソロアルバムも楽しみです」とかですね。
（Mummy-D）ありがとうございます。
（宇多丸）それから「Dさん、ソロデビューおめでとうございます。まさかこんな日が来るとは思っていませんでした。これからもDさんの言葉を楽しみにしています。Dさんと同じ花を見たいので、たまにはインスタにお花の写真もお願いします」。
（Mummy-D）お花！
（宇多丸）「本日、44歳になりました。Dさん、アトロクゲスト出演が嬉しい誕生日プレゼントになりました」という。
（Mummy-D）44歳！
（宇多丸）おめでとうございます。オウム返しっていう（笑）。それから「Dさんといえばタマフル時代に制作された『タマフルザ・ムービー』で声が出ない宇多丸さんのためにダンボールに隠れて台本を読んでいた役が思い出されます。そんなDさんのソロデビュー。RHYMESTERの3人3色もいいですが、Dさんの単色をまた味わい深いですね」。
（Mummy-D）単色！
tha BOSS "STARTING OVER feat. Mummy-D"【OFFICIAL MV】 https://t.co/cd7GTOlvja @YouTubeより
去年の夏に野音ワンマン3日前に三茶チャリで走ってたら、パイセン2人撮影してるの偶然見つけてサーティワン奢らされた。さっき曲聴いて奢って良かったって思った。 pic.twitter.com/0nxGK8Rkkb
— 般若 (@Hannya_Tokyo) April 17, 2023
＜書き起こしおわり＞
