2023年12月1日放送のTOKYO FM『Yuming Chord』で岡村靖幸さんと松任谷由実さんがコラボアルバム『ユーミン乾杯!! 』収録曲、『影になって』の制作について話していました。
(松任谷由実)『影になって』とコラボしてくれたのが岡村ちゃんで。この曲を選んでくれたのは?って聞くのもちょっと気が引けるんだけどね。違う曲を着手してくれていたんだけど……「こっちの方が岡村ちゃん、ガーッとやってくれるんじゃないか」っていうので。方向転換をして。
(岡村靖幸)そうですね。そういうことがありました。ちょっと真面目な話をしますね。一番最初の企画は聞いた宝のようなトラックがあるわけです。それを触らせてもらうっていうところから始まるわけです。で、ひとつひとつ、僕が使ったやつはまだ打ち込みの時代じゃないマルチをもらって。で、ひとつひとつ整えていくわけです。生ドラムは生ドラムで整えていって、ベースはベースで整っていって。
(Mummy-D)ずれちゃうもんね。だってね。
(岡村靖幸)いろんなものを整えるんですね。プラス、現代的なものも加味する。だから全く変わるんじゃなくて、元の素材……古着を1回切って、もういっぺん新しい服に作り直すっていうか。
(Mummy-D)あつらえ直す。
(岡村靖幸)でも、その生地自体が最高だから。「あの時代のこの服だよね。ちゃんと縫える人ももういないから……」みたいな感じのものを触らせてもらって、新たな服を作らせてもらっているみたいな感じの企画だと思ったんですよ。だからもう本当にね、なんかもう、職人っていうか。
(松任谷由実)もうタペストリーのようで。岡村ちゃんのは。
(岡村靖幸)つづら折りの職人のみたいなのをやって送ったら、「もっと弾けてほしい。もっとギンギンに」って。
(宇多丸)本当に再構築……もっとぶっ壊しちゃってほしいと?
(岡村靖幸)「バキッと行け」って言われて。
(松任谷由実)「バキッと行け」(笑)。バキッと行けよ!(笑)。
(一同)フハハハハハハハハッ!
「バキッと行け!」(松任谷由実)
(岡村靖幸)「バキッと行けよ!」みたいな感じで言われて。
(宇多丸)急に体育会なノリになった(笑)。
(岡村靖幸)「はいっ!」って言って。で、もう1回……僕、この『影になって』っていうのは元々好きで。ユーミンさんのラジオでもかけさせてもらったりしていて。で、グルーヴィーだし。
(松任谷由実)なんか体にね、入ってくれてる感じがした。仕上がりを聞いて。
(岡村靖幸)ブラックな感じがして。アーバンな感じもあるし。あと偶然、ありがたかったのは今、シティポップブームで。そのシティポップな部分もあるし、アーバンな、モダンに作ったという。
(宇多丸)完全再解釈というか。
(岡村靖幸)ただ、この曲自体が持っている本当に大事なことは一切、いじってないです。コードとか。
(松任谷由実)一番大事なところにエキサイターをかけてくれた。寂寥感とかね、疾走感とかね、そこがもう、もっとすごくなっている。
(岡村靖幸)寂寥感、元々この曲はものすごいセクシーで。孤独がセクシーっていう。で、詞を見ると、これすごい詞なんですよ。「踊るように歩こう」っていうのとかさ、「ワードローブちらかし」とかさ、田舎の少年からするとさ……ワードローブは田舎にないぞ?たていうさ。
(Mummy-D)「タンスはあるけど、ワードローブはないぞ?」って(笑)。
(岡村靖幸)「踊るように歩こう」ってさ、この主人公は最初に電話して、かからないわけですよ。切ないわけ。なんだけど、心を切り替えてワードローブをちらかして踊るように歩こうっていう、そこがさ。
(宇多丸)ユーミンさんの曲の主人公は結構、そのパターンありますよね。さっきの『土曜日は大キライ』とかもさ。
(岡村靖幸)だからその寂寥感っていうのは、もうあの詞が……というか、あの曲はたとえば僕があのアレンジをしたとしたら、ユーミンさんが引き出したんですよ。あの曲がそういうものを元々持っているんですよ。
(松任谷由実)岡村ちゃんが寂寥感の塊じゃない? まず。
(Mummy-D)フハハハハハハハハッ!
(宇多丸)孤独を抱えながら踊るように歩いている人、それは岡村靖幸であると。
(松任谷由実)その通り。そんなお話の後に、血と汗と涙、様々な結晶をお送りしましょう。曲紹介、お願いします。
(岡村靖幸)はい。岡村靖幸 cheers 松任谷由実『影になって』。
岡村靖幸 cheers 松任谷由実『影になって』
(松任谷由実)いやー、かっこいいわー、本当に!
(DJ JIN)いやー、すごいですね!
(松任谷由実)言っちゃいけないかもしれないですけども、これが1曲目です。
(岡村靖幸)ありがとうございますっ!
(宇多丸)いろいろ語りどころがある曲ですね。すごいです。この、なんていうか、バーチャルデュオみたいなのって、たまにあるけど。このバランスって……要するに今、聞きながらDも言っていたけども。
(Mummy-D)そう。1本なんだよね。
(宇多丸)要するに最後、もう本当に渾然一体となるっていうか。
(Mummy-D)そうそう。ユニゾンじゃないんだよね。
(宇多丸)いや、でもこれは岡村さんの……やっぱり岡村ラボですよね。岡村ラボで生まれたユーミンと岡村さんの融合体が最後、誕生して未来へ、みたいな。
岡村靖幸とユーミンの融合体
(松任谷由実)このアルバムは『ユーミン乾杯!!』以外の何物でもないですよ。そして、後輩と呼ぶのはおこがましいが、私の楽曲と……。
(Mummy-D)いえいえ、後輩ですよ。
(松任谷由実)リスペクトを持って向き合ってくれて。もう、ユーミン先輩が感謝で、いっぱいです……。
(Mummy-D)とんでもないです。
(宇多丸)こちらこそ。
(松任谷由実)そしてみんな、温故知新しつつ、一緒に進化していきたいよね! 変わり続けていきたい! 最後に、師走に突入したことだし。ちょっと早いけど、2024年の抱負を教えてください。
<書き起こしおわり>