宇多丸 『人間交差点2016』を振り返る

宇多丸 『人間交差点2016』を振り返る 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』の中で、RHYMESTER主催の野外音楽フェス『人間交差点2016』を振り返っていました。

(宇多丸)この番組でも散々っぱら宣伝させていただきました。5月15日、先週の日曜日に東京お台場野外特設会場にて、RHYMESTER主催の野外音楽フェス『人間交差点2016』。「やりますよ、やりますよ! 来てくれ、来てくれ!」なんて言ってましたけど、無事開催することができました。そして、結局無事、何事もなく大成功に終わりました。どうもありがとうございます! みなさんのおかげでございます。

なにしろ、天気がやっぱり最高でしたね。今年、2回目になるわけですけど。同じ場所で去年もやったけど、去年は天気はやっぱり良かったんですけど、良すぎて。もう本当にアスファルトの照り返しとかで。もうちょっと地方とかの土の上とか海とか、そういうところでやっているんじゃないのでね。そういう意味では、ちょっとキツイな、ぐらいの暑さ、天気の良さで。「ちょっと良すぎだよ!」ぐらいの感じがあったんですけど。天気はまあ、カンカン照りだったんですけど、風がきっちりあったりして。全体の温度とかはそんなに高くなかったりして。

結果、具合が悪くなった人とか、いないんだよ。ゼロですよ、あんなにいて。5千人集まって、ゼロですから。1日しかも10時間やっていたんですね。イベント。しかも、お子さん連れがまたさらにね。「キッズスペースの充実」なんてのはね、売りにしているフェスでしたけどね。お子さんがさらに増えたりなんかして。言いましたよね。この番組でもね。お宅のところの汚いガキの連れて行きどころ……いろんな施設に連れて行っても、「ギャーギャー! わーいーわーい!」って。もう大変だと思うんですよね。そういう、まあ半分動物どもを連れてくるには最適の飼育箱をね(笑)。

でも、その飼育箱はちゃんと涼しくしてあったりして、行き届いていたもんですから、大変なもんですよ。あと、私たちメンバーのそれぞれがプロデュースした食べ物を出すなんつって、私もちょっと辛口のドライカレーを。非常に辛かったですよね。実際に食べたらね。でも、完売しましたからね。午前中で完売しちゃったから、結構早い段階で売れちゃいましたよね。ありがとうございますということで。

出演者たちの素晴らしいパフォーマンス

もちろんですね、出演者のみなさん方。去年も素晴らしかったけど、今年も本当……なんつーの? 全員、出てくるたびになんかすげーな、すげーな!って。本当に自分たちで呼んでおいて、しかも仲間たちは仲間たちなんだけど。なんかすごい人たちばっかり集まってるなっていう風に本当に思えるような素晴らしいアクトの数々でございましたね。前日にこの番組にCreepy Nuts。スタジオライブで来ていただいたりなんかしましたけど。

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Creepy Nutsも一発目もですね、もう聖徳太子フリースタイル。5個お題を集めてっていうのをその場でやって、完全にロックしていたりとか。その次に出てきたSuper Sonics。やっぱり1MC、1DJで完全にスパソニに標的を絞りまくった……要は、僕もMCで言ったんですけども、「バトルっていうのは、なにもMCの即興フリースタイルバトルだけがヒップホップのバトルじゃないね。横並びのライブとライブ同士のバトルっていうのもあるよね。RHYMESTERなんかはまさにそのバトルに年々勝ち残ってきたグループなんで、本当にわかりますよ」って。それでスパソニも世界最高レベルのライブを見せてもらったりとか。

一発目RIP SLYMEもね、フェスで最近引っ張りだこみたいですけど、RHYMESTERのフェスということで、それに合わせた選曲をしてくれたりとか。三浦大知くんもね、三浦大知くんはもうみんな、びっくりしてますよね。やっぱね。出るたびに、「わかっていたけどこんなにすごいとは!」みたいな。予想通り、予想以上にすごいっていうね。まるでピクサーのような男。そうですよ。だから天才のくせに努力してやがるっていうね。

いわゆる、天才のくせに努力してやがるっていうと、私の用語で言う「キモい」っていうのが出てくるけど、これが三浦大知くんの場合はさらにその上を行くんですよ。天才のくせに努力もしてるのに、キモくもない!っていうね。爽やか! ここがもうね(笑)。キモくもないんだからすごい。私と久々にね、『No Limit』なんて曲をやったりとかね。

その次、KOHHですね。KOHHのライブはエキセントリックなライブで。またガラッと変わって。もう、なんていうの? こりゃあ人気出るなっていうか。要は、知らないで初めてKOHHのライブを見た人は、「ああっ、かっこいい!」って、一気に惹かれる。あと、他のアクトが割とお客さんに歩み寄っていくスタイルのエンターテイナーなのに対して、やっぱりロックスター型というか、カリスマ型というか。どっちかって言うと突き放すんだけど、逆にこっちがついて行かざるを得ないみたいな。

あと、久々に見たフッズたちっていうかさ。『結局地元』っていう彼の曲がラストだったんだけど。北区なんだっけ? 地元のさ、ヤカラをガーッとステージに。とにかく、地元のヤカラをステージにガーッと上げてワーッと騒ぐみたいな。あれはもうハードコア・ヒップホップの伝統のステージ。久々にこういう感じのハードコアなスタイルのステージのヒップホップのライブを見たなという。すげーかっこよかったですし。

で、そっからのOZROSAURUS。バンドスタイルでのOZROSAURUS、僕、見るのはじめてだったんですけど。ま~、かっこいい! MACCHOはもともと日本でトップレベルのね、本当に1、2を争うって言っても全然過言じゃないぐらいのラッパー・MCなんですけど。もともとめちゃくちゃ上手いのに……で、特に彼の突出しているところは、僕らの用語で言う「楽器の良さ」ね。とにかく声がいい。で、その声を鳴らす体っていうか。体全体がもう楽器っていうか。声も一発で持っていくし、しかもその声という楽器の演奏力もすごいっていうのがあったんだけど。

それがさらに、そのバンドというスタイルでね、山嵐のメンバーが入ったようなバンドスタイルというのを得ることによって、さらに楽器力と、その楽器の演奏力と、そしてその演奏のバリエーション、引き出しの多さみたいなのまで。前もかっこいいのに、さらに10倍ぐらいかっこよくなっちゃって。もう僕ら、裏で見ていて。見てるラッパーたち、最初は「かっこいい」とか言ってたんだけど、だんだん顔が嫌な顔になってきて(笑)。顔がみんなゆがんでくる。本当に、もうやられちゃってですね。本当に参りましたね。最高でした。

その後のモンパチ(MONGOL800)もね、さすがの貫禄のライブでございまして。あ、モンパチの前にね、R-指定にモンパチを呼び出すフリースタイルラップをやってくれなんてね。あれを「無茶振りだ」なんて言う人もいるけど、あんなのはやつにとって無茶振りでもなんでもないですからね。鼻クソをほじるようなもんですから。で、それを受けてのモンパチのライブ、素晴らしかった。やっぱりみんなが知っている曲があるのは素晴らしいことですよね。強いなというのがあったり。

leccaのね、lecca’s ブートキャンプの。曲中でも曲間でも、絶えず観客を鼓舞し続けるというね。「あなたにはできる! あなたにはできる! もう1回、できる! 無理だと思ったその先から、もう1回プッシュできる!」っていうね、ブートキャンプっぷり。で、RHYMESTERとの曲もやりましたしね。

まあ、さかいゆうは言うに及ばずですね。この番組に出てもらってスタジオライブをしたのがきっかけで、現在のOffice Augustaという事務所と契約してメジャーな展開をするようになったという、なんか謝辞的なことを言っていて。なかなか、さかいの野郎ね、そんな気が効くようになっちゃって。終了後、さかいの野郎と飲みに行って、もう泥酔してですね。私、家で転んで手を怪我というね(笑)。そういうのがございましたけどね。

で、さかいゆうの次はサ上とロ吉。サイプレス上野とロベルト吉野ね。この日のベストアクトに挙げる人も結構いるぐらいの。もう、ライブ巧者っぷりが。本当にサ上っていうとね、僕と絡む時はおもしろおじさんになるけど。最近、Mummy-Dと言っているのは、「サ上ってもう全方位力っていう意味ではいまトップだし、いまだかつて日本のヒップホップ界でここまで全方位的に人気があるっていうか、全方位的に才能をちゃんとできているやつっていないんじゃない?」っていう話で。だって、バトルもできる。ライブもいい。バラエティーできる。亀甲縛りされる。アイドルと絡める。もう、完璧じゃん! なんなの? ぐらいの感じですよね。素晴らしい物を見せてくれました。

そしてゴスペラーズというね。ゴスペラーズの途中で、ゴスペラーズと我々の仲の良さというのはみなさん、ご存知でしょうけど。『ランナウェイ』を我々が熱唱しながら登場というね、この日いちばんクオリティーが低いシーンっていう(笑)。「ランナウェ~イ♪」って(笑)。という場面がありました。

で、トリは私どもRHYMESTERがね。さかいゆうとのセッション3曲、これもよかったと思いますし。途中でPUNPEEがね、シークレットで呼んだらまあ、P様が人気あること、あること。それはいいんだけど、P様の『Renaissance』っていう曲をね、もう僕らP様大好きだから、PUNPEEの曲をやってあげたら、またあいつ、去年と引き続き、また舞台の下に。盛り上がりすぎちゃって、ステージの下におりちゃって。しかも今年は『SOMINSAI』とかですらないから。あいつの曲だから。そこでやってんの。俺たち、なんだよ?っていう(笑)。会場の大半が見る、やることがないおじさん3人はなんなんだ?っていうね。まあ、そういうことでPUNPEEもよかったですし。

あと、新曲を披露したんですね。我々ね。非常に、これがまた気持ち悪いほど、いい評判しか聞かないというね。プロデュースド・バイ・DJ WATARAIによる新曲。ずばり、『Style Wars』っていうね、本当にストロングスタイル・ヒップホップ。内容もストロングスタイル・ヒップホップ。なんてのもやってね、大成功のうちに終わりました。

感想メールもいただいております。男性、44才。(メールを読む)「昨年に引き続き、『人間交差点2016』に行ってきましたが、今年は火花を散らすような2組のオープニングアクトのせいか、会場に流れる『Style Wars』のせいか、全体にバチバチとした緊張感がみなぎっていたと思います」。だから、それぞれがそれそれを殺しにかかっているというね。

(メールを読む)「サイプレス上野を筆頭にロベルト吉野に至るまで、『自分たちが会場をいちばん熱くする!』という気迫のパフォーマンスが続き、実際に観客席の中では、『三浦大知やべー、俺、もう怖くなってきたよ』とつぶやくヘッズたちや、ただただOZROSAURUSの呆然と見つめる女の子など、人がアーティストのファンになる瞬間がいろんなところで見られました。もっとも、そのために『手を上げろ! 声上げろ!』といったlecca並のブートキャンプが午前中から続出。MONGOL800とさかいゆうという極上の癒やしの時間が2回も間に挟まったのに、全部に参加した自分は最終的にフラフラに。村上さんまで『言えよ、ホーッ!』と言い出した時は、『いや、ゴスペラーズまでやんなくていいだろ?』と力なく突っ込んでしまいました。

もっとも、三浦大知が出ると見るや、ドゥエイン・ジョンソンみたいなデカい外人を押しのけて前進する女の子や、中指を突き立てて挑発するKOHHに対して、ただ1人、ピースサインを掲げるKOKOU(孤高)のおじさんなど、気合の入ったファンたちが周りにあふれており、振り返って自分のひ弱さを反省したりと。そしてトリのRHYMESTER。アンコールでは宇多丸さんのまさかの迷子案内……」。そうだね。アンコールで登場してね。迷子のお知らせですって、そりゃそうでしょう。だって、迷子は一刻も早く解決しなきゃ。

(メールを読む)「笑い話のようでいて、実はRHYMESTERのかっこよさを表した大人なパフォーマンスだった気がします。そして帰り道の列に並びながら、『あの子はちゃんと帰れたかな?』とちょっとキッズスペースを覗き込む人の列を見ながら、やっぱりこのフェスは全てがいいなと思いました。そして来年の『人間交差点』には出番があるであろうScoobie Doがどんなパフォーマンスをするのか、いまから楽しみです」と。もう確定みたいになっちゃっていますけどね(笑)。はい、ありがとうございます。丁寧に見ていただいて。人が誰かのファンになる瞬間ってね、いいですね。まさにそれが交差点というね、私どものフェスのコンセプトそのものでもございます。

ということで、いろいろ出ていただいて。全員が全員、本当にベストアクトと言っていいと思うんですが。先ほども話しましたけどね、本当に私、ひっくり返ってしまいました。OZROSAURUS。新生OZROSAURUSの曲をここで一発、聞いていただきたいと思います。今年2月26日にデジタルシングル、配信でリリースされております。お聞きください。バンドスタイルになりましたOZROSAURUSで『OG』。

OZROSAURUS『OG』

いやー、もう、「はい、参りました」としか言いようがない。もう圧倒的な力。そしてやっぱりね、新生OZROSAURUS、バンドスタイルというのの本当に相性もすごくいいと思います。本当、ライブも圧倒的だったんで。これはOZROSAURUS、ロックフェスに本当に引っ張りだこにならなきゃ嘘だろうと思いましたね。あと、本当に普通にアメリカとかに持っていっても、このパワーがあれば通用するんじゃないかというぐらいに思いました。OZROSAURUS『OG』をお聞きいただきました。

<書き起こしおわり>

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