(太田光)佐野さん、いまの若いバンド、注目している人とかいるんですか?
(佐野元春)あの、いっぱいいます。むしろね、僕のすぐ下よりも、ずっと下の世代の表現がね、面白くなってきています。だから、20代ですか。しかも、女性のソングライターも面白い人たち、出てきてますし。バンドもね、面白い人たち、たくさん出てきている。ただ、寂しいのは同時代に仲間があんまりいないんですよね。桑田くんぐらいですか?だし、僕より下は『バンドやろうぜ』の世代ですから。
(太田光)バンドブームですね。
(佐野元春)同世代の仲間たち、いっぱいいて。楽しそうなんですよ。
(田中裕二)ああ、そっか。面白いね。
(太田光)でも、桑田さんと佐野さんの関係はやっぱり僕は、本当にいい距離というか。
(佐野元春)そうですか?
(太田光)うーん。なんか桑田さんのラジオで佐野さんの話がたまーに出る時もあるし。佐野さんがこうやってね、桑田さんの曲をっていうのも、やっぱりね、なんかそれだけでジンと来るよね。
(田中裕二)ジンと来る。
(佐野元春)そうですか。
(太田光)あの、『VISITORS』が出た時に、僕ら、もちろんあんな音楽に触れたのは初めてですから。『VISITORS』。で、聞いてやっぱり最初は戸惑ったんですよ。『なんだ、これは!?』と。で、『ヤバいぞ!』って思うわけですよ。あの佐野元春を理解できないと、僕らはダメになると思うから。一生懸命、何度も聞いて。したらもう、当時俺が好きだった女は『なにこれ?』なんて言ってましたよ。で、もうそいつはダメになっていきましたけど。
(田中裕二)いいんだよ、そんなのは(笑)。
(太田光)で、俺らは何度も聞くうちに良さがどんどんわかってきてね。あの『VISITORS』の。その当時、サザンがやっぱり『VISITORS』をメンバーで全員で何度も聞いたっていう話を言っていて。『すっげー!』って。俺ら、話したよな?
『VISITORS』をメンバー全員で何度も聞いた
(田中裕二)もうね、あの話は本当に大好きな話なんだけど。『KAMAKURA』っていうアルバムを後に、ちょっと後にサザンが出すんですけども。それのちょっと前に、みんなで聞いたらしいです。『VISITORS』を。
(佐野元春)そうなんですか。
(田中裕二)で、愕然として、みんなで。『もうこれはすごい!』って。で、ここは想像ですけどね。ちょっと違うことを、なにか新しいことをっていう刺激を相当受けたっていうニュアンスの話は・・・
(佐野元春)そうだったんですか。僕はそれは知らなかったですね。じゃあ、ちょうどその当時のサザンオールスターズのレコード。この曲を聞いてみたいと思います。『ミス・ブランニュー・デイ』。
サザンオールスターズ『ミス・ブランニュー・デイ』
(佐野元春)いま聞いていただいているのはサザンオールスターズ。1984年のレコード。曲は『ミス・ブランニュー・デイ』。この曲も流行ったですよね。
(太田光)流行りましたね。
(田中裕二)そうですね。『YOUNG BLOODS』がこの頃、割と近い・・・
(佐野元春)そうですね。『VISITORS』が終わって、次の『Cafe Bohemia』に行こうとしていた頃でした。
(田中裕二)思い出すね。大学1年で、ちょうど僕ら出会った頃に、この夏にヒットしてたんですね。
(佐野元春)桑田さんというのは本当に優れたソングライターでね。まあ、同時代に生きている、僕も同業ですから。彼の詞や曲を聞きますけども、本当に優れたソングライター。で、NHKで以前、僕は『佐野元春のザ・ソングライターズ』っていう番組をやっていてね。それはソングライターを招いて、その作詞作曲術を聞き出すという、そんな番組をやっていたんですね。で、その番組、企画は僕なんですけども。企画した時に、真っ先にスタジオに呼びたかったのは、実を言うと桑田さん。で、僕はね、桑田さんに手紙を書いたんです。実を言うと。
(田中裕二)手紙を書いたんですか?
(佐野元春)はじめてですけどね。このことをしゃべるのは。で、最終的に出なかったんだけども。ちょうどね、彼が病気をしていた頃ですね。で、僕はそれをぜんぜん知らない。でも、熱い思いを、『桑田さん、出てください』って手紙を書いて。そして、まあしばらくたったら桑田さんからね、本当に分厚い手紙が返ってきましてね。こんな分厚かったんですよ。で、なにが書いてあるんだろうな?って見たら、ひとつの便箋に文字がすごく大きかった(笑)。
(太田・田中)(笑)
(佐野元春)文章量はそれほどでもないんだけど、こんな分厚いものが。まあ、それはうれしかったんですけどね。で、まあ『ちょっといろいろ事情があって出れるあれじゃない』というようなことが書かれていて。で、それから間もなく、彼が戦っているということをニュースで聞いて、そうだったのか!って思ったんですけど。まあ、そうこうしているうちに番組は終わったんですけど。またいつかね、機会を改めて彼と・・・
(田中裕二)それこそ、この番組にゲストで桑田さん。ねえ。
(佐野元春)ああ、でもいいですし。あの、そうした番組というか、メディアでなくね。
(太田光)プライベートで。
(佐野元春)プライベートでもね、彼とソングライティングについて、じっくり話してみたいなという気持ちはいまでも、僕はありますね。
(太田光)いや、でもいずれね、なんか、一緒に曲を作るみたいなことってないんですかね?
(佐野元春)あるんじゃないですか?この先、1回は。
(太田光)うーわ!もうぜったい、1曲でいいからね。
(佐野元春)それを発表する・しないっていうのはまた別として。
(田中裕二)いや、それはしなきゃダメ!
(太田光)発表しないって(笑)。
(田中裕二)発表はもしね、そんな奇跡がもしあったら、それはもう、日本のために発表しないとダメですね(笑)。
(太田光)どっちが詞でどっちが・・・まあ、両A面で2曲だね。
(田中裕二)そうだね。
(佐野元春)(笑)。もうそこまでプランしますか(笑)。
(太田光)だってさ、どっちもね、メロディーと詞、どっちもやってほしいもんね。
(田中裕二)はい。あの、『Holland Rose』とちゃんとね、やってほしいですね。
(佐野元春)同世代がね、がんばっているっていうのはすごい刺激になるし。とても励みになるし、うれしいことですよね。ですので、いつか共演するんじゃないか。いつか一緒に曲を書くんじゃないかっていう希望を残しつつ、いまこう動いている。それを考えるだけでも楽しい。
(太田光)楽しいね。本当に。
(田中裕二)それはもう、我々、もっと楽しいですね。それをこう、想像するだけでね。
(太田光)本当に、それはできるまで生きていようね。
(田中裕二)生きていないといけない。
<書き起こしおわり>