爆笑問題のお二人がTBSラジオ『Sound Avenue905 元春レイディオショー』にゲスト出演。佐野元春さんと森田芳光監督、そして大瀧詠一さんの話をしていました。
《爆笑問題をゲストに迎えて – 「元春レイディオショー」TBSラジオ 夜9時 ~ 》佐野元春構成・DJ、ロック音楽ファンのための番組「SOUND AVENUE 905 元春レイディオショー(MRS)」。2月16日(火)放送では、爆笑問題…
Posted by 佐野元春(Official) on 2016年2月15日
(佐野元春)そうですね。まあ、僕ら音楽だけじゃなく、むしろお笑いもそうだし。小説の世界も文学の世界も。また、映画の世代も新世代が出てきたと。たとえば、森田芳光。
(田中裕二)そうですね。まさにそうですね。
(太田光)衝撃的でしたね。
(佐野元春)『バカヤロー!』なんていうね、映画があって。この『バカヤロー!』、たしか2。『幸せになりたい。』でしたっけ?ここにお二人は出演してるんですよね。で、僕、興味深く思ったのは、出演はわかるんだけども。その後、森田監督のもとで、太田さんがメガホンを取るんですよね。『バカヤロー!』シリーズで。
太田光初監督作品
(太田光)そうです。僕、当時まだ25、6ですね。で、あと、現場に行くとカメラから照明から音声はみんな50、60の。で、しかも一流スタッフなんですよ。森田組ですからね。そうすると、僕より年下っつーのはまあ、助監督のサードの子が僕より年下ぐらいで。後は全員年上で、しかも映画をもうやりたくて、映画の世界にいる人たちで。それが、どこの馬の骨かわかんない、その僕が監督として来るわけですから。まあ、現場でなんて言うんですかね?聞こえてくるわけですよ。打ち合わせをしていても。『なんだよ、あいつ・・・』みたいなのがチラチラ聞こえてきて。
(佐野元春)ああー。
(太田光)もう、針のむしろみたいな状態で撮っていたんですけど。だから、そういう状態だったんで、ちょっとこう『カット!』っつって。『ん?』って思っても、ほんの1センチ、カメラをずらしてほしいなっていうシーンがあるんですよ。だけど、そのカメラをセッティングするまでに30分ぐらいかかっているのを僕は見ているわけですよ。で、カメラの中を覗かせてもらって初めて、『あ、このサイズは違う』って気がつくんだけど。さあ、こっからじゃあ、『ちょっとごめん。このカメラをもう1センチ、横にずらして』って言えないんですよね。
(佐野元春)はい。
(太田光)で、『ああ、ぜんぜん違うな』って思いながらも『OKです』って言っていたところに、森田さんがフラッと現れたんですね。で、『太田くん、やってる?』っつって。要は、激励に来てくれたんですよ。で、森田さんに僕のイメージは伝えてあったんで。『どうなの?あ、あのシーンか』っつって、森田さんがカメラを覗くんですよ。『あれ?なにこれ?』って言うんですよ。で、森田さんよりぜんぜん上のスタッフですよ。みんな。
(佐野元春)ええ。
(太田光)でも、森田組だから。森田さんが偉いんですけど。『これ、ぜんぜん違うじゃん。監督の言ってるのと。こんなの、バカじゃないの?』とかってね、平気で言うんですよ。だから、森田さんはすっごい嫌われてました。現場で。
(田中裕二)(爆笑)
(太田光)だけど、で、僕は気を使っちゃうんですよ。逆に。『あ、監督。僕、これでいいんです』って。『いいの?だって、太田くん、ぜんぜん違うじゃん!』って言われるんだけど。『あんたみたいには言えないんだよ!』ってこっちは思ってるんだけど。『いえ、いいです、いいです、これで』っていうところがでも全部、心残りの映像になっているから。その時に学んだのは、もう本当、現場で嫌われるぐらい映画監督っつーのは独裁者じゃないと撮れないんだなっていうのは森田芳光のあの性格の悪さを見て・・・
(田中裕二)性格の悪さじゃないよ!
(太田光)本当に学びましたね。
(佐野元春)しかし、まあ森田さんの側からすればね、もうすでに『バカヤロー!』っていうのはヒット映画でしたから。そのシリーズの三作目でしたっけ?手がけられたのは。
(太田光)四作目でしたね。
(佐野元春)四作目。太田さん。爆笑問題というね、その時代の新しい才能にひとつの機会を与えて。好きにやってみろ!というね。そういう気持ちだったんじゃないかと。それで僕は2人の、いまそのお話を聞いて思い出すのはナイアガラ・トライアングルですね。
(太田光)ああー。
(佐野元春)まだ無名の頃、大瀧詠一さんが僕ともう1人。杉真理くんですね。2人をピックアップしてくれて。で、『好きにやってみろ』と。
(太田光)大抜擢だったわけですよね。
大瀧詠一さんがピックアップ
(佐野元春)そうですね。まあ、1枚のアルバムの中で、1人4曲ずつ担当するんだけど。現場には来ませんし。好きにやれと。だから、僕のコーナーは僕のレコーディングスタッフと僕のバンドで録って。出来上がったものを大瀧さんに持っていって、『これでどうでしょうか?』という感じだったんですよ。
(田中裕二)ああ、そうなんですか?
(佐野元春)で、4曲出して。3曲はOKだったんだけど、1曲。どうしても彼が、大瀧さんが納得しない曲があった。それはね、『彼女はデリケート』っていう曲だったんですよ。
(太田光)ええーっ!?
(田中裕二)あ、そうなんですか?納得しなかった。
(佐野元春)僕はね、もう自分の自己流でしたけど。完璧な仕上げで。大瀧さんとはまあ、本当にポップスについては非常に詳しい方ですから。彼からも一言『Yes』と言ってもらいたくて、完璧なものを持っていったんですよ。そしたらまあ、マルチテープを流して、聞いて。大瀧さんが腕を組んで聞いてるわけなんですね。『これは違うよ』って。
(田中裕二)ええっ!?
(佐野元春)『なにが違うんだろう?演奏がダメなのか?詞がダメなのか?なにが?』っていう風に僕が聞いたらば、『歌だよ』ってこう言うのね。『あの、これはすごく完璧にできているけども、なにか感じないよ。佐野くんはバディ・ホリーやエディー・コクランが好きでしょ?あれで行くんだよ』って。で、『スタジオに入って!』って言われて、スタジオに。で、そこにマイクロフォンのセットアップがしてあって。それで、『彼女はデリケート』のバックトラックが鳴って。それで、トークバックで『なんにも気兼ねすることなく、エディー・コクランで行きな。バディ・ホリーで行きな』って。もうその一言ですっごく自由な気持ちになって。
(太田光)はー!
(佐野元春)なにか、完璧を狙うんじゃなくて、そのロックンロール音楽が持っている自由な楽しさっていうのですね。
(田中裕二)楽しくないんだ。
(佐野元春)そうです。『「彼女はデリケート」っていう詞はそういう詞なんだから、もっとエディー・コクランで行くんだよ、佐野くん!』って。それで録ったやつ。エディー・コクランの真似をして(笑)。で、歌ったらテイク1で、『佐野くん、それだよ』っつって。
(田中裕二)へー!
(太田光)かっこいい!すげー!大瀧詠一!見直したな。
(田中裕二)『見直した』って、なんだ、それは!?
(太田光)(笑)。すごい!
(田中裕二)俺らが知っている『彼女はデリケート』の前の、佐野さんが持っていったのは・・・
(太田光)もっと真面目に歌っていたんだ。
(佐野元春)真面目にピシッとしたのがあるの。
(太田光)そうなんだー!
(佐野元春)ピシッとしたのがあるんですけども、やはり、あとで聞いてみると。もう時がたって、10年、20年、30年たって聞いてみると、大瀧さんの言うとおりなの。
(太田光)すげーな!
(田中裕二)『今夜は上手くハモれないぜ』とか、もうちょっとちゃんと真面目に歌っていたんですね(笑)。
(佐野元春)そうなんです(笑)。
(太田光)大瀧さんはでもそんな・・・それほど年齢は別に変わるわけじゃないですか。やっぱり、天才なんですね。
(佐野元春)やっぱり、葉っぱを見るんじゃなくて森を見れる人なんですよね。だから、プロデューサーなんです。
(田中裕二)プロデューサーなんだね。
(太田光)そうかー。すごい話ですね。それはでも。かっこいいねー!
(田中裕二)かっこいい。
(佐野元春)じゃあ、話の流れなので。ここでその『彼女はデリケート』、ちょっと聞いてみたいと思います。
佐野元春『彼女はデリケート』
(佐野元春)いま聞いていただいているのは『NIAGARA TRIANGLE』に収録した僕の曲ですね。『彼女はデリケート』。
(田中裕二)もう本当に、ライブ何度行ったかわからないけれども。だいたいこの曲は当時、ぜったいやるじゃないですか。もうこの時の心の高鳴りというかね。間奏のところとかはもうなんか、どうにかなっちゃうぐらい興奮してたのがいまバーッ!っと浮かんできたんですけど。
(佐野元春)間奏のところでは、当時はTokyo Be-Bopというね、ブラスセクションがリードを取ってましたけどね。あそこはやっぱり見せ場で。間奏のところに来たら、もう全員が前に出て来て。オーディエンスたちを楽しい気持ちにさせるっていうね。だから当時本当に僕たち、THE HEARTLANDはパーティーバンドって言ってましたからね。
(太田光)これはでもね、一緒に行ったよね。
(田中裕二)行きましたよ。一緒に。
(太田光)で、全部メンバー紹介は田中がするんですよ。横で。佐野さんのセリフを全部覚えてて。俺は佐野さんからメンバー紹介してほしいのに。
(田中裕二)(笑)
(佐野元春)そりゃそうだね(笑)。
(太田光)『スーパーサキソフォーン!』とかって、隣でうるさいの。
(田中裕二)ダディ柴田ね(笑)。
(太田光)本当にね、なんでお前の紹介されなきゃなんないんだ!って文句を言ってましたけども。
<書き起こしおわり>