町山智浩 園子温監督作品『TOKYO TRIBE』を語る

町山智浩 園子温監督作品『TOKYO TRIBE』を語る たまむすび

映画評論家町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』で園子温監督の最新作『TOKYO TRIBE』を紹介していました。

TOKYO TRIBE

(町山智浩)鈴木則文監督だったんですけども、その頃の魂をですね、いま引き継いでいる男がいまして。1人。日本映画界に。1人じゃなくて2人か3人ぐらいいるんですけど。その内の1人ですが。園子温監督のですね、新作を紹介したいんですけども。

(赤江・山里)はい。

(町山智浩)その頃ですね、鈴木則文監督だけじゃなくて、その頃っていうのは1970年代のはじめですけども。東映っていう映画会社でですね、鈴木則文監督と、あと石井輝男監督とですね、野田幸男監督っていう何人かの監督たちがですね、デタラメな映画を作っていたんですよ。その頃って東映の任侠映画が客が入らなくなって。その後、実録ヤクザ路線っていう仁義無き戦いでヒットを飛ばすんで、その狭間があったんですね。で、なにをやっても当たらないからってデタラメをやっていた時期があるんですよ(笑)。映画会社が。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)その頃の映画なんですよ。で、どのくらいデタラメか?っていうと、デタラメのいちばんいい例はですね、『不良番長』シリーズっていう梅宮辰夫さんが主役をやっていたシリーズがあるんですけども。不良番長とヤクザのギャング軍団が銃撃戦をしている最中にですね、突然時計を見るんですよ。主人公たちが。で、『おっ、いまこんな時間か。上映時間90分でお終わりだから、死ぬぞ!』って言っていきなりそのまま死んじゃうんですよ。

(山里亮太)ええっ!?

(町山智浩)戦いの最中に(笑)。上映時間が来たからっつって。話は終わってないんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(山里亮太)すごいな・・・

(町山智浩)すごいですよ。そういうことを適当にやっていた時代がありまして(笑)。そういう魂を引き継いでいるのが園子温監督ですね。いま、これ聞いていて園子温、『俺、ぜんぜん褒められてねーじゃねーか!』って思うかもしれないですけど。まあ、そういうことだろう?お前って思いますけど。でね、今回の映画はですね、『TOKYO TRIBE』っていうタイトルです。これね、『TRIBE』っていうのは『部族』っていう意味ですけども。東京にいる、いっぱストリートギャングのグループが抗争するっていう話なんですね。で、これ原作がマンガでですね。ストリートファッションの雑誌に連載されていた井上三太さんのマンガでですね。

(赤江珠緒)そう、井上三太さん。アシスタントさんとか、聞いてくださってますよ。

(町山智浩)これをまあ、園子温監督が映画化するっていうことで、最初『こんなもん、映画化できねーよ!』って言ってものすごい悩んでたんですよ。彼。『無理じゃねーの?これ。HIPHOPとかストリートとかそういうの、わからねーし!』って言ってたんですけど。彼。それがね、突然。この間自宅に遊びに行ったら、『できちゃったよ!』とか言って見せてくれたんですけど。天才だと思いましたよ。あれだけ苦しんでいたのに。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)結局ね、要するにストリートギャングって呼ばれているストリートにいる人たち、いますよね。HIPHOPとかやっている若者たち。それをわかろうとして、現実にそういう人たちってどういう生活をしてるとか、わかろうと彼は・・・ちょっとドキュメンタリータッチで考えていたみたいなんですけど。最初は。そんなんじゃねーやと。中には新宿とか池袋とか、実名が出てくるんですよ。池袋の組とか。新宿の組、高円寺の組っていうのが出てくるんですけども。だからってそこで撮ることねーんだってことで、全部オールセットで撮ってるんですよ。今回。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)で、もうどこの国でもない東京で。完全にSFみたいな。『ブレードランナー』みたいなところでですね、いろんなストリートギャングが戦うっていう話になってるんですけども。これ、主役は彼なんですよ。村岡印刷さんなんですよ!

(赤江珠緒)あ、『花子とアン』の?鈴木亮平さん?

(町山智浩)鈴木亮平さん。あの、結婚しましたね!花子と。やっと。村岡さん。

(赤江珠緒)まあ、好青年ですよ。村岡さんは。

(町山智浩)好青年でしょ?ねえ。でもね、このTOKYO TRIBEの中で主役でですね、最強の敵なんですよ。メラっていうんですけど。日本刀を振り回して。日本刀を振り回さなくてもすごいんですけど。ほとんど全編裸です!鈴木亮平さん。この映画の中では。

(赤江珠緒)本当だ。

(町山智浩)あの、お尻も出てます。

(赤江珠緒)紐パンですね。紐パン。

(町山智浩)紐パンです。この人、この前ですね、『変態仮面』っていう映画で、ブリーフを肩まで引っ張りあげて着るっていうすごいファッションをしてましたね。

(山里亮太)頭にパンティーかぶってね。

(町山智浩)頭にパンティーかぶって(笑)。今回もやっぱり裸仕事に戻ってるんですけど。すごいんですよ。この筋肉。

(赤江珠緒)すごい筋肉。わー。村岡さんとぜんぜん違うな。これ。

(町山智浩)村岡さんも、なんで脱がないのかね?

(赤江珠緒)(笑)。ええとね、脱ぐ必要、ないですね。

(山里亮太)花子とアンでそんなシーン、ないですか?

(町山智浩)花子もこの体目当てだったのか?とか、いろいろ考えますよね。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)これはすごいですよね。やっぱり朝市は勝てないな、これはって思いましたね。

(赤江珠緒)この体はちょっと・・・(笑)。

(町山智浩)はい。朝ドラ見てない人にはなにも意味がわからないと思いますけど(笑)。でね、ずーっといろんなグループが抗争しまくる映画なんですけども。この鈴木亮平がやっているメラのボスっていうのがいるんですね。それが、竹内力さんが演じるヤクザの大親分なんですけども。竹内力さんがまたこの映画でめちゃくちゃなんですよ。もう。『おまえなー、おれはだなー!』とかですね。ほとんど、笑点で林家木久扇師匠がやる謎の時代劇のマネがあるじゃないですか。

(山里亮太)はいはいはい(笑)。

(町山智浩)ほとんどあれと同じで。なにを言ってるのかわからないんですよ。竹内力さん。もうほとんど怪獣みたいになっててね。すごいことになっていますけどね。

(赤江珠緒)ええー!でも、お写真を見るとピッタリですよ。あまりにも竹内さんにハマっている役!って感じしますね。

(町山智浩)僕、いろいろ感慨深い。僕ね、映画の取材とか始めた頃に、最初にロケ地の取材に行ったのが竹内力さんのほとんどデビュー作の『おかしなふたり』っていう映画だったんですよ。で、尾道まで行きましてですね。取材現場に行ったんですけど。その頃会った竹内力さんはほんとうにですね、初々しい好青年だったんですよ。礼儀正しくて。お酒も飲みに行ったんですけど、すごく静かな。礼儀正しくて。『あ、本当よろしくお願いします』って言ってたのが、いま『おれはだなー!』とか言ってるんですよ。こんなに人は変わってしまうのか!と(笑)。もう、すごいことになってますけど。

(赤江珠緒)悪の帝王。

(町山智浩)その竹内力扮する親分の息子がですね、窪塚洋介さんですね。もう見ただけでチャラい、悪いヤツっていう感じなんですけども。ぴったりですね。本当にね。で、竹内力さんの奥さんが叶美香さんですね。

(赤江珠緒)またぴったりですね!

(町山智浩)また、ぴったりなんですね。で、竹内力の娘が、しょこたんですよ。

(山里亮太)あ、中川翔子さん。

(町山智浩)しょこたんですよ。このキャスティングを聞いただけで、さっきの『パンツの穴』に武田鉄矢が出るような世界でしょ?これ。

(山里亮太)とんでもない、いろんな組み合わせをしちゃうっていう感じが。

(町山智浩)そう。なんでも有りの状態ですね。すごいことになってますけど。この映画ね、またとんでもないのが、これ、『こんな映画俺、できないよ』って言っていた園子温がデッチ上げたキーっていうのはなにか?っていうと、『OK!全部ミュージカルにする!』っていうことでもってですね、これ全部セリフがミュージカルっていうか歌なんですよ。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)これ、すごいのがHIPHOPのラッパーの人たちをキャスティング、半分ぐらい入れちゃって。彼らにだいたいのセリフを渡して、全部ラップさせてるんですよ。

(赤江珠緒)えっ?じゃあ竹内さんとかも?

(町山智浩)竹内さんもラップしてるんですよ!でも、なに言ってるかわからないですけどね(笑)。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)『おれはー、おれはー♪』って言ってるだけですから。で、鈴木亮平さんもみんなしてるんですよ。全部のセリフが歌なんですよ。

(山里亮太)すごいメンツですよ。かなりいろんなメンツがいる。この人のラップとかもあるのかとか。信じられない方がいっぱいいますよ。

(赤江珠緒)やっぱり園子温監督ですから、でんでんさんとかも出てらっしゃいますけども。

(町山智浩)でんでんさんはかならず出てくるんで(笑)。でんでんさん、めちゃくちゃ偉い人の役で出てますけどね。で、要するにちょっとしたセリフでも歌になってるんですよ。だからお店にたとえばお客さんが入ってるくと、『はいはい、こちらへ、こちらへどうぞ♪』みたいな感じになってるんですよ。

(山里亮太)ほー、ラップで。

(町山智浩)ちょっとしたものまでね。で、そのセットで作り上げたですね、近未来の東京で繰り広げられるバトルっていうことで、これ『レ・ミゼラブル』ですよ!

(赤江・山里)レ・ミゼラブル?

(町山智浩)レ・ミゼラブルですよ、これ。東京を舞台にした。

(山里亮太)いま、これね。パンフレットを見てる限り、レ・ミゼ感はあんまり(笑)。

(町山智浩)レ・ミゼなんてあれ、歌を歌い出すと直立不動でカメラに向かって歌っているだけじゃないですか。これなんて、歌いながら戦うわ、メシは食うわ、セックスするわですね、全部ありですから。とんでもないことになってますよ、これ。本当に。もう息が切れていると思いますけども。で、こういうね、とんでもない映画で。なにに近いか?っていうと、たぶん言ってもわからないと思いますから、一気にいきますね。『ストリート・オブ・ファイヤー』。『ウォーリアーズ』。『爆裂都市』。『花のあすか組!』。そういう映画に近い映画です。

(山里亮太)花のあすか組!なつかしい!

(赤江珠緒)花のあすか組!、わかりましたよ。

(町山智浩)わかりました?ああいう映画に近い映画ですよ。

(山里亮太)へー!それが、いま。

(町山智浩)いま。それをね。あと、全裸殺陣っていうのが出てきますけど。全裸で戦うのがいっぱい出てきますけど。それも、鈴木則文監督の映画によく出てきますね。

(山里亮太)へー。そこへの、あるんですね。

(赤江珠緒)なんかでも、架空の町みたいな感じで、写真ですけど、画がキレイな。雰囲気ありますね。

(町山智浩)このセット、すごいですよ。このセットも、ストリートアートとかをやっている人たちにやらせたらしいんですね。落書きとかさせて。こういうね、映画なんですけども。園子温監督の映画ですから、これだけバトルとかありながら、えっ?と驚くオチがつきますんで。そこも含めて、映画破壊映画ということでですね。ぜひお楽しみにということで。これ、8月公開ですか?

(山里亮太)8月末ですね。30日かな?

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)まあ、TOKYO TRIBEの主題歌を聞きながらお別れってできますか?

(赤江珠緒)はい。わかりました。じゃあ私の方から紹介させていただきながら。今日はですね、園子温監督の最新作のTOKYO TRIBEをご紹介いただきましたが。主題歌はYOUNG DAIS, SIMON, Y’S & AI『HOPE – TOKYO TRIBE ANTHEM』です。町山さん、ありがとうございました。

(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした!

<書き起こしおわり>

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