町山智浩 井上堯之を追悼する

町山智浩 井上堯之を追悼する たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で亡くなったギタリストの井上堯之さんを追悼。井上さんの思い出の曲などを紹介していました。

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(町山智浩)それでですね、今日はちょっと映画とは全然関係ないんですけども、ギタリストの井上堯之さんがお亡くなりになって。で、もう追悼番組とかいっぱいあると思うんですけど。僕の世代はとにかく『太陽にほえろ!』とか『傷だらけの天使』とかは小学校6年生ぐらいで。もう本当にクラス全員で翌日の朝は『太陽にほえろ!』の話。『傷だらけの天使』の話っていう。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、『傷だらけの天使』で出てくる歌であったり、オープニングで萩原健一さんがご飯を食べるんですよ。それをみんなで真似して牛乳飲んだり、パンを食べたりっていうのを……。

(赤江珠緒)ああ、小学生でもう。

(町山智浩)小学生や中学生、みんなでそれでやるんですよ。で、中で萩原健一さんが『たまらん節』っていう歌、「たまらん、たまらん~♪」っていうのを歌うんですけど、それをみんなで歌ったりとか。で、拾ったタバコを吸うところがかっこいいから、みんなで拾ってタバコ吸ったりとか。中学生ですけども(笑)。

(赤江珠緒)フフフ(笑)。

(町山智浩)もうみんなで真似したりするようなことをしていて。本当、僕らにとっては思春期のBGMがこの井上堯之さんのギターだったんですね。で、沢田研二さんの『危険なふたり』であるとか、『時の過ぎゆくままに』のギターで非常に有名なんですけども。


(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)僕にとっての井上堯之さんの歌でいちばん好きなのは、この『傷だらけの天使』というドラマの最終回で流れた『一人』という歌なんですよ。これは水谷豊さんと萩原健一さんが私立探偵なんですね。で、途中で水谷豊さんが亡くなってしまって。童貞のままでですよ。

(赤江珠緒)そうだったんだ。

(町山智浩)そうなんですよ。だからなんか紅茶ばっかり飲んでいるから怪しいなと思ったんですよ。なんか。

(赤江珠緒)それは『相棒』ですよ(笑)。

(町山智浩)「童貞かな? もう還暦なのに……」って思ったんですけど。

(赤江珠緒)アハハハハハッ! いや、そこはつなげなくていいんですよ!

(町山智浩)ああ、違うのか? だから童貞のまま死んじゃって、それを萩原健一さんが夢の島っていう昔ゴミ捨て場だったところに埋めて去っていくところでこの『一人』っていう歌が流れるんですね。

『一人』

(町山智浩)これ、歌詞がすごくよくて。もう去っていく青春に対する挽歌、追悼の歌なんですけど。作詞者は岸部一徳さんですよ。

(赤江珠緒)ああ、一徳さん?

(町山智浩)ねえ。死んだ目の名優ですけども(笑)。何を考えているのか全くわからない。でも、まあ彼はやっぱりロックミュージシャンで、この歌詞は本当にその、グループサウンズのスパイダース、タイガース、そういった青春の時代が終わっていくことに対する追悼の、葬送の歌ですね。で、これは実は『傷だらけの天使』の時に歌っている人はデイヴ平尾さんっていう別のゴールデンカップスのボーカルの人だったりして。ゴールデンカップスもグループサウンズだったんですけど、グループサウンズ全体に対するこれは追悼の歌のように聞こえて。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)青春とかそういったものに対する。だからその井上堯之さんは作曲なんですけど。これは井上堯之さんが歌っているバージョンなんですが。だからすごくね、これはひとつの時代に対する葬送曲として素晴らしいなと思います。

(赤江珠緒)そうかー。心に引っかかるという。

(町山智浩)もうこの曲をバックに水谷豊さんの死体をリヤカーで引っ張りながら萩原健一さんが捨てに行くところが、「もう青春は終わったんだ!」っていう……俺はまだ青春が始まってなかったですけどね(笑)。子供だったから。

(赤江珠緒)よく考えたらそうでしたね(笑)。

(町山智浩)すでに終わっていた。青春を始める前に青春は終わっていたんだっていう(笑)。まだ始まってもいないのにという(笑)。

(赤江珠緒)そうですか。思い出の曲なんですね(笑)。

(町山智浩)はい。ぜひみなさん、聞いてみてください。

(赤江珠緒)井上堯之さんの『一人』をお聞きいただきました。

<書き起こしおわり>

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