町山智浩 日大アメフト部危険タックル問題 選手記者会見を語る

町山智浩 日大アメフト部危険タックル問題 選手記者会見を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で日大アメフト部の危険タックル問題についてトーク。映画紹介コーナーで『デッドプール2』を紹介している途中でタックルした選手の記者会見の中継が挟み込まれ、その中継を聞いた後にこの問題について話していました。

(町山智浩)……この人は日本刀とマグナム拳銃でとにかく人をバンバンバンバン殺して。生首とか手足がバンバン画面に飛び散って画面が血だらけっていう映画なんですね。だから子供は見れない。しかもこの……デッドプールのことは日本では「デップー」って言われているんですけど。このデップー自身も体を真っ二つに引き裂かれて、はらわたがベローッて出ちゃったりするんですよ。「ああーん、腸が出ちゃった。ちょう痛ーい!」とかって言うんですよ。

(山里亮太)結構ふざけたことを言うんですよね。

(赤江珠緒)あ、町山さん、ちょっとごめんなさい。お話の途中で申し訳ないんですが、ここで先ほどの記者会見の様子をもう一度お聞きいただくことになります。ごめんなさい。選手本人のコメントが始まりました。

(約10分間、記者会見の音源が流れる)

(赤江珠緒)悪質な反則行為をした日本大学の選手が記者会見を行って本人の弁をいま述べました。それをお聞きいただきました。町山さん、途中でごめんなさい。

(町山智浩)でも、本当にこれはひどいことですね。傷害教唆だと僕は思います。

(赤江珠緒)ああー。町山さん、アメリカでアメリカンフットボールが盛んな国ですから……。

(町山智浩)アメリカンフットボールでクォーターバックがパスとかをした後やキックをした後に攻撃したら傷害罪ですよ、これは!

(山里亮太)でも、自分の意思でないって……。

(町山智浩)自分の意思じゃないですよ。どう聞いてもそうですし、っていうか自分の意思でそれ、選手はしないですよ。だって選手は選手同士でそれをやったら完全に体が壊されるかもしれないってわかっているのに、それをどうしてするんですか?

(赤江珠緒)うーん。

(町山智浩)だって、背骨とかやったら一生下半身不随ですよ。すごく多いんですよ。ラグビーとかアメフトで下半身不随の人は。普通にプレーをしていてもですよ。これ、完全に殺人未遂教唆じゃないの?

(赤江珠緒)いま本人の弁を聞いていると、コーチやら周りの方が……っていうことですよね。

(町山智浩)これ、ヤクザの鉄砲玉を行かせる理論と同じなんですよ。「行け!」っていう時に「あいつをどう殺せ」とは言わないんですよ。「あいつがいなくなったらな、すごい助かるんじゃけんのう」って言うんですよ。『仁義なき戦い』の山守は。

ヤクザの鉄砲玉と同じ

(赤江珠緒)『仁義なき戦い』ね。うん。

(町山智浩)ヤクザも世界中全部そうです。マフィアも全部そうです。「あいつをどういう風に殺せ」とは言わないんですよ。「あいつがいなくなったら、お前もなかなかな、いい位置につけてやるけどな」って言うんですよ。そうすると「私が行きます!」ってなるんですよ。これは教唆にならないようなギリギリのところなんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)もうそんなことが日本中で行われているんですよ。そんなことでいいのかね!? ええっ? 学生ですよ? これから世の中、人生がいっぱいあるのにね。その人生を潰されてね。恐ろしい……だっていま、官僚とかが言わされているのも、国会でやらされているのを見ているじゃないですか。明らかに言わされている世界じゃないですか。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)もうそれ、いくら言い繕ったって完全に政治家に言わされているじゃないですか。で、みんなその後の処分を受けないで、「その後の恩給だとか退職金だとかそういうのを保証してやる。お前の人生保証してやる」って言われて……それは「あいつを殺して刑務所に入ったら、出た後は幹部として迎えてやる。お前の家族も面倒を見てやる」っていうのといったいどこが違うんですか!?

(赤江珠緒)うん……。

(町山智浩)(声を荒げて)どんな国だ、それ!? ええっ? ふざけるな!って思いますよ。

(赤江珠緒)ねえ。遠いアメリカでも町山さんが怒ってらっしゃいますけども。

(町山智浩)恥ずかしくないのか? 世界中に全部伝わっているんだよ、これ! どうすんの、これ?

(赤江珠緒)本当ですね。

日本の信用が失われる

(町山智浩)全体としてなっているから、こういったことを社会のトップの人とか表に出ている人がやっているから、下は全部やるでしょう。いろんな日本の企業がずーっといままで「すごく優秀だ。誠実だ」って言われてきたのが次々といろんなことを隠して、発覚して、株価が落ちて、信用を失って……世界的な信用度がどんどんどんどん落ちていくじゃないですか! ごまかし、ごまかし、ごまかしで。どうすんの、これ? 取り返しがつかないことになるよ、このまま……雪崩のように起こっているじゃないですか!

(赤江珠緒)うーん……。本当ですね。

(町山智浩)本当に危険なことですよ。これは。もう全体の体質になっているじゃないですか。ごまかし、ごまかしで。

(赤江珠緒)本当にそうなんですよ。町山さん、今日はもう『デッドプール2』のお話だったんですが……。

(町山智浩)もうデッドプールに殺してもらうしかないよ!

(赤江珠緒)フフフ(笑)。デップーちゃんに? デップーちゃんのお時間がもう5分ぐらいしかないですけども。どうしましょう。次回にしますか?

(町山智浩)もうこれは次回にします。本当にひどい。びっくりしましたよ、これは。

(赤江珠緒)ねえ。

(町山智浩)ひどすぎる!

(山里亮太)これに対して、監督たちはどういうことを言ってくるのかまだわからないですからね。

(町山智浩)いや、もう責任逃れをしちゃったんだから。その後で、また世間に叩かれて謝ったところでね、それはまたおかしいでしょう。でもこれ、本当にあの……無防備なところで背中へショルダーからアタックしているわけですから。頚椎のところを。大変なことですよ。

(山里亮太)不幸中の幸いというか、まだケガはそんなに深刻なケガじゃなくて済みましたが……。

(町山智浩)でも、どうなっているかわからないですよね。本当にもう、昔からヤクザの鉄砲玉とかと同じですよ。これはもう。(第二次大戦中の)特攻隊とかと同じで「自分の意思で行った」っていうことで最終的にはまとめちゃうみたいなね。本当に、これはすごいな!

(山里亮太)いまの選手の話を聞くと「それはさすがに断れないだろうな」っていう流れでしたもんね。全部。

(町山智浩)断れないじゃないですか。いまの話を聞いて、断れる人って誰かいるんですか? これ。あの状況で。それで本人の自己責任になっちゃうんですか?

(赤江珠緒)ねえ。だから彼はいま、いろんなものを背負っちゃっていますね。

(山里亮太)でもこの会見によってもう「自己責任」っていうことでは終われないようなことにはなってきそうですけどね。もちろん。

(町山智浩)そうなんですけど、これは個別の問題じゃなくてあまりにも大企業とか、あとは政治とかで全部同じことが起こっているじゃないですか、これ。ちょっとみんな、なんとなくこのまま乗り切っちゃおうって思っているのかもしれないけど、これは大変なことですよ。これは全部世界に伝わっていますよ。

(赤江珠緒)たしかに構図としては同じかもしれないね。

(町山智浩)日本っていうのは本当に誠実で一生懸命真面目で勤勉な人たちだと思われてきたから信用せれてきたわけですよ。とにかく日本の物を買えば、日本の人と一緒に仕事をすれば絶対にインチキはされないってみんな信じていたのに、それがどんどんどんどん崩れていくじゃないですか。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)これは、まあこんな風になっても「過去の信頼があるから……」って言うけど、その過去の信頼があったのって20年前ですよ。いま、アメリカの電気屋さんに行くと日本の製品なんか置いてないですから!

(赤江珠緒)そうかー。

(山里亮太)メイド・イン・ジャパンが世界の最高峰だなんて言われていたのが……。

(町山智浩)もう置いてないですから。本当に。どうしてこんなになっちゃったんだ? それはその場、その場を乗り切って。会社とかの粉飾決算もそうですけども。とにかく先送り、先送りでやって。で、結局どんどんどんどん積りに積もってこんなことになっちゃっているわけじゃないですか。で、全部上の人たちは責任を取らないで、下に押し付けているわけじゃないですか。日本、未来を潰す気ですか? これ、本当に。

(赤江珠緒)そうだよね。

(町山智浩)どうするんだ、これ? いったい……。

(山里亮太)これね、いますごいニュースで。毎日このニュースが出てきて。

日本全体の体質を象徴する事件

(町山智浩)それはなぜみんな、この日大のアメフトのニュースを非常に重要だと思って見るか?っていうと、やっぱりここに日本全体で起こっている全ての体質が象徴されているからだと思うんですよ。ずーっと前から起こってきたことが。上の者は下に押し付けて責任を取らないっていうことが。で、誰も責任を取らない状況がこのままあらゆる場所で続いていくということになると、まず若い人たちははっきり言って年上の人たち……50代以上の人たちを信用しなくなりますよ、本当に。だって自分たちは捨て石にされちゃうんだもん。

(赤江珠緒)うーん。

(山里亮太)たしかに。この選手はもうアメフトもできないでしょうしね。

(町山智浩)この後、この人は一生できないでしょう。たぶん、ねえ。これは大変な……ものすごく若い人たちの年上の人たち、世代に対する信頼って崩壊していると思いますよ。だって誰一人、責任を取った人がいないんだから。大変なことだと思いますね。これは。

(山里亮太)この話が動いて、この問題に対する解決策がなにかもっと大きな考えることのきっかけになるかもしれないですね。

(赤江珠緒)そうかもしれないですね。町山さん、すいません。今日は予定を変更して……。

(町山智浩)いや、僕は全然怒ってないですっていうか……まあ怒っているけど(笑)。

(山里亮太)いや、熱がありますよね。

(赤江珠緒)でも、その気持ちはわかりますよ。

(山里亮太)このニュースに対する考えるポイントが選択肢と増えたのはよかったです。

(町山智浩)本当に僕ね、聞いていて信じられないですよ。本当にもう……来週、『デッドプール2』をやります。

(山里亮太)またよりによってね、めちゃくちゃおバカな映画の説明を。聞きたかった人も多かったと思うんですけどもね。

(町山智浩)ねえ。でももう、チンコの話とかできないじゃないですか。もうね。

(赤江珠緒)そうですね。ちょっと方向性がガーッと変わっちゃうんでね。

(山里亮太)みなさん、来週の予習として『デッドプール1』を見ておきましょう。

(赤江珠緒)はい。町山さん、すいません。ありがとうございました。

(町山智浩)いえいえ。どうもでした。来週はちゃんとチンコの話をします!

(山里亮太)チンコじゃなくてデッドプールの話ね! 町山さん、デップーね!

<書き起こしおわり>

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