ジェーン・スー 仕事のやる気の源泉を語る

ジェーン・スー 仕事のやる気の源泉を語る ジェーン・スー 相談は踊る

ジェーン・スーさんがTBSラジオ『相談は踊る』の中で仕事のやる気についてトーク。やる気はどこから湧いてくるのか?モチベーションが上がる要因は?などについて話していました。

仕事のやる気はどこから湧いてくるのか?

(ジェーン・スー)私、ジェーン・スーからの相談です。『あの、やる気ってどこから湧いてくるのでしょうか?』。

(中略)

(ジェーン・スー)ねえ。梅雨が来て、ジメジメしながらも、やる気を出してがんばっていかなきゃいけないわけですけども。そのやる気ですよ。どこから湧いてくるのか?5月30日に相応しいですね。5月病。みなさん、かかってますか?これ、新入社員とか新しい職場に行った人だけがかかりがちと思われそうですけど。そんなことはもちろんないですよね。何年同じところにいたって、4月が始まって、『さあ、今年もがんばるぞ!新年度!』って言った後にですね、だいたい5月の末ぐらいでちょっとプスッ、プスッ、プスッとエンストを起こし気味になってくる人もいるんじゃないでしょうか。

あの、今回のね、私の相談。『やる気ってどこから湧いてくるのでしょうか?』ってことなんですけど。これ、実はね、友達といろいろ最近話をする機会がありまして。仕事のことをね、やっぱり新しい段階で考える齢になってきたんですよ。40を過ぎると。それこそ、20代はガムシャラ。雑用でもなんでもがんばって、自分がやりたい仕事と思ったことをやるために、まず働き始め、しかし、途中で挫折もし、そんなにやる気もないけれど・・・みたいな時期があって。

で、30になると、少しずつ自分の声が届くようになったり、去年できなかったことができるようになったりとかっていうことで、なんとなく仕事が1回楽しいクールに入る。でもですね、そのモチベーションが10年持つわけがない。40になりましてですね、確固たるやりたいこととかがない限りですね、会社なんかにいると、上を狙わない限り、スーパー雑務みたいな感じになっていくよねっていう話もよくしております。

スーパー雑務ってどういうことか?っていうとですね、新人の子の失敗したものの尻拭いだったりとか、あと、大急ぎでやらなきゃいけないことだったりとか。あとは、手だけ動かす煩雑なことなんだけど、ミスっちゃ行けないみたいな。いわゆる、モチベーションを持って取り組みづらいようなことっていうの。だけど、それを若い子に任せて失敗したり時間がかかったりする暇はない。そうすると、手練れの40代にですね、そういうのが回ってくるんですけど。なんとなく、そういうのばっかり『はいはい』ってやっていると、敗戦処理みたいになってくるよね、なんて話をよくくしております。

あとですね、仕事はなんだろうね?生きていくためにしていかなきゃいけないんだけど・・・みたいな話をするとですね、だいたい数年に1回、名言みたいなのをポン!ともらうことがあるんですけども。私、30代の時にもらって非常にいまも胸に刻んでいる言葉っていうのは、『仕事は何をやるかじゃない。誰とやるかだ』。これはね、大きいなと思うんですよ。『座組みだけに気をつけろ!』と。本当、その通りだと思う。

そこにいるメンバーが意思疎通ができていて、みな同じようにいいものを作ろう、いい成果物をあげようっていう意識があれば、だいたいどんな仕事でも面白く回っていくよと。サラリーマンなんかはよっぽどの成果をあげない限り、そこでボーナスがドーン!と上がるなんて仕事、なかなかないですから。営業のインセンティブなんて仕事をしている人は別でしょうけど。そうなってくると、やっぱり誰とやっているか?っていうことの方が大事になってくる。モチベーションを自分が上げて、明日もなんとなくがんばろう!と。

『ああ、でもまたあの顔を見て、あの訳の分からない奴に、また何回説明しても分かんないのに、なんか偉そうな顔をされなきゃいけないのか?』と思うと、やっぱりちょっとね、仕事し続けていくモチベーションって保ちづらいじゃないですか。あとね、私、サラリーマン10数年やっておりましたけれど。その時にね、いちばんモチベーションを削ぐものは何だったか?っていうと、『オレガー』ね。これ、オレガーって私とハツネちゃんっていう友達がですね、名づけたんですけど。なんでもかんでも、『俺が!俺が!』っていう。『俺がやったんだ!』とか。まあその時ね、上司にいる人がほとんど男性だったんで、『ワタシガー』じゃなくて『オレガー』になったんですけど。

いま、職場によっては『アタシガー』とかもいると思うんですけど。まあ私たちが本当、なんでもかんでも、『あれ、俺がやったんやでー!』とか・・・あ、これ関西弁の上司だってわかっちゃいましたけど(笑)。あとね、なんだろうな?『「俺がいたから上手く行ったんだ」とかさ、「あれは俺がやったんだ」みたいな人、いるよね』って言ったら、ちょっと別のところからですね、『あれ俺詐欺』っていうすごいキャッチーな言葉が入ってきまして。『あれ、俺がやったんだ』ってことで、『あれ俺詐欺』。

なるほどね!あれ俺詐欺、引っかかりますよね。だってさ、その人が仕事できるかどうか?なんてゲームと違ってさ、ペンタゴンでその人のパワーとかわからないじゃん。攻撃力8、防御力2とか、わかんないじゃん。そうすると、自己申告の『あれ、俺がやったんだよ』とか『あれも私が関わっていて・・・』とかっていうのを信じるしかないわけですよ。で、信じてさ、ついて行くとだいたい辛いことになるんだ、これ。なんか知らないけど。

ねえ。だからそのオレガー。で、オレガーはね、なんで蔓延るのか?と思ったら、オレガーっていちばん実は仕事のモチベーションを保ちやすい欲なんだなってことになったんですよ。その友達と話していて。『俺がいたから現場が回ったんだよね』とか。『私が気をきかせたから、ここが上手くいったんだよね』とか。『私が先輩をフォローしたから、あの先輩は事故らなくてすんだ』みたいな。TwitterとかFacebookとかさ、意外とみなさん、自意識を垂れ流ししてますから。そういうの、見えますよね。『ああ、またこの人、これ言ってるわ。とにかく自分がここにいたから上手くいったっていう話、したいんだ』って。

でもね、こういう人はだいたい何の仕事していても働けるんですよ。なんでか?っていうと、欲が『いい成果物をあげたい』とか『○○をやりたい』じゃなくて、『人の上に立ちたい』とか『どんな船でもいいから船頭になりたい』。この欲は強いですよ!やっぱりモチベーションを保つのに。で、それに対して、オレガー対○○。じゃあ私たちは何か?っていうとですね、弱い。『やった感』(笑)。『やったね!』っていう。オレガー対やった感の戦いなんですよ。

つまり、オレガーが『俺がやったんだ!俺がやったんだ!』って横取りしていくことを警戒しながら、話のわかる同じモチベーションでがんばっていける一緒に働いている人と、『よし!これで気持ちのいいものができた!あとは世間が判断してくれるだろうけど、私たちとしては、いま精一杯の、最大限の努力をしていいものができたと思う』と。で、結果が出たら、やったね!じゃないですか。この、やった感。でもね、このやった感っていうのがですね、モチベーションを上げるには非常にいいんですけど、オレガーによって削がれるんですよ。オレガーの『俺がこれは最終的には判断したんだよな?』みたいなこと。人間関係ってあるじゃん?で、そこで反発すると人間関係が上手く行かなくなって、働くのが難しくなるとかさ。

あと、やっぱりその、これね、言葉に語弊はあるけれど、思ったことある人、ほとんどじゃないかな?と思うからちょっと犠牲になってっていうか、羊になって言うけどさ。『お前がバカだから回らないんだよ!』って思ったこと、あるでしょ?ぜったい、1回は。あるでしょ?だけど、『俺がバカだから回らないから、その席、どけ!』って言えないじゃん。で、『何で1回目の案から2回目、3回目で、また1回目に戻ってんだよ!?』みたいなさ。あるじゃん。

でね、これやった感にも2種類あるわけですよ。1個は、達成した時のやった感。達成感を伴うやった感。そうじゃなくて、会議とかのやった感の人がいるわけ!つまり、費やした時間。成果物に対してどれだけ最短距離で行けるか?純度を上げるか?じゃなくて、こねくり回した・・・もうグルテンじゃないんだからさ。うどんじゃないんだから、こねてもしょうがないんだよ!っていう。そのね、『あ、この人、やった感の人かな?』と思ったら、『ああ、そっち側・・・?宗派の違うやった感だな』みたいなのがあったりするわけですよ。

あとやっぱりね、モチベーションを上げていくにはどうするんですか?って周りに聞くと、いろいろ話がみなさんあって。苦労してるんだなと思うんですけど。1人の方はね、『ヘイト持ち』って言っていて。ヘイト持ちって何か?っていうとですね、敵を作るんです。で、『クッソー!あいつめ!』って。漫画の読み過ぎだと思うんですけど。基本的に。その敵を作って、そのラスボスを倒すための俺の旅、みたいなことでしょ?で、そのヘイトを作ることによってモチベーションっていう。でもね、これもね、意外とすぐに達成できちゃったりするんですよね。そうすると、持ちづらい。

あと、意識高い系ね。ジェット出社?違う、エクストリーム出社みたいなさ。『俺、意識高いよ』って。『短い会議をやることで俺はがんばっている』とか。『私は、そこで相手を否定しないっていうネゴシエーションの仕方を持っているの』みたいな、意識高い系。でもこれもね、内側で発酵してきて、結局お前邪魔だよ!みたいになってくるんですよね。

でね、あといちばんやっぱり怖いのがさ、会社員だと特にそうですけど。成果より人間関係を優先しなきゃいけない時ってあるじゃないですか。『いや、もうこれぜったいにこうじゃなくて、ああした方がいいんだけど。金が出ているの、資金がこっから出てるから、資本はこっちだからこっちの言うことを聞くしかないし。あと、今回ここでこの人の言うことを聞いておいた方が、次に大きい仕事につながるから・・・』みたいなことに。成果の純度よりも人間関係を優先するってことがあるわけですよ。これがね、まあいいか症候群がモチを下げる大きな原因になるわけですよ。ねえ。だから『やりがい搾取』なんて言われてますけども。やりがい搾取の仕事の前に、みんなどうやってやる気を湧かせてるの?

いちばんこれ、びっくりすのは、世のお母さん方ですよ。もうだって、モチベーションなんて旦那とか子どもがご飯食べて『美味しいね』って言ってくれる顔とかしか、ないわけじゃないですか。金銭、払われないんですよ?それ、どうやってモチベーション、保っているの?意識高い母?どうやってるんですかね?ちょっと今日はですね、みなさんに、やる気、どこから湧いてくるのか?どうやってモチベーションを保っているのか?それをぜひ教えてください。メール、お待ちしています。

お送りしたのはジェイミー・リンで『You Ain’t Got No Money』。クラブバージョンでございます。ねえ。働かないと『You Ain’t Got No Money』でございますけども。まあ、モチベーションなー、あとなー・・・(笑)。もう愚痴になっちゃうね。これ以上話すとね。だから今日はみなさんのご意見、お待ちしておりますので、よろしくお願いします。

<書き起こしおわり>

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