ジェーン・スーさんが2025年4月25日放送のTBSラジオ『SHURE presents 音楽の金曜日~あなたとミュージックプレゼント~』の中で「あの時かかっていたあの曲」というテーマでトーク。『OVER THE SUN』武道館公演で堀井美香さんが披露した『マイ・ウェイ』について話していました。
(ジェーン・スー)でも『金曜ボイスログ』が始まったおかげて元々金曜日に堀井さんと2人でやってた『生活を踊る』。私は「絶対、堀井さんと私は放っておいた方が面白いから。枠とかちゃんとない方がいいから」って言って始めたのが『OVER THE SUN』で。で、それでこの間、武道館をやったじゃないですか。
(日比麻音子)おめでとうございます。お疲れ様ですというか、本当にありがとうございますというか。
(ジェーン・スー)ちょっとTBSラジオリスナーさんとポッドキャストのリスナーさんってかぶっているところもあるけど、全然かぶってない人もいて。そこがまた面白いんですけど。で、そこきっかけでまたラジオの方を聞いてくれたりして、本当にありがたい中で、やっぱり一番は堀井美香というサラリーマンだった、会社員だった人間。本当にきちんとしてて、ちゃんとしてて。でもたまに突拍子もないこともやる。私、いつも言ってるのが堀井美香っていうのは真面目界の一番不真面目な人だと思うんですよ。
(臼井・日比)ああーっ!
真面目界の一番不真面目な人、堀井美香
(ジェーン・スー)私は不真面目界の一番真面目な人なんですよ。で、この2人が組んでるわけですけど。まあ、この真面目界の一番不真面目な人のタガが外れるとこうなるんだっていうのが武道館で堀井美香が突然、熱唱した『マイ・ウェイ』。
(臼井ミトン)これさ、でも「タガが外れる」っておっしゃいましたけど、聞いてる方は「うまっ!」って感動してました。
(ジェーン・スー)でもあれ、よく考えるとなんだかよくわからない。デヴィッド・リンチみたいな世界になっちゃっていて。元々、あの日はレッドカーペットっていうテーマだったんで赤だったんですよ。で、中高年の皆さんはお分かりになりますけど。『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』じゃないですけど。デヴィッド・リンチの『ツイン・ピークス』の時、赤の部屋ってございましたよね? あの照明、あの明るさの感じでまるで堀井美香がローラ・パーマーのように出てきて。
で、頭にかすみ草を差しているんですよ。そういうディレクションも本人がしてるわけです。で、架空の歌謡ショーみたいな。で、8000円のドレスをわざわざ通販で買って。で、そこにこういろいろ衣装さんに装飾をつけてもらって。まあ、ベタベタのメイクをして、まとめ髪で。なんていうんですか? 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』みたいな感じ。マルチバースでずっと歌手を30年やってきた堀井美香みたいなので出てきて。
(日比麻音子)出てきちゃった(笑)。そんな美香さん、会ったことない(笑)。
(ジェーン・スー)で、またスタッフも、制作側もちゃんと応えちゃうから。武道館ですよ? 8000人の前で白装束の堀江美香が頭にかすみ草を差して出てきて。ブワーッてスモークですよ。床。
(臼井ミトン)ああ、スモークもすごかった。そうそうそうそう。
(ジェーン・スー)で、あの布施明さんの『マイ・ウェイ』を熱唱するっていう。「これ、なんだ、おい?」っていう。スーパーマルチバースで。
(臼井ミトン)で、僕、歌のクオリティがとにかく気になっちゃって。それで歌がちゃんとしてるものだから、なんか見てる方としてはもう完全なパッケージを見せられてる感じっていうか。
(ジェーン・スー)また、ここが不思議なんですよ。
(臼井ミトン)冷静に考えるとたしかに「うん? なんなんだ、これは?」ですよね。
(ジェーン・スー)なんか歌があれで、そんなにうまくなければ「ああ、おもしろでやってるんだな」っていう感じなんですけど。「いま……♪」から始まって。あれ、私たち、ヤマハに行ってちゃんと習ったから。
(臼井ミトン)ああ、ヤマハに行ったのか。いや、どこで習ったのか、ちょっと聞きたかったんですよ。ヤマハか、やっぱり。
(ジェーン・スー)ちゃんと練習をちゃんとして。堀井さんは低い声が出なかったんですよ。だからそれが出せるようになって。
(臼井ミトン)朗々と出てましたよ。
(ジェーン・スー)すごかった。で、私、今までシナトラの『マイ・ウェイ』は聞いたことがあったんですけど。布施明さんの『マイ・ウェイ』については疎かったの。勉強不足だったの。で、改めて歌詞を見てみたら、本当にまるで会社を辞めて世の中に出て行く時の堀井美香のような歌詞で。これから先の人生、4月でね、「もう会社、辞めようかな」っていう人もいると思うんですよ。そろそろ5月になって。
(日比麻音子)ゴールデンウィーク前って、しんどいですよね。
(臼井ミトン)一番しんどい時期だからね。
(ジェーン・スー)その時にこれを聞いて頑張ってくれたらいいなと思って。あと、本当に堀井さん、その時に……TBSがふざけてですね、我々のブロマイドっていうのがセブンイレブンでこの間まで売っていたんですけども。堀江美香のブロマイド、おかしくないですか? 「ありがとう」って書いてあるんですよ(笑)。何? 何、これ?(笑)。
(日比麻音子)ガッツポーズで「ありがとう」(笑)。
(臼井ミトン)あとね、堀井美香さんの歌い終わった後の「ありがとう」を口だけ動かして「ありがとう……」っていうのもすごい往年の歌手っぽかった。
(ジェーン・スー)あれも「やるから」ってずっと言ってたんですよ。
(臼井ミトン)ああ、そうなんだ(笑)。
(ジェーン・スー)「ありがとうってやるから」って。あんなにめちゃくちゃなのに緻密に、本人だけが計算されていて。
(臼井ミトン)すごいセルフプロデュース能力だ。
(ジェーン・スー)すごかった。で、歌も本当にうまかったじゃないですか。本当に、うっかり感動しないようにするので精一杯だったんですよ。私たち。
(臼井ミトン)「うっかり」ってことはないんだけどさ(笑)。
(ジェーン・スー)元々がいい歌だから。
(臼井ミトン)じゃあちょっとそのあたり、歌詞もね、日本語詞にも注目して布施明さんのバージョンでお聞きいただきましょうか。はい。では布施明で『マイ・ウェイ』。
布施明『マイ・ウェイ』
(臼井ミトン)お送りしているのはジェーン・スーさんの「あの時、かかっていたあの曲」。布施明で『マイ・ウェイ』でした。このため具合。この再現度もすごかった。
(ジェーン・スー)すごかった。「もうダメだぞ! そろそろ歌い出さないと!」っていうところまで行ってから「愛と……♪」って(笑)。
(日比麻音子)もう、なんかズレの技が巧みですね。
(ジェーン・スー)しかもそれを、なんて言うんだろう? 「30年、やってきました」みたいな面でやるんですよ。あの時、私は先月、3月12日の武道館で「いかに自分がつまんない人間か。リミットが外せない人間か」って……やっぱりリミッターを外せるっていうのはすごい才能だなと思いますね。
(日比麻音子)2枚、お写真もね、用意していただいて。
(ジェーン・スー)ああ、『M』を歌っていたスーさんだ。
(日比麻音子)『マイ・ウェイ』の美香さんと。
(ジェーン・スー)私はプリプリの『M』を歌ったんですけど。これも「みんなで歌える歌って何だろう? 『OVER THE SUN』の互助会の人たちの年齢層を考えると……」とか。あと、その前に読む手紙を決めてたんで。「その手紙を受けて、みんなで歌える楽しい歌はなんだろう?」っていう。もう、逆算ですよね。つまんない人生だよ!
(臼井ミトン)いやいや、それはさ、やっぱり来てくれるもうお客さんのことを一番に考えてっていう。その愛を感じますよ。
(ジェーン・スー)でも、どっちの方がその日の夜、夢に出るかって言ったら、堀井さんですよ。完全に。悪夢だけど(笑)。悪夢だけど、夢に出るの堀江美香の『マイ・ウェイ』。
(臼井ミトン)でもね、これ夢に出るじゃないけど。この後、ロビー・ウィリアムスの映画の『BETTER MAN/ベター・マン』っていうのを見に行ったんですよ。そしたらその『BETTER MAN/ベター・マン』のクライマックスが『マイ・ウェイ』のシーンで。もう美香さんがちらついちゃって、ちらついちゃって。
(ジェーン・スー)わかる(笑)。もう無理!
『BETTER MAN/ベター・マン』のラストでちらつく堀井美香
(臼井ミトン)ちょっと待って。美香さん、ちょっと出てこないで。ちょっと待ってっていう風になる。めちゃくちゃ映画のいいシーンなのに、みたいな。思い出しちゃうっていうのがね。これ、でも『マイ・ウェイ』はね、メールも来てますよ。杉並区の方。「若山弦蔵さんがDJを務められたTBSラジオの『バックグラウンドミュージック』を思い出します。日曜日の昼下がり、往年の映画音楽や流行歌と落ち着いたトークを楽しめるちょっと贅沢な番組でした。その定番曲で最終回のラストにも流れたフランク・シナトラ『マイ・ウェイ』をリクエストします」という。
でもね、これ、英語で聞く『マイ・ウェイ』だと結構、人生を振り返って。死ぬ間際にというか。「我が人生、一遍の悔いなし」みたいな感じの歌なんですけど。たしかにね、日本語のこのバージョンって、ちょっと「船出」とか、「信じたこの道を私は行くだけ」みたいな、これからの未来への決意みたいなものをすごく感じる、ちょっとまた全然英語の歌とイメージ違うんだなっていうのを感じましたね。
(ジェーン・スー)「迷わず行けよ、行けばわかるさ」なんですよ。こっちは。だから全然ね、そこは違うんですよね。
(臼井ミトン)まあ、その英語バージョンだと日本人の歌手では加山雄三さん、尾崎紀世彦さんあたりがシナトラのバージョンでやってますけど。その布施さんとかも入れてこれ、まあ日本三大『マイ・ウェイ』みたいな感じかなって感じだけど。やっぱり布施さんのこの日本語のバージョン、すごく……。
(ジェーン・スー)ズレもね。で、YouTubeを見せられて。「愛と……」っていうのをずっと、
これを歌いたいです」「ああ、そうですか……」みたいな。「ああ、武道館で『マイ・ウェイ』を歌うんだ」っていう。
(日比麻音子)美香様の緻密なプロデュースが。
(ジェーン・スー)彼女はやりたいことがはっきりしていて。で、それで突拍子もないことなんですけど、それに乗ってつまんなかったこと、ないんですよ。今まで1回も。だからスタッフも全員、「わけがわかんないけど、やるか」っていう感じになるっていう。
(日比麻音子)まさに『マイ・ウェイ』ですね。美香さんのね。
(ジェーン・スー)だって『OVER THE SUN』の1年目、」一番最初のヒューリックホールでやったイベントの時に「私、聖徳太子になる」って言って。「顔ハメをするので1万円札のお金の大きいボードを作ってください」って言われて。「何を言ってるんだ?」と思ったんですけど。とりあえずそれを受けたんだけど。で、その時の舞台で一番、金かかったのがその顔ハメボードだったっていう。
(日比麻音子)いいなー(笑)。かっこいいですね。後輩から見てると、もうめちゃくちゃかっこいいですよ。
(ジェーン・スー)やっぱりあそこまで傾いて(かぶいて)いってほしいです。
(日比麻音子)傾ききれねえ! 『マイ・ウェイ』、すごい!
(臼井ミトン)『マイ・ウェイ』で行きましょう。
(ジェーン・スー)そう。『マイ・ウェイ』ですよ。本当に。
堀井美香さんが完全セルフプロデュースで行ったという『マイ・ウェイ』熱唱、半端ないですねー。やっぱり堀井さん、自分のやりたいことがはっきりしていてブレないから信頼感がすごいんですよ。そしてそれをしっかりやり切る……素晴らしいです!
