安住紳一郎 街頭インタビューの難しさとコツを語る

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安住紳一郎さんがTBSラジオ『日曜天国』で2007年6月にしたトークの書き起こし。街頭で一般の方にインタビューするお仕事、街録の難しさやコツなどについて話していました。

局アナ 安住紳一郎

(安住紳一郎)あの、これはちょっと内輪の話で恐縮なんですけども。ああいうインタビューっていうのもね、アナウンサーとかリポーターの必須科目なんですけどね。

(中澤有美子)そうですね。うんうん。やったこと、あります。

(安住紳一郎)なんですか、『街録』って言いまして。これがね、私、とてもとても新人の頃、苦手で。なかなか難しいんですよね。まず、止まってくれる人がいないですし、答えにくい問題とかだと、なかなかそれに答えてくれる人がいないということで。だいたい、新入生ぐらいだと、キャリアが全くないぐらいのところから始めると、最初は20人に1人ぐらい取れればいい方で。

(中澤有美子)ええ。

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新人の頃、街録が苦手だった

(安住紳一郎)難しいお題。『浮気をしたことがありますか?』とか、『体重を教えてください』とかね。『夜の生活はいかがですか?』とか、そういう難しいお題だと、本当に50人に1人答えてくれるか答えてくれないかぐらいなレベルだと思うんですけども。

(中澤有美子)そうですね。

(安住紳一郎)最初はあの、トロトロトロトロね、なかなか取れなくてやっていると、職人肌のね、カメラマンとかが露骨にね、嫌な顔をしたりして。長くかかるから。で、なんかそのうち日が暮れてきて。で、なんか照明が必要だからって言ってね、スタッフが照明を取りに帰ったりなんかして。『うわっ、俺がダメだからこんなになっている!』と思ってね。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)で、制作スタッフのディレクターとかから、『先輩の○○アナウンサーはだいたいこれぐらいの仕事だったら2時間ぐらいでやってたよね』なんて、そんなちょっとね、愚痴とか言われたりしてね。『バカ!バカ!』なんて思ってましたね(笑)。

(中澤有美子)ええ・・・

(安住紳一郎)『この俺の控えめの、押しの弱いところが魅力なんだよ!わかってねーな!』とか、心の中で言ってたりしましたけど。本当に最初の頃、苦手で。トイレに行って、そのまま逃亡してやろうか?と思ったこともありますしね。『俺が照明やるから、お前がしゃべってみろよ!』ってね、照明マンに詰め寄ったこともね、ありましたけども(笑)。

(中澤有美子)そうですかー。

(安住紳一郎)まあね、そういう風に身内にね、育ててもらったってこともね、あるんですけども。ちょっとマニアックな技術論になりますが、そんなに難しいのかな?と思うかと思うんですが、結構難しくて。いちばんその、日常生活の会話と街録のインタビューで決定的に違うことは、ラジオ聞いているみなさんにこんなことを朝一からね、しゃべっても仕方ないですが。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)まあ、ラジオの前でお話を聞いている、同業者に告ぐ!

(中澤有美子)ああ、そうですか、はい(笑)。

(安住紳一郎)(笑)。難しいんですよね。あの、聞く方がいっぱいしゃべっても結局ダメという。

(中澤有美子)そうなんですよ。答え言っちゃダメなんですよね。

(安住紳一郎)答え言っちゃダメっていうことで。その、なんて言うんですかね?相手からたくさんの言葉をしゃべってもらうように仕向けるというか。そういうことが必要で。たとえば、『じゃがいもの男爵芋とメークイーン。料理によって使い分けをしてますか?』っていうことをインタビューしたいんだけれど、結局、聞く俺が『じゃがいもの男爵、メークイーン、料理によって使い分けをしていますか?』って聞いちゃうと、向こうは『はい』とか『いいえ』とかしか言わないんですよね。

(中澤有美子)ね!

(安住紳一郎)すると、そんなものね、撮って帰ってきても、『はい』『いいえ』って、それだけを延々放送してるわけにもいかないんで。やっぱりその、なんて言うんですかね?質問の趣旨すらも向こうに言ってもらうようなぐらいの聞き方が必要になってくると。

(中澤有美子)そうなんですね。

(安住紳一郎)これがなかなか難しいというね。相手が一方的に主張してるような、そんなイメージが必要っていうね。で、特に質問する側はほとんどマイクしか映ってないぐらいな感じですから。そこで、駆け出しの安住アナウンサーは考えたわけです。10年ぐらい前ですね。スーパーに行って、男爵芋とメークイーンを買ってきたわけです。

(中澤有美子)はい。

(安住紳一郎)それで、ひとつずつ、両手に男爵とメークイーンを持って、そしてカメラの見えないようなところに2つの芋を子どものようにペロッと出して。ちっちゃい声で、『これ』って言ってみるんですよ(笑)。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)それでマイクをスッと向けるんですよね。すると、ちょっと困惑したような表情を一瞬するものの、『ああ、はいはいはい。じゃがいも。男爵と、メークイーンですよね?』みたいな。今度、言ってくれる。『やった!言った!言った!』みたいな。

(中澤有美子)これこれ!うん。

(安住紳一郎)それで、さらにちょっと首をかしげて、『?』ってやってみると、『えっ?あ、使い分け、してます』みたいな。『おおー!取れた!取れたね!』っていう(笑)。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)うん。懐かしいですけどね。そう。さらにもう一歩ね、具体例を聞きたい!っていう。『じゃあ、一体どんな料理に?』ってさらに聞きたいと思ったんですよね。それでこう、『たとえば?』っていう風に言ったら、今度そのインタビューを受けてくれた主婦の方が、うっかり男爵芋の方を指さして、『これは、肉じゃがに・・・』とか言いそうになったんですよ。

(中澤有美子)ああー。

(安住紳一郎)で、基本的にそのインタビューで『これは』っていうのはちょっとね。喜ばしくないんですよね。やっぱり、『男爵は』とか、『メークイーンは』って言ってもらわないと、ちょっとインパクトに欠けるんですね。『これ』とか指示名詞とかダメなんですよね。ええ。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)それで、慌ててその男爵とメークイーンを後ろにフッて隠しちゃう!『ふぅー、あぶないあぶない!』っつって。もう、前に出していたじゃがいもをフッて隠して。すると向こうはさらに怪訝な顔で、『ん?なんで隠すんだろう、この人?』と思って。思ってるんだけども、『だ、だ、男爵は、ねえ。ホクホクしてるから、コロッケに』みたいな。『うわー!言った!』みたいな(笑)。『言った!言った!』っていう(笑)。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)『口で言って!口で!』っていう(笑)。さらにその一方も聞きたいから、メークイーンを握っている右手の、後ろ手に隠した右手の肩を上にヒクヒクこう・・・『こっち、こっち、こっちは?』っていう(笑)。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)『えっ、あ、メークイーンは煮崩れしないんで、肉じゃがに』みたいな。『はぁー、できた!』っていう。うん。懐かしいですね。

(中澤有美子)本当ですね(笑)。

(安住紳一郎)10年ぐらい前の、まだ若かりし頃の、私の黎明期の話ですが。

(中澤有美子)がんばってましたねー!

(安住紳一郎)がんばってましたね。もう、インタビュー答えてくれた主婦の方の顔をいまだに覚えてますけどもね。本当に、菩薩に見えましたよ。本当。『はぁー、よかった!』と思ってですね。ええ。

(中澤有美子)本当、本当(笑)。

(安住紳一郎)さらには、その発展形で、マイクが拾わないような小さな音量で、ささやきながら聞くっていう技も編み出しましたけども。

(中澤有美子)ほう?

(安住紳一郎)(小声で)『ピーマン料理。なに?なに?』とか言う(笑)。マイクがね、拾わないように。(小声で)『ピーマン。料理は?』って言うと、『えっ?ピーマンですか?料理?ああ、チンジャオロース』とか言って。ここだけ聞くと完璧なインタビューになっているっていうね。

(中澤有美子)聞き返すことを利用して。ええ、ええ。

(安住紳一郎)こんな姑息なテクニックを駆使し、私は成長を遂げまして。5年目ぐらいになりますと、だいぶ上手になってきまして。ほぼ、百発百中でインタビューに成功するようになったという。ええ。

(中澤有美子)そうですか!

(安住紳一郎)素晴らしい成長ぶりでございました。自分で言うのもなんですが。

(中澤有美子)そうですね。

(安住紳一郎)まさに名声をほしいままにした時期が一時期あったんですけども。気を良くした安住アナウンサーはですね、さらに街録のレベルを上げようとですね、新たな課題を私に与えます。それは一体、なんなのか?まあ、みなさんにとってはどうでもいいことでありますが。

(中澤有美子)聞きたい。

街録の新たな課題

(安住紳一郎)まず、その大概聞きづらい人っていうのがいるわけですね。これはたぶんみなさんも道を聞く時とか、そうかもしれませんが。やはり、見た目が怖い人に聞くのはとても嫌だ。

(中澤有美子)そうですね。

(安住紳一郎)さらには、プライドが高そうなご婦人、キレイな女性。これがまた、聞きにくいんですよね。ええ。『ふん?ラジオ?私、興味ないから』みたいな。『インタビュー、答えません。困ります』みたいな。そういう人が多いんですね。

(中澤有美子)うん、うん。

(安住紳一郎)ということで、そのフロンティアスピリッツに火がつきまして。じゃあ、街録を聞くんだったら、聞けなそうな人に全員聞く!っていう。ということで、私の黎明期の街録ヒット作に、任侠風情の人ばかりに聞いた『好きなケーキは何ですか?』という街録があります!これは名作です!

(中澤有美子)(爆笑)。自分で縛りを設けたわけですね。

(安住紳一郎)自分で縛りを設けて。『好きなケーキの種類を聞いてこい、安住!』って言われてですね、それでまあ、銀座とかに聞きに行けばいいものを、私はですね、浅草に行きましてですね。ちょっと怖い、強面の人全員に聞いてくるっていう。

(中澤有美子)男性に?(笑)。

(安住紳一郎)ええ。男性縛りという。ものすごい怖かったですけども。がんばって聞いて来ましたよ。ええ。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)『好きなケーキは何ですか?』って言うと、すっごい怖い人が『モンブラン!』とか(笑)。

(中澤有美子)(爆笑)

(安住紳一郎)『やっぱり、イチゴじゃねーか?』とか。

(中澤有美子)(笑)。あ、結構答えてくださる?

(安住紳一郎)いや、だいぶキャリアを積みましたから。ええ。私も成長してですね。

(中澤有美子)そうかそうか。なるほどね。

(安住紳一郎)これもなかなか難しくて。なかなかね、いい作品ではありましたけども。さらにそのもう一方、後期は美人ばかりに聞くという、ジゴロ的な街録作業を私は展開したわけですけども。

(中澤有美子)(笑)。趣味とね、実益を兼ねて。

(安住紳一郎)趣味と実益を兼ねて。もう本当にね、有名だったんですよ。自分で言うのもなんですが。私の撮ってくる街録は本当に美人ばかりを撮ってくるということで。評判はすぐにですね、赤坂界隈に広がりましてですね。今度、あの収録したテープを編集する編集マンっていう人がいるんですけども。その編集マンがですね、『安住が撮ってきた街録のテープは俺に編集させてくれ!』って。『いやいや、俺だ俺だ!』とかこう、取り合いになって大騒ぎになったという伝説がありますけども。

(中澤有美子)(爆笑)

(安住紳一郎)いつしか私はですね、まあ苦手だったんですけども、『街録の貴公子』とまで呼ばれるようになったわけですけども。

(中澤有美子)本当ですね(笑)。初めて聞きましたけどね。

(安住紳一郎)そうですね。まあ、初めて聞いた方も多いと思いますけども。自分的には、非常に満足していた一時期があったという。

(中澤有美子)街録王になったんですね。へー(笑)。

(安住紳一郎)どうでもいいことなんですけどね(笑)。でもその、たぶんね、ラジオをお聞きの方も、『話す』とか『スピーチする』っていうことについてね、ちょっと悩んだことがある人も多いかな?と思いますし。僕もあの、『人前で話す時のコツはありますか?』ってよく聞かれるんですが。

(中澤有美子)うん。

(安住紳一郎)よく、昔からね、『話し上手になる前に、聞き上手になれ』って言われるんですけども。まあ、やはり古の人はいいことを言うなと思ったんですが。私もこう、しゃべる仕事に就いたと思いきや、やはり最初の5年間ぐらいはそうやって、インタビューでね、聞く練習っていうか、上手に話を聞く練習ばかりさせられましたからやはり、ちょっとそういうこともあるのかな?と思いましたけどね。

(中澤有美子)うん。

(安住紳一郎)いまはほとんど人の話は聞きませんが。

(中澤有美子)(爆笑)

(安住紳一郎)中澤さんの話とかも、ほとんど無視している状態の毎日が続いているわけですけども。

(中澤有美子)いやいや(笑)。

(安住紳一郎)ということで、ぜんぜん人の話なんか聞かずに20分ぐらいしゃべり続けてルンですが。まあ、そういう全日空のトラブルから、急に私の自慢話ということでございました。

<書き起こしおわり>

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