安住紳一郎さんがTBSラジオ『日曜天国』の中で仕事で訪れた奄美大島についてトーク。事前に予想していたのとは全く違った奄美大島の魅力について話していました。
(安住紳一郎)それから先週、私木曜日に奄美大島に仕事で行きまして。仕事とはいえ、いろんなところに連れて行ってもらえるのはありがたいし、うれしいんですが。奄美大島にはじめて行きまして、大変いろいろと感ずるところがありました。みなさんは行かれたこと、ありますか? なかなかないですよね。
(中澤有美子)そうですね。
(安住紳一郎)ええ。鹿児島県ですけども。ちょうど九州の南端、鹿児島と沖縄本島の真ん中ぐらいに奄美群島……少し沖縄寄りですけども。奄美群島がありますけども。東京からですと、ほぼ同じ運賃で沖縄に行けますから、やはり旅行先としては沖縄を選ぶ方が多いようですね。あえて奄美大島に行かなくとも……という感じでしょうか? それから、飛行機の便があまり便利なほど出ていませんので、やはり行きづらいということもあり。また、パック旅行などでもあまり格安のものがない。当然、競争が働いていないのでそういうことになるんですが。なので、正規運賃ですと片道だと奄美まで東京・羽田から5万2千円かな? 那覇までで4万6千円ですから、距離は那覇の方が遠いんだけども、奄美の方がずいぶんと高いというようなそういうことになっていてなかなか行きづらいということがあるんだと思うんですけども。
(中澤有美子)ふーん。
(安住紳一郎)沖縄はやっぱり海とかビーチとかリゾートホテル。外国の観光客の方からの人気も高いですし。本当に日本を代表するいい観光地だなと思いますけども。私も似たようなところに、近いところにあるので、奄美大島・奄美もほぼ一緒かなと思ったんですが、全く違いましたね。
(中澤有美子)へー!
(安住紳一郎)全く違いました。いちばん驚いたのは、日差しがないんですよ。
(中澤有美子)ええーっ?
日差しがない奄美大島
(安住紳一郎)みなさんもイメージできますよね。鹿児島と沖縄の真ん中で与論島とか加計呂麻島とかがあるところなんですけども。あと、徳之島とかですね。沖縄本島のちょっと上ぐらいにあるんですよ。なのに、日差しがあんまりないんですよ。どれぐらい日差しがないのか気になって、私帰りの空港でスマートフォンを使って調べて「えっ!」って声が出てしまうぐらい驚いてしまって。日差しのなさ、どれぐらいだと思います? この聞き方も乱暴ですけども(笑)。
(中澤有美子)ええっ? 「日差しがない」っていう意味がちょっとわかんないですけども。
(安住紳一郎)ああ、そうですか。「日照時間」っていうんですか? 太陽が顔を出している時間。
(中澤有美子)ええーっ、それは……すごいあるんじゃないですか。南の方だから。
(安住紳一郎)どう考えても日照時間、長いと思いますよね?
(中澤有美子)ギンギンにあると思いますよ。
(安住紳一郎)ギンギンにあると思いますよね? よく日照時間のランキングとか出たりしますけど。高知県とか、やっぱり太平洋側が長くて。むしろ、日照時間が短い県はみなさん、わかるんじゃないですか?
(中澤有美子)なんだろう? なんか北の……北欧とか短いですよね?
(安住紳一郎)そうですね。北欧は短いですし、日本ですと「秋田県」っていう名前が出てくると思うんですよ。ちょっと詳しい方は。
(中澤有美子)うんうん。色白の人が多い。
(安住紳一郎)秋田美人だとか。あとは、ちょっとマイナスなイメージで言うと、日照時間が短いので自殺率が高いのは秋田県ですもんね。太陽を浴びている時間と関係があるなんていう論文があるぐらいですから。世界的に見ると自殺者が多いのはスウェーデンですもんね。日照時間が短いですからね。
(中澤有美子)はー。
(安住紳一郎)なんとですよ、奄美大島は秋田県よりも日照時間が短いんです。
(中澤有美子)ええーっ!?
(安住紳一郎)という声を空港で私、出したんです。「ええーっ!?」って。いや、驚きますよね。稚内とか釧路とかのイメージもありますよね。霧が出ていて……とか。日照時間の短さ、なんと奄美大島にある奄美市が日照時間で第一位なんです。日本の全部の市の中で。
(中澤有美子)なんでなんでなんで?
(安住紳一郎)驚きますよね。もうそこからスマートフォン釘付けですよ。
(中澤有美子)(笑)。まだ信じてないです。
(安住紳一郎)ですよね。だって、沖縄の上ですよ。奄美大島ですよ。日照時間が日本でいちばん短い……そんなことがあるわけないってことですよね。
(中澤有美子)ですよね。
(安住紳一郎)東京都内で港区のマンションがいちばん安い。そんなわけがない! そんなわけがない。そういうこと、ありますよね。
(中澤有美子)そうですかね(笑)。
(安住紳一郎)えっ、違います?
(中澤有美子)そうですね。常識と思っていたことが違うのですか?
(安住紳一郎)いや、港区なんて働くところでしょう? そんな住んでいる人なんて、お金持ちだけでしょう?
(中澤有美子)そうね。そういうことか。
(安住紳一郎)奄美大島の日照時間が日本でいちばん短いの。こんなことに気付かずに暮らしていたのかと思ってちょっとびっくりして。
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)さらに、雨がよく降るんですよ。雨の量、降水量でいくと、なんと今度は日本ナンバーワンなんです。よく雨が降るんで、太陽が顔を出す時間が短くなるということらしいんですけども。
(中澤有美子)へー!
(安住紳一郎)降水量、今度日本ナンバーワンですよ。年間3000ミリですって。私、地理受験していたんで、「3000ミリ」っていうところで椅子からちょっと前に体重が動いたんです。
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)「3000ミリ!?」。桁違いですよ。関東だと1300とか1400ぐらいですから。多いところでも2000ですよ。那覇市で2000ミリですよ。那覇市で2000ミリ。北にちょっとズレて奄美大島3000ミリですよ。奄美の人のお決まりの冗談で「奄美は月のうち35日は雨が降っています」っていうのがかなりウケるらしいんですけど。
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)とにかく雨が降っているんですって。
(中澤有美子)ああ、そうなんですねー。
1ヶ月に35日雨が降る(奄美大島ギャグ)
(安住紳一郎)なので、なんとなくやっぱり沖縄本島とか石垣島との雰囲気とは違うんですね。鬱蒼とした山……当然ビーチとかマリンスポーツもありますし、砂浜などもきれいですけども、むしろ印象に残るのは怖いぐらいの山、雨、ガス、霧、鳥、ヘビ、ハブ。
(中澤有美子)ヘビとハブが(笑)。
(安住紳一郎)私は北国で海のないところで育ったので、むしろなんか落ち着く!っていう。
(中澤有美子)ええっ?(笑)。
(安住紳一郎)いや、本当に。大変落ち着く。沖縄本島の航空会社が経営しているようなホテルのビーチよりもはるかに落ち着いた。それで、「私の求めていたリゾートはここだ!」と思って。
(中澤有美子)決まりましたか(笑)。
(安住紳一郎)素晴らしい。
(中澤有美子)その霧感が? 鬱蒼とした感じが?
(安住紳一郎)黒潮が島の周りを取り巻いているんですよ。それで、結構高い山がありますから、もうそこにぶち当たって雲が湧く湧く。もう、常に霧。そして雨。びっくり。
(中澤有美子)へー! 行ってみたいなー。
(安住紳一郎)そうですよね。月のうちの35日は雨が降るんですよ。
(中澤有美子)1回の雨、長いんですか?
(安住紳一郎)いやー、ちょっとそこまでは聞いていないんですけども。でも、私が行った日はやっぱり夜、雷で隣の町が停電していましたね。
(中澤有美子)ほー。激しい。
(安住紳一郎)うん。それから詳しい方は「東洋のガラパゴス」と呼ばれていることも知っていると思うんですけども。やはり、生物の北限と南限がぶつかって、さらに大陸と分かれて、地球が寒くなった時でも黒潮の影響で奄美だけやたら暖かかったので、昔大陸などに住んでいた生物がそのまま残っているということで。今年の3月に国立公園にしていされて、来年? 2018年には世界遺産の指定が有力視されているという奄美群島なんですけど。来年、もう世界遺産に指定されるかもしれませんから、行くとしたら早いうちがいいかもしれませんね。
(中澤有美子)へー。
東洋のガラパゴス
(安住紳一郎)で、なんとなく「東洋のガラパゴス」……ガラパゴスはみなさん、知っていますもんね。いろいろと変わった生物が、少し化石のような感じの生物たちが残っていて、研究的には非常に、ダーウィン先生などが勉強したことで有名ですけども。
(中澤有美子)はい。
(安住紳一郎)ここでも、聞いてみたらですね、ガラパゴスって結構大きな島なんですよ。四国の半分ぐらいあるんですけど。奄美大島の1000倍ぐらいの大きさがあるんですよ。ガラパゴス諸島には固有種が343あるんですよ。さすがガラパゴスという感じですけどね。ガラパゴスにしか住んでいない動物や植物が343。奄美大島に固有種がいくつあると思いますか? ガラパゴス340に対して奄美大島は153あるんですよ!
(中澤有美子)おおーっ!
(安住紳一郎)1000分の1の面積を考えると、むしろ固有種を育んでいるガラパゴス度合いで言うと、ガラパゴス超えしているガラパゴス加減! 誇らしいじゃありませんか。
(中澤有美子)本当ですね(笑)。真性ガラパゴスですね(笑)。
(安住紳一郎)いや、ガラパゴス密度はガラパゴス超えしてますよ。
(中澤有美子)本当だ(笑)。
(安住紳一郎)奄美大島、奄美にしか住んでいない動植物が153あるっていうんですから。ねえ。
(中澤有美子)そうですか! 濃いですね。
(安住紳一郎)世界のガラパゴス340に対して、日本の奄美150ですよ。どうですか?
(中澤有美子)ほう!
(安住紳一郎)結構イーブンでやっていると思いますよね。私、すごい誇らしくなっちゃって。
(中澤有美子)本当ですね! 「どうよ?」って感じですね!
(安住紳一郎)「えっ、ガラパゴス大したことないじゃん? 奄美大島で新発見に発見を重ねたら、ガラパゴス超えするんじゃないか?」って。あんまり研究が進んでいないらしいですから。これ、もしかするとありますよ。近い将来。ガラパゴスはね、世界の学者がずーっと通っていろいろとやっていますからね。奄美大島に世界の学者を集めたら、たぶんガラパゴス超えするんじゃないかな?
(中澤有美子)わーお、わーお、わーお!
(安住紳一郎)と、思いますね。私、国内至上主義だから。むしろ、そういう気持ち、応援の気持ち、高なっちゃう。
(中澤有美子)そうですね(笑)。
(安住紳一郎)あとは、生態系がやっぱり独特なんですね。奄美大島の生態系の頂点に君臨しているのは何だと思いますか? ハブなんですね。
(中澤有美子)へー! そうですか。
生態系の頂点はハブ
(安住紳一郎)噛み付いて、毒出して、弱って丸呑み!っていう。トップがハブなんですよ。猛禽類がいないらしいんですよね。沖縄には猛禽類がいるらしいんですけど。っていうことは、みんなハブへの防御態勢を整えながら進化しているから、町に行くとすでにおかしなことがいっぱいあって。私が何より驚いたのは、島の鳥がハブを怖がっているんですよね。で、木の上にまでニョロニョロニョロニョロ登ってきますから、普通鳥って休んだり眠る時って少し幹側の目立たないところとか、葉に隠れた内側とか、そういうところで他の鳥からの視線を遮る。人間の視線を遮るのかな? ところが、自分を襲う鳥は他にはいないので、じゃあ奄美大島に住んでいる鳥は怖いのはハブだけになるから、どこで寝るか?っていうと、どこで寝ると思いますか?
(中澤有美子)えっ? 木の上が安心できないのか?
(安住紳一郎)木の上で寝るんですけど、要するにヘビが登ってきたことを確実に理解できるところ。なので、電線とかだと真ん中。木の枝だと木の枝の先にとまって寝ているんですよ(笑)。
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)逆だよね(笑)。
(中澤有美子)揺れとかを感じやすい(笑)。
(安住紳一郎)そう。で、ヘビが来たら枝が揺れるでしょう? すると「あっ、ハブが来たわい」と思って逃げるわけだよね。で、電線の場合も目立たないところにいたらすぐにやられちゃうから、要するに自分はものすごい視界良好のところにいるわけね。電線とかの真ん中にとまっているわけ。で、どっちから来てもほら、「あっ、ハブが来たな!」っていう感じがニッシニッシニッシ……でわかるでしょう?
(中澤有美子)吊り橋効果で(笑)。
(安住紳一郎)そうそう。したら、「あっ!」って出るわけ。なかなかないよね?
(中澤有美子)そうですね(笑)。
(安住紳一郎)すっごい目立つところに鳥たちがとまっているの。置き時計みたいにとまっているのよ。「ええっ、そこ!? そこですか!」みたいな。びっくり。
(中澤有美子)へー! 面白いですね!
(安住紳一郎)面白いですね。なんかいろいろ。あとは有名な、天然記念物かな? アマミノクロウサギっていう、人気がありますけども。古代種という、ウサギのもっとも原始的なウサギと言われていますけども。アマミノクロウサギ。最近保護活動がずいぶんと進んで、ずいぶんと個体数が戻ってきたらしいんですけども。
(中澤有美子)ふーん!
(安住紳一郎)ウサギなんてハブに一瞬でやられちゃいそうな感じ、しますでしょう? しかも、昔からいるから。アマミノクロウサギってすっごい動きがそんなに俊敏じゃないから、「なんでこれが絶滅しないんだろう?」って思ったら、アマミノクロウサギだけはハブ先生はアマミノクロウサギを食べないんですって。
(中澤有美子)ええっ?
(安住紳一郎)「ええっ? そんなもっとも狙いやすそうなものをなぜ食べないんですか? なぜ捕食しないんですか?」って……わからないんだそうです。
(中澤有美子)理由がわからない?
(安住紳一郎)理由がね、わからないんですって。なんで食べないんだろうね?
(中澤有美子)なんなんだろうなー。
(安住紳一郎)地元の研究者の人が、「私の仮説ですけど……」って言っていましたけど。奄美大島はごくごくたまに……10年に一度とか20年に一度、すごい寒い日があるんですって。なんか一度、雹が降ったとかで2016年ぐらいにもニュースになっていましたけども。で、ヘビは変温動物だから、自分の身体が寒くなるとどうしようもなくて。で、その10年に一度ぐらい、どうしようもなく冷えが厳しくなった時に、アマミノクロウサギが掘った巣穴で暖をとるっていうのが発見されているんですって。なので、「10年に一度の寒い日の逃げ場所先を掘ってくれるアマミノクロウサギを恩義に感じて食べないんじゃないか?っていう仮説があります」って言って。
(中澤有美子)ええっ? 伝説みたい。もふもふなところにくっついたりするのかしら?
(安住紳一郎)いや、要するにウサギはいないんだけども、そのウサギが掘った巣穴に暖をとらせてもらうんだって。
(中澤有美子)お借りして。
(安住紳一郎)「なんか、イソップ童話みたいじゃん!」って思って。
(中澤有美子)本当ですね。
(安住紳一郎)好感度あがっちゃった!
(中澤有美子)どっちの? ハブの?(笑)。
(安住紳一郎)あ、私の奄美大島に対する好感度があがっちゃったの(笑)。「なに? この優しい島は!」って思って。「恩義に感じて?」なんて(笑)。
(中澤有美子)その解釈(笑)。
(安住紳一郎)「優しい!」なんて(笑)。
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)「へっ? ハブにもそんな気持ちが? 優しすぎる!」なんて、好感度あがって。
(中澤有美子)そうですか(笑)。
(安住紳一郎)たぶん家族旅行とかは沖縄に行くのが絶対にいいと思いますけども、沖縄の旅行で「ちょっと違うな」と感じて。まあ一度学生の時に行って、それから恋人とも1回行って。「うーん、国際通りのお土産屋を見てもさほど心が騒がない……」っていう、そういう年代に差し掛かった方はぜひ、今年の夏の旅行の候補先として奄美大島を私はおすすめいたします。
(中澤有美子)へー!
(安住紳一郎)ちょっとね、値段もかかりますし。行けば単純に楽しいという場所じゃないですけども、なにか目的を持って、あるいはなにか知的好奇心を持って、何かをやりたいという方は2018年の世界遺産に指定される前にぜひ一度、行ってみるのはいかがでしょうか?
(中澤有美子)そうですねー!
(安住紳一郎)ちょっとお金かかりますけども。奄美大島、私たぶん近いうちにもう一度、休日をとって行きたいなと考えております。
<書き起こしおわり>