安住紳一郎が語る ちゃんぽんの町・飛び地の謎

安住紳一郎が語る ちゃんぽんの町・飛び地の謎 安住紳一郎の日曜天国

安住紳一郎さんが2008年3月にTBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』で話したトークの書き起こし。ちゃんぽんが気になる安住さんが、ちゃんぽん店がたくさんある町が飛び地化する謎について語っています。

(安住紳一郎)さて、暗い話ついでにもうひとつ。私はここ5年ほど、ずっとちゃんぽんのことが気にかかっているんです。

(中澤有美子)ちゃんぽん?

(安住紳一郎)ちゃんぽんです。あの、食べるちゃんぽんですね。

(中澤有美子)ええ。長崎ちゃんぽん。

(安住紳一郎)長崎ちゃんぽんですね。ラジオをお聞きの方はどうですかね?ちゃんぽんは比較的、全く食べないっていう人と、結構食べるという人に二分されるような感じをちょっと、なんとなくしてるんですけども。中澤さんは食べますか?よく。

(中澤有美子)いえ、年に1回食べないかもしれないですね。

(安住紳一郎)そうですよね。まあ、ご当地ラーメンなんかがブームになりまして、すこし落ち着きをみせてますんで、私はこの後はたぶんちゃんぽんブームが来るんじゃないかな?という風に読んでるんですけども。そもそも、私はちゃんぽんとの出会いが遅くてですね。初めて食べたのがたぶん24・5才。24才くらい。社会人になってから3年目くらいに食べてるんじゃないかなと思うんですが。

(中澤有美子)はい。

(安住紳一郎)実家のあります北海道では食べたことがなかったの。東京に来てから、初めて食べた。うん。そんな、ちょっと出会いが遅かったこともありまして、ちょっとちゃんぽんについて、あまり知らないということもあるんですけども。いろいろ仕事であちらこちらに飛び回っていますと、そのちゃんぽんが全国各地で突然、ばったりと出会う傾向があるんですよ。

(中澤有美子)ふーん。

(安住紳一郎)なんかこう、忘れかけてたころに意味深なメールを送ってくる女友達みたいな感じ。イメージ、わかりますかね?

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)突然、ばったりと全国各地でちゃんぽんと正面からぶつかる時があるんですよ。ええ。

(中澤有美子)そうなんですね。思いがけない時に。

(安住紳一郎)どういうことかというと、ちゃんぽんの町みたいなのが全国各地に点在してるんですよ。

(中澤有美子)ああ、そうなんですか。

(安住紳一郎)なんとなくね、喜多方ラーメンとか、札幌ラーメンとか、長浜ラーメンとかありますけども。ちゃんぽんも、結構全国各地にちゃんぽんの町として点在してるんですよ。

(中澤有美子)えっ、知らなかったですね。

全国に点在するちゃんぽんの町

(安住紳一郎)知らないですよね?で、先週、長崎県の小浜町っていうところにちょっと仕事で行ってきたんですけど。現在は雲仙市っていうみたいなんですが。アメリカ大統領候補のオバマ氏と名前が一緒だって盛り上がった福井県小浜市ではなくて、長崎県の、長崎市内から車で2時間くらいのところにある、小浜温泉で有名な小浜町っていうところがあるんですが。

(中澤有美子)小さい浜と書くんですか?

(安住紳一郎)そうです。そうです。小さい浜で小浜町っていうんですが。世界でいちばん温泉の温度が高い温泉でもあるんですが。105度あるらしいんですが。そこも、ちゃんぽんの町だったんですよ。

(中澤有美子)はー。

(安住紳一郎)人口たぶん1万人か2万人ぐらいしかいないところで。ちゃんぽん屋さんが40軒あるんですよ。おかしいですよね?

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)で、ラーメン屋さんは1軒か2軒しかないんですよ。で、ちゃんぽん屋さんが40軒あるんですよ。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)で、普通にお寿司屋さんとかスナックでもちゃんぽんを出すぐらい、ちゃんぽんの町なんですよ。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)まあその、長崎市が発祥のちゃんぽんだから、同じ長崎県内で小浜町がちゃんぽんの町だとしてもおかしくないっていう風に思われるかもしれませんが、その長崎市と小浜町の間にある諫早市とか。諫早市、大きいですよ。人口40万くらいいるのかな?30万くらいいるのかな?その30万都市を飛び越してるんですよね。諫早はそんなにちゃんぽんの町ではない。

(中澤有美子)あ、そうですか。

(安住紳一郎)なぜ飛び火してるのか?それから、3年くらい前に今度は四国の八幡浜。漁港で有名なところがあるんですが。そこで、またちゃんぽんに会ってるんですが。そこの八幡浜も、ちゃんぽんの町・八幡浜なんですよ。

(中澤有美子)ああ、そうなんですか。

(安住紳一郎)四国って讃岐うどんで有名ですけども。うどん王国でしょ?

(中澤有美子)そうですよ。

(安住紳一郎)うどん王国の中で、ぽっかり八幡浜だけちゃんぽんの町なんですよ。

(中澤有美子)ああ、そうなんだ。へー。

(安住紳一郎)あまり興味ないですか?

(中澤有美子)ありますよ(笑)。

(安住紳一郎)これ、八幡浜も人口4万人くらいしかいないんだけども、ちゃんぽんの店がまた40軒くらい固まっているの。

(中澤有美子)へー!なんでだ?

(安住紳一郎)ちゃんぽんは群れる傾向にあるんです。

(中澤有美子)(爆笑)

(安住紳一郎)なぜかな?と思って。

(中澤有美子)なぜでしょう?

(安住紳一郎)ずーっと、ここ5年ほどそのちゃんぽんのことが気にかかっていて。これ、全国各地でこういう体験をしてるものなので。なぜちゃんぽんは群れるのか?って言うことをずっと考えてたんですね。

(中澤有美子)はい、そうですね。

(安住紳一郎)それで、先週、その結論を私は導き出しました。

(中澤有美子)わー!はい。

(安住紳一郎)ということで今日は、ちゃんぽんはなぜ群れるのか?

(中澤有美子)という研究テーマについて。はい。

(安住紳一郎)ちょっとお話。時間をお借りしてお話してみたいと思うんですが。これ、もう本当にホワイトボードを使って説明したいぐらいなんですよ。

(中澤有美子)あ、そうですか(笑)。

(安住紳一郎)きっちりね。ええ。まずあの、ラジオをお聞きのみなさん、頭に日本地図を思い浮かべながら聞いていただきたい。

(中澤有美子)はい、かしこまりました。

(安住紳一郎)むしろ、『あっ、あそこに地図帳があるな。日本地図があるな』という方は、いま取ってきてほしい。

(中澤有美子)わかりました(笑)。

(安住紳一郎)話が進めづらいから。車を運転してる人は、車を停めてほしい。

(中澤有美子)そんなに(笑)。

(安住紳一郎)考え事しながら運転すると危ないので。車を停めてほしい。地図を持ってきてほしい。ちゃんとみなさん、日本地図を頭に思い浮かべて話を聞かないとゴッチャゴチャになりますからね。いいですか?

(中澤有美子)わかりました。はい。

日本全国ちゃんぽんの分布

(安住紳一郎)まずそのちゃんぽんは先ほど中澤さんがおっしゃっていたように、長崎市で生まれたことは間違いないんですよ。これは明治時代に四海楼という中華料理屋さんの店主が、当時多かった中国人留学生のために、安価で栄養価の高いちゃんぽんを作ったということ、これは間違いないんですけども。

(中澤有美子)あ、そういうことなんですね。

(安住紳一郎)それがなぜ飛び火してったのか?ということなんですが。まず、長崎市から車で2時間くらいある小浜町の温泉地になぜ飛び火したのか?諫早市を越えて。断続してないわけですよ。飛んでるわけですからね。飛行機とかない時代に。

(中澤有美子)ほうほう。

(安住紳一郎)それは、まずは湯治客が広めたものっていうことで。当時はそんなに人の移動とかが盛んではないので。大きく移動するような、しかもそういう温泉とかに行けるようなお金持ちの皆さんがですね、長崎市で味を覚えたそのちゃんぽんを、湯治。温泉に行く旅行の際に伝えたということで飛び火していくんですけども。さらにその長崎で生まれたちゃんぽんは、横。日本地図でいいますと東側ですね。右側にずれまして、今度佐賀県。佐賀県に今度、井手ちゃんぽんという。これもまた佐賀県内では井手ちゃんぽんコンツェルンっていうのがあるんですけども。

(中澤有美子)コ、コ、コンツェルン?

(安住紳一郎)コンツェルン。もう要するに佐賀の人はもう、長崎ちゃんぽんじゃないんです。井手ちゃんぽんというその、ちゃんぽんチェーン店の味に親しんでるわけですよ。

(中澤有美子)ああ、チェーン店があるんですね。

(安住紳一郎)これ、井手ちゃんぽんといいますけども。これはあの、野菜に・・・野菜が多めでそこに生玉子をかけて食べるという風習が加わる。これで長崎ちゃんぽんを押さえましたね。それから、小浜ちゃんぽんを押さえましたね。さらに、東にずれて佐賀県の井手ちゃんぽんね。野菜に生玉子ね。

(中澤有美子)はい、わかりました。

(安住紳一郎)さらに今度本州寄りになりますと今度福岡県。福岡県に今度、当然流れは行くわけなんですけども、ここでちゃんぽんの悲劇その1。

(中澤有美子)悲劇?

(安住紳一郎)福岡と言えば?麺類と言えば。

(中澤有美子)ラーメンです。

(安住紳一郎)そうなんですよね。

(中澤有美子)博多ラーメン。

(安住紳一郎)博多ラーメン、長浜ラーメン、久留米ラーメンで有名な。この福岡のこのとんこつラーメン勢に行く手を阻まれる。ここでストップする。

(中澤有美子)ほー。そうでしょうね。

(安住紳一郎)長崎からのちゃんぽんの流れは、まずは九州はこの本州の玄関口、福岡でストップ!

(中澤有美子)なるほど。はい。北上してみたものの。

(安住紳一郎)うん。たしかに勝てない感じはあるよね。

(中澤有美子)そうですね。うん(笑)。残念ながら・・・

(安住紳一郎)ちょっとね、存在感的にね。ええ。うん。まあ、屋台がね、主にやってたんで。屋台、あんまり強力な火力を使えないので。どうしても、やっぱり煮込みのちゃんぽんは弱かったんじゃないかな?と思うんですけども。ということで、関門海峡前で本州上陸失敗。ちゃんぽんね。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)でも一応、残党が本州にちょっとね、渡ってるんですよ。関ヶ原の戦いの島津軍みたいなのがいたんですよ。ちょっと横を抜けてフッと行っちゃったやつ。

(中澤有美子)ああ、本当ですか(笑)。

(安住紳一郎)で、鳥取、島根でも一応『ちゃんぽん』という言葉があるんだけれども。鳥取、島根で呼ぶちゃんぽんとは、いわゆる、あんかけ五目ラーメンのようなもののことを、鳥取、島根のみなさんはちゃんぽんと呼ぶ。で、こうちゃんぽんが来たんだけれども、福岡のラーメン王国を通り抜けてるうちに、なぜか山陰の方に渡る時には、五目あんかけラーメンのことをちゃんぽんと呼ぶという。

(中澤有美子)呼ぶようになったと。

(安住紳一郎)ということで、完全にラーメンにされちゃって万事休す!って感じですよ。本州に渡ったら。

(中澤有美子)はいはい、質問でーす。五目あんかけラーメンのことを、私はだいたいちゃんぽんと思っておりますが。そもそも、ちゃんぽんと劇的になにが違うんでしょうか?

(安住紳一郎)なるほど。ええとですね、ラーメンというのは麺自体をお湯で茹でて、湯切りをして丼にあげて、スープと合流させて。で、具をのせますよね。その具の調理の仕方にもいろいろありますが。ちゃんぽんというのは、お鍋をひとつしか使わずに調理しますので。先にこう、スープと野菜を煮詰めたその鍋の中に、生麺というか、ゆで麺だったり蒸し麺だったりもするんですが。そこに合流させて。

(中澤有美子)あ、そこで茹でて。

(安住紳一郎)茹でるっていうか、煮込むんですね。これをちゃんぽんと言うわけです。

(中澤有美子)あ、そういうことですね。

(安住紳一郎)で、ラーメンとちゃんぽんはちょっとやっぱり違うんです。

(中澤有美子)なるほど。湯切りとかそういう作業がないわけですね。あ、承知しました。じゃあ、だいぶ違うものになっちゃったんだ。

(安住紳一郎)それで長崎ちゃんぽん。今度は本州上陸ルートが遮断されましたので。今度下に行くわけですけども。みなさん、地図をちょっと思い浮かべていただきたいんですけども。長崎から今度、南ですね。行きますよ。すると、天草諸島があるわけですね。熊本県ですけども。当時、船で行き来のあった天草諸島にちゃんぽんは南下する。で、天草も実は天草ちゃんぽんがすごく有名。ということで、日本三大ちゃんぽんと言うと、小浜ちゃんぽん、長崎ちゃんぽん、天草ちゃんぽんを言うんですよ。

(中澤有美子)へー。

(安住紳一郎)で、南下。で、天草諸島から船で伝わって、今度は熊本の九州に上陸したいんだけども、今度ここは太平燕(タイピーエン)と肥後ラーメンがあるんだね。うん。太平燕っていうね、なんだろう?こんにゃく麺みたいな。これ、熊本の郷土料理の独特の麺なんですけども。

(中澤有美子)そうなんですか。

(安住紳一郎)太平燕と肥後ラーメン。これに押されて、天草諸島から上陸できない!

(中澤有美子)そうですね(笑)。

(安住紳一郎)で、そのちゃんぽん勢はさらにやっぱり船で下にくだるのね。で、鹿児島に入る。で、鹿児島が若干やっぱりここもラーメンが強いんだけれども。鹿児島県民の人はちゃんぽんにウスターソースをかけて食べるという習慣を持ってるんですよ。それなので、一応ちゃんぽんの上陸はギリギリ成功したんだけども、ちょっとやっぱり向こう独自のものに染められちゃう。

(中澤有美子)なるほど(笑)。

(安住紳一郎)長崎から距離があるから。鹿児島の方はね、結構ね、ウスターソースをかける習慣がある。驚きですよね。

(中澤有美子)そうですね(笑)。

(安住紳一郎)そいで、さらに南へ。今度沖縄。沖縄にも実はちゃんぽんはあるんです。で、沖縄ちゃんぽんという言葉があるんですが、うれしかったのも束の間。鹿児島でソースを入れられちゃったちゃんぽんは、完全に体裁を骨抜きにされております。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)『沖縄ちゃんぽんをください』って沖縄で言うと、野菜炒めに玉子を混ぜたものをご飯にかけた、その丼みたいなのが出てきます。

(中澤有美子)麺じゃない(笑)。

(安住紳一郎)麺じゃないんですよ、もうすでに。ええ。沖縄ちゃんぽん。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)野菜炒めに玉子を混ぜたものを、野菜チャンプルーをご飯の上にかけたものが出てきちゃうという。

(中澤有美子)丼なんだー。

(安住紳一郎)でも一応、思い出していただきたいのは、先ほど紹介しました佐賀県の井手ちゃんぽん。これは野菜炒めに生玉子をかけますので、なんとなくDNAが突如として姿をまた現すという。

(中澤有美子)そうですね。玉子というところで。

(安住紳一郎)このへん、時系列グチャグチャなので。私の思い込みとしか言いようがないんですけども(笑)。まあでも、冗談はさておきまして、よくあのゴーヤチャンプルーとか聞きますよね?直訳すると『ごちゃごちゃ混ぜて炒めたもの』みたいなものが豆腐チャンプルーとか言うんですが。最近はずいぶん有名になりましたけども。このチャンプルーとちゃんぽん。実は同じ語源だということを言う人もいて。語源は中国語とかインドネシア語とか諸説様々なんですけども。まあ、なんとなく、ね。語感も似てますし、ごちゃごちゃ混ぜるということで。お酒ね。『焼酎とビールをちゃんぽんして・・・』って言葉もあるように、こう、一緒くたに混ぜちゃうという意味で、どうやらちゃんぽんは一応チャンプルーになっているということでね。

(中澤有美子)そうですね。

(安住紳一郎)で、南はここまでということで、日本地図、さらに思い浮かべていただきたいんですけども。長崎を中心に、こう福岡を通って本州の上の方。それから今度、九州の左側ですよね。西側を通りまして、沖縄まで。緩やかなこう、曲線をね、なんとなくイメージできるという。これ、『ちゃんぽん曲線』っていうんですけど。

(中澤有美子)あ、そうなんですか(笑)。名づけて。はい。

ちゃんぽん曲線

(安住紳一郎)ちゃんぽん曲線って言うんですけど。福岡はちょっと点線になっちゃうんですけどもね。これがやっぱりちゃんぽんの大きな流れなんですね。

(中澤有美子)なるほど。ええ。

(安住紳一郎)さあ、そこで問題なんですけども、じゃあ四国の愛媛県の松山の下の八幡浜市だけはなぜ、急にちゃんぽんの町が現れるのか?

(中澤有美子)そうですね。

(安住紳一郎)ですよね。完全に関門海峡閉じられてますから。渡りようないわけですから。それで、去年の暮れ、私はある発見をして大声を出してしまいました。

(中澤有美子)はい。

(安住紳一郎)話、長ですか?大丈夫ですか?

(中澤有美子)大丈夫です。おもしろいです。

(安住紳一郎)大分県の湯布院の帰りに、大分空港から東京に戻ろうと思ったらですね、ちょっとおなかが空きまして。途中、あの別府。別府温泉、別府大分マラソンで有名な別府市、ありますね。そこでご飯を食べようと思って、なにを食べようかな?と思ったんですけども。ちょっとタクシーの運転手さんに聞いたら、『あ、ちゃんぽんでも食べてったら?』って言ったんですよ。

(中澤有美子)へー。

(安住紳一郎)で、『別府ももしかして、ちゃんぽん?』とか思ったんですけども。運転手さんに、『別府市もちゃんぽんぼ町ですか?』って聞いたら、『いやー、名物ってほどじゃないけど。でも、15・6軒はあるかな?』って。十分名物じゃないか!と思ったんだけども。

(中澤有美子)そうです。群れてますよ。

(安住紳一郎)結構群れてますよね?ええ。それで、別府も実は結構ちゃんぽん食べさせる店があって。ちゃんぽん屋さんが結構あるんですね。ええ。それで、『あ、別府もちゃんぽんなんだ』と思って。これは別府ちゃんぽんとは呼ばれてないんですが、私は勝手に別府ちゃんぽんと名づけたわけなんですが。

(中澤有美子)はい(笑)。

(安住紳一郎)それで、ちゃんぽん食べて、じゃあ空港に帰ろうと思って、海沿いを車で走ってもらったら、そこですごいものを見つけちゃったの。

(中澤有美子)はい。

(安住紳一郎)宇和島フェリー。別府から八幡浜にフェリーが出てるんですよ!八幡浜行きっていうフェリーが。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)これだ!と思って。つながったわい!と思って。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)ああ、そうか!と思って。なんとなくね、四国・九州に馴染みがないと、地図帳で四国と九州のページは違うから、横にあるっていう意識はあるんだけれども、そこにフェリーが出てるとか知らないので。あ、舟運だ!船だ!と思って。あ、これで八幡浜のちゃんぽんか!と思って。びっくりしてしまったんですけどもね。

(中澤有美子)で、『ああーっ!』って言っちゃったんですね。

(安住紳一郎)『ああーっ!』って。大声を出してしまいました。

(中澤有美子)大声(笑)。

(安住紳一郎)ニュートンのリンゴがちゃんぽんに落ちた感じ。

(中澤有美子)そうですか(笑)。

(安住紳一郎)本当に声が出てしまった。ええ。で、当然四国は讃岐うどん王国なんですよ。

(中澤有美子)そうですよね。

(安住紳一郎)で、八幡浜から上に車で1時間半くらい行くと、坊っちゃんで有名な松山市があるんですが。松山は今度焼きうどんの町なんですが。もうそっから身動きとれない。で、八幡浜はフェリーでちゃんぽん送られてきたんだけれども、もう右にも左にも送りこめないということで、実はこの四国勢もちゃんぽんはここで止まっちゃってると。

(中澤有美子)はー。

(安住紳一郎)うん。九州の玄関口、福岡でとんこつラーメンで出口を塞がれる。で、四国の方も八幡浜で、讃岐うどんで四方を取り囲まれて。九州から出られないちゃんぽん。

(中澤有美子)ブロックされちゃってますね。

(安住紳一郎)ブロックされている。しかし!しかしですよ、関東にお住まいの皆様にお伺いします。みなさんは、ちゃんぽんのことを知っている。じゃあ、なぜ知っているのか?中澤さん、質問です。

(中澤有美子)それは・・・リンガーハットがよくあります。

(安住紳一郎)大正解!

(中澤有美子)(笑)。正解ですか?

(安住紳一郎)リンガーハットですよ!この四国の讃岐うどん、福岡のとんこつラーメンのブロックを一気に食い破ったのはリンガーハットですよ。

(中澤有美子)そうですか(笑)。

リンガーハットの偉業

(安住紳一郎)全国にチェーン展開する長崎ちゃんぽんチェーン店ですけども。1974年創業なんですが。現在全国に500店舗。

(中澤有美子)そんなにあるんだー。

(安住紳一郎)東証一部上場。大企業ですけども。この大資本のチェーン店下で2つのブロックを安々とかいくぐるわけですが。まあ、人類の進歩はよく一部の天才によって作られていると言いますけども。まさしくこのブロックを破ったのはリンガーハットなんですよ。

(中澤有美子)へー。

(安住紳一郎)全国500店舗ですからね。でもですよ、でも、500も店舗があるリンガーハットとは言え、四国には支店は1軒もない。この事実にも震え上がらない?

(中澤有美子)そうですね(笑)。

(安住紳一郎)全国に500店舗持っているチェーン店なのに、四国には1店舗も出せていない!

(中澤有美子)やっぱり敷居が高いってことですか?

(安住紳一郎)やっぱりこの讃岐うどんブロックっていうものはすごいものがある。うん。さらに、野菜あんかけラーメンをちゃんぽんと呼び、間違った歴史を刻み続ける島根、鳥取勢。ここにも、リンガーハットは出店できていない。

(中澤有美子)あ、そうですか(笑)。

(安住紳一郎)さらに、北海道、東北6県、北陸地方、甲信越地方も1軒も出店できていない。

(中澤有美子)ああ、そうですか。

(安住紳一郎)関東では群馬県にもないそうです。ええ。なんとなくね、全国の人がリンガーハットを知ってるんじゃないかな?と思うんですけども、意外や意外。知らない人。四国とか北海道とか東北の人は『リンガーハット?なんだろう?』っていう感じなんです。まだ時代は。

(中澤有美子)そうなんですね。じゃあ東京の周りと、関西と・・・

(安住紳一郎)そうですね。まあ、愛知、大阪、それから兵庫、静岡、三重、岐阜。このへんには出店していて。当然、大都市には出店してるんですけども。やはりこの、四国の讃岐うどん包囲網、それから信州長野東北勢の蕎麦勢ですよ。

(中澤有美子)そうかそうか(笑)。

(安住紳一郎)蕎麦以外アレルギーっていうんですか?

(中澤有美子)(爆笑)

(安住紳一郎)この蕎麦地方。

(中澤有美子)蕎麦以外アレルギー(笑)。

(安住紳一郎)それから、甲州山梨のほうとう。これが睨みをきかせている。で、ラーメン王国北海道も、これに歩調を合わせたという。大資本といえども、それぞれの土地で培われた麺文化には敵わないと。

(中澤有美子)おもしろーい!

(安住紳一郎)いや、リンガーハットが四国に出店できていないっていうこの事実はすごいと思いますよ。

(中澤有美子)そうですね。

(安住紳一郎)なんて言うんですかね?こう、『人の口にチェーン店の戸は立てられない』みたいな(笑)。そういう、なんて言うの?庶民が培ってきた食文化にチェーン店が勝てない感じの、ね。ちょっとそういうなんか、ことはありますけどね。ええ。

(中澤有美子)入り込めないんだー。

(安住紳一郎)リンガーハット、とても美味しいですけどね。あの黄色のキャップのコショウがまた美味しいんですよ。

(中澤有美子)そうなんですか。

(安住紳一郎)やみつきになっちゃう。うん。私、あのリンガーハット友の会の会員でもあるんですけど。

(中澤有美子)ああ、本当にですか?

(安住紳一郎)本当にです。ええ(笑)。たまに5%割引を受けたりするんですけども。それぐらいリンガーハットも好きなんですけども。やっぱりすごいなと思って。各地でそのね、ちゃんぽんを広めないためのブロックっていうの?

(中澤有美子)うん、うん(笑)。

(安住紳一郎)結論ですけども、今日はちゃんぽんを食べて帰ろうかなと(笑)。

(中澤有美子)(笑)。もう、ぜったいそうですよ。探しちゃう。リンガーハット。

(安住紳一郎)ですよね?まあ、群馬県民の方はね、ちょっとないそうですけどね。ちょっとここずーっとちゃんぽんのことを考えていたので。

(中澤有美子)すごい研究テーマ。卒論みたいでしたよ。

(安住紳一郎)あ、そうですか?うん。いや、これは各地で行って、やっぱり急に40店舗のちゃんぽん屋に囲まれたりすると、『なんだこれは!?どうしてこういう広がりをみせるんだ?』と思うんですけどもね。ちゃんぽんは、なぜ群れるのか?というね。

(中澤有美子)そうですね。

(安住紳一郎)ここにどうやら、なんかね、理由があるんじゃないかと思うんですけどね。

(中澤有美子)大分へは、陸路行ったんですか?

(安住紳一郎)大分は陸路でしょうね。たぶんね。で、ここもキーワードになるんですけども、別府は温泉地ということで。やっぱりちょっとお金とグルメの湯治客っていうんですか?それが広めた傾向が強い。

(中澤有美子)そうですね。

湯治客と舟運がポイント

(安住紳一郎)真面目な話をすると、本当にポイントは湯治客と舟運。船の運びで。多いですね。当然いまと違って、陸路とか自動車とか、そういうテレビとかラジオとかがないものですから、やっぱり人づてに運ぶ。で、やっぱり船とかはね、当時からありますし。それから湯治客がたぶん情報を運んだんじゃないかな?という。繰り返しになりますけども、覚えていただきたいのは長崎ちゃんぽん、それから小浜ちゃんぽん。佐賀の井手ちゃんぽん。熊本の天草ちゃんぽん。そして、大分の別府ちゃんぽん。それで、四国にフェリーで渡った八幡浜ちゃんぽん。

(中澤有美子)はい。

(安住紳一郎)それから、ソースをかける習慣のある鹿児島ちゃんぽん。そして、沖縄ちゃんぽんということになりますね。調子に乗って博多ちゃんぽんって言うと、博多は本当にちゃんぽんのことが憎いんでしょうね。『博多ちゃんぽん』というと、ガラスの工芸品のビードロのことを言うんですよ。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)ええ。そこまでちゃんぽんを虐げるのか!?という。

(中澤有美子)徹底的に(笑)。

(安住紳一郎)福岡県民は。で、長崎の人はその博多ちゃんぽんのビードロのガラス工芸品のことを『ポコペン』と言います。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)これもしてやったり!っていう感じですね。ええ。『よくぞ返した!長崎県』って感じですよ。

(中澤有美子)オノマトペで返したんですね(笑)。

(安住紳一郎)ポコペンってあの、ペコペコペコペコするね。ポコペンっていう返しです。『えっ?博多ちゃんぽん?ポコポコペンペンだろ?』みたいな。そういうことですよ。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)地図帳を閉じてもらって結構です。

(中澤有美子)ねー、食べたい。

(安住紳一郎)食べたくなりますね。

(中澤有美子)待てない。はい。

<書き起こしおわり>
※この情報は2008年時点の情報です。2014年現在リンガーハットは北海道、東北、甲信越、四国へも出店しているようです。
[参考リンク]リンガーハット ホームページ

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