宇多丸・光岡三ツ子 初心者向けアメコミ入門講座とおすすめ作品

宇多丸・光岡三ツ子 初心者向けアメコミ入門講座とおすすめ作品 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

TBSラジオ『タマフル』で初心者向けのアメコミを特集!アメコミライターの光岡三ツ子さんと宇多丸さんがアメコミの基本的な構造や魅力、そしておすすめ作品を紹介していました。

(宇多丸)今夜お送りするのはこちらの特集。『すべての映画ファンに捧ぐ! 食わず嫌いのための、 今から始めるアメコミ入門特集』!『アメイジング・スパイダーマン2』、『X-メン フューチャー&パスト』、『キャプテンアメリカ ウィンターソルジャー』、そしてもちろん先週ムービーウォッチメンで扱わせていただきました『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と今年の映画界はアメリカンコミック、いわゆるアメコミ原作の映画が大盛り上がりでございます。しかし、映画は見るけど原作は興味ない、日本のマンガの方が面白いに決っているからアメコミは興味ない、という方、まだまだ多いんじゃないでしょうか。なんか敷居が高いような気がして。あと、読み方がわかんないみたいなのも当然ね、リテラシー的なことがあると思うんですけどね。そんなアメコミ食わず嫌いなみなさんに向けて、今夜はいまおすすめの初心者向けアメコミ作品や本国アメリカでのアメコミ事情など、アメコミ世界のいろは。ここを入門にいろいろ入っていけばいいんじゃないかという特集をやっていこうと思います。案内していただくのはアメコミライター・翻訳家の光岡 三ツ子さんです。よろしくお願いします。

(光岡三ツ子)よろしくお願いします。

(宇多丸)はじめましてですね。本当、よろしくお願いします。光岡さんのあちこちで書かれている原稿、それこそ先週のガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのプログラムパンフレットとか。とにかくアメコミ情報は光岡さんの文章で僕も勉強させていただいている状態で。

(光岡三ツ子)とんでもないです。ありがとうございます。

(宇多丸)僕がこの番組でなんかアメコミの原作について知ったようなことを言ったら、それはすべて光岡さんさんの孫引きということが多いという状態でございます。番組初登場となる光岡さん。簡単にご紹介いたします。アメコミライター、翻訳家。特にスーパーヒーローコミック系を専門とし、劇場パンフレット、映画秘宝などで執筆されています。主な翻訳本は『キック・アス』『スパイダーマンシリーズ』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー プレリュード』などいっぱいあるということでございます。だいぶ、こちらにドスンと積まれているので、後ほどおすすめ作品もあったりしますが。あれですか?アメコミを紹介しようっていう時にですね、難しいな、みたいに思ったりしますか?日本に紹介するのに。

(光岡三ツ子)あ、すごい難しいですね。やっぱり。あの、マンガの形態なんでみんなマンガと似ているんだと思うんですけども。ぜんぜんマンガ形式だっていうだけで、ぜんぜん違う文化のものなんで。アメコミとやっぱり日本のマンガっていうのは。やっぱりなかなかわかっていただくのが難しいです。

(宇多丸)やっぱり読み方からして違うものっていうことなんですかね?

(光岡三ツ子)そうですね。楽しみ方とか成り立ちとかがぜんぜん違うっていう感じです。

(宇多丸)逆に言えば、日本のマンガ的なものっていう先入観を捨てて、アメコミならではの楽しみ方みたいなのがいったんわかってしまえば、結構入っていけるっていう感じですかね?

(光岡三ツ子)その通りですね。

(宇多丸)はい。じゃあ今日はインストールしていただきたい。読み方というのをね。はい。それでは今夜はですね、そんな私のですね、間接的にね、いろいろ教えていただいているような気分になっております。光岡さんにですね、映画化されたアメコミを中心に。この番組、やっぱり映画というのがひとつ入り口になっておりますので。当然マーベル、一連のあれの。だいたいみなさん見てらっしゃると思いますんで。そこらへんを入り口に、初心者向けのおすすめアメコミ映画をご紹介していただくということになっております。よろしくお願いします。

(光岡三ツ子)よろしくお願いします。

(宇多丸)まずはですね、具体的な作品を紹介していただく前に、そもそもアメコミ。アメコミって簡単に言いますけど。アメリカではどういうものなのか?たとえばその、先ほど日本のマンガっていうので僕らどうしても先入観として、たとえば少年ジャンプがあったりとか、ビッグコミック○○があったりとかみたいなの、ありますけど。アメリカにおけるそのアメコミっていうのはどういう・・・たとえば流通形態であるとかね。発刊、どういう風に出ているのか?とかもぜんぜんわかってないんで。基本的なところをちょっと教えてください。どんな感じなんでしょうか?アメリカではどういう位置づけなのか?っていうあたり。

(光岡三ツ子)そうですね。まあ、日本のマンガと違って、日本のマンガって学生さんとかサラリーマンの方とか子どもから大人までみんな読むんですけど。アメコミっていうのは結構限られた人しか読んでない。限られたジャンルのメディアであるっていうのがまずありますね。

(宇多丸)あ、そうなんですか。じゃあ、なんていうんですか?たとえばいろんな映画化とかされてますけど。みんなご存知の、たとえば『るろうに剣心映画化!』とか、そういうこととはちょっと違うテンションっていうことですか?

(光岡三ツ子)違いますよね。なんだろう?まずアメコミっていうのは日本のマンガと違って、ちょっと本屋さんで売っていないっていうところがありまして。

(宇多丸)本屋さんで売ってない?

(光岡三ツ子)売ってるんですけど、結構大手のところに売れ筋のものしか置いてないみたいなのがありまして。なんでかって言うと、ちょっとコミックと普通の本っていうのは流通が違うんですね。アメリカっていうのは。日本は一緒なんで全部本屋さんに並ぶんですけども。アメコミっていうのはアメコミ専門の流通っていうのが別にありまして。で、アメコミの専門店。町にひとつあるかないかみたいなところにアメコミっていうものが売られてましてですね。そこで買ったりとか、あとはネットで買ったりとかっていう、限られた入手方法でしか買えないっていうものがまず、いちばんの大きな違いですね。

(宇多丸)やっぱりじゃあアメリカでも、そもそもマニアックな位置づけなんですか?

(光岡三ツ子)そうですね。やっぱり、こんだけアメコミ映画がアメリカでですね、すごい流行っていて。日本ではアメリカに比べると人気はイマイチだなっていう時に、『いや、でもアメリカではすごく人気のあるキャラだからでしょ?日本では知名度のないキャラだからしょうがないよね』っていうことを言われることがあるんですけど。いや、アメリカでもそんなにみなさん知りませんっていうことがありますよね。

(宇多丸)あー。まあたとえば、スーパーマン、スパイダーマンぐらいはまあ、なんとなく存在は知っていても。でもちゃんと、たとえばスパイダーマンの最新刊を全部追ってるか?っていったら、そんなもんでもないと。

(光岡三ツ子)そうですね。それに、もうアイアンマンとかのレベルになると、まああんまり知っている人はいないみたいな感じですね。

(宇多丸)あ、そうですか。いまとなってはね、あの映画で一気にああなりましたけど。じゃあそれまではほとんど知られていないキャラだった?

(光岡三ツ子)そうですね。なんか、だから時々『アメリカにおけるアメコミのポジションってどういうものですか?』って言われた時に、私がちょっとたとえとして出すのが、日本の特撮。割とこう・・・

(宇多丸)戦隊物だ、仮面ライダーだっていうことですかね?

(光岡三ツ子)そうです。なんかみんな知ってるんだけど、見ている人はごく一部じゃないですか。

(宇多丸)もしくは子どもたちは見てても、大人にとってはマニアックな趣味ですよね。どっちかっていうと。

(光岡三ツ子)でももう何十年も続いてて。固定されたファンがいて。すごくみんなマニアックな楽しみ方で楽しんでいると。で、アメコミっていうのはただ、ちょっと子どもも読んでない時期が長かったんで。人気がなくって。大人しか読んでないみたいな時が長かったんで。ちょっと特撮よりもっと知名度的には低かった・・・

(宇多丸)へー。あ、そうなんですね。じゃあたとえばガーディアンズ・オブ・ギャラクシーとかって、それこそガーディアンズ・オブ・ギャラクシーを日本で紹介する時に『日本では知られてない人たちだから・・・』っていうけど、どうですか?これ、アメリカ。

(光岡三ツ子)アメリカでも、まったくもって知られていない。

(宇多丸)まったくもって知られていない奴ら(笑)。

(光岡三ツ子)あのなんか、テレビになっていればだいたいみんな知ってるんですけども。テレビになるっていうのがそのマーベルコミックスっていうアメコミ出版社の映画、アイアンマンとかで有名なところですね。そこだけで言ってもキャラクター9000人いるって言われていて。そのうちの10人、20人とかですよね。テレビに出れるのは。だからガーディアンズ・オブ・ギャラクシーとか一切出たことがないので。

(宇多丸)あー。もともと向こうの人も知らないんだよという。

(光岡三ツ子)そうですね。それこそ、アメコミっていうか。結局はなんかあんまりみんな知らない。っていうのはスーパーヒーローものだっていうことがありまして。日本のマンガっていろんなジャンルがあって、みんなが興味持てるようになってますけど、アメリカっていうのは9割がたスーパーヒーローコミックスなんですね。

(宇多丸)やっぱり子ども向けっていう印象もあるっていうことですか?

(光岡三ツ子)あります。けど、子どもは読んでない(笑)。

(宇多丸)子どもは読んでない。あれですね。特撮好きな大人しかいない特撮物みたいな状況。結構かわいそうな感じの状況になっていたという。かつては。

(光岡三ツ子)そうです。映画でいまは子どもも読んでますし。若い人もいっぱい読むようになりましたけども。まあちょっとかつてはですね、ちょっと40代・50代ぐらいの男性の方が中心層というのがありまして。

(宇多丸)こういうのもいま聞きながら胸が痛くなってくるリスナーなり僕なりっていうのがいたりすると思うんですけど(笑)。ええと、これ、流れがアメリカでも変わってきたところっていつごろになるんですか?

(光岡三ツ子)はい。映画ですね。アイアンマン。

(宇多丸)アイアンマン。

(光岡三ツ子)そうですね。まあ、サム・ライミのスパイダーマンぐらいからだんだん『あっ、アメコミって面白いんじゃない?』ってみんなが思い始めて。

(宇多丸)最近じゃないですか。でも本当に。

(光岡三ツ子)すっごい最近です。それまでは、ちょっとマーベルコミックスは倒産しかけたりとか(笑)。

(宇多丸)もういまじゃ信じられないですよね。へー!あ、なるほど。そういう状況があると。じゃあたとえば買うんであれば専門のコミックショップ。時々アメリカ映画見てて、コミックショップみたいなね。すごくマニアックなうるせー店員がいて、そこでなんとかやり取りをするみたいな。日本で言うレコード屋さんみたいな、積んであるのを見ている場面なんてよく出ますけど。あそこで買うものだという感じですかね。

(光岡三ツ子)そうですね。キック・アスとかで出てくる・・・

(宇多丸)アンブレイカブルとかで出てくるコミックショップというところで買うっていう。

(光岡三ツ子)出てくるコミックショップというところで買うっていう。で、いまはデジタル出版がすごい盛んになってまして。やっぱりアメコミっていうのはちょっとB5サイズぐらいの32ページぐらいのすごいペラッペラの、コミックって言われる日本では見られない形態の、パンフレットみたいなやつなんですけども。すごくこれがコレクションしにくいんですよね。

(宇多丸)うーん。綴じとかもね、すぐにボロボロになっちゃいそうだし。

(光岡三ツ子)そう。なりますなります。だから、古いコミックはすごいプレミアがついて、何億円とかで取引されたりするのはそういう理由なんですけど。まあやっぱりそこもすごく読者にとってはネックだったので、デジタルの普及ですごく読者層が広がったっていうのは。いまはKindleとかiPadとかで簡単に読めて。何百冊でもコレクションできるので、すごく読みやすくなったっていうのがありますね。

(宇多丸)そういう意味ではアメリカでさえ『アメコミ、またようやく始まった』みたいな、そんなムードっちゅうことですかね?

(光岡三ツ子)いま、そうですね。まあ、と言っても日本のマンガに比べれば小さな小さな業界なんですが。

(宇多丸)あ、そう。そこがね、結構目からウロコでした。ぜんぜんわかってなかったですよ。そこ。

(光岡三ツ子)本当ですか?

(宇多丸)へー。あの、日本でね、たとえば光岡さんが翻訳されているようなのを出す時って、小プロとかから出すじゃないですか。ああいうのはじゃあ、薄っぺらなやつをまとめて出してくれているやつという。ふんふんふん。だから元々はペラッペラなやつで。なかなかしかもみんな手に入らない。だから、結構マニアックなのが日本でも読みやすくなっているってことですかね?

(光岡三ツ子)そうですね。いま、だからアメリカでも若い人たちがすごく昔の作品とかを手に取るようになったんですけど。日本でも、やっぱりずっとアメコミ出版って細々とやってきたんですけど。いま、もう映画人気のおかげでみなさん、だんだんだんだんに、少しずつ買っていただけるようになっているのかな?っていう。

(宇多丸)何回かに1回ね、波来る感じってありましたもんね。僕、すごい覚えているの、子どもの頃にスパイダーマンとかのあれ、どこから出てたんだろう?ちっちゃい単行本のやつですよ。それで、やっぱり元のやつを読んでたけど、それ、そんな盛り上がるわけでもなく。その次、なんかX-メンがドサッて出ましたよね。なんかね。光岡さん、声を出さずに笑うのやめてくださいよ(笑)。何笑いなんですか?それは。

(光岡三ツ子)いえ、盛り上がらずに終わっちゃったって(笑)。いや、だからいままでの何回かくるブームと本当に今回違うっていうのは、やっぱりいままでってアメリカのキャラクターっていうところに面白さがある、アメリカ文化に対する興味があるっていうところだったんですけど。いまはそうじゃなくて、キャラクターそのもの。ガーディアンズみたいなのって本当にこの性格とか成り立ちとかが好きじゃないですか。みなさん、キャラクターを好きになってくれているんですけど。本当にアメコミっていうものの内容がわかった上ですごい好きになってくれているっていう、新しいムーブメントが起きているかなっていう風にいま思ってるんですけども。

(宇多丸)なるほど。なるほど。あ、ちなみにですね、ちょっと基本的なビギナー向け質問というかですね。マーベルなんてね、いま普通に言っちゃってますけど。大きく分けてというか、ある流派というか、あれとしてはどういう流れがあるのか?っていうのだけ、ちょっと・・・

(光岡三ツ子)はい。あの、もういちばん基本的な知識として、『マーベルコミックス(Marvel Comics)』と『DCコミックス(DC Comics)』っていう大手の2社がアメコミ、スーパーヒーローコミックスの中ではあるんですね。で、アメコミのアメリカの中の販売っていうのはマーベルが40%ぐらい。DCが40%ぐらいっていうすごい大きなシェアになってまして。

(宇多丸)あ、でもそれ以外にもあるんですね。

(光岡三ツ子)それ以外もありますね。映画でたとえば言うと、『スコット・ピルグリム』とか『ミュータントタートルズ』とかって出しているのはみんな小さい出版社で。

(宇多丸)あ、そうなんですね。

(光岡三ツ子)そういう大手ではないところからも、まあそういうヒットはいくつも出てるんですけど。やっぱりそのバットマン・スーパーマン・ワンダーウーマンのDCコミックス。で、マーベルのキャラクターはみなさん映画でもご存知だと思いますけども。

(宇多丸)はい。いまやね、すっかり映画側はもうマーベルがものすごいね。マーベル1人勝ち状態がね。

(光岡三ツ子)ちょっと信じられない・・・

(宇多丸)倒産しかけていたとか知らなかったです。ぜんぜん。それ、いつ頃の話なんですか?

(光岡三ツ子)90年代ですね。

(宇多丸)あ、じゃあサム・ライミ手前まではもうヤバかった。

(光岡三ツ子)そうですね。やっぱりサム・ライミのスパイダーマンの力は大きかったですね。やっぱりあれでコミック業界の人さえも、すごく自信がついたっていう。我々は面白いものを作っているじゃないか!っていう。

(宇多丸)その状態。へー。

(光岡三ツ子)やっぱりちょっと歴史が長すぎて、停滞するような時もあったもんですから。

(宇多丸)それはもう中身的にもというか。テンション的にも。あと、これやっぱり1つには映画はあれですかね?やっぱりCGの普及とCG表現のハードルも下がるし、クオリティーも上がったことが結構大きい気がするんですけど。

(光岡三ツ子)そうですよね。本当にやっぱり2000年を過ぎないとアメコミ映画のクオリティーは上がらなかったから。あのタイミングで来たのは本当に幸運だったっていうのが言えると思います。

(宇多丸)ガーディアンズなんてね、CG抜きであれを表現しようとしたらどんな悲しいことになってしまうのか?っていうね。グルートとかどうなっちゃうんだよ?っていう(笑)。

(光岡三ツ子)(笑)。全部着ぐるみで。

(宇多丸)ショットごとに大きさが違うものを表現するしかなくなっちゃうっていうね。

(光岡三ツ子)それはそれで見たい気はするんですけど。

(宇多丸)はい。といったあたりで基本的なところはね。あ、ちなみになんでいまはマーベル強しなのか?

(光岡三ツ子)なんででしょうね?もうこれは完全に映画なんですけど、もちろんバットマンとかスーパーマンも変わらぬ人気ですごく・・・

(宇多丸)どっちもね、ヒットしてますよね。

(光岡三ツ子)大ヒットしてますけど。マーベルっていうのはやっぱりあの、いまアイアンマンからいまガーディアンズに至るまでの流れっていうのがあって。これがマーベルスタジオズっていうマーベルが自分で作った映画会社が作っている映画なんですけど。だからもう、自社のコンテンツのことは知り尽くしてるんですよね。どこにテーマがあって、まあマーベルっていうのは50年ぐらいの歴史があるわけなんですけども。スーパーヒーローコミックで。この50年の中で何があったのか?というのを全部理解した上で、それを2時間ぐらいにギュッて収める力を持っているスタジオなんですね。

(宇多丸)勘どころがちゃんとわかっている。

(光岡三ツ子)わかっている。これはやっぱり一朝一夕ではできないことで。やっぱり自社ならではっていう強みがあると思います。

(宇多丸)そうするとついついマニアックな方、マニアックな方に振り切って行き過ぎちゃいがちな気もするんだけど。そうも行かずにっていうことですかね?

(光岡三ツ子)なぜなら、楽しいのがマーベルだからですね。

(宇多丸)あ、そのマンガの内容的にっていうことですか?

(光岡三ツ子)はい。みんなに楽しく見てもらうのが本来マーベルだからっていうのがまず大前提としてわかっているからですね。

(宇多丸)あー!そうか、偉いんですね。じゃあね。マーベルはね。あと、僕マーベルのそれこそアイアンマンね。いまおっしゃいましたけど。そういう時から俺、偉いなって思うのは結構冒険的に見える人材とかを使うじゃないですか。要するにそれまでの、映画界の世界ではそんなに無名だけどこいつわかっている!っていうやつをちゃんと連れてきたりする。たとえばジェームズ・ガンに撮らせるとかって結構勇気いるじゃないですか。そういうところも偉い気がしますけど。

(光岡三ツ子)やっぱりでも、もう作るもののビジョンが、もうプロデューサーさんたちの中には見えていて。ゴールが見えてるからそこのゴールを分かち合える人っていうのがまず大前提で。っていうのがもう見えているから、それは別に監督さんだけじゃなくて、もう特撮からCGから全部そうですよね。そのゴールを一緒に見えてくれる人っていうので選べるので、普通の映画ではできない仕上がりになっているんだと思います。

(宇多丸)なんかすごくいい意味でプログラムピクチャー体制ができている感じしますね。いまね。うかがっていると。はい。ええと、だいぶみなさん入りやすい入り口の話になっているんじゃないかと思います。CMのあと、いよいよ個別でね、おすすめのアメコミタイトルをうかがっていきたいと思います。

(CM明け)

(宇多丸)TBSラジオ ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル、今夜は『すべての映画ファンに捧ぐ! 食わず嫌いのための、 今から始めるアメコミ入門特集』をお送りしています。ゲストはアメコミライター、翻訳家の光岡三ツ子さんです。引き続きよろしくお願いします。

(光岡三ツ子)よろしくお願いします。

(宇多丸)ということで、基本情報をうかがいましたので。これから、いま日本で簡単に手に入り、初心者にも読みやすい、光岡さんおすすめのアメリカンコミック。アメコミ入門編としてちょっとおすすめ作品をいくつか紹介いただきたいと思っております。どんなあたりを用意していただいているんでしょうか?

(光岡三ツ子)ええと、もうすごい何十冊も出てるんですけども。その中で結構やっぱり今回初心者向けの方にということで。ちょっとアメコミに入る入り口に最適と思われる作品を中心にご紹介したいと思っております。で、まずこれですね。ちょっと出たばっかりなんですけど。先ほどの話題から、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー。

(宇多丸)これね!

(光岡三ツ子)はい。『プレリュード』というですね、プレリュードシリーズっていうのがあるんですけども。マーベルの方で出している映画の前に読んでほしい本です。プレリュードって『前奏曲』っていうことなんですけども。で、ちょっとこれだけが古い作品。60年代、70年代とかの作品とかも収録されているようなものなんですけども。なんでか?って言うと、ちょっとガーディアンズのメンバーっていうのは2008年ぐらいにガーディアンズのチームとして結成されるまで、みんなそれぞれ単独で活動していたんですね。

(宇多丸)別個の話の人たちだった。

(光岡三ツ子)しかも、そのシリーズは別にそんなにヒットもしてなくって。まあ、いま読んでも結構面白いところはあるんですけれども。まあスターロードとかはあんまり連載は成功しなくて。その後ずーっと出番がなかったりとか。で、グルートとかっていうのは、最初はホラーシリーズのですね、ただすごく短い話の一話に地球を侵略する樹木宇宙人・・・

(宇多丸)樹木宇宙人として、怪獣みたいな。

(光岡三ツ子)怪獣みたいな。『地球を樹木の星にしてやる!』みたいなやつだったりとかっていう、本当にバラバラのエピソードからチームが作られたっていうのをわかっていただくためにそれが収録になっていて。ちょっと、やっぱり昔のコミックってですね、絵もいまから見ると、やっぱりちょっと見づらさみたいなのがあるし。ネームがあとアメコミってすごく多いんですね。昔は。

(宇多丸)言葉がいっぱい書いてありますね。

(光岡三ツ子)いっぱい書いてある。日本のマンガみたいな進化の仕方をしなかったものですから。止めた絵に、なんかセリフをたくさん書き込むみたいなことを昔はやってたんですね。なんでちょっと読みづらさみたいなのはあるんですけど、まあルーツをしっていただくっていう意味では最適なコミックではないかと。これ、読んでいただくと、これをよくひとつのチームにまとめようと思ったなって感心していただけるんではないかなという。

(宇多丸)だって長い歴史でぜんぜん別個の、しかもグルートなんかキャラクターとかもぜんぜん違うのに、っていうので。それはあれですかね?その2008年に1回ガーディアンズ、現在のガーディアンズのチームを組む時に、今回の映画化みたいなのをマーベル的には見据えててやり直したんですかね?

(光岡三ツ子)いえいえ。ぜんぜんそんなことはないです。だからあの、ただ単にこれはこういうシリーズがあって。で、新しいチームなんですけども、新しいチームは結構人気が出るって珍しいことなんですね。なんだけど、その新生ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーっていうこの映画のもとになったチームは最初からすごくちょっと人気が出たんです。で、まあプロデューサーも注目するところになって、っていうのが順番としてありました。

(宇多丸)なんか、それぞれ人気があった、わかんない。キョーダインとなんとかとマシンマンと、なんかぜんぜん文脈が違う人たちを連れてきてチームを組んだら、いますげーかっこいいものになっちゃった、みたいな・・・感じか?俺の言ってること、いいのか?(笑)。

(光岡三ツ子)いいんです。いいんです。なんかもう、みんな居場所がないキャラだったんだけど、宇宙を守るっていうひとつの目的でね、集まって。それがチームになったっていうこの感動をぜひ原作でも読んでいただきたいと思います。

(宇多丸)これ、もう映画ですでに夢中になっている人はその文脈、さかのぼっていくことがしやすいタイミングでしょうから。いままさに。だからね、まさか君ら、まだ行ってないんだろうな?おい!先週『バカ!おい!バカ!』みたいなことを言いましたけど。まあガーディアンズ、いま行っていただいて。素晴らしい傑作なので。で、このガーディアンズ プレリュード。本で読んでいただくといいんじゃないでしょうか。

(光岡三ツ子)ぜひ。

(宇多丸)はい。そして、じゃあどんどん行きましょう。

(光岡三ツ子)次は映画のアベンジャーズのもとになりました本をちょっとなんですけど。『アルティメッツ』というシリーズですね。これ、アルティメッツとアルティメッツ2っていうのがいま小学館、集英社プロダクションから出てるんですけども。あのアベンジャーズっていう映画はですね、1960年代から連載が始まりましたアベンジャーズっていうすごい歴史のあるチームの話なんですけども。それに21世紀になってからアベンジャーズをちょっと翻案し直したアルティメッツっていうものをリミックスして作っているような映画なんですね。

(宇多丸)翻案っていうのはだから、元々要するにそれぞれ個別では有名だったヒーローたちの合体チームがアベンジャーズっていうことでいいんですかね?元は。

(光岡三ツ子)元々、マーベルでいちばん強いヒーローを集めて作ったアベンジャーズっていうチームがあったんですけども。それがまあ、何十年も連載してたんですが。それをですね、今日的な社会的背景をですね、背景にして書かれた新しいエピソードがアルティメッツっていうものなんです。で、ちょっとこれを見ていただくと、絵なんかも結構現代的な感じで。もうネームが少ないんですね。大変マンガ的な表現に近くなっているんですね。まあマンガの影響というより、ちょっと映画の影響が強いのかな?っていう感じなんですけど。

(宇多丸)でもそれが面白いですね。日本のマンガも映画を模して、たぶん進化してきたんでしょうから。なるほど。あ、面白!単純にこの変化だけでも。

(光岡三ツ子)なので、ちょっとマンガの感覚でもう21世紀からのアメコミっていうのは読んでいただけるっていうのがあるんですけども。なんで、映画のアベンジャーズのルーツを知っていただく時に、アベンジャーズの古い話っていうのもまあ、小プロとかから出てますんで読んでいただくのもいいと思うんですけども。まあアルティメッツっていうのはちょっと21世紀になって新しく作ったアベンジャーズなので、こういうところも読んでいただくと面白いなという。

(宇多丸)要は長い歴史を持つシリーズだという時に、いきなり古いところなんかいくと逆に読みづらいから。ちゃんと最近の読みやすくなったというか、映画見てから入るにはふさわしいのはやっぱりそのアルティメッツとか、最新バージョン版から入った方いいよ、みたいな。

(光岡三ツ子)あ、そういうことですね。

(宇多丸)ことなんですかね。はい。あと、最近の社会状況を踏まえて、みたいなのもあるんですか?話的に。

(光岡三ツ子)だからそのウィンターソルジャーとかは割りかしそういう話だったと。社会的な話が含まれていたと思うんですけど。そういうところの原案っていうのは、アベンジャーズの元々のシリーズというよりむしろアルティメッツっていうこのコミックをベースにしているところがあるんで。

(宇多丸)アルティメッツにああいうちょっと政治陰謀劇的なのが出てくる。現実を踏まえたような。へー!

(光岡三ツ子)なんでちょっとアルティメッツっていうのは本来のアメコミよりもちょっと暗いし、すごくシビアな表現もたくさん入ってくるので。ちょっと映画を想像しちゃうと、あれ?って感じではあるんですけど。まあ、こういうちょっとシビアな社会情勢みたいなののエピソードと、それで本来アベンジャーズが持っている明るさみたいなのを合体されたのがマーベルの映画の世界だっていうのがあるんです。

(宇多丸)逆にそのアメコミ文脈をご存知の光岡さんから見て、やっぱり映画のアベンジャーズとかってすごいバランスにまとめたなっていう感じですか?

(光岡三ツ子)本当ですね。だから、そのアルティメッツとかも含めて、本当にだから40年とかの歴史を全部入れてある、あそこにみたいなのを感じますね。

(宇多丸)あ、ちゃんと必要な要素を。『あ、ここのツボ、ツボを押さえた。おうおう!クリア!クリア!クリア!』みたいな、そんな感じですか?へー。じゃあ逆にあれですね。アメコミ世界を知ってから映画に戻るとさらにグッとくる・・・

(光岡三ツ子)面白いです。

(宇多丸)っていうところもあるんですかね。なるほど。じゃあアルティメッツ、要するに1、2があると。これですかね。あと、もうどんどん行きましょうかね。

(光岡三ツ子)次、『ホークアイ:マイ・ライフ・アズ・ア・ウェポン』という本。これも出たばっかりなんですけども。これは本当につい最近始まった連載でして。

(宇多丸)絵柄がかっこいい!

(光岡三ツ子)そうなんですよ!ホークアイが主人公なんですけども。これはもう完全に映画の後に作られた話なんですね。なんで、設定とかももういまは映画を取り込んで。ちょっと近いものになっています。やっぱり。違うは違うんだけども、まあこのルックスとかですね、設定とかっていうのは少し映画に近づけてあると。あと世界観ですね。

(宇多丸)ここもちょっと基本的なところでもう1回確認しておきたいですけど。映画版とアメコミ版ってキャラクターとか設定とか、結構変わっているものだったりするんですか?マーベルの中でも。

(光岡三ツ子)そうですね。ただ、変わっているんですけど、もう映画の方が売れちゃっていて。映画で入ってくるファンの方がすごく多いもんですから、いまは割とコミックの方も映画に設定を寄せていくみたいなところがあるので。

(宇多丸)なるほど。マイ・ライフ・アズ・ア・ウェポン。ドッグならぬ。この絵柄のちょっとモノトーン的なというか、すっごいおしゃれな絵柄で。これだけでもちょっと惹かれる人いそうな感じだと思いますけどね。

(光岡三ツ子)はい、そうですね。やっぱりアメコミの良さっていうのは日本にないアートワーク。色使いとかですね、構図。それからなんか正しいデッサンみたいなやつですかね。まあそういうところにあると思うんで。ちょっとやっぱりアートがキレイなやつを見ていただきたいなと思います。

(宇多丸)これは本当、なんかファッショナブルなものとしてぜんぜん見れる感じですね。だって色を塗るアーティストがいるわけですもんね。だってね。

(光岡三ツ子)あ、そうです。そうです。

(宇多丸)そこがそれで個別の仕事として評価されたりするっていうことですもんね。

(光岡三ツ子)そうです。そうです。脚本の人がいて、絵を描く人がいて、色を塗る人がいて。それぞれにみんな、個別に評価されるっていうシステムができているんですね。

(宇多丸)あ、そうだ。基本的にそのアメコミっていうのは分業制作体制なんですよね。日本のマンガと違う部分としては。なるほど。そういう違いもあると。僕、これまだあれなんで。全く読んでなかったんで。ホークアイ、読みます。

(光岡三ツ子)ぜひぜひ。

(宇多丸)どんどん行きましょうかね。時間の許す限り。

(光岡三ツ子)次、『バットマン イヤーワン』というのをお持ちしたんですけども。いま、イヤーワン/イヤーツーというアンソロジーで出ておりますね。これ、タイトル通りバットマンの1年目の話を書いた話なんですけども。

(宇多丸)新人バットマン。

(光岡三ツ子)新人バットマン。で、これが結局今回のダークナイトの原作と言ってもいいというか、世界観のもとになっている作品。

(宇多丸)あ、そうですか。もう帯にね、『ダークナイトシリーズの原点』ってドーン!と出てますけど。これ、具体的にどのあたりの部分っていうか、がトレースされている感じなんでしょうか?

(光岡三ツ子)ああ、まあでも、やっぱりどういう・・・新人のところから始めるんで、なんか失敗したりとかしながら戦士として成長していくっていうのが描かれている・・・

(宇多丸)じゃあバットマンの、ノーランのあれで言うとビギンズのところからっていうか。

(光岡三ツ子)そうです、そうです。まあ話、ぜんぜん違うんですけども。やっぱりこれ、すごく昔に書かれた本なんですけども。80年代とかですかね。フランク・ミラーっていう、シン・シティとかを書いた作家さん。

(宇多丸)300とか。

(光岡三ツ子)300ですね。書いているんですけど。いま読んでもすごく読みやすい構成になっておりまして。面白いだけじゃなくて、読みやすさっていうのがあるのでぜひちょっとおすすめしたいなと思ってお持ちしました。

(宇多丸)これはもう名作の部類に入るようなやつってことですかね?はい。バットマン イヤーワンでございます。続いて、おすすめをお願いしたいと思うんですが。今日はもう、これじゃないですか?これ推しなんじゃないですか?光岡さん。

(宇多丸)デッドプール。これ、まだ耳馴染みない方いらっしゃると思うんで。

(光岡三ツ子)そうなんです。なんで、日本ではまだちょっと映画にも、この間のウルヴァリン・ゼロですか?

(宇多丸)『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』に、一応出たってことになってますけど・・・ただまあ、事実上ご存知ない方が多いと思うんで。たぶんあれもどうですかね?映画的にたぶんデッドプールは出てないっていうことにしそうな感じ・・・

(光岡三ツ子)そうですね(笑)。ああじゃなかった。実際のデッドプールっていうキャラクターがいて、これはだから映画にも出てないのに日本でも一番人気っていうキャラクターなんですよ。いまマーベルで。コミックもいちばん売れてまして。

(宇多丸)あ、そうなんですね。

(光岡三ツ子)はい。アメリカでもものすごい人気で。なんでかと言うとですね、まず私なりにちょっと説明しますと、スパイダーマンみたいな格好をした感じのスーパーヒーローなんですけども、ただ見た目ではそんなに・・・

(宇多丸)なんかね、忍者チックな。

(光岡三ツ子)忍者チックな感じなんですけども。この人はですね、いちばんの特徴としては、コミックの中のキャラクターなんだけど、自分がコミックキャラだということを知っているっていうのがあって。

(宇多丸)すごい高度なメタフィクション構造を持っているキャラクター。キャラクターそのものが?

(光岡三ツ子)キャラクターそのものが。

(宇多丸)そんなキャラクターってあります?

(光岡三ツ子)あるんですね。なんで、読者に話しかけたりとか、まあ『前後はこうだったけど・・・』って話を他のキャラクターがポカーンとしている時に言ったりとかっていうような。

(宇多丸)あのマンガでね、マンガ表現。それこそ日本のマンガ表現でこっちに話しかけたりとか、そういうメタ表現みたいなの、まあ入ってくることありますけど。単発のギャグとしてっていうんならわかるけど。これはキャラクターとして、それがキャラクターの一部になっているということですか?

(光岡三ツ子)そうなんです。そうなんです。だからアメコミの世界っていうのは割と厳しくって。やっぱりいろんな自由なようでいながらいろんなルールがあるんですけども。デッドプールっていうのは全部それを破壊してくれる、すごい痛快なキャラなんですよね。

(宇多丸)へー。

(光岡三ツ子)で、まあほとんど不老不死。で、すごく強い。傭兵でお金払われればちょっと悪の方にも行ったりするんですけど。

(宇多丸)ちょっとアンチヒーロー的なところもある。

(光岡三ツ子)アンチヒーロー的なところもあるんですけど、まあ反面すごいいいところもある。すごい人情にあついようなところもあって。

(宇多丸)要は人間臭いキャラなのかな?

(光岡三ツ子)そうなんです。なんだけれども、まあ最強。最強だし、自分がマンガキャラだっていうのを知っている点でも最強だし。で、アメコミって何十年の歴史の中でずっと途切れず続いてきたっていうのがるもんですから、ちょっと複雑なんですよね。で、その複雑さでやっぱりみなさんちょっと入りにくいなって思うところがあるんですけども、デッドプールっていうのはその複雑なところも全部破壊してくれる力を持ってるんですね。

(宇多丸)要はアメリカの読者にとっても、アメコミ界にとっても、ちょっとこれ難しくなりすぎたな、ちょっとこれ面倒くせーなっていうところをドーン!と風穴を開けてくれるっていう。

(光岡三ツ子)そうです。そうです。で、風穴を開けて、そのままその複雑な宇宙の中に引きずり込んでくれるような力があるわけですね。なんでちょっといま、マーベルで本当に名実ともに最強のキャラと言えるかなという。

(宇多丸)あ、そうですか。ということはこれ、当然というべきか、いずれちゃんとした映画化が・・・

(光岡三ツ子)あ、はい。いまなんかもう進んでいるみたいなんですけども。あの、ウルヴァリンの方の映画で出たライアン・レイノルズさんが一応デッドプール役ということで。で、まあFOXがテストフッテージっていって、試しに映画こんな感じでってCGで作ったやつがネットに流出したら、ものすごい人気が出て。それでFOXがもう、じゃあ作りますっていうことを言ったっていう。つい先日。

(宇多丸)あ、でもライアン・レイノルズがやるんですか?

(光岡三ツ子)一応そういう話になっているみたいです。

(宇多丸)ライアン・レイノルズ、でもグリーン・ランタンもやっているのに、いいんですか?

(光岡三ツ子)いいんじゃないですか?それは。グリーン・ランタンはもういいんじゃないですか?

(宇多丸)(笑)。グリーン・ランタンはなかったことに(爆笑)。それもたまにありますからね。アメコミ映画ね。それはね。X-メンに出てきたデッドプール的なというか、デッドプールとされていた人もね、だってよくしゃべる人じゃないですか、これ。

(光岡三ツ子)あ、そうなんですよ。

(宇多丸)あの人、逆に口をなんか閉じちゃってる。逆じゃねーか!って。

(光岡三ツ子)閉じられちゃってました(笑)。『うるさい!』とか言って。

(宇多丸)あ、うるさいから閉じられている。そうかそうか。

(光岡三ツ子)そうそう。でもちょっとヒドいですよね。しゃべるのが身上のキャラなんで。

(宇多丸)これ、でも映画になったら、それこそたとえばスコセッシのああいうグッドフェローズとかじゃないですけど、ウルフ・オブ・ウォール・ストリートじゃないけど、いきなりこっちに話しかけたりする作りになる?

(光岡三ツ子)ぜったいなりますよね。

(宇多丸)誰が撮るんだろう?ちょっと気の利いた人に撮ってもらわないとって感じしますけどね。

(光岡三ツ子)まだ監督はたしか決まってないんじゃなかったと思うんですけど。もう脚本とかは出来ていてっていう話で。で、なんかジェームズ・ガンさんのお仲間らしいので。なかなか期待できるんじゃないかと。

(宇多丸)あ、信頼できる。はい、といったあたりであっという間に時間が来てしまったんですが。ええとですね、最後にこの放送を聞いてアメコミ原作を読んでみよう!って思った方にですね、最後にちょっと簡単な、改めてアドバイスをいただけると。

(光岡三ツ子)はい。ちょっとアメコミってやっぱり日本語版っていうのは高い。2・3千円とかしますので、まあAmazonとかでも買えて。それも簡単なんですけども。なるべくちょっと書店さんとかで。いまは試し読みできるようなお店が増えてますんで。神田の書泉グランデさんとか、秋葉原の書泉ブックマートさんとかですね。あとはですね、おすすめしたいのは日本にもコミック専門店っていうのがありまして。秋葉原のブリスター(BLISTER)さんとか他にもあるんですけれども。ブリスターさんみたいなところに行って、『初心者なんですけど、こういうのが好きなんですけど、おすすめありますか?』っていうのを聞くと、アドバイスもしてくれるような。

(宇多丸)あ、店員さんが。それこそアメリカ映画で出てくるような、そういう感じだ。

(光岡三ツ子)あ、そうです。そうです。英語の本もありますんで、まあそっちの方もちょっとすすめてくれたりとかっていうのもあると思います。

(宇多丸)たとえば『僕、この映画見てこのキャラクター好きになったんですけど、どのあたりが感じとして入り口いいですかね?』なんつったら、もうそれでやってくれるっていう感じですかね?ああ、そうなんですね。ブリスターさんね。僕も行ってみよう。はい。

(光岡三ツ子)ぜひちょっとネットとかで検索してチェックしていただければと思います。

(宇多丸)最後にちょっとお知らせごとなどあれば。

(光岡三ツ子)ええと、特には・・・まあ毎月のように新しいアメコミ出ておりますので。

(宇多丸)いま、もう最強の花盛りじゃないですか?それこそ何度か。もういま、うれしそうに光岡さんが。しあわせー!っていう(笑)。

(光岡三ツ子)はい(笑)。やっぱりちょっと出てなかった時期も長かったもんですから。まあいま、ヴィレッジブックスさん、小学館集英社プロダクションさん他の出版社さんから毎月何冊も何冊も出てますんで。ぜひちょっと親しんでいただければと思います。

(宇多丸)なおかつ、このタイミングが入るのに最適なタイミングだということでもあるので。

(光岡三ツ子)あ、そうですね。本当にいま、初心者の方にも読みやすいアメコミっていうことでたくさん出しているものもありますし。また昔の名作っていうものもどんどん出てますし。本当にいま入るにはちょうどいいんじゃないかと思います。

(宇多丸)まあ入んなかったらバカか!ということで。

(光岡三ツ子)(笑)

(宇多丸)『すべての映画ファンに捧ぐ! 食わず嫌いのための、 今から始めるアメコミ入門特集』でした。光岡さん、ありがとうございました。

(光岡三ツ子)ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

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