アニメ評論家の藤津亮太さんが2023年7月25日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で宮﨑駿監督最新作『君たちはどう生きるか』について、宇多丸さん、宇垣美里さんと話していました。
(宇多丸)でですね、今日は注目アニメというのを7月から放送されている今期のテレビアニメを中心にお話を伺うんですが。その前に藤津さん! 目下、目下、なんといいましょうか。目下、やはり避けて通れない話題としてはですね、なんですかね? 『君どう』とでも申しましょうか?
(宇垣美里)『君どう』。
(宇多丸)宮﨑駿監督最新作『君たちはどう生きるか』。私も宇垣さんもまだ、実は見れてないんですけども。
(宇垣美里)そうなんです。見られてなくて。
(藤津亮太)ああ、そうなんですね。
(宇多丸)だから謎のベールに包まれたままの状態が続いておりますが。
(藤津亮太)めちゃくちゃ語りづらいじゃないですか……(笑)。
(宇多丸)アハハハハハハハハッ! ごめんなさいね(笑)。
(藤津亮太)あの、ネタバレしない範囲で僕の印象を言うと、なんか「わかる・わからない」で言うと「わからない」なんていう意見も世の中にはあるみたいなんですけど。全体の構図はすごくシンプルでした。ザ・ファンタジー。「行きて帰りし物語」という構成なので、すごく僕は逆に拍子抜けではないんですけど。ちょっと身構えて行ったところがあったんですね。『ポニョ』みたいなものが出てきたら、どうしようか?って。
(宇多丸)奇っ怪なのがね。うんうん。
全体の構図はすごくシンプル
(藤津亮太)なんて思っていったら、そうではなかったので。むしろ、クセのない直球の構成だったんで。そこはすごく、「ああ、これは逆に割とヒットするかな?」と思ったんですね。とっつきやすいから。もちろんディテールではではわからないところ、いっぱいあります。「なぜこの描写を入れたんだろう?」っていう解釈を誘うところはいっぱいあるんですけれども。
僕個人としては、勝手に「後期宮﨑駿」っていう……『もののけ姫』以降の四半世紀ぐらいにあたるのかなと思うんですが。『もののけ姫』の後から、割と「母性」というテーマと、それからもうひとつはその「近代化の象徴としての戦争」みたいなものがちょこちょこと顔を出してくるんですね。両方とも直接的にそれを描くっていう感じではないことが多いんですけれど。でも、つかず離れずで出てきて。で、『ポニョ』なんかは母性だけでできてるんですね。で、『風立ちぬ』なんかは戦争というもの、近代化というものをテーマにしてるわけなんですけども。この二つがやっぱり合わさった感じなんですよね。
(宇多丸)戦争要素もあるんですね。
(藤津亮太)戦争要素、あります。これもね、どこまで言ったらいいのかはわからないんですが、戦争要素もある。あと、いろいろな記事でも出てるんですけど。宮﨑監督の個人史を思わせる要素があるんですよ。なので、「宮﨑さん、これ、主人公のことを自分だと思ってほしいの?」ってちょっと思うところもあり。
(宇多丸)『風立ちぬ』もちょっとそういうところ、ありましたけどね。
(藤津亮太)あります、あります。なので「『風立ちぬ』の次の作品」っていう感じはあります。僕個人としては「『風立ちぬ』と『千と千尋の神隠し』が合体したような作品」っていう風に一応……。
(宇多丸)なんだ、そりゃ(笑)。
(宇垣美里)その二つ、合体するかな?(笑)。
(藤津亮太)合体するんですよ(笑)。
『風立ちぬ』と『千と千尋の神隠し』が合体したような作品
THE BOY AND THE HERON
Written & Directed by Hayao Miyazaki
Score by Joe HisaishiIn North American theatres later this year.#君たちはどう生きるか#宮﨑駿 pic.twitter.com/PPnjFTMBFS
— Studio Ghibli (@GhibliUSA) July 14, 2023
(宇多丸)へー! でも、ずっと僕たちも言ってたんですけど。この作品のいろいろ、出し方とかも含めて「やりたい放題かよ!」っていう(笑)。
(宇垣美里)ねえ(笑)。
(藤津亮太)まあ、そうですね。あの、やっぱり全くどういうジャンルかわからない状態で映画を見に行く体験って、少ないじゃないですか。ほぼないじゃないですか。
(宇多丸)本当です。
(藤津亮太)なので、そういう意味では序盤から頭全開で見ることになるんですよね。「これは何だろう?」って思って確認しに行くから。それはね、すごい新鮮な体験でしたね。
(宇多丸)そうかそうか。じゃあ、やっぱり早めに行った方がいいのは間違いないですね。
(宇垣美里)ねえ。情報が入る前に。
(藤津亮太)あれぐらい情報を抑えてあるやつだと、その情報を抑えているっていう状態が普通になっちゃうんで、もう語りようもないし。見に行くなら早く見に行くしかないみたいな感じになっちゃいますよね。どうしてもね。
(宇多丸)そうかー。いや、すいません。語りづらいところを語っていただいて(笑)。
(藤津亮太)たぶんこれから……エンドクレジットを見ると、予告編のスタッフとかも出てくるんで。たぶんこれから、中押しというか。それでいろんな展開があるんじゃないかなと思うんですよね。
(宇多丸)ちゃんと画を見せる感じの宣伝展開みたいなのも後からあるかもしれない?
(藤津亮太)そう。なのでそれで中押しがあれば、普通に100億は……初日とか最初の4日の勢いから言えば、もう100億は確実なので。どれぐらい行くのかな?っていう感じで僕は見ております。はい。
(宇多丸)なんか、そのわかれてるところが僕はすごく興味を誘います。だから自分はどっちなんだろう?って思って行く感じもあるし。楽しみにしております。じゃあちょっと早めに行っておきますね。
(藤津亮太)ぜひぜひ見てみてください。
(宇多丸)ネタバレ込みで語れる日もいつか、ねえ。
(藤津亮太)僕も近日中に2回目、行こうかなって。ちょっと原稿を書くために行こうかなと思っております。
(宇多丸)なるほど、なるほど。
<書き起こしおわり>