ジェーン・スーさんによるタマフル特集『男のためのコスメ入門』書き起こしその2。野暮天な男が言ってしまいがちな『スッピンの方がかわいいよ』問題などについて語ります。
ジェーン・スー 男のためのコスメ入門1 『女にとっての化粧とは何か?』の続きです。
(ジェーン・スー)だからそういうエンターテイメント性、あとジャンキーになるパチンコ性、あと社会との接点。一番大事なところはそこなんですけども、女子にとってはそれぐらいの大きいシフトを占めるものになっていますね。
(宇多丸)はいはいはい。あと、先ほどチラッと出ましたけどね、化粧、いわゆるメークアップというかですね、やっていくものと、お肌の面倒をみてあげるスキンケア的なものっていうのは、何か一緒くたというかさ、僕らから見るとね、同じような薬品をつけたりやったりしてるけど。これは別?
(ジェーン・スー)別です。こちらにプレゼンシート書いてきたんですけど、ちょっと見ていただくと分かるんですけど。スキンケアの手順っていうの、まず男性に是非、耳をかっぽじってよく聞いてほしいんですけども。
(宇多丸)これ、なんか顔をパタパタやってるっていう風に思っている人、多いと思うんです。
(ジェーン・スー)男の人はお風呂あがったらそのままじゃないですか。
(宇多丸)たしかにね。ちょっと化粧水ぐらいやる人、最近はいるかもしれないですけど。
(ジェーン・スー)いるかもしれないですけど、それぐらいじゃないですか。まず、家に帰ってきて、女は何をするか?メークを落とします。ここで『メーク落とし』というものがいります。
(宇多丸)ふんふん。メークは石鹸で洗ったんじゃ、落ちないんですか?
(ジェーン・スー)ダメです。落ちないです。最近落ちないものも多くなってきて、落ちにくいものですね。
(宇多丸)それこそ、汗とかで落ちたりしないようにってことか。はいはい。
(ジェーン・スー)そうです。で、メーク落とし。あとやっぱり普通の洗顔がありますよね。これ、オールインワンの人もいますけど、基本的にはメーク落としと洗顔。あと、それから外にあがって、スキンローションつけます。
(宇多丸)スキンローションっていうのはその・・・
(ジェーン・スー)化粧水ですね。で、そのあとたとえばパックをしたりとか、美容液を塗ったりとか。で、これはやったりやらなかったりその人の好みだったりするんですけど、乳液とか・・・
(宇多丸)そのさ、『化粧水の後に、さらに乳液かよ!』っていうさ。『同じ機能だろ、それ?』って感じがするんですけど。
(ジェーン・スー)いや、あのね、私は基本的に化粧水だけでいいと思っている派なんですけど、これ結構・・・
(宇多丸)ああ、意見がわかれる。
(ジェーン・スー)化粧水だけでいいと思っているのは、かなりマイナー。マイノリティーではあるんですね。一般的には、『蓋をする』って言うんですよ。これ。
(宇多丸)蓋をする?
(ジェーン・スー)はい。自分で化粧水を入れた水分を、上から蓋をしてあげる。逃げないように。で、蓋をしてあげて、それ以外にシミ・シワ・美白っていうスポッツケアですね。部分クリームを塗ったりとか、そういうのがあるわけですよ。まあ、ここまでのものを揃えるだけで、おいくら万円かかると思ってるの?っていう・・・
(宇多丸)ああ、そうですね。一個一個に違う液が必要なんですもんね。
(ジェーン・スー)必要なんです。だいたいそうですね、スキンケアで言うと、メーク落としっていうのが一番安いのでも1500円くらい。高いのだと5000円くらい。洗顔料が2000円から4000円。
(宇多丸)えっ!?洗顔料、そんなするんですか?
(ジェーン・スー)します。安いのはもっと安いのありますけど、それこそアラサーって呼ばれるところで言うと、少しいいものを。
(宇多丸)優しく洗ってあげないと・・・
(ジェーン・スー)そうです。で、化粧水がだいたい2500円から5000円くらい。乳液と呼ばれるものが3000円から5000円、美容液が5000円から10000円というところで。あと、美白クリームとかそういうのが5000円から8000円くらい。結構お金がかかるんですよね。
(宇多丸)これ、こんなの(メール)も来てますよ。『化粧品って、高すぎねぇ?』っていう素朴な意見も来てますけど。
(ジェーン・スー)はい。いや、高いと思います。でも、これも・・・
(宇多丸)値段に対して納得度は・・・
(ジェーン・スー)そうそう。結局、容器とかのデザインとかそういうのも原価に入っているわけですよ。ただ、さっきも言ったように、エンターテイメント性。『アゲる』っていう必要があるんで。
(宇多丸)そうか、これがいくら安いからって、何かしょうもないビニールの袋に入ってこうやってベチョベチョ・・・ウンコっぽいもの塗って、いくらキレイになるからって・・・
(ジェーン・スー)もうテンション、ダダ下がりですよ。
(宇多丸)やっぱりそういうところからズラリと。おんなじの並べたりして。
(ジェーン・スー)だからそこに『投資』してるっていう認識も女の中にあるので。見た目麗しいもの、自分の鼻にも麗しいものを使いたいっていう。
(宇多丸)甲冑がね、必ずしもあのデザインが機能性では無いですから。あれも『アガる』以外ないですからね。『愛』(直江兼続)はアガるしかないですよね。
(ジェーン・スー)そうです。『愛』は本当そうです。『愛』印。本当、戦闘力ですよ。
(宇多丸)戦闘力しかないわけだ。それ、自分の中の戦闘力ですね。
(ジェーン・スー)そうですね。っていうスキンケアがあって、あともう一つは化粧ですよね。でまあ、さっき言ったスキンケアっていうのがだいたい・・・それ以外にもエステ行ったりとか、まつげエクステっていう、まつげに一本一本セメダインで毛を付けていくっていう作業が女子にはあるんですけども、まあこういうのも入ってくる。
(宇多丸)してるんですか?ジェーン・スーさんは。
(ジェーン・スー)私はね、一時期やってましたけど、やめましたね。
(宇多丸)ああ、そこは大分あれですね、落ち着いた・・・
(ジェーン・スー)もうどんどん降りてるんで。
(宇多丸)まつげ付けたり。
(ジェーン・スー)っていうので、だいたい2-3万から多い人で10万くらい月にかかってると思うんですけど。
(宇多丸)まつげに!?
(ジェーン・スー)まつげだけじゃなく・・・メンテもろもろ。メンテ、修繕費にそれぐらいかかって。
(宇多丸)『修繕費』って今、言いましたね?
(ジェーン・スー)修繕費。それ以外に化粧で言うと、これも全然分からないと思うんですけども、基本的には化粧って言ったら、『みんなファンデーションを塗って、チュチュッと書いてパパッとやって終わりでしょ?』っていうような認識があると思うんですけど。
(宇多丸)要するに塗りたくって、なんか目の周りに線書いて、ほっぺになんかね・・・
(ジェーン・スー)笑止!
(宇多丸)(笑)
(ジェーン・スー)行きます。メーク。まず化粧下地がありますね。こちらどんどん前に出していきますけど。
(宇多丸)化粧下地っていうのは、これ何ですか?
(ジェーン・スー)これ、パテですね。その上にファンデーションを塗った時に、均一にうつるようなための。
(宇多丸)あー、ファンデーションっていきなり肌の上にやったら、ムラになっちゃうんですか?
(ジェーン・スー)塗る人もいますけど、化粧下地を使ったほうが。あと、ここで日焼け止め効果もあるんですよ。基本的に日光に当たるのは肌によろしくないので、日焼け止めが入っている化粧下地を。
(宇多丸)UV効果。
(ジェーン・スー)そうですね。でまあ、ファンデーション。ファンデーションもリキッド・・・
(宇多丸)ファンデーションっていうのは、肌をつるんと見せるもの?
(ジェーン・スー)そうです。肌色に塗る。肌に均一感を出すものですね。これも好みでファンデーションもリキッドタイプと、あとこういう固形のファンデーション。ケーキタイプっていうんですけども、あったりとか。まずここで土台を作って、その後コンシーラーっていうのがあるんですよ。コンシーラーって何かっていうと、これは分かりやすく言うと、絵の具みたいなもんなんですけど。ファンデーションのかなり濃いもので。
(宇多丸)細めの口紅みたいな形をしてますね。
(ジェーン・スー)そうですね。このコンシーラーっていうもので、欠点を隠していく。ニキビ跡だったりとか、(目の)クマだったりとか。
(宇多丸)細かいところ、ピンポイントでやっていくんだ。
(ジェーン・スー)ピンポイントで。みなさん、頭のなかで自分の好きなプラモデルに色を塗るみたいな工程を考えてもらえればいいと思うんですけど。
(宇多丸)コンシーラーってそうなんだ。今まで、分かってなかった(笑)。
(ジェーン・スー)コンシーラーはそうです。欠点を隠すものです。で、その後ちょっとパウダーで押さえて。
(宇多丸)押さえる?何を押さえるの?
(ジェーン・スー)あの、リキッドを使った場合なんかはちょっとテカってたりとか。化粧崩れを防ぐために、後々のことを考えて。
(宇多丸)乗せてくねー!
(ジェーン・スー)乗せます乗せます。そしてようやく、アイシャドーとかが出てきて。あとチークですね。
(宇多丸)さっき言ったほっぺたに影いれたりとか。
(ジェーン・スー)そうです。で、チークっていうものを肌に塗って、ほっぺたの血色をよく見せる。
(宇多丸)あ、血色なんですか。
(ジェーン・スー)っていうのは、ファンデーション塗っちゃったことにより、逆に顔が能面のようにこう、均一化されちゃって。
(宇多丸)人間味がなくなってくるから、『アタシ、生きてるわ!』っていうのを示す。
(ジェーン・スー)そうですそうです。『生きてる感』を演出する。あとはアイブロウって言って、眉毛を書く。さっき言った、コンビニにも行けなくなるような・・・
(宇多丸)アイブロウは眉毛なんだ。女の人ね、眉毛なくなっちゃう人も結構いますもんね。あれ、抜いてないの?それとも・・・
(ジェーン・スー)抜いたり剃ったりしてから書いてますね。
(宇多丸)細いものをやっぱり作るために。
(ジェーン・スー)そうです。あとアイライナー。これは目のキワに入れることで、男の人で分かりやすく言うと歌舞伎のカッと目を、眼力を・・・
(宇多丸)隈取り。
(ジェーン・スー)隈取りみたいな。
(宇多丸)みんなが海老蔵。
(ジェーン・スー)みんなが海老蔵です。で、アイライナーがあって、それ以外にアイシャドーがあって。
(宇多丸)アイシャドーは、まぶたとかにやるのかな?
(ジェーン・スー)そうです。まぶたに色をつけるのがアイシャドーですね。まぶたに色つけたり、あとまぶたってくすむんですよね。色が。色素が沈着して。
(宇多丸)ちょっとお肉が。
(ジェーン・スー)なんでそこに明るく色を乗せてあげるっていうアイシャドー。あとはまつげ。マスカラですね。
(宇多丸)マスカラは・・・これは?
(ジェーン・スー)マスカラはまつげをボリュームアップするんです。長く見せる。
(宇多丸)あくまでまつげ、大事なんですね。
(ジェーン・スー)まつげ、大事です!これは、マスカラもいろんな機能があって、普通に黒い液体が入っているんじゃなくて、中に繊維が入っていたりするんですよ。で、この繊維をまつげにつけることによって、偽造まつげですね。まつげを偽装していく。どんどん厚みがあって長いものにしていく。
(宇多丸)一本一本がちょっと太くなっていったりとか。
(ジェーン・スー)そうです。そうするとかなり目がパキッとしてくるんで。で、マスカラ。あとやっぱ唇がね、このままだと寂しいんでっていうんで口紅を塗る。
(宇多丸)最後に口紅だよこれ。
(ジェーン・スー)口紅を塗ります。で、その口紅を塗るときにも、こういうリップライナーっていうのがあって、唇の輪郭をとったりするようなアイテムがあるんですけど。まあ、ここまでの作業をやった人間に向かって、「スッピンの方がいいよね」って気軽に言う・・・この無粋さって言うんですか?
(宇多丸)いや・・・まあ、その、あの・・・素朴にね、スッピン、要するに『素材としてのキミだって十分かわいいよ』って褒め言葉として、言ってるんじゃないかと思うんですよ。そういうその・・・野暮天はね。
(ジェーン・スー)はい。
(宇多丸)これでもダメですか?たとえばですね、これはナチュラルメークの話ですけど、スッピン問題。
(ジェーン・スー)そうですね。ここまでの工程を持つには、だいたいさっきも言った通りお金がかなりかかって、月・・・何ヶ月も持つものもあるんですけど、月15000円から4-50000円かけている人もいるわけですよ。だから『構想何年制作費いくら』みたいなものに対して、「ロードムービーいいよね!」みたいな。「撮りっぱなしのロードムービーいいよねー。」みたいな・・・その無粋さっていうのは・・・
(宇多丸)その言い方してるからでしょう(笑)。いや、無粋っていうけど、そういうことあるでしょ!
(ジェーン・スー)あるんですけど、それは長編大作を撮っている人には言わなくてもよくない?っていう。
(宇多丸)その作っている本人に言われても、それはだって長編大作が・・・(ジェームズ・)キャメロンに「もっと小じんまりしたさ、インディームービーでさ」って言ったって、『俺はこういうのが作りてーんだから!』っていうことなんだ。
(ジェーン・スー)あと、やっぱりその男の人でメークをちょっと褒めたりっていう。「あ、化粧してるとかわいいね」とか、「今日、メークかわいいね」とかっていう。
(宇多丸)さっきその「スッピンの方がいいよ」の逆だよね。化粧しているといいよねっていう。
(ジェーン・スー)これも無粋ですね。
(宇多丸)ちょっと待って下さいよ!だって、「えー、制作費60億円もかかって、スゴイね!」って言ったらキャメロン、「オー!イエー!」ってやりますよ!
(ジェーン・スー)いやいや、たとえばね、メークを人形浄瑠璃にたとえてみましょう。
(宇多丸)さっきの映画のたとえが合ってなかったんじゃんよ!
(ジェーン・スー)いやいや、いいですよ。映画でもいいんですけど、より分かりやすくするために人形浄瑠璃にメークをたとえた場合に、女は黒子なわけですよ。で、化粧をした顔っていうのは人形。で、これで一大ストーリーを作っているわけですよ。
(宇多丸)さっきから言っている自意識は黒子部分。
(ジェーン・スー)そうです。出て行く部分は人形。
(宇多丸)黒子と顔は似姿だけどもっていう状態なわけだ。
(ジェーン・スー)そうです。で、こう人形浄瑠璃をずっとやってたものを見終わった人が、黒子の人に向かって「いないみたいだったよね、全然!」みたいな。「全然わかんなかったよ!あれ、どうやったらあの動きになるの?」みたいな・・・無粋!っていう。
(宇多丸)あ、つまりもう化粧をしていることは気づかないくらい・・・
(ジェーン・スー)そうです。物語を楽しんでほしいのに・・・「悲哀だったね」とか「泣いちゃったよ」みたいな感想を聞きたいところで、「いやー、なんかすごい熟練工みたいな動きしてたよねー」みたいな。
(宇多丸)その『化粧』って言わずにたとえば、「今日、なんかキレイだね」とか・・・
(ジェーン・スー)そうですそうです。「あれっ、なんか目がウルッとしてるけど、今日なんかかわいくない?」みたいな。
(宇多丸)あ、それはいいの?
(ジェーン・スー)現象を褒めてほしいんです。それによって醸される現象を。
(宇多丸)醸される雰囲気とか。見えるもの。メイキングの話をするなと。「あのCGよかったね」とか「これディカプリオ使うの、ギャラ高かったでしょう?」とかそれは無粋だと。
(ジェーン・スー)そう。アナタのオーディオコメンタリーはいらない!っていう。
(宇多丸)なるほど。アバター見たら、「自然が大事だと思いました」とか。そういうことを言えと。
(ジェーン・スー)そうです!
(宇多丸)ああ、なんとなくは分かった。つまり『化粧』という言葉は禁句に近いんですかね。
(ジェーン・スー)そうですね。褒めるんだったら『かわいい』とか『キレイ』とか、まあ女の機嫌を取るんだったら『かわいい』『キレイ』『美味しい』だけ言ってればだいたい8割は機嫌取れるんで。
(宇多丸)まあそうだけどさ。ただその、こんだけお金かけてる努力の跡を知っていれば、褒めたくもなっちゃう。そこを褒め称えたくもなっちゃうし。
(ジェーン・スー)いや、それをね、逆に男の人の立場で言ったりするとどういうことかっていうと、たとえば若干薄毛に悩んでる男性がいたとしましょう。頭がちょっと最近薄くなってきたと。リアップとかいろいろ使って、トントントントンやって。で、いつもは右の分け目なんだけど、左の分け目にしたら『あっ、薄毛が目立たない!俺大発見!天才!』みたいな感じでワーッとデートに行った人に向かって、「あっ、左分けにしたらハゲ目立たないね!」っていう。
(宇多丸)(爆笑)
(ジェーン・スー)そんなヤツいるか?っていう。『ほっといてくれ!』っていう話じゃないですか。
(宇多丸)まあね。あー、そうかそうか。あとその、さっきのスッピンの話でいうなら、「ハゲてる方が素敵じゃん!なんか一生懸命かくすより、いいじゃん!」って言われても、『ハゲって言った!』とか。
(ジェーン・スー)そうそうそう。
(宇多丸)あと、そもそも自分がハゲてる自分に自信を持ててないことが問題なのだから、いくら良いって言われたって。それが重なれば話は違ってくるかもしれないけど。
(ジェーン・スー)まあだから、そこは社会性と関係性の問題で、たとえば何年も付き合った彼氏が「スッピンもかわいいよ」って言うのは、かなり社会から自分の中に入ってきている存在なので・・・
(宇多丸)社会より自分寄りの存在になっているから・・・
(ジェーン・スー)全然いいと思うんですけど。合コンとかでバシーッと女が制作費いくら!っていう状態でいるところに向かって「女の子はスッピンが一番だよね」っていうのを逆にすると、結構こう・・・薄毛を気にして、いろいろボリュームアップしたりとかヅラをかぶったりとかしてる人に向かって、女がしたり顔で「ハゲてるアナタの方が素敵だと思うの」っていうことと同じ・・・
(宇多丸)まあね・・・あとそのさ、「ハゲでもジェイソン・ステイサムはかっこいいよね」とかさ、「竹中直人はかっこいいよね」とか。「スッピンでも超美人な人は本当にスッピンでも美人だよね」とか、そういうの・・・それを言って何になる、お前?みたいな。そういうの、ありますね。これ、ハゲ話にすると、すごい共感度が高まるかもしれないな。
(ジェーン・スー)それぐらい女にとってのスッピンってセンシティブだったりするんで。逆にさっき宇多丸さんがおっしゃったように、「俺なんかは毎日剃って、どうだハゲだ!」って。まあ、『ちょっと聞いてよ私はハゲ』っていうフレーズもありましたけども、そういう人はやっぱり一家言あるわけじゃないですか。自分自身に対してのアティテュードっていうか、社会に対しての。女も同じで、頑なにスッピンを通している女っていうのはなかなか自意識いろいろあるぞっていう・・・
(宇多丸)いらっしゃいますよね。全然化粧しない方ね。
(ジェーン・スー)そうですね。っていうのも、いろいろ。全ては自意識と関係性ってところにかなり踏み込んでくる問題なので。
(宇多丸)そういう意味ではあれですね。パッと見てその人がたとえば化粧しているのか、服とかもそうですかね。そういうのパッと見て、この人が自分と社会というのか、この人が世界とどう関わって来たかがモロに見えちゃうんですね。
(ジェーン・スー)分かりますね。
(宇多丸)で、その自分のしているその感じがモロに見えてしまうナニなのだって思い出すと、ますますギクシャク・・・『えーっと、じゃあそれもナニだから』ってだんだんなってくるから。で、面倒くさいからガードしちゃおうっていうね。化粧しちゃおうとか、あるかもしれないですね。
(ジェーン・スー)だから男の人が褒めていいのは、髪型ぐらいじゃないですかね。髪型・・・「パーマかけたの?」とか「色かわいいね」とか。
(宇多丸)でも、『化粧』ってワード使わなければ・・・「今日、なんかかわいいね」とか。
(ジェーン・スー)そうそうそう。それだったら・・・
(宇多丸)化粧はちょっとこっちに置いておいても。だから見立て?浄瑠璃で「今日いいね。今日の話ね。」って。本当は「黒子さん、いいよ!」って言いたいところだけども。
(ジェーン・スー)それは無粋ですから!
(宇多丸)そこはさ、男には『黒子の存在は分かった上で、言うな』なのか、『そんなことはお前ら、知らんでいい』なのかどっちなの?
(ジェーン・スー)『どっちでもいいから触れないでくれ』です。
(宇多丸)(笑)たしかにさ、こう・・・こうやっている人にね。「いや、ちょっと話しかけないでくれる?」っていうね。ああ、そうなんだ。
(ジェーン・スー)だから中途半端にかんでくるのが一番イラッと来る・・・
(宇多丸)なるほどね。これはちょっとね、男子のためのコスメ特集で大事なポイント。合コンなどで間違いをおかしてる、したり顔でね。つまり『化粧を褒める俺って野暮天じゃないでしょ?』って思っている野暮天がいるでしょうから、これはいい感じかもしれませんね。
(ジェーン・スー)それは本当にもう・・・化粧って結局、最初はさっき言った男の人とか社会とかに向けてしてたものだったと思うんですけど、どんどん自分の中でグルグル自家中毒になってって。『自分のためにやってるんだから、ほっといてくれ!』っていう要素がどんどん出てくるので。で、そういうところに甘咬みしていくっていうのは、かなり危険な行為になりますので。そこは入んない方がいいと思います。
<書き起こしおわり>
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